ヨーロッパの「イノベーション」とフィンランド前首相Ahoさんの訪問

科学技術に対する国家や企業の投資は、経済成長のエンジンとしての「イノベーション」、そして地球温暖化、エネルギー問題等の課題解決へのキーワードになっています。ヨーロッパでも同じことでリスボン戦略(2000)を経て、今年の1月に「Creating an Innovative Europe」、通称“Ahoレポート”といわれる報告書がでました。座長はフィンランド前首相のEsko Ahoさんで、4人の委員会で3ヶ月ほどで仕上げたそうです。

このAhoさんが来日され、私を訪ねてくださいました。 Ahoさんは、1991~95のフィンランド首相で、ソ連崩壊直後の国の難局を立ち直し、国のリ-ダ-としてきわめて優れた、そしてそれほど多いとはいえない“Statesman”として認識されている政治家の一人だと思います。個人的にもこの2年ほどお付き合いをしていますが、すばらしい方です。

9/10のブログで紹介した「Global Innovation Ecosystem」でも、この報告書が話題になっていたので、偶然でしたがいい機会となりました。そこへちょうど顔を出した総合科学技術会議の原山議員(東北大学)もお招きしてお話をしてみると、同じEUでもドイツ・フランスなどは経済成長率が低いのに対し、世界でも1、2の元気なフィンランドを始めとする北欧諸国は活気があるようですし、また東欧、ポルトガル等も元気ということでした。世界銀行の調査でもこれを裏付ける予測のようです。

事実、この2週間前に私のところに来られたドイツ、フランスの方たちは「日本はいいですね、でもわが国は・・・」といった趣旨の話が中心でした。もっとも「他人の庭は緑」ということでしょう。

この日の夜は、生駒俊明さん、有本建男さんたちと、フィンランド大使館での晩餐でした。

061115 写真 Ahoフィンランド前首相と原山さんと

イノベーション、日刊工業新聞の記事

「成長には創造的破壊が必要」という見出しで日刊工業新聞(2006/10/30)にインタービュー記事が出ています。そこで、「イノベーション25 戦略会議座長(内閣特別顧問) 黒川 清 氏」として私のコメントが紹介されています。

“2025年の社会に向けた長期戦略指針「イノベーション25」を策定する「イノベーション25戦略会議」がスタートした。技術だけでなく一般社会のさまざまな仕組みの革新をイノベーションと位置づけ、生活者の視点と20年後という長期スパンを特徴とする。
 社会の活性化の基本は人だとする安倍晋三首相の方針を受け、黒川清座長(内閣特別顧問)は「従来の仕組みを変えようとするディスラプター(粉砕者)がもっとも大事だ」と強調する。そんな人を認めて応援する、日本社会の革新について聞いた。(山本佳世子)” で始まります。

山本―― イノベーションの日本語訳はこれまで「技術革新」といわれていました。
黒川―― 「イノベーションは研究開発や製造プロセスだけでなく、組織やサービス、マーケティングなどあらゆる社会の仕組みの革新を指す。カンバン方式やセル方式など製造ラインのイノベーションだけではない。社会ではサービスの比重が高まり、組織ではなく人と人のネットワークで動きだすケースが増えている。モノではない。『それを使って何をするか』だ」
山本―― 企業も皆、変わろうと苦しんでいますが・・・。
黒川―― 「どんな社会も成長してくると保守的になり、安住してしまう。成長するには内部から新しくする(イノべート)創造的破壊が必要だ。それはいったん力を持った組織や人には難しく、担い手はマイノリテイー(少数派)の中からしか現れない。日本は米国と違って変わった人を許容してこなかったが、全体の5%程度の人が担い手になるようにしたい」
山本―― 高市早苗イノベーション担当相が言う「生活者視点」が新鮮です。
黒川―― 「社会に、生活にとってよいという理念と情熱を持って、アイデアを実社会の仕組みにつなげるには、この視点が大切だ。例えば宅配便や引っ越しビジネスがそうだった。その考えが正しいから、周囲の圧力や規制にかかわらず社会に浸透した。また、内容の魅力に加え、使いやすさを高めて普及させないとイノベーションにはならない。インターネットは技術的につなげられるだけでなく、アクセス料を劇的に下げるビジネスモデルができてこそ広がった」
山本―― すでに多様なイノベーションの報告書がありますが?
黒川―― 「内閣府の総合科学技術会議や日本学術会議、さらに日本経団連で議論され、各省庁での取りまとめもある。5年、10年先の社会のあり方にフォーカスしたこれらも大事だ。時間がないこともあり、戦略会議ではこれらを議論のたたき台にする。しかし考えるのは、20年後に日本が創造的破壊をし続ける社会になっているか、ということだ。2月の最初のとりまとめでは、そのために人が大切だと明確に打ち出す。20年後を予想するのが目的ではない。目指すのは、次から次へと何かが生まれてくる社会に変えることだ」

以上ですが、いかがでしょうか?

新聞などの論調でも、イノベーションとは単に技術革新ではなくて、外からの圧力ではなく、内から変革していく組織、企業、そして社会の構造改革であり、結局は人である、ということになりますね。そして、生活者(今の時代、日本だけではいけませんよ!アジアであり、世界の生活者です!)の視点です。そして、会社などの強さ、つまり「コアコンピテンス」をしっかり認識した、国際競争と協調なのです。そして「リーダー」の崇高ともいえる「理念」「確信」です。野中郁次郎先生の言われる「Phronesis」のある人です。これがなければ誰もついてきません。社会を変えるほどのことにはなりません。だからイノベーションとはいわないでしょうね。この点は、「イノベーション」満載のDNDメールマガジン Vol.196を見てください。

“イノベーション”、“イノベーション精神” とは何だろう

先日ご紹介した出口さんが主催するDNDでは、このブログとリンクして、「学術の風」なんてしゃれたタイトルで私の意見を掲載してくれていますが、他にも“イノベーション”についてこの方面の少し「出る杭」的な方たちの意見がたくさん出ています。大体、私の考えていることと同じようにとらえていられる方が多いようです。ぜひ訪ねて、いくつかを読んでみてください。

橋本さんの第2回、第3回とか、原山さんの第13回、第17回、森下さんの第10回、少し前のものですが石黒さんの第9回「ヒトを活かす」の中で野中先生のいわれていること、などなど、みな核心を突いています。これに共通するものが、“なにがイノベーションの本質か”を示しているように思いますね。

基本に流れる共通の認識に、一番の究極として「シリコンバレー」があるともいえますが、これについても、出口さんが書いているDNDメルマガの11月8日号「~That’s the way to go~『文庫のための長いあとがき』の余韻」で紹介されている「シリコンバレー精神」(ちくま文庫)を読んでみるとちょっと感覚的に感じがわかるかもしれません。しかし、実際にはそこに身をおいて、著者の梅田さんのように日本とのしがらみも切って(長期の出張ではなく)生活しないとわからないだろうな、と思います。橋本さんの第3回に出てくる「塚本さん」も同じですね。

出口さんはここで、“梅田さんの、この感動的ですらある「文庫のための長いあとがき」”は、私からの紹介であったことに触れ、「「シリコンバレー精神」の真髄に、イノベーション25戦略会議にいくつかの秘策が潜んでいるように感じるのですが、さて皆さんは、どう感じられたでしょうか。」、と鋭く指摘していますね。

さて、自分自身で、そのような位置に自分をおいてみる気概はあるでしょうか?

「イノベーション25」、私の考えの一端ですが

日経Business Onlineにイノベーションに対する私の考え方がすこし触れられています。これは安倍総理が国会での所信表明や予算委員会の答弁にも現れているものと同じ認識です。

「内から」「新しくなる」エネルギー、「創造的破壊」ができない社会、会社、組織は必ずだめになる、これが歴史の必然です。成長を可能にするのは、絶え間ない「イノベーション」なのです。「改善」は「イノベーション」とはいえないと思います。もっと革新的なもの、こと、考え方、社会をすっかり変えてしまうようなものなのです。

イノベーションには技術革新による新製品もあるけれど、イノベーションの対象はもっと広い。今ではほとんどのヒトはスキーやゴルフバッグを持って移動しない。小倉昌男さんのイノベーション、すなわち「宅急便」を使うわけです。巨大な抵抗勢力にもかかわらず、生活者の視点から、強い意志をつら抜いた。これなのです。

10月26日のブログで紹介しましたが、私のサイトとリンクしているDNDは、この関係のリーダーによる発信量も多く楽しいサイトです。この中の「DNDメルマガ」はお勧めです。さすがは元新聞記者、出口さんの筆がさえわたりまくるので楽しめますよ。ぜひ、皆さんもこのサイトを時々、いや頻繁に訪問してみてください。

「大相撲化」が日経新聞に

私が今年始めから何度も様々な場所で言っている「大学の大相撲化」ですが、とうとう日経新聞の11月4日(土)の朝刊一面に記事タイトルとして取り上げられました。うれしいですね。「大相撲化、オオズモウナイゼーション」というのです。これは私が英語の講演でよく使う言葉です。

伊藤譲一くんという友人がいます。彼はITベンチャー起業、blog等の分野で活躍しています。日本よりはむしろ海外で有名で、先日のNewsweek日本語版(10月18日)の「世界の尊敬する日本人100人」にも出ています。彼のblogは世界でも最もヒットの多いものの一つです。

彼も私の「大相撲化」コンセプトに共鳴してくれていて、CNN Money.comの “THE CURIOUS CAPITALIST”というコーナーに、彼のコメントが取り上げられています。

Monday, October 23, 2006

Joi Ito’s take on outsiders in Japan

In my interview with Michael Zielenziger about his new book on Japan, Shutting out the Sun, we discussed the role of such business mavericks as management consultant Kenichi Ohmae, tech mogul Masayoshi Son, and blogger/investor/ Gnome Mage Joi Ito. Michael’s take was that they remain marginalized. Joi e-mailed me this morning to say he didn’t entirely disagree. But I’ll let him tell you:

In some ways I agree with the characterization and in some ways I don’t. The "old guard" of Japan is not some monolithic single group, but rather a complex web of various interdependent networks. I think Ohmae, Son and myself all have various connections to various segments of the "old guard".

Japan very often takes "outsiders" and gives them access under the right circumstances. Sumo is an interesting example that my friend Kiyoshi Kurokawa often uses. Even though Sumo is one of the most traditional Japanese activities, recently there is a fairly large number of foreigners. I don’t remember the exact figures, but there is a single digit percentage of sumo wrestlers that are foreigners. What’s interesting is that there is a double digit number in the top tier and 100% of the champions are foreign.

This is not necessarily generalizable, but it is often the case that a lot of your influence in Japan has a lot to do with just how much time you spend focused on developing relationships. I am cyclical. I spend several years outside of Japan, running around, then I focus on Japan to rekindle relationships…

But it is true that the most powerful Japanese power brokers are people who live in Tokyo and have never spent a single minute not focused on developing and managing their power base here. On the other hand, I don’t think it is that dissimilar in other countries. Also, I do think that "changing Japan" is REALLY hard. I’ve tried it a number of times and I think it requires a revolution. Single individuals can’t do it and in many ways I’ve given up. I think a lot of it will have to do with timing. I try to keep an eye on everything in Japan with enough activity to jump into stuff if an opportunity opens. However, I have decided, as many others have, that putting all of your eggs in the Japan basket is risky, frustrating and reaches a point of diminishing return in many cases.

皆さんはどう思いますか?

北京から、BusinessWeek “The CEO Forum”、そして若者のエネルギー

BusinessWeekの“The CEO Forum”という会議に招待されて北京に来ました。どう見てもCEOらしき人ばかりですが、サイトから「Agenda」「Speakers」をみていただければわかりますが、どう見ても私は場違いのような気がします。まあ、でもいつもの「エイヤッ」で、「Plenary 5」に参加しました。

しかし、どのセッションも中国とインドの経済成長が話題の中心で、どこでもキーワードは「イノベーション」です。この意味は、既成の構造を「内から(壊して“disrupt”)新しくする」ことですからね。なんと“Disruption Consultancy”という会社もあって、そのHong Kong支社長にも会いました。いろんな人と様々な話ができて面白いです。

もちろん日本とのビジネスに関係する人たちも多いですから、いろいろと話が聞けます。私企業なのに、なぜか「役所主導風」というのが理解できないという意見が聞かれます。

確かに、このグローバル時代、ご近所さんの経済成長に日本はたくさんのすばらしい貢献ができ、相互の強みを生かしながら、互いに経済成長できることは間違いないのです。これこそが「Win-Win」の関係です。日本は「core competence」を生かす「competition and collaboration」が必要でしょうね。何でも、自分だけでというのはどうでしょうか?いろいろな背景の人たちがいることこそが「グローバル時代」の強みだと私は思います。

今日の昼食はHong Kongの若い人たち7人と一緒でした。皆さんThe Hong Kong University of Science and Technologyの学生さんたちです。新しい「Dual Degree Program in Technology and Management, School of Engineering and School of Business and Management」で勉強していて、これもその一部の単位に認定してくれているそうです。みんな19か20歳で、1人が今日21歳の誕生日だといっていました。この人たちと競争する日本の若者がちょっと心配です。

いつも私が言っていることですが、みんな、早く外へ出てみるべきです。将来を共有するべき友達の輪がとてつもなく広がりますよ。この若者たちを1週間でもいいから日本の大学に呼んでみたいです。だれか、手伝ってください。日本だけなんて、了見からして狭い、狭い!

「イノベーション25」初会議と“Digital New Deal(DND)”

本日(26日)夕方に「イノベーション25」の初会議が官邸でありました。安倍総理出席の下、高市大臣が主催し、議長は私が務めました。この会議の出席者は、江口克彦(PHP研究所所長)、岡村正(経団連副会長)、金沢一郎(日本学術会議会長)、坂村健(東京大大学院教授)、寺田千代乃(関西経財連合副会長)、薬師寺泰蔵(総合科学技術会議議員)というそうそうたるメンバーです。

いまや世界中が「イノベーション」ですね。日本学術会議として昨年9月にこのテーマで国際会議「Global Innovation Ecosystem」を開催しましたが、今回の「イノベーション25」政策立案を考える上で大変参考になるものです。

でも、日本ではとかくこの言葉が「技術革新」とほぼ同意義に使われることが多いような感じもします。本当の意味するところは、総理も国会の答弁でも話されていますが、これは常に大きな変革をもたらす「社会のシステムの問題であり、結局はそのような気概を持ったヒトと、そのようなヒトを排出し、また支援する、ヒト、カネ、モノなどを誘発しやすい社会」を創造することです。日経新聞等でも識者の意見を掲載し、これは「技術革新」を意味するだけではないということをしきりに書いています。

この辺の話は<http://blogs.yahoo.co.jp/thetreasureship/4461156.html>でもコメントされています。

インターネットにしても、この10~15年で急速に社会へ広がりましたよね。wwwが1992年、Netscapeが1994年、Yahoo!やLycos等のサーチエンジン、Windows95が1995年、Linax, Google等々、これらにはほとんど日本人の姿が見られません。モノつくりとは違う発想ですね。8/14のブログで紹介した「ウェッブ進化論」を参考にしてください。

これらは技術だけでなく、Product Innovation、Process Innovation、Service Innovation、Finance Innovation等々であり、日本でいえばクロネコヤマトの小倉さんなどが、モノつくりではないイノベーションといえるでしょう。このように、必要なのは既得権勢力を無理やりこじ開けながら、より高い志で国内外の人たちの意識、無意識の思いを満たし、ほしくなるようなモノ・サービスを提供し、経済成長するというプロセスなのだと思います。

Innovation、innovateとは「in(内)」、「novate(新しく)」なのです。1938年、Shumpeterが経済成長の基本として指摘したもので、“「創造的破壊」なくして経済成長なし”ということなのでしょう。

ところで、このブログと出口俊一氏が主催している“Digital New Deal(DND)”というサイトをリンクして、「学術の風」という企画をはじめました。DNDのメールマガジンでは、私の主張する「大学の大相撲化」、「世界級キャリア・・」等々、多数紹介されています。是非みなさんも訪ねてください。

内閣特別顧問に

日本学術会議の会長の職を9月10日を持って終了したことはお伝えしました。京都で開催されたSTS Forum会議の最中で、その後、スイスに行ったことについてもブログに書いたとおりです。

しばらくは仕事を30%ぐらい減らして、NPO日本医療政策機構の活動に時間を使う予定でしたが、スイスから帰国後しばらくして、総理の科学担当顧問を要請されました。公式には10月3日朝に発令されました

何が起こるか、わからないものですね。前日の2日には日本学術会議の総会で、金沢一郎さんが新会長に選出され、皇室医務主幹をしておられることもあり、ニュースになりました。総会2日目の朝に、総理から辞令をいただきましたので、その旨を金沢会長から会員に伝えていただきました。私もですが、みんなびっくりしたでしょうね。科学担当の内閣特別顧問は初めてのことですから。総理からは科学や科学技術に関する国内外の情報等についてと、高市大臣が担当する「イノベーション25」を支援するように、というご下命でした。

科学担当の特別顧問のような立場は米国では定着していて、Clinton大統領の下ではNeal Lane元National Science Foundation会長、今のBush政権下ではMarburger氏がそうです。

英国でもこのようなポストは約10年前に作られ、初代が後にRoyal Society会長になったLord Robert May卿です。今は2代目で、Sir David King氏です。2人とも個人的に知っておりますが、特にMay卿とは去年の英国でのG8サミットで、G8学術会議宣言書等を成し遂げたPartnerということもあって、この5年ほどとても仲良くしており、ちょうど今回の学術会議の総会でも特別講演にお招きしていました。その日の朝に私の内閣特別顧問が発表されたので、とても喜んでくれました。

7日から海外の予定でしたが、急遽キャンセル。5日には「イノベーション25特令室」ができ、高市大臣と開室式をしました。やらなければならないことが沢山ありますが、まずは「イノベーション25」の立ち上げです。

 

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写真1 安倍総理と辞令交付の後で。

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写真2 Lord May of Oxfordと、日本学術会議のレセプションで。

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写真3 高市大臣と「イノベーション25特令室」開室式。

ラマン、ロダン、カリエール

ラマン、ロダン、カリエールの3人を中心に添えて、“芸術と科学は同じような背景からの人間の活動だ”という趣旨のエッセイを「日経サイエンス」11月号に書きました。「光と感動、そして芸術と科学」というタイトルです。皆さんはロダンは知っているでしょう。たぶんラマンのことも。では、カリエールのことは知っていますか?

かわいい写真がはいっているので、この月刊誌「日経サイエンス」を買って、読んでくれればうれしいのですが、 ScientPortalというサイトでも読むことができます。

感動しない研究は楽しくないですよね。

とても悲しい若い研究者の死

8月のはじめに、阪大の42歳の助手が研究室で遺体として発見されました。そばにあった毒物と遺書から、自殺の可能性が高いとされていますが、この方が共著者となっていた論文が取り下げられたことに大きく関係しているようです。

いろんな方のBlogでも盛んに議論され、不正行為とのコンテクストでも話題になっています。(科学者の不正行為については、9/49/5のブログでも触れています。)

Natureも9月21日号(P.253)で「Mystery surrounds lab death」という見出しの記事を掲載しています。最後に私のコメントも引用されていて、「Kiyoshi Kurokawa, president of the Science Council of Japan, agrees. "Japanese universities and institutions may not always take the right approaches to resolving problems," he says. "But, do they realize that the science community around the world is watching?"」と締めくくられています。

この若い研究者は、とても優秀で、すばらしい研究者であったようです。

私もこんなところで言いたくもないことですが、あまりにも悲しい若者の死です。