CSISとの討論: 健康政策と「3.11」以後の日本再建

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今年の初めにご紹介しましたが、米国でも著名なシンクタンクの1つであるCSISと健康政策の共同作業を始めています。

今回は1: 病院の支払い制度; 2: ICTの利用、という2つのテーマです。

2つの報告書の概略が出来たので、その中間報告と外部の専門家をお招きして議論するためにWashington DCにきました。

成田からダレス空港に午前10:40分に到着、そのままCSIS到着。昼食をしながら、今回の「3.11」を受けてCSISが進めている、「日本再建への提言」についての議論をしました。

いやいやテーマは複雑で、議論はつきません。

でも私はこの議論を楽しんでいます。どのような政策が可能か、どのように政策を実現しながら制度改革に結び付けていくのか、医療・健康制度は大問題ですが、なかなか改革は進まないのです。

しかし、どのように「3.11」を、この社会制度改革のきっかけに使うのか、ここが知恵の出しどころと、私は思います。勿論、広い国民の理解を深めていくプロセスが極めて大事ですけど。

高齢社会、慢性疾患、貧困層の増加、停滞する経済、そして日本は破産寸前ですからね。ほとんど時間がないのです。「3.11」の大危機をチャンスと捕まえないと、日本は崩壊ではないでしょうか。

 

 

NBRとのインタヴュー

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「3.11」東北大災害の地震・津波災害、さらにフクシマ事故への日本の対応についての私の意見がNBRに掲載されました。「Moving Forward: Relief Efforts, Health System Reforms, and Japan’s Role in Global Aid」というタイトルです

この中でも、日本の信用低下と風評被害を止めるためにも「独立した、国際的なタスクフォース」の設立を述べています。政治が、早急にアクションを起こすべきです。そして「失敗から学ぶ」、世界とその「教訓を共有しよう」という姿勢こそが大事なのです。

皆さまはこのインターヴューから、何を、どのように感じ取られたでしょうか?

何人か、私の友人のインタビュー (資料1)も掲載されています。素晴らしいことです。日本からの少なくとも英語での対外発信があまりにも少ない、だから何が起こっているのかがわからない、不安だ、というのが一般的な世界の反応ですから。

新しい色々な発信ツールがあります。twitterも半分で良いので英語で出してみましょう。

 

野中郁次郎先生との対話へのお誘い

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University of California (UC) はCalifornia州の10箇所にキャンパスを持つ米国西海岸、いや米国でも屈指の名門大学です。特にこの中でもBerkeley校とLos Angeles校は日本の同窓生も一番多いキャンパスです。

UCLA日本同窓会とUCバークレー日本同窓会・共同幹事による「震災後の日本のイノベーションはどうあるべきか」という「野中郁次郎先生とわたしの対談」に参加しませんか? 7月1日、6:30pmから「東京21c Club」です。

UC同窓会員である必要はありません。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています、
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● 第4回 「Berkeley知の広場」   
震災後の日本のイノベーションはどうあるべきか
対談:
UCバークレー日本同窓会長  野中郁次郎
UCLA日本同窓会長       黒川 清
■ 日時: 2011年7月1日(金曜日) 6:30PM~9:30PM
■ 場所:東京21c Club (新丸ビル10F)
      http://www.tokyo21c-club.com/open/info/access.html
■ 参加費: UCB・UCLA会員 3,000円 (食事付き・飲み物なし)        
UCB・UCLA会員以外 4,000円 (食事付き・飲み物なし)        
セミナー後、野中先生・黒川先生も参加の懇親会有り        
(飲み物は、キャッシュ・オン・デリバリー)
■ スピーチは原則日本語。英語でのパワー・ポイント表示(英語での質問ももちろん可)
■ RSVP(お申し込み締め切り):6月28日までに下記登録フォームにご登録ださい。
http://tinyurl.com/ucevent0701  

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企画の趣旨は以下です。
● 第4回「Berkeley知の広場」をUCLAとBerkeley同窓会の共催でおこないます。
● 私たちは現在、片やUCLAのProfessor of Medicineの経歴の黒川清先生、他方バークレーの Fuji-Xerox Professor of Knowledgeの野中郁次郎に同窓会の会長をお願いしていますが、お二人はともに世界的にも名の知られたイノベーション論の大家です。
● 一方が国家予算を使った科学技術の政策策定に深く関与すれば、他方はR&Dの大宗を握る企業のイノベーションに鋭い目を向けて暗黙知・形式知のスパイラルからなるSECI理論で広く知られています。
● イノベーションなくして震災後の日本の再建はありません。そこで同窓会の事務局は、そうしたお二人に大震災後の日本のイノベーションのあり方について語っていただこうと「Berkeley知の広場」の拡大版を企画しました。
● お二人はすでに現場力の凄さと、リーダーのあり方に問題があることをメディアでも指摘しています。知識社会におけるリーダーシップのあり方では、野中さんのフロネシスというキーワード、黒川さんの「出る杭」は、福島原発の事故をもってより妥当するように見えます。
● お二人には射程を短くした議論もして頂く予定です。会の進め方としては、最初に野中・黒川さんにそれぞれ30分程度、問題提起的なお話をいただき、それぞれがコメントし、さらに参加の皆さんと議論を深めていく形を採りたいと思います(ですが、議論好きの黒川先生ですから、いきなり議論へと展開するかもしれません)。
● 使用言語は日本語です(ですが、参加者の介入によっては英語のモードに変わることもあるかも知れません、、)。
● このセミナーの後には立食ですが食事の用意をし、出席者の懇談ができる時間を設けています。ただし飲み物の代金は含まれていないので、キャッシュアンドキャリーでお願いします。
● セミナーの純益は全額東日本大震災の被災者の義援金に当てられます。

 

Kuala Lumpur -Pacific Science Congress

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 8年前に推挙されて太平洋科学連合Pacific Science Association (PSA)のPresidentを勤め、2007年に沖縄で本会議 Pacific Science Congress (資料1) を、そして2009年にはTahitiで中間会議資料1)を開催させていただきました。これらについてはこのサイトでもご紹介したところです。

日本学術会議にも委員会があり、また国際科学連合(ICSU)にも所属しています。また創立98年目という、歴史ある学会なのです。

今年は、6月14-17日にわたってKuala Lumpur (KL)で本会議が開催され、私も役員(Immediate Past President) ですし、またKeynote講演者の1人にも推薦していただきました。13日からKLへ来ました。

さすがにKeynote Lectureは素晴らしいものが多くて、楽しめます。また、いくつかのセッションも多彩な発表もあり、多くの友人にも会うことが出来て、14-16日という素敵な3日を過ごすことが出来ました。

さすがに活気のある成長している国のエネルギー、また教育、科学技術イノベーション政策にも熱心です。政府の応援もあって多くの地元の研究者の参加もあってとても良い会議でした。

私のKeynoteは「Age of Uncertainty: Have We Become Wiser?」というタイトルで、出来るだけ刺激的に物語を進めました。勿論、今回の東日本津波への支援、またフクシマについて皆さんの懸念についてもはじめにコメントしました。

講演については、皆さん、とても面白かったといっていただき、いくつもの質問が出ました。翌日にはテレビで25分ほど、ライブのインタビューを受けました。長崎大学のGregさんがblogで、私のKeynoteで「会場のテンションが上がりました。」と書いて下さり、うれしいです。

日本学術会議のHatai Medal塚本教授資料1)が太平洋のウナギの生まれる場所と移動についての研究で受賞されました。奥様もご一緒でした。おめでとうございます。

Guam大学のDr Underwood学長 (左下の写真)は1993-2003下院議員を勤めた方です。広い太平洋の諸島群についての教育や医療問題など、また、米国との独特な関係など、なかなか面白い視点で議論しました。私にぜひGuamに、とお誘いを受けました。1年以内に行ってみたいと思います。多くの友人、また新しい友人や、若い研究者にお会いするのは学会の楽しさです。

With underwood Group photo 

 また、先日ご紹介したMalaysia首相直属のGlobal Science and Innovation Advisory Council (GSIAC) について、首相のChief Science AdvisorのZakri博士とそのスタッフとの1時間ほどの会議も設けていただけました。なかなかのメンバー であり、私もその一人であること、楽しみです。

次回の中間会議は2年後にUniversity of South Pacific (Fiji) で開催の予定です。皆さんも参加を計画してみませんか?

 

情報の透明性は信用の基盤: 政治は何をしているのか

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フクシマ原発事故以来、このカラムで情報開示と透明性の担保が、政府にしろ、企業にしろ、信用の基盤であること、今回のフクシマではこれは特に初期に致命的に欠けていたことを指摘してきました。

この信頼の失墜が、世界に明らかになっているのがグローバル時代の怖さです。「風評被害」もここに根っこがあるのです。

そして、その対策として「この一手」 (資料1) として、「独立」した、「国際メンバー」により、「委員会Commission/Task Force」の立ち上げの重要性を指摘してきました。

一部の国会議員中にもこのような動きを認識しておられる方々も多い、あるいは増えているようです。

この大事なときに、国内では「コップの中の嵐」の政争の様相となり、世界からは日本は本当にだめなのだね、という認識が広がっているでしょう。

IAEAの視察団の報告も出ましたが、透明性と発表の遅れが、致命的であることを指摘しています。当然ですね。

このような日本のあり方は問題があるとして、国際的な場では以前から認識されていたようですが、さすがに国内問題との認識をしていたようです。

しかし、今回のフクシマの対応と原因調査で、これらの件が指摘されていたこと、その対応が不十分であったことが、少しずつではありますが、知れてきました。

最近では、以下のようなコメントが出ています。関係者の間では知られていたことなのでしょう。

1.「元IAEA事務局次長のコメント」

2. 「天野事務局長の信用問題」

3.日本政府の弱点の指摘 などです。

信用回復の「一手」を始めないと、何をしても、落ちた信用の回復には時間がかかるものです。

 

英国の主席科学顧問のGRIPSでの講演

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英国の科学顧問については、ここでも何回か書きました資料1)。英国政府に対して科学者の代表として政策の立案等についても大きな責任を持っているし、また科学者のコミュニテイーからもとても信頼される人たちです。

現在のこのポストはSir John Beddingtonさんが、3年前からと思いますが務めています。素晴らしい方です。彼の前任のSir David Kingと、その前のRobert May(その後President of the Royal Societyに、Lord May of Oxfordです)とは特に仲が良いというか、信頼する仲で気が合うのです。

この立場は英国政府の中でも信頼の高い地位資料1)ですし、それだけの方が就任されています。これが英国の健全な科学者社会と政策決定者、特に首相(その距離感は首相によって少しずつ違います、Tony Blairは特に熱心で毎週のように主席科学顧問と会っていたそうです、、これらの方をどう使うか、これもトップの見識なのですね結局は、、)の間に見て取れます。

Beddingtonさんの来日の機会に、GRIPSで講演会があり、池上彰さんの司会です。「3.11とフクシマ」のテーマが中心で、大勢の方が参加され、会場との質疑、twitterからの質問を受けたり、なかなか良い会でした。

私もBeddingtonさんのプレゼンの後、最初に質問させてもらいました。これらは、Youtube (part 1)、(part 2) で見ることができますし、またまとめたもの資料1)も読むことが出来ます。

彼のプレゼンは良かったですね、政治的なことには注意に気を使いながら発言していることも良くわかります。彼の立場について、どういう立ち位置で政府と関わっていくのか、などなどよく理解していただけると嬉しいです。日本であったらこのような立場の方がどんな発言、行動をするか想像してみるのも一興です。

私の質問はBeddingtonさんのプレゼン(これはぜひ聞いてくださいね、、)のすぐ後、司会の池上さんの質問に続いて出てきます。

フクシマは世界的な問題であり、ちょうどIAEAの査察の入っていることころであり、その結果の発表を待っているというタイミングでの講演会でした。

会場からもいい質問が出ていました。

 

「オープンエヂュケーション」の飯吉さんと石倉さんと

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いい天気に恵まれ、31日朝8時から衆議院会館の会議室で民主党、自民党の若手議員の集まりで、「3.11」後の日本の状況に対する「今やること、この一手」 (資料1)について話をしました。活発な議論がありましたが、菅総理の不信任案を出すとか、なんとなくざわざわしていました。

私もこの国のありようが心配でいろいろできるだけのことはしようと考えているところです。

10時から厚生労働省で私が主催している会議に出席、昼は私だけが遅れて石倉洋子さん(写真もここにあります)、飯吉透さん (資料1)と「オープンエヂュケーション」 、日本の教育、世界の教育の動向などについて、明るい日差しの中の快適な庭を前にして楽しい時間をすごしました。なにか新しい企画、動きを起こしたいものです。石倉さんも新しい慶応での仕事に意欲的に取り組んでいるようです。

その後は、私の関係しているある教育機関の理事会に出席、どこでも教育改革と既存勢力との間の関係は大変です。

夕方、いったん帰宅し、羽田へ向かい、夜半すぎ羽田を出発、パリへ向かいました。偶然ですが、ダボス会議の日本プログラム担当の土屋君と一緒になりました。行き先は2人ともGenevaにあるWorld Economic Forum の本部です。

忙しい一日でしたが、楽しいランチの時間もあって、気分よく、6月1日午前0時35分発パリ行き夜行便に乗って出発。

Malaysia首相が「科学とイノベーションのグローバル顧問団」を結成

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写真はここ

世界中が科学、そしてイノベーション「新しい社会価値の創造」を政策の中枢にすえています。

教育に重点をおき、最近では科学研究などに強くコミットしている、成長が著しくなりつつあるMalaysiaも例外ではありません。

この国の首相Dato' Sri Mohd Najibがこのほど「GLOBAL SCIENCE AND INNOVATION ADVISORY COUNCIL」の発足を、5月17日にNew York Cityを訪れた機会を捉えて発表しました。

今回の首相就任とともに科学顧問に就任したZakriさん。東京にある国連大学とその高等研究所(IAS)所長を務めた長い間の友人です。去年、東京にこられたときに応援を依頼されていましたが、今回の発表になったという経過です。今回はNew York Academy of Sciences (資料1)が中心になって活動することになります。

以下の記事があります。
1. BBC                                                             2. New Strait Times

この発表を見ると、Jeffrey Sachs, Rita Colwellさんなど、何人かのメンバーはよく知った方達のようです。このサイトでも何回が出てくると思います。楽しみです。

6月中旬にKuala Lumpurへ講演に行く予定ですので、Zakriさんの都合と調整がつくといいな、と考えています。

このようなお手伝いが出来ることは光栄です。

 

「3.11」からの日本の信用失墜へすることは: 日本記者クラブで講演

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日本記者クラブ ではいろいろなゲストをお迎えして講演会を開催しています。最近では米国議会の大物、ダニエルイノウエ議員が来日されましたが、この方の講演も聞くことが出来ます。

私ですが、5月20日にお招きを受け、前日に民主党議員の集まり(これはメデイアには公開でしたので、、)で配布した資料をお渡しして講演しました。ここに記載してある講演の内容はここでは簡単にまとめてあります。

この講演はOn-lineで公開 されるということで、控え目に、出来るだけおとなしく話をしました。

質疑応答になると、やはりもともとはほとんどが記者さんたちですし、お互いに知らないわけでもないし、皆さんも私の背景をよくご存知の方も多いので、質問もそのような背景を反映したものが多かったと思います。

でも、それなりに私もきついことを言いますので、まあこの辺はビデオを見てください。

また、別にこのとき参加していた小岩井さんもこの講演の要旨をScience Portalに掲載してくれましたので、こちらも紹介します。こちらでは、私が報道機関も批判の対象にしていることも書いてくれています。これはほかでも繰り返し発信資料1)していることですけどね、、。

「時代刺激人(シゲキビト)」を自称するジャーナリスト牧野さんも参加でしたが(いろいろよくお会いするのですよね、、)、彼のblogにも「G8サミットで原発事故不信の解消を日本が世界に表明する最後チャンス」というタイトルで書いていただきました。

国会議員の中にも私の有用な提案への動きがあります。健全な立法府と行政府の関係構築にも良い機会でしょう。

 

日本の将来へ向けて、それはこの一手から

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「3.11」は、その衝撃の大きさ、またFukushimaの国際社会での重要性からも、世界の注目を一身に集めました。

でもそれは、世界ではせいぜいはじめの1-2週間。日本の強さと弱さをすっかり世界に見せてしまったことは、このポストでも何回か (資料1)、また新聞など資料1)でも指摘しているところです。

海外のニュースはFukushimaをはじめほとんどマイナーです。世界のニュースをフォローすれば政府が何を言っても「言い訳」としか取られていないのは、明白です。

では、どうしたらこの国家全体の信頼を回復できるだろうか、ここが大事です。国内メデイアなどで見るところでは、この点での日本の「リーダー」の意見、発言がほとんど見られません。

国家の信頼がこの危機的状況では、過去の事例に学ぶのもいいでしょう。ですが、要は「リーダーたる人」たちの識見と決断、何をするべきか、なのです。ヘンなプライドなどはどうでもいいことなのです。

その基本はどれだけ国民のことを考えているのか、この一点に尽きるのです。政府にしても、企業にしても同じことです。

それは、Fukushima原発については、政府とは完全に「独立」した「国際的」タスクフォースを、政府、あるいは議会が発足させることです。それをしない限り、日本の信頼は回復へ向くことは始まらない、と断言できます。

これに関しては、Obama大統領に対する3月25日付けのNatural Resources Defense Councilなどの文書でも見てとれます。

「風評被害」にしても、このステップからでないと、なかなか信用回復は始まらないでしょう。英国の1886年に始まったBSEと政府の信用失墜の回復に20年以上もかかっていることからも、学ぶべきことは多いのです。「独立」した、「外」(国際的信頼のある)の特別委員会です。そして、すばやい情報の全面公開です、これがかなり遅れてしまっています。

最近、上のような趣旨をこの図とともに、民主党の議員さんが開いてくださった会議で(メデイアに公開の会)でお話しました。同様の考えは、かなりの国会議員も意識しておられます。

世界が注目しているのです、日本は’Fukushima’ を「事故の教訓を世界の共通財産に」する気がないのか、と。