印韓両国の関係、一層密接に

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インドは10億の人口を抱え、今後何十年に渡る経済成長が見込まれる国ですがそのインドにおける日本企業のプレゼンスが低いことについては何度もこのサイトで強調してきました (資料1)。

アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電の受注に韓国が成功したことについて書いた5本の一連のカラムからもお分かりのように、韓国のビジネスセクター、サムソン、LG,ヒュンダイ等々、は「世界進出(Go Global)」を極めて積極的に推進しています。

ここ数日間に報道されたこの関係のもう1つの衝撃的なニュース (資料1)、にインド政府がイミョンバク韓国大統領を1月26日のRepublic Day(共和国記念日)に主賓として招待したことがあります。Republic Dayは8月15日のIndependence Day (英国植民地からの独立記念日)と並ぶインドの二大祝日で、イミョンバク大統領がアジアの首脳として初めてこの栄誉に預かりました。去年はフランスのサルコジ大統領がこの招待を受けました。もっとも、離婚後で新しいガールフレンドを同伴してインド人の顰蹙を買っていましたが、、。

韓国勝利「その2」の中で書きましたが、私が懸念しているのは、日本がグローバル時代の世界を相手にして戦略的な視点から積極的に行動する力が十分でないように感じられることです。

1月20日の報道ではインドが韓国との関係強化に積極的な理由が説明されていました。原子力技術がその理由の1つに挙げられていることは言うまでもありませんが。

イミョンバク大統領がこのように一連の積極的なキャンペーンを繰り広げている背景には今年後半に予定されている韓国でのG20に向けて、特にこの時期に自国をアピールしようという狙いがあります。日本でも今月のWorld Economic Forum(世界経済フォーラム)、6月のG8サミット、さらに11月のAPECでは主催国、といくつも大きな国際会議が開催されますが、政府は果たして日本のリーダーシップを世界に印象づけるような試みをしているでしょうか?

世界の動向をしっかりと見聞きし、そこから教訓を学び取り、「ビジョン」及びビジョン実現のための戦略をしっかりと立てることーこのことを皆さんに強く望みたいと思います。

UAE原子力発電は韓国の勝ち-その5; 積極的な大学交流も

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この1月、このサイトで4回にわたってAbu Dhabi での韓国原子力の競争力にフォーカスして伝えましたが、その理由はここから学ぶことが多く読み取れるからです。

ところで、ここには目標に向けた戦略的なアプローチの大事さ、相手のニーズを十分に汲み取ることの大事さがあります。そして、決断とスピードですね。

このシリーズ「その2」で書いてあるように、原子力関連の研究協力も、人材育成も、韓国の提案の大事な部分でした。その約束の研究協力については、すでに提携交渉が進んでいます。KAIST資料1)、とKUSTARが原子力をはじめとした科学技術の教育、研究で、包括的な協力関係を結びました

このKAISTは、40年の歴史がありますが、21世紀に入ってから、グローバル時代にふさわしい競争力を急速につけています。Nobel受賞の物理学者Laughlinさん (資料1)、をStanford大学から学長に招聘、2006年に、その後任をMITからSuh、Nam Pyo教授 (資料1)、を招聘、メキメキと変わってきています。もちろん授業は英語です。

急速に変化する世界の動きを見ていれば、大変革時代にはこのような思い切った人事も必要です。学長に女性を招聘する大学(Cambridge、Princeton、 Harvard、 MIT、 Univ Pennsylvania、Brown等々)も多く出ています。残念ながら、日本の大学では想像もつかないことですね。グローバル世界で競争する人材を育成しているのです。韓国からの海外へ出て行く留学生の数も、やる気も、なかなかのものです。

このようなことだけを見ても日本の内向き加減は際立っていますね、このサイトでも繰り返し指摘しているところですが。大学 (グレン フクシマさんの投稿です、、、)ばかりでなく、大学の先生たちも、しっかりしてください。学生は将来の人材ですよ、先生たちが内向きでは、どうしようもないのです。

日本だけがデフレ、民主党政権の成長戦略、そしてあなたの考えは?

国内経済はデフレ一色、すでにデフレスパイラルに入りつつあります。これは気分の問題、政策の問題とかいろいろ意見はありますが、OECDで日本だけがデフレなのです。なぜでしょう。困ったものです。

民主党政権が、ようやく成長戦略を出しましたが、何か具体的にはっきりしないですね。これについてはいろいろ批判はあります。

週刊現代の1月23日号(pp.174-177)にも「この「坂の上の曇り」が晴れる日は来るのか」というタイトル、サブタイトル「デフレ日本経済、正しい考え方」という記事が出ています。私のコメントが2度引用されています、皆さんはいかがお考えですか?

女性の活躍はまだまだ

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前回は、国際化に際しての日本企業に内在する「女性への偏見?恐れ?」 があることに言及しました。でも、これは日本では一般的なことで、私もこのサイトでもしばしば発言しているところです。サイト内で「女性」、「男女」、「男女共同」などで「サーチ」してみてください。

これは、男性中心のタテ社会からの変化を、男性、特に社会の上のほうの方々が精神的に抵抗することも理由のひとつでしょう。女性と比べられるのに自信がないのでしょうか?

しかし、経済、購買力の50%以上は女性が担っているのです。しかも日本の人口減といいますが、高齢者とともに、女性の社会進出を促進しない手はありません。これで経済がますます内向き、成長しない、というのは偏見です。キャシー松井さん「Womanomics」と、女性の社会進出と経済成長の関係を分析しています。あくまでも大事なのは、社会制度改革、つまり社会イノベーションです。

また、男性と女性は、基本的にものの見方、価値感もちがうのです。どんな世界になるか、男性中心とは確かに違った社会へと変化 していくでしょう。これは世界の趨勢で、一概に悪いとはいえません。よい例はたくさんあるのです。

大企業の女性トップはだんだん増えてきました。Pepsiは K. Nooyiさん 、Xerox は大転換を指揮したMs Mulcahyさん が退任、会長になり、後任のCEOも Ms U Burns とまた女性、Avonなどなどです。みな好調のようです。中東でも女性の進出が進んでいきますね。

ところで新年早々、アブダビの原子力での韓国の勝利について4回書きましたが、本命フランスの大手Arevaの社長も Ann Leuvergeon (資料1)、女性です。

衆議院選挙で民主と勝利で女性議員数は増えましたが、まだまだ全議員の20%にもいかないのではないでしょうか。

草食系男性と、活躍できる女性の活躍しにくい国、日本はどこへ行くのでしょう。

野村證券とリーマン: 「外」から日本を見る目、「自分」を感じとるセンス

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いまさらながらの 2008年9月の 「リーマンショックLehman shock」以来、世界経済は大変です。いかにWall Streetに集まった「秀才の貪欲」がひどいことになるのか、この1年ほどは「資本主義」の本質論が出始めているのは結構なことです。

その頃です。皆さんも覚えていると思いますが、野村證券がリーマンのアジアと欧州の事業を買い取ったというニュースが流れました。野村も思い切ったことを、しかし、これは野村が世界に展開するにはよい選択という趣旨の報道でした。その通りです。

しかし、すぐに私が感じたことは、野村がこのあたらしい「日本人」でない社員たちを、どう扱えるのか、でした。経営陣にそんな腕力があるのかな、でした。金融業界は、製造業とは、またちょっと違いますしね。頭脳と判断が大きく評価され、そこに「俸給」の価値があるわけですから。

やはりね、という記事があります。去年の夏の「Wall Street Journal」の記事です。英語ですが、がんばって読んでください。

給与の違い等々をどうするのかは、気にはなっていましたが、この記事では女性差別ではないですか。このようなことが「おかしい」と、日本では認識されていないのかも知れません、これは日本の企業では普通だ、と思っている方々も多いでしょうけど、、。海外でこのように報道されているところを見ると、野村證券でこうなら、銀行はもっともっと保守的、大企業も同じだと。「グロ-バル企業などと口では言っても実態は、とても、、」、これが「外」から見た日本ということでしょう。

このような一つ一つの、一見すると社内の都合と考えてしまいがちな小さなことが、実はとても大きな企業の信用問題になり、広がって、国力が落ちていくのです。恐ろしいことです。

だからグローバル世界はいやだ?だから鎖国したい?まさか、そんなことを本気でできると思っているのですか?国の生命線であるエネルギーも食料も、大きく海外に依存しているのに?引きこもり国家ですか? 

アラブ首長国、原子力発電は韓国の勝ち-その4

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今年1月に入ってこの報告シリーズを3回出しました。この背景と、これからの成長産業「クリーンエネルギー」を日本がどのように推進して行くのか、大いに参考になることが多いのでわざわざ書いているのです。

その第4報ですが、これは相手がどのような要望を提示していたのか、どのような点で韓国が評価されたのか、公開された資料、報道ですが、参考になると思います。「そんなことはこっちも知っていたよ」、「きれいごとばかりです」などといっているようでは、単なる負けたものの恨み節です。これでは、また負けますね。

この興味ある資料は英語ですが、読んでください。

謙虚に学ぶ姿勢、負けたときこそ学ぶ、勝った時こそ「勝って兜の緒を締めよ」、これが普遍的な知恵であり、大事なのです。これらの公表されたものから何を読み取るか、今までの3報に加えて何を学ぶのか、さらにどう対応するのか、情報を取るのか、人脈を作っていくのか、このあたりの日本の認識とあちらの認識のギャップをできるだけ埋める努力も大事です。UAEに限ったことではありませんが。

何しろ、UAEと石油契約の改定が2012年(UAEの石油輸出量の50%は日本向けで、これは日本の石油総輸入量の25%に相当し、従ってUAEとの関係は非常に重要)ですが、エネルギー獲得競争が激しくなるなか、競争相手はすでに、しっかりと動いているに違いありません。「油断大敵」、「おごる平家は久しからず」です。国民のためにも、関係者諸氏、しっかりお願いします。

石倉さんの「グローバル アジェンダ セミナー」

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このサイトに来てくださる方の多くは石倉洋子さんのことをご存知と思います。私と「世界級キャリアの作り方」という本も出ました。もっとも、彼女がもっぱらリードしてまとめてくれた本ですが。最近も「戦略シフト」という刺激的な本を出版しました。

私のこのサイトでもしばしば紹介していますし、このサイトも彼女の「blog」にリンクしています。時々たずねてください。とても刺激的だと思います。

石倉さんが主宰する「グローバル アジェンダ セミナー」 が毎月1回で、約1年にわたって開催されることになりました。私もお手伝いすることになり、その第1回に参加、お話しする機会をもつことができました。

メールで何回か打ち合わせ。50人プラスの参加者。参加者の「2/3」が20代、30代、しかも女性、男性が「50=50」、これは素敵です。英語で話すと決めて、当日、ちょっと緊張して皆さんに会いに行きました。

当日の様子は、石倉さんのサイト英語版はこちら)をご覧ください。

「ものづくり」と、相手を知った「ものがたり」の違い

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日本の「強さ」は何か。多くの方々が「ものづくり」、「技術」、「匠の技」などといいます。しかし、それだけでは需要を創る、顧客の心をつかみ財布の紐を緩める、新しい市場の開拓には不十分 です。これがグロ―バル時代の「新しい社会的価値の創造」、すなわち「イノベーション」なのです。このサイトでも繰り返し出てくるテーマ です。

さらに、これらの「ものづくり」、「技術」の強さは、アジアの成長がするなかで、アジアの人たちなかなかできない、できにくいことだとも思えません。

では、日本の「弱さ」はなにか?

特に「日米欧」からグローバル市場経済になったこの20年、グローバル世界への大変換です。そこで着眼、大きなビジョン、構想力、戦略と交渉、行動ができるのでしょうか。

相手を知り、顧客へ「ものがたり」を伝える力です。 顧客のニーズを知り、相手を知り、相手の立場で感じ取る力 (Ref.1)。

成長するグローバル社会で欧米諸国、アジア、ラテンアメリカ諸国などと比べて、日本の組織、その「リーダー」達の戦略と決断と実行のスピードはどうでしょうか?この辺が、今の日本の「弱さ」であることを認識し、しっかりコラボレーションのパートナーと組んで、目標へ、スピードをもって進むべきなのです。

1月8日の朝日新聞、朝刊の1面と3面に「日本のすぐれた技術とその課題」がくっきりと取り上げられ、3面には、左下に私のコメントの囲み記事も出ています。私のコメントは、このサイトでも以前から繰り返し指摘していることですが、このように大新聞にキチンと取り上げられるとうれしいです。一時的ではありますが、私のサイトとは、広がる範囲か桁違いに大きいですから。

アラブ首長国United Arab Emiratesの原子力発電は韓国の勝ち-その3

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第1,2報に続いて、いろいろ世界に話題になっている、韓国原子力の勝利ですが、海外、韓国、フランスの対応など、興味深いものがあります。

ところで、前回の2報の記事にあるアブダビの担当責任者「ムハマド王子」 とは「ムハンマド皇太子」、私もお会いしたことがありますが、話をお聞きしていて、とても聡明で思慮深い方であることは歴然です。このムハンマド皇太子が第2報の「#1」にも出てくる「向こうのトップ」ですね。

いつもながらのことですが、The Economist、また韓国の中央日報(日本語版)にもいくつかの動きが読めますし、世界トップであるフランスのショックはいかばかりか、報道 「France24」の「UAE nuclear deal: a French flop?」、さらには、今回の反省に立って、すでに 次の戦略を始めています。

朝鮮日報では、前回の報道にさらに続けて以下のような生々しい経過を伝えてくれます。見出しを抜き出しました。日本にとって参考になることが実に多いと思います。(Chosun Onlineの記事は1週間で見れなくなりますので、本文を資料として引用させて頂だき、ご紹介します)

原発輸出:逆転に次ぐ逆転、交渉の舞台裏(上)
原発輸出:逆転に次ぐ逆転、交渉の舞台裏(下)

原発輸出:UAEの次狙え、海外原発市場開拓で総力戦(上)
原発輸出:UAEの次狙え、海外原発市場開拓で総力戦(下)

原発輸出:「今回の受注でUAEと70年の兄弟に」
原発輸出:「韓国人特有の“やってみよう”精神に感銘」

第1,2報でも書きましたが、では、日本の対応はどうなのでしょうか?この3報で紹介した内容などをよく読んで、自分たちと比べ、考える。何事にも勝ち負けはあるのですから、謙虚に学ぶことが、次への第1歩です。

「トーナメント戦で優勝」(基本的には失敗しない人が上がってきた)した人と、「リーグで優勝」(負けから学びながら強くなった人が上がってきた)した人が組織の上に立つ違い(冨山和彦著の「指一本の執念が勝負を決める」 、「会社は頭から腐る」など(資料1))、こういう場面で出てくる、効いてくるのだ、と思います。若いときに本当の修羅場の経験がない人には、負けたときこそ学ぶ、成長するチャンスと考える、というベンチャー精神、アントレプレナー精神「出る杭」資料1)的な価値観がないのです。

バブル崩壊以後の20年間成長しなかった、「失われた20年」の日本にとって、2010年は正念場です。

グローバルアジェンダと日本

去年の11月のことですが、慶応義塾大学グローバルセキュリテイ研究所が主催する「グローバルアジェンダと日本; 地球社会とグローバルリテラシー」に参加したことは報告 しました。朝日新聞の船橋主筆による米中をめぐる大きな動きと日本の課題、そして船橋さん、私、近藤さん、田村さん、竹中さんの司会によるパネルで、活気のある時間でした。

この報告書「G-SEC Newsletter、No 17」 が出ましたので紹介します。