創造的資本主義 - Creative Capitalism-

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お気づきかもしれませんが、今年は“一つの包括的な社会”(参照:)に向けた社会的な動きの裏にあるグローバルな課題や根本的な変化について話す特別な機会に何回かお招きいただきました。

それらのスピーチにおける重要な主題の一つは資本主義の変わりゆく側面、すなわちCSR、“corporate social responsibility (企業の社会的責任)”についてです。そこでビル・ゲイツ氏が使う“Creative Capitalism(創造的資本主義)”という言葉を引用しました。みなさんはゲイツ氏がこの言葉で何を言わんとしているのかと思われることでしょう。

最近のTIME誌では“資本主義の解決策”と題したビル・ゲイツ氏との特別インタビューが特集されていますが、そこでは創造的資本主義のコンセプトについて議論され、現在の世の中の状況は既に古くなった20世紀の反映であると彼は見ています。記事は大変面白い個人的見解ですが、ビジネスのリーダー達には強いメッセージを発信し、私のスピーチで伝えたいメッセージとも一致しています。

皆さんがビジネスその他でやっていること、やろうとしていることを考える際に、このコンセプトや活動についてちょっと考慮していただけると嬉しく思います。

ビル・ゲイツ氏は今度11月に東京に来ます。

輝く女性研究者たちと赤いバラ

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以前にも紹介しましたが、化粧品会社として著名なL’Orealは、「For Women in Science」(ここのウェブサイトはなかなか綺麗ですので、いろいろ探索してみて下さい)というプログラムをUNESCOと共同で主宰し、世界にその存在感を示しています。このプログラムは今年で10周年を迎え、この春パリで、今までの受賞者たちをお迎えしてお祝いの会がありました。

日本でも3年前から国内の若手女性研究者を表彰する企画が始まりました。去年もこの表彰式と祝賀会に出席したのですが、今年も素晴らしい方たちが表彰され、式にはご家族、指導をされた先生や研究者仲間たちも出席して、とても素敵なお祝いの会になり、うれしい気持ちになりました。

今年は4人の素晴らしい方たちが選ばれました。晴れやかで、また楽しいひと時を皆さんで共有することができました。

女性誌の「Marie Claire」も活動に参加し、受賞された皆さんには赤いバラのブーケ(写真)が手渡されました。2日前に沖縄でご一緒した大隅典子さん、そしてやはり高名な科学者である大隅さんのお母さまにも、お会いしました。

Lorealjapan200801写真: 坂東さんと4人の受賞者

レセプションでは内閣府男女共同参画担当の坂東局長が、日本の科学者で、女性の割合がOECD諸国で最低であることなどについて述べられ、エールが送られました。私は乾杯の音頭を任されたのですが、日本では女性の開発指数(Gender Development Index)は世界でトップ10内なのに、女性の社会進出(Gender Empowerment Index)は世界70数国でも40番程度と低いこと、この差は実力主義でないオトコ社会であること、そして、今回の北京のOlympicでの野球とソフトボールの日本選手の違い、そしてサッカー、レスリング、柔道などに、日本の男子と女子の根本的な違いが見てとれはしないか、という話をしました。皆さんも考えてみてください。ここに日本社会の問題があるのも事実と思うのです。

受賞者の皆さん、ご家族の皆さん、支えあった研究仲間の皆さん、審査に関わった先生方、その他関係者すべての方々に、おめでとうと言いたいですね。

しかし、このような賞を作るところに、世界企業の戦略が見えますね。受賞者の一人ひとりが、これからの長い間、L’Orealの大使として、国内ばかりでなく、広い世界にスポンサー企業の広告塔として、世界の女性の心をつかみ、男性の心を動かす、素晴らしい役目を果たしてくれるのです。これほど素敵で、美しい広告媒体はなかなかないと思います。日本企業も、もっともっとこのような視点で社会貢献を考えてもらいたいと思います。これこそが、企業の社会的責任(CSR)なのですよ。

シンガポール、沖縄、そして若者のエネルギー

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お盆明けの20~22日はA*STARの理事会のため、Singaporeへ。場所は新しく開設されたFusionopolis(10月に開所の式典があります)、いよいよバイオを理工学分野と融合させようという意欲的な試みが始まります。理事会の開催された21日の夜は貢献者たちの表彰式が威勢よく開催され、Guest of Honorで産業担当大臣も出席されました。とにかく意欲と元気があり、研究者も事務方も、多くの若者がバリバリ活躍しています。

24日は沖縄へ。「アジア青年の家」プログラムに参加しました。私たちの提案から始まった、アジア諸国と日本(沖縄と本土)の若者(14~17歳)が80人ほどで、沖縄で3週間を一緒に過ごし、交流しようというものです。「ハイサイ日記」に楽しそうな写真と日記が満載。このプログラムの基本精神は私のメッセージにも読み取れると思います。

この日は「科学者シンポジウム」に参加しました。東北大学で脳研究をしている大隅典子さん、琉球大学理学部長でサンゴ研究で知られる土屋さん(去年は太平洋科学会議で大変にお世話になりました。いまはこの学会の事務局長もされています。)、住友化学でこのブログで何回も紹介しているOlycetNetというマラリアに有効な画期的な蚊帳の開発にかかわった石渡さん、司会は御茶ノ水大学の塩満さんで行われました。参加した学生さんたちは、皆さん元気いっぱいとても楽しそうで、うれしかったです。共通の言語は勿論、“Broken English”。

大学生も何人かお手伝いをしてくれました。大分にある立命館アジア太平洋大学の留学生たちです。若いときのこのような交流は何にも増して視野を広げ、違いを認め、広い視野と友情を育てることでしょう。参加した若者たちの10年、20年先の将来に何が出てくるのか楽しみです。わくわくします。もっともっと、各地の学校でこのような活動、夏休みの交換ホームステイなどを自発的にはじめて欲しいものです。

パネルの終了後すぐに飛行場へ向かった大隅さん、当日の夜に早速blogで発信しています。写真も、お話もうまいものです。

私は内閣府の主管する沖縄総合事務局長の福井さんと、沖縄全島「エイサーまつり」を見に行きました。特に「琉球国祭り太鼓」は素晴らしかったです(写真)。その後は夕食へお招き受けました。

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皆さんありがとう、お世話になりました。

インドからの学生たち

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今年2月に本田財団YESプログラムの関係でニューデリーに行ったことをお伝えしました。

そのYESプログラムを受賞した5人の学生(皆さんインドの名門大学“IIT”の学生)のうち4人が、5月末から6~8週間、日本で勉強をしました。ジャイン君はホンダのロボット研究へ参加、ゴヤルさんは東京工業大学で研究を、トマルさんは岡崎研究所と筑波大学でそれぞれ4週間の研究を、アガルヴァル君はJVCで研究に参加。明日の帰国を前に政策大学院に集まり、座談会を開催しました。日本のビザ取得でちょっと手間取ることがあり、1人はGoogleに研修にいったそうです。つまらないことで残念なことです。

皆さんに本田YES賞の授賞式、Pachauriさんと面談したこと、そしてこの数週間の日本での体験について話をしてもらいました。4人とも日本での研究、研修を存分に楽しんだこと、皆さんに親切にしてもらったこと、多くの若者と交流できたこと、そして指導の先生たちもすばらし方ばかりだったと話されていました。アガルヴァル君はホストファミリーと過ごし、とても良くしてもらったそうです。みなさんすばらしい経験をしたようですね。話の中ではインドと日本の違いに何度も触れられていました。このような若いときの実体験こそが大事なのです。皆さん素敵な思い出とともに、日本の大事な「大使」になるでしょう。このことを学生の皆さんにも話しました。

夜は皆さんと夕食。本田財団の方たちをはじめ、多くの方々にお世話になりました。地道な活動ですが、このような若者の国際交流はとても大事な活動であり、インドの、そして世界のホンダファンをさらに増やすことでしょう。うれしいことです。もっともっとこのような活動を広げたいものです。民間からもっと多くの取り組みが出てくるとうれしいですね。若いときからのヒトのつながりを広げることこそが、グローバル時代の多様性ある人材(財)育成と、世界に友人を作る基本です。これからの日本にとって一番大事なことです。

日本の若者を海外で実体験をさせることはさらに重要なことです。知識ばかりでは役に立たないのです。双方向の交流を増やすということも大事な政策であり、グロ-バル時代の日本の将来へ向けて大きな効果があるでしょう。今の時代にとても内向き日本人がやたらと多いですから。

世界の政治家の活動“GLOBE Tokyo G8+5 Legislators Forum”

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6月28・29日に、G8+5の政治家達の活動“GLOBE Tokyo G8+5 Legislators Forum”が東京で開催されました。日本側の会長は谷津前農林水産大臣です。1日目の第1セッションは英国ブレア政権で環境大臣を担当したMorleyさんの司会で(先日のG8環境大臣会合もお会いしました)、福田総理の挨拶に始まり、ブレア前英国首相と安倍前総理の基調講演がありました。みなさん、なかなかよかったです。

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写真1 福田総理の挨拶とブレア氏、安倍氏の二人の前首相

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写真2 ブレア氏の挨拶

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写真3 安倍氏の挨拶

この会議は1989年に発足、さらに1992年にRioで行われた地球サミットを機会に、各国超党派の議員を主体に形成されたものです。2005年のGleneaglesサミットの時には“G8 Gleneagles Climate Change Dialogue”の枠組みも立ち上げています。

米国のMcCainObamaKerrySnoweといった各上院議員からのビデオメッセージもありました。“米国では、新しくなる大統領も、議会も、多くの大企業、500を超える市長、さらに多くの州知事が参加して、明確に「低炭素社会」、「Cap and Trade」への大転換が始まるでしょう”とのメッセージがありました。日本だけが様子見という雰囲気なのでしょうかね。政治も、政府も、企業も、「市民」ももっと明確な覚悟が必要ですね。

GLOBEでの議論は大変に活発でした。

私も2日目に講演をしましたが(写真4)、森林、生物多様性のセッションでしたので、ちょっと困りました。依頼されたのが1週間前、しかも9ヶ国語の同時通訳なので、神戸で行った講演をベースにして、さらにこの2つのテーマを入れながら原稿を作成 、通訳、参加の皆さんにコピーを配布した上で話をしました(十分にプルーフできなかったので間違いが結構ありましたが)。

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写真4 2日目の講演

原子力発電の課題、日本と世界

原子力はクリーンエネルギーとして世界中で新たな建設が拡大しつつあります。日本でもそのような動きは見られますが、柏崎では大きな事故にはつながらなかったものの、地震大国のこの国では大きな課題です。一方で日本の優れた技術は他国と比べても明らかであり、米国等との提携も始まっています。すばらしいことです。しかし、世界での、そして日本での全体像を見るとどうか。これが国家のビジョンであり、政策というものです。

最近、原子力についての意見を関係機関誌から求められましたので、紹介します。

 日本復活の鍵「破壊的イノベーション」 リーダーは壮大なビジョンと責任を
 (「原子力と向き合う⑤」、原子力産業新聞 2008年6月19日)

以前にも原子力に関する見解を述べているので、こちらも参考にしてください

ブレアチームの成果発表

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6月27日(金)、トニー・ブレアさんが代表するチームによる報告書、「Breaking the Climate Deadlock」の発表が東京でありました。ブレアさんはG8サミットで初めて気候変動を取り上げ、その後もこの問題については「Gleneagles Process」を立ち上げ、世界のリーダーとして首相退任後も世界的に活発な活動を続けています。以前にもご紹介しましたが、今回はその活動の成果を引っさげて、G8サミットに働きかけようという狙いもあるでしょう。

Dsc_0158blair01写真1 トニー・ブレアさん

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写真2 ブレアさん、Ngubane南アフリカ大使

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写真3 安倍前総理と

6月28、29日にはG8+5の政治家の活動であるGLOBE Internationalが開催される予定で、ここでも基調講演をされるそうです。

27日の夕方から英国大使館でレセプションがあり、多くの英国の議員も参加されました。そこから六本木ヒルズへ移動し、Miliband外務大臣と100名ほどの若者の参加を得たパネルに参加しました。Milibandさんは42歳という期待の星で、ご自身のblogでも積極的に情報発信、広報活動を展開しています。この辺の話題を中心にしたパネルでしたが、時間が1時間とちょっと短くて残念でした。もっとこのような催しを開催したいですね。このパネルの様子は彼のブログで見ることができます。

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写真4 パネルでMilibandさんと司会の枝広さん

シアトルから

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4年前から毎年6月に開催されているPacific Health Summitに参加しています。4年前の最初の会議には出席したのですが、第2・3回は他の所用と調整がつかず欠席しました。

今年のテーマは「Nutrition」ですが、食料価格の高騰もあって「食料価格高騰、MDG(Millennium Development Goals)」というパネルが行われ、私はそれに参加しました。旧友トロント大学のPeter Singerの司会でした。栄養と食料の問題は世界的な課題です。2週間前にローマで行われたFAO会議が不調でしたので難しいところですが、7月の洞爺湖サミットでもアジェンダのひとつになるでしょう。

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写真1 HPI の近藤さん、Sunil Chackoさん

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写真2 私が参加したパネル、私の向かって右がDr. Peter Singer、左がGAINの事務局長 Marc Van Ameringenさん、2月の会議でご一緒しました

このところTICADをはじめ、G8サミット、温暖化、エネルギー、貧困、開発、アフリカ問題などを中心に、どっぷりと浸かっています。頻繁に会う人もいれば(参考12)、新しい人たちとの出会いもあって、いいことだと思います。世界が“フラット”になり、問題も世界的なものとなり、日本にとっても、私たち一人ひとりにとっても、これからの課題は大きなことを実感します。去年以来ですが、WHOの事務局長Margeret Chanさんとも会えました。彼女もなかなかのリーダーシップを発揮しています。

シアトルは水と森のきれいな街で、滞在期間中は天気も良く、すばらしい時間を過ごせました。少し時間が取れたのでMarinersの試合も見に行きました。今年は調子が悪くてダメですね。球場も4分程度の入りでした。イチローも2三振。チームに“勝とう”という気持ちが見れず、つまらない試合でした。でも、イチローはご当地では拍手が一番多いですし、今年もAll Star Gameに出る でしょうね。去年はMVPでしたし。城島は出場せず、残念。やはり、翌日監督交代が発表されました。

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写真3 Marinersのゲーム

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写真4 イチローの打席

沖縄、G8科学担当大臣会議

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6月15日、G8サミットでは初めてのことですが科学技術担当大臣会議が沖縄で開催されました。岸田大臣がホストです。

その前の13・14日の2日間に渡って、非公式のG8+5科学顧問会議が開催され、“Brain Circulation”が話題になりました。EUのErasmusプログラムの拡張版ですね。これからのグローバル時代の課題に対して、将来を担う若い人たちがお互いを知り合うことが大事という認識なのです。

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写真1 米国国務省科学顧問のNina Fedoroffさん

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写真2 中国科学技術担当のWan大臣

大学、大学院、またもっと若いときに、短期で1年程度の相互乗り入れのプログラムが大事だと認識を共有しましたが、特に日本にとっては重要な課題です。ブログで繰り返し述べていますが、今の時代になっても日本の大学は閉鎖的ですし、若者の眼が海外へ向かないことは大きな問題と思います。日本からの海外留学も減ってきているのです。

14日の夕方には沖縄科学技術大学院(OIST)からSteven Chuさんのクリーンエネルギーに関するプレゼンがあり、続いて仲井真知事のレセプション、そして岸田大臣が到着と続きました。

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写真3 岸田大臣、Baughmanさん(OIST)

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写真4 レセプションのショー

Cape Town

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横浜でのTICADが終わり、6月3日午後に成田を出発。シンガポール経由で喜望峰のあるアフリカ最南端のCape Townに来ました。World Economic Forumのアフリカ会議に出席です。今回が18回目ということで、17年前から毎年開催しているのです。すごいことです。

TICAD推進の中心人物の一人でもあるJICA総裁の緒方貞子さんは今回の会議の共同議長の一人。3日間、毎日のようにいくつものパネルに出られ、大活躍でした。本当にご苦労様です。日本のビジネス界からも東京エレクトロン(佐藤社長)、日立、三菱商事、双日など10社程度が参加。また小田野TICAD担当大使も参加され、日本の存在感が見えてとてもよかったです。何ごともビジネスが付いて来なければ成長はありません。アフリカ全体で起こっている紛争の数は減り、経済成長率は5~6%。ここはビジネスチャンスなのです。日本のビジネス界もしっかりして下さいね。

私も2つのパネルに参加し、特にTICADでの成果やG8、MDGへの期待について、エネルギー、食料危機、開発といった切り口から話しをしました。

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写真1 パネルの様子

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写真2 日本からの参加者による会議、緒方さんを中心に

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写真3 左からWEFの土屋さん、JICAの黒川さん、日本医療政策機構の近藤さん

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写真4 日立の八丁地さん、岡田さん

アフリカからの参加者も南アフリカ連邦のMbeki大統領を始めTICADに参加された方が多く、この会議での日本の存在もそれなりに高く、良かったと思います。しかし、なんと言っても緒方さんですね、ここでも。知名度は桁違い、皆さんに尊敬され、しかも発言が実に的を得ていて、本当に「日本の誇り」です。

2日目の午後、天気があまりにもすばらしいので、ちょっと抜け出して喜望峰へ行ってきました。どこもかしこもSanta Monica、Malibuのようなところばかり、まるでCaliforniaです。

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写真5 喜望峰。私の後ろへまっすぐが南極方向。左から日立の岡田さん、八丁地さん

3日間の会議を終えて、Dubai経由でAbu Dhabiへ。波多野大使を訪問した他、政府の大学関係者、医療政策担当者等と会談し、20時間ほどを過ごして帰路につきました。8日の夜、日本に到着。