ニューデリー、インド厚生大臣の国際諮問会議へ

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前回はGates財団とDr. Yamadaの話を報告しましたが、その翌日5日にはNew Delhiへ飛びました。

今回の訪問は、3月に紹介したJeffrey Sachs教授達と、6日、7日の2日間に渡って開催されるインド厚生大臣の国際諮問会議の一員としての訪問で、農村部の保健医療行政(Rural Health)についてのヒアリングと意見交換が主な目的です。

このプログラムとパネルのメンバーはMV Projectのサイトの“Agenda and Meeting Presentations”のとおりですが、私の事務所の坂野(ばんの)君(写真1)も参加しました。彼は9月からHarvardのSchool of Public HealthのMaster courseへ留学しますが、その直前に世界の各分野を代表するトップの方々に会うことができた、と言って喜んでいました。

Sachsさんの本務はColumbia UniversityのThe Earth Instituteの所長です。近々また本が出版されるそうですが、本当によくがんばりますね。すごいエネルギーです。

諮問会議では、Mrs. Sachs(写真2:3月13日のブログでも紹介しましたが、Nobel医学生理学賞のPaul Ehrlichは彼女の大叔父さん。Ehrlichの弟子の秦佐八郎が感染症(スピロヘータ)に効く初めての人工化合物“salvarsan”を発見したのです)や、去年のDCPP 2nd edition「世界の健康政策」(2006/4/2))をDean Jamisonとともにまとめ、その発表の時に北京でお会いしたDr. Jaime Sepulveda(写真3:「ナイロビから ~立派なリーダーを知ること」(2006/6/30)でも紹介した、前厚生大臣のJulio FrenkとともにMexicoの医療政策のブレインです)にも久し振りにお会いしました。ちなみに彼は8月からGates財団に移るそうです。

また、つい最近「Global Fund」の理事長に選出された元McKinseyのRajat Guptaさんに会えたのもよかったです。(Global Fundは2000年の沖縄サミットで日本の提案によって設立されました。ここでも日本のイニシアティブは素晴らしいのですが・・・)

しかし、貧困で電気もろくにない困難を乗り越えようと、よくがんばっていますね。私と一緒にWHOのCommissionerをしているMirai Chatterjeeさん達が考えた、ASHAという村での女性の活躍を支援するプログラムはずいぶんと成果をあげているようです

翌日は朝から5時間ほど厚生大臣のDr. Ramadossと議論をしましたが、細部まで本当によくご存知で感心しました(写真4、5)。それもそのはずで、医師ですが、もともと農村の保健衛生をテーマとしていて、若干37歳で厚生大臣に就任し、今年で3年目です。経済成長も見込めて予算も増えていくでしょうから、課題は山積みですが、時間はかかっても、いい方向に動いていくと思います。

ところで、インドでは32州のうち8つの州で(もっと広い範囲だそうですが・・・)、水に含まれるフッ素の量が多く、中毒者が数百万人いると言われています。また3つの州では水からの砒素中毒が多いということで、これは本当に悲惨なことです。砒素といえばBangladeshでの中毒がよく知られていますが、同じ原因ですね。

9日、夜の便でシンガポールへ向かいました。

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写真1: 坂野君、Dr. Roger Glass(NIH Fogerty Intl Center)、私

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写真2: Dr. Sonia Erhlich Sachs、Mrs. Joanna Rubinstein(NY Academy of ScienceのEllis Rubinsteinの奥さんで、J. SachsのChief of Staff)、そして私

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写真3: 左から、Dr. Glass、 J. Rubinstein、J. Sachs、J. Sepulveda、(?)、そして私

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写真4: 左から、私、R. Gupta、(?)、厚生大臣

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写真5: Columbia U. The Earth InstituteのN. Bajpai、私、J. Sachs

ゲイツ財団、Dr. Tachi Yamada、そしてアフリカ支援を

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皆さん、Gates財団(Gates Foundation)のことを知ってますよね?あの世界一お金持ちのBill Gatesが大きな基金(4~5兆円ほど)を作り、世界のエイズ、マラリア、貧困などの撲滅に大きく動きはじめています。このプログラムはGlobal Health Programといわれるもので、去年は世界第2位のお金持ち、Warren Buffetがこの基金に大きな寄付(3~4兆円ほど)をして世界中の話題になりました。Gatesは来年にはMicrosoftを辞め、こちらに活動の拠点を移す予定だそうです。

Global Health Programの初代代表は、NIH National Cancer InstituteのDr. Richard Klausner所長でしたが、去年、私の長年の友人であるDr. Tachi Yamadaが代表に就任しました。私とTachiは、彼が1977年にUCLAに来た時から30年来の友人で、日本の消化器病分野で多くの人材を育てる手伝いをしました。何年か前のことですが、日経に掲載された私の「交遊抄」で彼を紹介しました。私がUCLAから日本に帰国した翌年の1984年に、彼はMichigan大学の教授となり、その後は内科主任教授(Chair)、さらに企業へと移り、これがこの後に合併で世界第2の製薬企業GSKとなり、R&Dのトップとして活躍。去年6月にGates財団のGlobal Health Program代表に就任しました。彼とは4月にもSingaporeで一緒でした

今回、彼を招聘して、日本がアフリカ支援等にどう協力できるかなどの意見交換の会合を持ちました。このサイトでもいろいろ紹介していますが、日本はアフリカへもずいぶん貢献しているのです。ただ、広報戦略が下手なのです

Tachiがインドから成田に着くなり、8月3日の午後、東京で会議を開催しました。来年は、TICADやG8サミット等々、日本が国際的にも大いに注目と期待されるわけですし、いいタイミングと考えたのです。日本政府と一緒にTICADを支援する世界銀行、JICA(国際協力機構:Japan International Cooperation Agency)JBIC(国際協力銀行:Japan Bank For International Cooperation)、外務省、日本国際協力センター、またBedNet(Olyset Nets)でアフリカのマラリア撲滅で世界的に大きな貢献をしている住友化学の米倉社長(3月13日5月29日にもご紹介しています)等々にご参加いただいて、大変に有意義な意見交換となりました。

翌4日はTachiと昼食、これには私の友人の渋沢健さんに参加いただきました。夜は久し振りに家内と、Tachiがはじめて会う私たちの孫娘と一緒に4人で、古くから白金台にある、由緒正しいお蕎麦屋さんに行きました。この25年ほどはどうしても仕事上の付き合いばかりになっていましたので、久し振りに、まったくのプライベートな楽しいひと時を持ちました。

彼は一年の50%は海外だ、といっていました。アフリカ、インド等々、世界中です。私は25~30%ぐらいでしょうか。お互い忙しいね、という話になりました。このあと、Tachiは3日ほど滞在して、主要な方々との面会があったそうです。私は5日からインドへ出発しました。

再度、朝河貫一先生 「驕る日本」と闘った男のこと

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朝河貫一先生については、その名著「日本の禍機」を「リーダーに不可欠な歴史観、世界観、志」というタイトルの書評で、池上映子さんの「名誉と順応」、MITのジョンダワー教授の「敗北を抱きしめて」とともに紹介しています。このとき初めて朝河先生を紹介しましたが、それ以来、このサイトで何度も朝河先生のことを紹介しているので、“サーチ”してみてください。

本当に素晴らしく立派な方で、日本人として初めて米国の大学教授になった、Yale大学の歴史学者です。2005年は日露戦争終結、ポーツマス条約の締結から100年ということで、日本でも朝河先生に関する記事がそこかしこに見られました。朝河先生についての本はAmazonなどで調べてください。また、GoogleやYahoo!を使って朝河先生についていろいろ調べてみてください。

今年、Yale大学で開催された朝河先生に関するシンポジウムについて先日ご紹介しましたが、朝河先生のことを学術的な視点からご紹介されている矢吹先生の講演が、学士会会報に紹介されていました。私は、朝河先生が「日本の禍機」に先立つこと5年の1904年、日露衝突のさなかにこの衝突での日本の正当性を説かれた「日露の衝突Russo-Japan Conflict」という英語の論文を(多分そうだったと思いますが)、横浜市立大学の矢吹教授のサイトで見つけて読んだ記憶があります。

なぜ、また朝河先生なのか。それは今の日本の状況が100年経っても本質的にちっとも変わっていないと考えるからで、今の日本をめぐる状況がある意味ではよく似ているようにも感じられるからです。今のようなグローバル時代にあっても、当時の朝河先生のような、「「驕る日本」と闘った男-日露講話条約の舞台裏と朝河貫一」(清水美和著)や、「最後の「日本人」-朝河貫一の生涯」(阿部善雄著)にみるようなリーダー、そして学者も見当たらないように感じるからです。大体、学者の世界はより高い立場で、このような時にこそ、権力、政府、国民にもっと発言しなくてはいけないのです。

朝河先生のような方はめったに現れるわけでないことはよく理解できます。しかし、いまの大学は何かといえば、大学は稼げとか、研究者の「インセンティブ」といえばお金の話ばかり。そんな卑しい人ばかりではありません。そんなことばかり言っている世の中に、誰が学校の先生になろうと思うでしょうか。ものさしは「お金で測れる」ことばかりなんて何かおかしいと思いませんか?学校もみんなで支え、先生を応援してこそ、子供たちも元気になるのです。これが教育の本質です。

この“朝河テーマ”については、20年前から基本的に同じことを何度となく発言・発信していますので、また考えてみてください。

学士会会報で同じく紹介している伊東さんの話も、いままで“大学入学試験へ向けた偏差値教育”でうまくいっていたと感じていたが、グローバル時代に明らかに転換期にある世界とその中の日本社会の、あまりに認識されていない根源的な問題について触れていると思います。

イノベーション25追記 「イノベーションの源」

イノベーション25の策定期間中、大変多くの方からご支援を頂きまして有難うございました。その間には、このサイトや出口さんのDNDでも、応援や意見交換の場を設けて頂き、大変嬉しかったです。これからは、いろいろと大小さまざまな障害はあるでしょうが、皆さんと日本の、グローバル時代における「世界の日本」に向けた将来への指針として、活用され、実行されることを祈るばかりです。

イノベーション25についてはこのサイトでもその時々にご案内し、いろいろなところでも発言してきましたが、科学新聞の中村記者によるインタビュー記事が、「真善美への挑戦-イノベーションの源」というタイトルの5回シリーズでScience Portalに掲載されましたので、ご案内します。

「真善美への挑戦―イノベーションの源」

 第1回 「イノベーションは創造的破壊」
 第2回 「社会変革をもたらすものこそ」
 第3回 「地球規模の課題にこたえる」
 第4回 「出る杭を増やす」
 第5回 「中学生から海外との交流を」

最近様々なblogを拝見しますと、日本はやはり鎖国をして、ユートピアのような、それなりに豊かな生活ができれば結構ではないか、という意見も結構あるようです。私がいつも言っているように、確かに多くの日本人は基本的には「鎖国マインド」で、悪く言えば「島国根性」ですからね(この由来等については「WEDGE」の書評で岸田秀さんの本を紹介しています)。

しかし、これからの若い人をそんな価値観で囲い込むのはよくないです。若いうちに広い世界に出てみる、接してみる、多くの友人を作る機会を与え、その上で鎖国しようという人が出てくるのは結構。でもね、これからの若い世代の皆さんの将来に対して、たとえばメジャーの野球を、テレビでも、現実にも見せることなく、「プロ野球は日本がいいのだ、余計なことを考えるな」なんて言う権利は大人にはないと思います。

広い世界で多くの選択肢を示し、体験させ、その上で一人ひとりが自分で選択していくのが人生ではないでしょうか。テレビのライブ放映ができる時代に野茂という「破壊者」「イノベーター」が出たからこそ、いまのイチローも、松井も、松坂もいるのではないですか?それがいやなのでしょうか?彼らが憎らしいのでしょうか?違うでしょう。日本人として誇りに感じる人のほうが多いのではないでしょうか?どの世界でもそうなのです。

やはり鎖国というわけにはいかないでしょうね。

経団連、東富士の夏のセミナーへ

7月26・27日と静岡県小山町で経団連の幹部40人ほどが集まって開催された、第6回東富士夏季フォーラムで、高等教育というテーマでお話をさせていただきました。私の前は、初等中等教育で教育再生会議副座長の資生堂 池田守男会長のお話しでした。今回の担当幹事は、前にも紹介した住友化学の米倉さんだったのです。

私は、まず日本の大学進学率の1955年から2005年への変遷を示し、グローバル時代の世界の大学の動向、日本の大学と社会の課題等について話しました。後は、産業革命以来の現在は第4の波が飽和しており(Freeman/Perez等の分析)、第5の情報革命の波が2000年のIT バブルのあとで、アメリカで産業の成長とどのように関わってきているのか、Jorgenson教授のデータRedHerringのカンファレンスでも使いました)などを示しながら話させていただきました。

ITの急速な普及における新たなパラダイム“Demand-driven Innovation”では、「Wii vs PS3」とか、1990年代の日本の「DRAM」崩壊等の話も具体例として出しました。ご出席されていた日立の古川社長やSONYの中鉢社長にはちょっとお気の毒だったかもしれません。

議論は活発でしたが、日本の博士の企業採用の課題等、これらについては御手洗会長始め何人もの方が発言されましたが、本当になかなか難しい問題です。トヨタの張会長とはSt. Gallen、そしてSt. Petersburg以来でした。

夕食では毎年ダボス会議でご一緒している野村ホールデイングの氏家会長のお隣で、Goldman Sachsの新エネルギー投資等についてお話しました。

このセミナーには経団連幹部とそのスタッフ、また担当記者諸君も陪席していました。

皆さんにがんばって欲しいてすね、何といってもイノベーションは産業界の課題なのですから。夜は帰京しました。

軽井沢トップ・マネジメント・セミナーへ

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7月13日に軽井沢で行なわれた、軽井沢トップ・マネジメント・セミナーのパネルに参加しました。パネルのメンバーは江崎玲於奈先生と私、さらに司会をかねてSophia Bankを藤沢久美さんと切り盛りしている、多摩大学大学院教授の田坂広志さんの3人で、テーマは「イノベーションと人間力」です。要旨の報告書は近いうちに上記サイトに掲載されるでしょう。

江崎先生はどなたもご存知だと思いますが、田坂さんはというと、たくさんの著書もあり、ご自身のサイトブログなんかもされていて、とても発信量の多い方です。「イノベーション25会議」でもご意見を伺おうと、ヒアリングに来ていただきました。藤沢久美さんとSophia Bankという活動を通して、社会起業家の活動を支援していらっしゃいます。素晴らしいですね。「イノベーション25」の中間報告でも、これからの「社会起業家」の重要性を指摘しています。先日、日経でもシリーズが出ていましたね。

同じ日に行なわれた特別講演は、久し振りにお会いする、去年神戸大学から政治学の防衛大学校校長に就任された五百旗頭真(いおきべまこと)先生でした。Wikipediaにも出ている著名人です。日本学術会議でも、私が会長のときに会員として国際会議とかいろいろとお世話になりました。本当に面白いお話を聞かせてくれました。毎月、学長の講義もされるそうです。素晴らしいですね。特に日本が100年前の日露戦争で勝利した後のアジア戦略は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の、かん陀多(かんただ)と云う男と同じだ、との比喩が印象に残りました。

RedHerring、そしてSteve Jobs

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RedHerringの名前を知っていますか?

シリコンバレーでは有名なメディアです。これが、今回初めてなのだそうですが、日本のそれも京都で、7月22日~24日の2日間、カンファレンスを開催したのです。ベンチャー起業家とベンチャー投資家たちが集まりました。私は「イノベーション」というテーマで講演をという依頼があって参加しました。プログラムや、講演者、パネルの内容の一部はRedHerring Japan 2007のサイトで見られます。私としてはこのよう集まりで話をするのが初めてなので、どんな人たちが来るのかということもあって、1日目から出かけました。元KDDIの千本さんや(6月にSt. Petersburgでお会いしました)、元ソニーの出井さん(4月にCamargueからでも紹介しました)は存じ上げているのですが、せっかく話をさせてもらうのですから、第一にどんな方たちに話すのかを知っておくことは、こちらとしては大事なことですから。

参加者は150人ほどでしょうか。半分は日本人、残りはいろいろでしたが、みな若い。日本人の70%はシリコンバレー組。外国人の半分は日本をベースにした人たちで、韓国などからのシリコンバレー組も多かったです。ほとんどがICT関係のベンチャーで、バイオ関係者は少なかったです。

SwedenのFredrick Harenさんは“Creativity, Innovation”といったテーマで、実にユニークな、インパクトのある話をされました(ある意味でとんでもない人と思われているかもしれませんね)。「New Ideas」という本を出版したとか紹介されていましたが、後ですっかり意気投合してしまい、この本を少々持ってきたので差し上げますね、とかでもらってきました。私も「変な」人とはすぐ気があってしまいます。根がDon Qixote同士なのでしょうかね?変な話ですが。

そんな調子ですから、皆さんの話を聞きながらスライドをとっかえひっかえ。最終的には先日のGIES2000、そして6月のWorkshopでのJorgenson教授のスライドの一部を使ってお話しました。これはJorgenson教授の最近の著書、「Productivity: Information Technology And the American Growth Resurgence」(MIT Press, 2005)にも出ている資料を更に新しくしているものです。この本は2000年のIT バブル崩壊後の米国の産業成長とIT関係企業の成長を知るのに絶好の本です。皆さんも、産業界の方も、政策の方も、大学人もしっかり読んでください。このような本が大学から次々と出てくるところにも米国の力を見て取ることができます。私の講演の最後は、Appleを創業したSteve Jobsの2005年のStanford大学卒業式での講演からのメッセージで締めくくりました。以下のようなものです。

1) you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something…
2) You’ve got to find what you love. Don’t settle.
3) Death is Life’s change agent.
4) STAY HUNGRY, STAY FOOLISH!

これらの意味を理解するには、上に掲載したサイトで彼の講演をしっかり読むことです。感じ取ってください。メッセージがすばらしいと感じました。こんな講演を卒業式で聞けるなんて、うらやましい。ところで、今年のHarvardの卒業式ではBill Gatesがスピーチをしていますが、これも心を動かす内容です。彼らの実体験から出る言葉は、何にもまして強いです。

私が講演をこのスライドで締めくくったので、司会をしていたRedHerringの社長 Alex Vieuxがすっかり喜んでくださり、彼なりの話を付け加えてくれました。嬉しかったです。

ここの参加者は私が普段お会いする日本のビジネスマンとは違っているのは明らかで、仕事を楽しみ、若く、活発で、どんどん発言し、めげず、英語で上手下手も関係なくしゃべる、という典型的な日本人には当てはまらず、なかなかよかったです。

石倉洋子さんのお友達の岡島悦子さんとか、いろんな方にも会えてよかったです。パーティーなど、その辺の状況はhttp://v.japan.cnet.com/beatproject/blog/story/0,2000071498,000241c-0000019673o,00.htmで見ることができます(なんと私の写真もありました)。

学士会会報から

学士会会報 No.865号(平成19年7月発行号)から、2つの論文を紹介します。

・東京大学/伊東乾先生
 「ミューズの学とフロネーシス-旧制高校の精神と自由七科の今日的可能性-」
 (学士会会報 No.865号、pp29-35)

・横浜市立大学名誉教授/矢吹晋先生
 「朝河史学を読む-日本史の三大革命と天皇制」
 (学士会会報 No.865号、pp102-117)

野口英世アフリカ賞と小泉純一郎氏のご挨拶

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6/19のブログ(「パリから、日本の広報意識の低さについて一言」)で、実際の例として3つの事例を引用していますが、この3つとも、日本のAfricaへの大きな貢献についてでした。地理的な条件もあってか、日本のAfricaでの貢献は、アジアでの貢献に比べて、国内でも国外でもあまり知られていないと思います。上記のコラムで紹介しました、私の発信“Challenges for Japan’s Scientific Community in the 2008 G8 Summit”を、Business Daily Africaで“Analysis: G8 Summit will provide a major test for Japanese scientists”“Comment: Challenges for Japan’s Scientific Community in the 2008 G8 Summit”として掲載してもらいました。ケニアの新聞です。個人のレベルですが、少しでも日本の貢献を知って欲しいからです。On-Line時代の手段ですね。

来年のG8サミットは8年ぶりに日本がホストをするわけですが(7月に洞爺湖で開催)、来年は日本が主役を務め、国連などとAfrica援助の一環として15年前に始めた画期的国家事業、5年に一回開催されるTICAD(Tokyo International Conference on African Development)(こちらも参考に→www.ticad-csf.net/eng/index.htm)の第4回目となる会議が5月に横浜で開催されます。Africa50数ヵ国の国家元首等が東京に集まる、Africa諸国の間ではよく知られた会議です。でもどれだけ皆さんに、そして世界に知られているでしょうか?メディアでも最近は中国のAfrica進出ばかりが取り上げられていますが・・・。

ところで去年、小泉総理がAfricaを訪問されました。その時はEthiopiaとGhanaに行かれましたが、なぜEthiopiaとGhanaだったのかは、後ほど。Ghanaの首都Accraは野口英世が黄熱病で病死したところであり、野口英世記念研究所もあります。ここで小泉総理は日本政府による「野口英世Africa賞」の設立を発表されました。アフリカでの感染症などの疾病対策に貢献した医学研究や医療活動を表彰する国際賞で、この2分野で貢献をされた方を表彰しようというものです(政府のインターネットテレビでも紹介されています)。表彰は5年に一回、第1回は来年のTICADの時に発表される予定で、現在、選考が進行中です。Africa開発、HIV/AIDS、貧困などは皆さんご存知のとおり、世界の大問題です。

さて、小泉前総理は先日、この賞への募金の御願いということで、経団連の理事会にご挨拶に行かれました。そのときのご挨拶がとてもよかったと聞きました。御手洗会長を始め200人ほどの財界のリーダーの前での原稿なしの短いご挨拶だったそうですが、始まる前と後ではその場の雰囲気がガラッと変わったと聞きました。小泉前総理の事務所の許可を得て、挨拶の内容を掲載していますので、ダウンロードしてご覧ください。

 小泉純一郎衆議院議員の経団連常任理事会における挨拶(PDF)をダウンロード

皆さんはどう感じましたか?実にお上手ですね、お話が。メリハリと、ウィットが効いていてとてもいいお話と思います。この話を英語にして、Africaのメディアにも伝えようと考えているところです。

よく考えてみれば、これはまさに財界の方々が「小泉マジック」にかかったとも言えそうですね。ということは、まさに小泉総理が「天才、変人」だということです。実は、歴史的に見ても世の中を変え、科学や技術で世界を変えた人たちは、みんなその時代時代の常識を外れた「変人」なのです。このことは一度、官邸で行なわれた総合科学技術会議で小泉総理の前でも発言しました。みんな笑い出しましたけどね、私はまじめだったのですよ。

これは6/4のブログ(「St Petersburg、そして出口さんから、ドンキホーテへ」)、それから出口さんのメルマガでもお伝えしている、いつの世の中でも「ドンキホーテ」が大事だという主張と一致しているのです。

女性の社会進出はまだまだ遠い。なぜ?先端科学技術大賞の授賞式と『「最後の社会主義国家」日本の苦闘』

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4日、先端科学技術大賞の授賞式で20分の基調講演をする機会がありました。先日、沖縄でご一緒させていただいた高円宮妃殿下もご臨席です。講演の要旨は以下のとおり。翌日5日の「フジサンケイビジネスアイ」朝刊に掲載されていました。

●黒川清先生・ご講演:「イノベーション25」(注・黒川氏が座長としてまとめた2025年の社会に向けた政府長期戦略指針)の一部にフォーカスしてお話ししたい。その骨子からすると、今回の表彰には不満がある。学生部門の受賞者9人中女性は2人、企業部門では25人中1人だけ。外国人は21年間の歴史でたった1人。これは非常に異常だ。これからの世の中はこんな世の中ではないということを認識してほしい。ここにイノベーションのメッセージがある。
●「蒸気機関の開発」以来、産業・経済・社会のパラダイムには5つの変革の大きな波があった。今は1908年の自動車大量生産によって始まったパラダイム、「石油、自動車、規格品大量生産、消費文化」の極めて成熟したところにいる。そして、71年にインテルがマイクロプロセッサーを開発してから情報社会がインフラになり、インターネット、そしてネットスケープ、リナックス、グーグルなどが登場している。時代を変革するのは、受賞者の皆さんのようなパッション(情熱)とねばり強さを持ち、寝食を忘れて研究に熱中し、行動する人だ。
●インターネットなどを通じてこれから世界は一つになっていく。今までは研究から大量生産まで(一企業内などで)直線的につなげていたが、それでは破壊的イノベーションは出てこない。特にこれからのイノベーションで大事なのは、ヘテロジェネイティー(異質性)、ダイバーシティー(多様性)、アダプティブネス(変化即応性)だ。ダイバーシティーの観点から、冒頭の苦言を申し上げた。
●世界のどこから競争相手が現れてもおかしくない。強い部分は競争で伸ばすが、弱いところは強い人たちと組む戦略が必要。ぜひ世界中に友達を作り、エネルギー、環境、資源、南北問題など世界の出来事を身をもって経験し、起業家精神を共有して解決に取り組んでほしい。そのうえで、日本がどんな国になりたいか、自分の企業がどんな企業になりたいか考えていただきたい。

事実、2006年度の受賞者も学生部門では5人中女性はゼロ。企業研究所部門では20人中女性は1人です。2006年に学生部門で受賞した1人がこの賞では始めての外国人だったということをみても、日本がどんなに鎖国マインドなのか理解できるでしょう。皆さんはどう考えますか。

この点で最近、面白い本がありました。『「最後の社会主義国」、日本の苦闘』(毎日新聞社 2007年3月)というタイトルで、子供の時から15年間を日本で過ごした経験を持つレナード・ショッパさんというアメリカ人による著書です。日本のこともよく知っているし、いくつか著書もあります。使われているデータも正確で、観察も、解釈も鋭いと思います。

日本女性の社会進出は、UNDPでも知られるように、女性の開発指数(Gender Development Index: 選挙権、教育機会や大学進学率等)でみると世界で8番目と素晴らしいのですが、女性の活用指数(Gender Empowerment Index)では世界で43番目となってしまいます。このギャップは女性が活躍する機会を失っていることを示し、非常にもったいないことです。女性の活力、能力をいかに活用できるか、これはこれからの日本の活力への大きな課題なのです。過去にも何度か触れているので、「男女共同参画」等のキーワードで検索してみてください。

以前のような“Feminism”の動きは、老人介護体制の導入等で女性が昔に比べて開放され、さらに自立しながら生活ができる「パラサイトシングル」の出現など、女性はいつまでも一人でいられ、亭主に苦労する必要のない選択肢が増えた。わざわざ結婚もしないし、海外へも出られるし、子供の養育や教育等への負担を考えればこれも避けてしまう(一昔前は日本女性と結婚することはひとつの理想といわれていましたが、今はどうでしょうか?これは男性社会のステレオタイプ的価値観ですが・・・)。その結果、出生率の低下は必死で、男女共同参画などはお題目になり、改革への政治的な力にはならなくなってしまった。だから改革が進まないという趣旨です。言いえて妙ですね。この本の英語のタイトルは「Race for The Exits」です。

さらに、優れたグローバル企業は、多くの規制やエネルギーコストの高い日本から海外へ出るという選択肢を行使できる。選択肢のない人たちや企業だけが日本に残るという、やや情けない社会ともいえます。これがグローバル時代の怖いところです。

ところで、女性のリーダーシップでは今年のForeign Affairs, May/June issueに面白い論文があります。2007/3/32006/1/28のブログで紹介したように、米国Ivy Leagueの8校の中で、Harvard、Princeton、Penn、Brownの4校ではトップが女性です。一方日本では、例えば国立大学の87校中、女性のトップはお茶の水女子大学だけです。さらにこの論文は、政治の世界では女性のリーダーはまだまだ少ないが、世界の多くのNPOのトップは半数以上が女性であること、そして、その意味合いと政治における意義についても述べていて、なかなか面白いものです。ご参考までに紹介します。