大災害の後に現れた、科学者・技術者たちの対応と「社会的責任SSR」

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大災害に対して私達科学者、技術者たちもいろいろな状況に置かれました。いろいろな専門家がテレビなどでコメントしました。皆さん何を感じたでしょうか?それぞれの専門家として。これで多くの人が納得するような説明になっているとお考えでしたか?

勿論、政府の記者会見、東電や保安員の記者会見はあまりに「拙劣」なので、これはひどいと思うことが多かったと思います。「科学者」といってもそれ以上のコメントが出来ない状況もあったでしょう。

基本的には、実際のデータを何も見せずに、解釈や根拠を示さずに、結論だけを、しかも多くの場合、明確に判りやすく言わなかった、いえない理由があったからでしょう、と多くの方たちが感じたでしょう。たぶん、それは本当でしょうね。当事者としては、不確実である、直接確認していないとか、言い逃れと思われても致し方ない対応が続きます。

この情報の時代、後出しのデータが出てくれば、信用はドンドン失われるのです。

主要メデイアも、自分達の今回の初動対応を反省し、将来への特集を出し始めましたね、はじめは皆横並びで、ひどかったですけどね。日経新聞朝刊では、「新しい日本へ」シリーズ第1部「危機からの再出発」が始まりました。なかなかよいシリーズになりそうです。

その第2回が「「井の中」の技術立国」で、私のコメントも引用されています。このカラムでも以前から繰り返し指摘し、使っている「知の鎖国」 資料1(2005)資料2(2005)資料3(2006)、 資料4(2006)資料5(2009)資料6(2009)、、資料7(2010) のコンセプトも引用されています。

科学者も技術者も、日本社会ばかりでなく、世界への対応によって、世界の科学者の間での力量(研究ばかりが科学者の責任ではないのです)が評価されることをしっかり認識して欲しいものです。

ちょっと我田引水ですが、日本学術会議で吉川会長の下で、皆さんと作成した「日本の計画Japan Perspective」は、時代の世界の動きを見据えて、日本の科学者と社会との関わりについて、課題の本質を「タテ割り」ではなく、「横グシ」を刺す形で、明らかに指摘した報告書 だと思います。

科学者も技術者も、自分達の強さと弱さをしっかり認識し、時代の変化と要請、そして社会のあり方への対応する意識をしっかり認識し、行動することが大事です。

グローバル世界にあっての、科学者の社会的責任 SSR 「Scientists’ -as a community- Social Responsibility」です。

 

TED -5: サーチで出るサイトは誰が決めるか?iPad本の可能性

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タイトルは面白そうでしょう?いかにもTEDらしい話です。今年、私が楽しんだプレゼンからです。

あなたがGoogleでサーチするとき、どんなサイトが出てくるでしょうか?その問題は?その話です。

今回の大災害、原発についての報道、広報にも通じることです。Eli Pariser、9分のプレゼンです。

iPadを使うと、どんな本を作れる可能性があるでしょうか?Mike Mata、4分のプレゼンです。

楽しんでください。

Joi ItoくんがMIT Media Lab所長に:日本を変えよう!

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世界的の若者の憧れの的の1つ、世界でも超有名なMIT。そこの中でもよく知られたMedia Lab の次の所長に、日本よりは世界中でよく知られた伊藤穣一(「Joi」と呼ばれる44歳)くん(資料1)が決まりました。

この20年、彼の発信力はすごいもので、私のサイトの「Blogroll」にも出ていますが、彼のblogでもMIT就任への意気込みが伺えます。

伊藤くんとはこの10年以来のお付き合い、このサイトが出来た頃から、彼の名前が時々出てくると思います。私が小泉総理の頃から主張しはじめた「大学の大相撲化」を日本のメデイアで紹介したのは日経新聞英語で読まれるメデイアで最初に紹介 したのは彼だと思います。

彼も、私も、私の多くの友人も、どちらかといえば日本社会の「外」のキャリアを歩いた人たちなのです。今回のことでも、ちょっとお手伝い。

「3.11」以来、日本の強さと弱さ資料1)が浮き彫りになったように思います。つまり一言で言えば、「「タテ社会」の弱さ、終身雇用、年功序列の男性社会ヒエラルキー」の弱点です。このサイトでも繰り返し、繰り返し指摘してきたテーマです。

これらの「日本の常識」を破るような出来事が次々と出てきていますね、世界ではそんなにおかしなことではないのですが。うれしいことです。日本が変わるには、やはり「外」からの力が必要なのでしょうか。

Joiは若いときから何でも先生に質問するヘンな生徒、Chicago大2年で中退、学士もない、修士も、博士もない、日本的にはとんでもない「変人」。でも実力は世界では誰でも認めているところ。その彼を招聘するMITのすごさ。

ところで、このニュース、日本の主要メデイアではどこかで取り上げていました?何を言いたくて?

そういえばMicrosoftのBill Gatesも、FaceBookのMark Zuckerberg も、Harvard大学中退、AppleのSteve Jobsは貧乏で中退。稀有な例ですけどね。

大学ではしっかり勉強するとして、「大学4年で就職が内定しないと、落ちこぼれ、、」、なんて日本だけの常識なのです。

 

自分たちで出来る「消エネ」をまず実践する; 新しい動きをおこそう

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福島原発以来、電力供給、計画停電などで見るように、エネルギーは社会すべてを巻き込む大事件です。エネルギー政策は国家の基盤です。原子力以上に、「省エネ」が大事です。

今回の事件をきっかけに、通常のメデイア、書物のほかにもFaceBook、blogなどいろいろな情報、アイデア、知恵、市井の知恵、技術者たちのいろいろな提案などがあります。今までの、電力にしても「供給側の論理」で進んできた社会が、CO2と気候変動の課題、石油の価格高騰もあり、さらによりフラットな「オープン、受益者側」対応可能な社会へ変換してきたところが「ミソ」、知恵のしぼりどころです。

今の状況で、すぐ出来る、簡単なアイデアがいくつも出てきます。米倉誠一郎さんのFBからHidefumi Nishigaさんの提案として、こんなのがありました。
「家庭での電力削減の第一歩、30A(アンペア)を超える契約をしている人は、30A契約に戻そう。ピーク電力を30A超えて使えなくなる。
まず、配電盤を見て、何アンペアになっているか確かめ、40A、50A、60Aだったら、早速電力会社に30Aにしたいと申し込もう。
30A契約のイノベーションを起こそう! ?
理由と効果; 居間にエアコン1台くらいなら30A契約で大丈夫(我が家)。ピークで40A以上使っている家庭が30Aにすると、ブレーカーが落ちないように気を使います。ピークで平均10A、1kW下げる家庭が100万世帯増えれば、原発一基分です。」

これで、それぞれが自分たちで電力の使い方を工夫できる。

些細なことでも、実行してみることです。[チリも積もれば山となる」、「継続はちから」など、世界共通のことわざですね。

このような「省エネ」は世界共通の問題ですから、対策への知恵、選択肢は世界でも通用することです。いいアイデイアはせめて半分ぐらいは英語で発信し、また探して欲しいものです。他の国で、都市で、社会で、すでに行われている「省エネ」政策の現状、そして同じような知恵が実践されているところもいくつもあるのです。皆さんが、世界との交流の輪を広げることが可能になっているのです。そのような広がりこそが、社会を、世界を動かす原動力になりうるのです。日本語、英語用の「App」も作れるかも。

この4ヶ月で起こっている変化、Tunisia, Egypt, Bahrain, Syria, Libyaなどなど、日本を変えるきっかけがきているのです。これを逃してはいけません。
まずあなたの家の配電盤を見て見ましょう。

 

TED -4; Google Carなど技術のすごさ

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話には聞いていましたがGoogleがドライバーレスで安全な自動車を作ったということです。その話が今年のTEDでプレゼン(4分)されました。これでSan Francisco–Los Angelesも走ったようです。

この車が2台、TED会場にデモに出ているのです。これは「ぜひ」ということで試乗しました。狭いコース取りにセットした狭いコースを50-60Km/h程度の早いスピードで走るのです。その様子はここにお見せします。2台ともトヨタのプリウスでした。

もう1つの話はメジャーリーグの大打者ルーゲーリックがかかったALSという、だんだん筋肉が使えなくなる病気にかかったグラフィテイ絵描きさんと彼の友人達の話です。安い寄せ集め機器システムで、彼の絵描きの仕事を可能にしたプロジェクトです。

「ハダカの日本」、Cambridge Gazette、Harvardから最近の便り

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このカラムで何度か紹介しているクリハラジュン(栗原潤)資料1, )さん、Harvard大学Kennedy SchoolのSenior fellowです。博識、何ヶ国語も理解し(たぶん「話す」もする)、本も資料も、その読み方もすごいのです。

The Cambridge Gazetteという彼の月報 を送って頂いています。毎月、これを読むのを楽しみにしています。彼の感性と知力が感じられるからです。彼が帰国するときに、時間を作ってもらって、お会いできるのはとても楽しみなのです。

今回の東日本大震災、津波のすさまじさ、本当に皆さんが悲しみを超えてがんばっています。でも原発事故への対応には明らかにいくつもの人的要因が見え見えです。何が背景にあるのかはよく理解出来ないとしても、何かヘンだと皆さんも感じ取っておられるでしょう。ウェブの威力はたいしたもので、いろいろな情報や、見方を知る、比べる、自分で選んで見ることが出来ます。

クリハラさんは海外で「個人の資格」で何年も活動しているからこそ、この10数年もの変わり行く日本の状況をよく感じ取れるのです。だからこそ、最近のCambridge Gazette のクリハラさんの意見は、母国日本社会のありかたにかなり手厳しくなっています。彼の愛国心から来る、日本への心の叫び、呼びかけともいえます。

昨日配信のCambridge Gazetteでは、今回の原発対応と危機管理、そして日本の「知的レベル」の高い人、社会的により大きな責任のある立場の方たちについての、あちらからの忌憚のない見方にも触れています。私も彼には同感するところが多いのです。

じっくり考えてみてください、いま、私たち一人ひとりのすべきこと、出来ることを。

TED -2: 「コトバの誕生」

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私が、TED2011で特にInspireされた1つに、MITのDeb Royの「The Birth of a Word」です。

発想の奇抜さとスケールの大きさ、そして解析の面白さと、その展開の広がり。これが新しい分野を開拓していこうとする科学者の姿勢と思います。

原発、そして地震と津波3週間目に入った大変な時ですが。

忙しいあなた、20分をください。

福島の原発事故はどうなっているのか?大前研一さんの解説

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今回の地震と津波、数万人とも思われる命が一瞬のうちに失われ、一瞬のうちに町ごと消えてしまいました。多くの映像は津波の恐ろしさ、自然の力の恐ろしさをまざまざと見せ付けています。

現場の方々は黙々と、涙をこらえながら、お互いにできるだけのことをしている姿が心を揺さぶります。

一方で原発での対応は、はじめからきわめて不明瞭、複雑怪奇の様相を見せています。私たちの殆どは枝野官房長官の、東電の、そしてテレビ、新聞などの報道の中からうかがうばかりでした。

かなりの部分で人為的側面、一言で言えば危機管理対応の不手際が目立ちます。専門家のコメントもテレビなどを見ている限りでは、わかりにくいところが多いですね。

ここで、元来は原子力の研究者であり、日本の原子力にもかかわった経験もある大前研一さん が、早くからビデオで、わかりやすい、遠慮のない意見を3回にわたって出しています。

1.3月13日 (

2.3月19日 

3.3月27日  

さすがMIT博士、日立製作所で原子力の研究と現場に、さらにMcKinseyで活躍した専門家らしく、素晴らしい企画と思います。大前さんの原子力に対する卓越した科学面、技術面の知識と、今回の事件の解析、誰にも遠慮しない、しかもとてもわかりやすい話し方、ぜひ皆さんにも見ていただきたいです。

これらのビデオの見られた回数から、相当多くの方がたずねていることがわかります。このような視点から、皆が力を合わせてこの65年前の大戦争敗戦の終わりの悲惨な状況とも比較できるような国難、これを乗り越える知恵を、一緒に考え、行動に移すことが大事と思います。

この自然大災害と人災、この20年、「変われない、変われない」、といっていた日本が新しい将来へ向けて「新しい日本」へ大転換のチャンスとすることこそが、今回の災害で亡くなった方達へ私たちができる一番大事なことと思います。

大前さん、ありがとう。Blog もあります。

 

TED2011から -1

TED2011に参加 してきました。現場での感じとか、中身はなかなか言葉では伝えられないところがあります。

でも、TED  のウェブサイトでいろいろ検索できますし、プログラムはいうまでもないことですが、写真、twitter(#TED2011,#TED)もいろいろ見ることができますし、素晴らしいプレゼンのビデオも順次Uploadされるので、これらを見ることが出来るのはとても素敵なことです。ぜひ、時々このサイトを訪れ、楽しんでください。

今回のプログラムの中でも、「いくつか選べ」といわれれば、個人的な好みですが、私が特によかったと思ったのが2つ出ているので紹介します。現在6つほどUpload (ビデオの横に「filmed March 2011」というサインのあるものです) されています。

ウェブで学ぶ」 でも紹介されているいろいろなサイトの中でも、私が特に注目していたのがSalman Khan のKhan Academy でした。彼の哲学とその内容が素晴らしいのです。

そのSalmon Khanの「ものがたり」のプレゼン です。本当に感動的に素晴らしかったです。この内容も、利用もドンドン広がっているようですし、多様な評価も取り入れています。

もう1人は、今年のTED Prize受賞者、street artistといわれるJRさんの「ものがたり」のプレゼンです。スケール感が大きいし、楽しめるでしょう?

他には、最近の中東の出来事についてのGoogleのW GhonimとAl JazeeraのW Khanfarの2つのプレゼン、そしてDr Atalaの再生医療(3D印刷技術を使っている)、Bill Gatesの教育についての話を見ることができます。

W Ghonim 
W Khanfar 
A Atala 
Bill Gates

皆さんのお好み、評価はいかがでしょうか。楽しんでください。

 

San Diegoから、第1回「Cell Society」で基調講演

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2月17日に成田発、San Francisco経由でSan Diegoに到着。「Cell Society」 に参加、ここで基調講演をするのです。La Jollaにある会場のEstancia Hotel にチェックイン、なかなか快適なホテルです。

何しろ天気が悪い、寒い、しかも雨、という状況。南Californiaで、こんな天気は珍しいですが、致し方ないですね。2日目の午後だけ晴れでした、、。

この会の趣旨は、成人Stem Cellの臨床の現況、というテーマに絞って議論する会議なので、基礎研究的なものよりは、圧倒的にどんなことが、どんな分野でなされているかについて、審査当局とのやり取りも含めた、明確な目的を持った会です。普段では私の学会活動でもお会いしたこともないような方々の発表も多いので、新しい現場感が為になりました。

いろいろな分野での知見を見ると、この成人「Stem Cell」の臨床の展開の可能性がいろいろ見えてきます。特に整形外科的、美容整形的な分野では、大きな可能性が見えます、何しろ高齢社会という枠組みでは、通常の医療を超えたニーズが大きいでしょう。ローカルニュースはこちら

そのような大きな視点で考えて見ると、私の基調講演は「Watson」(資料1,)(石倉洋子さんもWatsonについて書いていましたね、、)についても触れたり、とても適切だった様に思いました。参加の皆さんから、素晴らしい話だったよ、と何度も言われました。うれしいことです。

さらに、このような会議そのものが、20世紀の医学の進歩を踏まえてみても、とてもユニークな位置にあり、まったく違った視点と枠組みの可能性を与えているのではないかと、強く思いました。また別の機会に話してみようと思います。

夜は9時半から、UCSDなどにいる日本の若者たちとCONNECT の方達と、ホテルのバーでワインを楽しみながら、夜中近くまで歓談。写真はこちら)。元気な日本からの若い人たちと意見を交換するのはいいものです。広い世界で活躍して欲しいし、とても楽しみです。

またいろいろ考えてみることが増えました。