民主党が衆院選圧勝、そして?

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8月30日の衆院選で民主党は自民党に対して歴史的な地滑り的大勝を収めました。自民党は1955年以来、いわゆる「55体制」と「鉄のトライアングル」による日本株式会社を構築し、政権を担当してきた政党です。(細川首相のときに一時中断しましたが、この政権は一年ともちませんでした。55体制は何も変わりませんでした。)

今回の選挙結果は日本の将来に長期的な影響を及ぼすでしょう。自民党の大敗はメディアが好んであちこちで報道するように、景気悪化、失業率の増加、「格差」の拡大などの責任を国民が自民党に問うた結果ではないと思います。むしろ、国民が「変化」をますます熱望するようになっていること、「55体制」の強い絆で結ばれた「当局」や「関係者」(例えば官僚主導省庁の閉ざされた強い権力、大企業、農家、土木関係、その他利益者集団など)から圧力を受ける自民党は「チェンジ」できないという認識の広がりの表れではないでしょうか?

私のこのような見解は外国の知日派の方々や日本国内で仕事をしてきた外国人の方々など、海外のオピニオンリーダーの見方と重なるように思います。9月7日、New York Timesに村上龍氏のOp-Ed、’Japan Comes of Age’ が掲載されましたが、これもまた日本国民が日本の現状をどのように認識しているかをよく表現しています。

また、例えばEconomistは9月5日版その他で‘The vote that changed Japan’ , ‘Lost in transition’, ‘New bosses’   ‘Banzai; A landslide victory for the DPJ Japan’ など、数ページの記事をいくつも掲載しています。他の外国メディアやプレスも同様な見解を発表しているようです。

Huffingtonpost はリベラルなon-line news とブログのサイトで, オバマ大統領もよく投稿していますが, 私の友人 Dr Sunil Chacko  (資料1)も常連の一人で, 今回の民主党圧勝について‘Japan’s New Era’ と題する記事を書いています。

作家、ジャーナリスト、そして知日派として有名なBill Emmott氏は私の友人ですが、2月にメールで、「先日偶然お目にかかった日の夜にThe Guardianのオンライン版に ‘A silver lining for Japan; The economic suffering here has been harsh and long, but at last political change is coming’ という簡単な記事を掲載しました」と教えてくれました。

その記事を読んだのですが、特に面白かったのは最後の部分(下線)、日本の民主主義に関わる一節で、私も日ごろからいろいろな場面で言ったり書いたりしていること (資料)と重なります。

以下、引用です。

‘It is a country, in other words, that is in desperate need of a change of government, and the election of a party dedicated to repairing broken social services as well as shaking up the economy. No doubt as and when the DPJ wins power, it will bring disappointments and its own occasionally shambolic ministers. No matter. The important thing in a democracy is to punish those who have failed and to bring in a new crowd capable of making new mistakes. Japan has waited far too long for that.

わが国は依然として世界第二の経済大国であることをお忘れなく。したがって ‘The Post-American World’においても日本は世界の諸問題に責任ある態度を取らなければならないし、またそうすることを期待されてもいるのです。実際、日本はグローバルな課題に貢献できる力を充分に持っているにも拘わらずその経済力に見合った積極的なアクションやコミットメントが充分ではありません。少なくとも私の目にはそう映りますね。

政治の行方、ジャーナリスト清水真人さん

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いよいよ衆議院選挙です。4年前の2005年9月11日、小泉総理の「郵政」解散から自民党が圧勝した衆議院選挙がつい最近のようにも感じられますが、それから小泉、安倍、福田、麻生とそれぞれ約1年ずつ総理を務めた、なんだか「不可解な」時間を過ごしたと、感じる方も多いでしょう。

このような政治の背景や真実は分からないことが多いわけですが、ここにはジャーナリストの使命があるのです。

日経の清水真人さんは、小泉総理による官邸主導の経過と記録、経済財政諮問会議の活動、そして小泉総理以降の3人の総理の交代劇について、わが国の政治の経過の「実録」を出版してくれました。いまでは“3部作”です。

1冊目を読んで大変感心したのですが、さらに2冊をタイムリーなテーマで書いています。

「官邸主導 小泉純一郎の革命」(2005年)
「経済財政戦記」(2007年)
「首相の蹉跌」(2009年)

日本の国家政治に何が起こったのか?誰がいつ、何をし、どう動いたのか、どのような意味があったのか、入念な取材に基づいた記録です。

ニュース、テレビ、週刊誌などの報道は、時間や紙面の制限から私たちには十分に理解できないことだらけです。しかも、これらの報道を私たちが後になって見る、読む、調べるというのはほぼ不可能で、大変なことなのです。

だからこそ、現役の記者が、取材した材料をもとに、多忙の中にもかかわらず、タイムリーに本として出版することはとても大事なことであり、国民にとっても大変ありがたいことです。良い記録にもなります。3冊目の著者の「あとがき」が、さすがにめまぐるしい展開があったこともあり、著者の苦労をよく表しています。

新聞を中心に、ジャーナリストはそれぞれ専門性を持って取材し、勉強し、記事を書くのですが(デスクなど、毎日のニュースの重要性などを考慮した編集の方針があり、多くは紙面に出ないのでしょうが)、新聞の一過性、紙面の限定等で、記事だけでは十分でないことが大部分でしょう。他にも週刊誌、月刊誌などがあります。新聞紙上でのシリーズもあります。かなりの記事はネットで見れるようになって来ましたが、でも、一つにまとめて、加筆したものをノンフィクションとして出版することの意義はとても大きいと思います。

闊達なジャーナリズムを作るかどうか、これは報道関係のメディア関係者、組織の意識と倫理の課題であろうと思います。

メディアは社会に責任ある大きな権力です。あいも変わらずの「記者クラブ」もいい加減にしてほしいです。組織が硬直化し、ジャーナリストがサラリーマン化していては、おしまいです。しかも、世界から広く見られているのです。国内向きの理由だけでは通じません。

インフルエンザ文明論

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4月の終わりからブタ由来のインフルエンザが広がり始め、世界中が大騒ぎになりました。速やかな科学的分析と対応、世界をまたぐ情報の共有を通して、幸いに今回はさほど大きな人的、社会的、経済的な被害は発生しないですみそうです。

よく考えてみれば人類の歴史は常に感染症との闘いであり、基本的には人類の活動範囲が広がるに伴って、これからも繰り返し起こることです。

この視点から月刊誌「新潮45」(7月号)に「インフルエンザ文明論」という私の考えを示してみました。

歴史を振り返り、将来を考える。これは何を考えるのにも大きな枠組みとして大事なことです。

ジャック・アタリの「21世紀の歴史:未来の人類から見た世界」は2006年の著作ですが、邦訳(2008年)が出ています。壮大な人類史と、21世紀の世界のありようについての予測です。今までの常識では考えられないような急速な変化です。でも本当に起こりそうです。

Gairdner賞、山中、森のお二人の受賞と素晴らしい先達たち

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顕著な学術研究に対する顕彰があります。医学生命科学分野でもいろいろな賞がありますが、この分野で最も権威があるものとしてはGairdner(ガーデナー)賞、Lasker(ラスカー)賞、そしてNobel賞というところかと思います。

Nobel賞は20世紀が始まったばかりの1901年から行われていて、広く知られています。いつも10月の初めに行われるNobel賞の発表はニュースをにぎわします。受賞者リストは19世紀末から20世紀の100年の科学の変遷と大進歩を表しているといってもいいでしょう。去年は自然科学分野で南部、小林、益川、下村さんの4人の日本人(「日本人」の定義についてはそれぞれで考えてください)が受賞して大いに話題になり、私たちに自信を与えてくれました。

Lasker賞というのは1945年から始まりました。臨床医学賞と基礎医学賞が主要な賞で、基礎医学では1982年の花房秀三郎、87年の利根川 進、89年の西塚泰美、98年の増井禎夫さんたちが受賞しています。臨床医学では2008年に遠藤 章さんが受賞しました。この方たちのうち、受賞対象が日本での成果が主だったのは西塚、遠藤先生のお二方だけです。

Gairdner賞は1959年からで、今年がちょうど50年目になります。今年は山中伸弥さんと森 和俊さんが受賞され、京都大学から2人の受賞者が出たことになります。山中さんは国内外でよく知られている「iPS」で、森さんの仕事は地味ですが素晴らしいものです。

4月10日の朝日新聞の記事にもあるように、今までのGairdner受賞者にはLasker賞を受賞した利根川、増井、西塚さんのほかに、石坂公成、照子ご夫妻と小川誠二さんがいます。受賞対象が日本での研究が主だったのは、西塚先生と今回のお二人です。

Lasker、Gairdner賞ともに、受賞者のうちからNobel賞の受賞者がどれだけ出るか、意識しているようでもあり、また、同じ分野でも3つの賞の受賞者が微妙に違った人選があるところもどんな議論がされたのか、推論してみるのもいいでしょう。特に2001年のNobel医学生理学賞になぜ増井さんが入っていないのか、Natureなどでちょっとした議論がありました。

Nobel医学生理学賞はまだ利根川さんだけしか受賞していませんが、これから出てくるだろうと楽しみにしています。

小川誠二先生は、人間の脳機能研究に広く使われている「fMRA」の原理を発見したかたで、125周年を迎えるScience誌(7月1日号)で、歴史上、科学の進歩に貢献した人たち約125人の中に入っている唯一の日本人なのです。

ダボスから-4

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Dsc00566 写真1

31日は英国のGordon Brown首相の後に、麻生総理の力強い演説がありました。特にAfghanistanでの学校や医療施設の建設や援助、Kabul国際空港の復興支援、Palestineでの日本の活動、またAfricaへの援助の増加など、世界から高く評価される話題に触れられたのがよかったです。これらのことはもっともっと積極的に国内外へ政府が広報すべきですが、こういうところで私たちにも新鮮に感じられてしまうのでは、ちょっと残念に感じました。でも、全体に力のある講演でした。

その後、総理はいくつかの面談をこなされて昼食を取られましたが、ここにお招きを受けました。ここでも海外の要人たちとの活発な議論がありました。積極的な会話は大事です。

Dsc00561_pmaso 写真2~3: 麻生総理の講演と昼食会

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Dsc00575_ogata 写真4: 昼食会場でJETRO林理事長、緒方ご夫妻、UNESCO松浦事務局長と

会場での昼食はなんとユニクロ(UNIQLO)がSponsorで、大変好評でした。気の利いた展示、いくつもの映像が流れていて(最初の写真など)きれいでした。またお弁当もとてもおいしかったようで、これも大好評。この日のお昼前後は、日本の存在がとても目立ちました。皆さんご労様でした。

斉藤環境大臣も総理に同行されたようで、私の友人でもあるYale大学のDaniel Esty教授と歓談されました。

Dsc00579_three_with_kk 写真5: 斉藤大臣、Esty教授と

最終日の2月1日は、Global Agenda Councilへ参加。

最後のセッションは南アフリカのTutu大主教(Apartheidの廃止などで活躍。その後も人権問題などで活動を続けて、1984年ノーベル平和賞 を受賞しています。)と若者達の対話が、なかなか面白く、さすがに宗教家、人権問題の活動家ですね。とても話が上手です。

Dsc00599_panel 写真6: Tutuさんと若者達の会話

今回の世界の転換期を象徴するダボス会議の締めくくりは、こちらのWebサイトで見ることが出来ます。

帰りがけにホテルのロビーで、Microfinanceをはじめて、Bangladeshの女性の自立を支援したGrameen銀行のYunusさん(ノーベル平和賞受賞。グローバル時代の社会起業家という大きな存在として何度も講演などで紹介しています)にお会いしましたので、日本の若者たちの意欲などについてお話しました。3月にも来日されるそうです。またお会いできると嬉しいです。

Dsc00604_india_and_kk 写真7: Yunusさんと

この後、Zurich空港へ移動し、これからNew Delhiです。

日本国のビジョン、私の考え

今年の元旦のブログから「国家ビジョン」について繰り返し発信しています(参考: 1234 )。

この背景には、去年12月に2回、そして今年1月に1回、同じ趣旨で講演する機会のあったこと、オバマ新政権の布陣からの必然、そして、今後の世界の変化を踏まえて予測(「想像」とは違います)されること、その中での日本のあり方を考えた上でのことです。

これらの3つの講演は、どれも1時間弱の時間でしたが、それぞれの会場で約800人、1,000人、600人と、しかも殆ど重複はなく、社会的に重要な地位にいる方々が多かったので、3度とも大体同じ内容の話にしました。

ありがたいことに、この講演の一つがほぼ全文、(社)産業環境管理協会の「環境管理」2月号に掲載されることになりましたので、ここにもPDFで紹介します。

「何をバカな」、「無理だよ」、あるいは「できない理由」がすぐに頭の中に浮かんでしまうのでしょうか。

朝日新聞の村山論説委員が書かれた、「窓」という記事も参考にしてください。

 “グローバル時代、日本の課題は?”
 2008年12月11日に開催された「エコプロダクツ2008 記念シンポジウム」での基調講演

ダボスから-1

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今年もまたダボス会議に来ました。これで9年連続の参加になります。今年はパネルも3つあり、結構忙しいのです。

話題の中心はなんといっても金融システムの崩壊と経済の大不況です。1日目に一番人気があったのは、RussiaのPutin首相のOpening Plenaryでした。始まる30分前から満席でしたね。彼のメッセージは「強気、強気」でした。この人との仕事は“怖そう”という印象を皆に与えたと思います。質疑応答にも強気の一点張りでしたからね。Webサイトで見ることが出来ます。

Dsc00501_2 写真2: Putin氏

プーチン首相の前には、中国の温家宝首相の講演が行なわれました。

皆さん、講演もなかなかですが、質疑応答で臨機応変に対応されるところもすごいですね。これはこういう場ではとても大事なことです。

2日目の朝はある朝食会に呼ばれていたのですが、そこになんとClinton元大統領が現れて、10分ほどスピーチされました。私も隣のテーブルにいたので握手してくれました。

Dsc00507_2 写真3: Clinton氏

2日目午前最後のPlenaryは、Tony Blair、PepsiのNooyiさん(インドのIITを卒業した女性です。参考12 )、IsraelのSimon Perez大統領などが登場し、なかなかよかったです。

Dsc00514_2 写真4: Blair氏(向かってその左がNooyiさん)

Dsc00519_2 写真5: Perez大統領

午後は化学産業界の理事会に4時間お付き合いしました。2年前まで英国首相の主席科学顧問だったDavid KingさんたちとAdvisorsとして出席。日本からは住友化学の米倉社長や三菱化学の小林社長が参加されました。

Dsc00526_2 写真6: 右から慶應の安西塾長、東大の伊藤教授、HarvardのMori教授、Nat’l University of Singapore Lee Kuan Yew School of Public PolicyのMahbubani学部長ご夫妻、Brown U. のSimmons学長、そして私

夜は、去年と同じく、東大と慶應が主催する「Japan Night」でした。ともに女性学長のAllison Richard(Cambridge U.)さんとRuth Simmons(Brown U.、こちらは初対面)さんにもお会いしました。

私はそろそろダボス会議への参加も遠慮する頃かなと考えています。

日本からも、もっと多くの若いリーダー達に参加して欲しいと思います。

グローバルヘルス Global health

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このサイトでいろいろな形で繰り返し出てくるのが、私たちのNPO 「Health Policy Institute, Japan」活動の一つの柱の「Global Health」関係です。これは国内の、そしてグローバル世界のいろいろな方々、たとえば世界銀行、ゲイツ財団、Rockefeller財団、また政府、政府機関とも協力しながら進めています。

これらの活動は「市民社会」活動といえるもので、このような動きムーブメントの推進を通して去年はGlobal Health Summitアフリカ開発会議TICAD4G8サミット等へも貢献できたと思います。このサイト内でもいろいろ「search」してみてください。

世界には、信じられないようなとても不幸な状況の方たちが大勢いるのです。その一つの企画にも参加することができました。以前にも報告しましたが、Imperial College、BBC、Gates財団の協力、Rockhopperの製作「SURVIVAL」 というfilm documentary seriesです。これが一応完成して、ウェブ上で英日独仏語で見ることができます。私もメッセージを出しているのですが、これは日本語で書いてあるのですが、英語でしゃべっています。ちょっと変ですね。

ワシントンから-2、科学者たちの新しい協力へ

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今回のワシントンでの3日間は、ほとんどを米国科学アカデミーの内部で過ごしました。何人かの方たちとの会談も、アカデミーに来ていただいて行いました。

8日はホテルにチェックインして一休み。午後からは、まずアカデミーの新しい報告書記者発表プレスに参加。共同委員長のJOHN HENNESSY(President of Stanford University)とBRENT SCOWCROFT資料1)、他に3人がプレスに出席しました。すごいメンバーですね。委員会でもアカデミーの会員ばかりでなく、その課題について必要な様々の方々に参加を頂いているのです。

委員会メンバーのJohn GageNorman Neureiter もこのプレスの会場に来ていましたが、私が途中で抜け出したので会えませんでした。John Gageとは翌日、会うことになりますが・・・。

翌日の朝は、NASでHarvard大学のCalestous Juma公開講演に参加。ここでJohn Gageさんに会えたのです。

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写真1-3: 講演するJumaさん;One laptop per ChildのNegroponteのlaptopを持つ女の子;John Gageさん、Jumaさんと

この2日間は、科学アカデミーに立てこもりで、次々といろいろな方たちとお会いしました。アカデミーを構成する3つの組織の各ヘッド、Harvey Fineberg(Institute of Medicine)、Charles Vest(Natl Academy of Engineering)、 Ralph Cicerone(Natl Academy of Sciences)と個別に会談し(Ciceroneさんとは慌しく)、新政権下での両国の科学者たちの協力、計画などについて話し合いました。国際担当局長のJohn Borightさんとほとんど一緒に動き回りました。

また世界銀行Atlantic CouncilFred Kempeさんなど主要なかたがたともお会いし、いろいろと議論しました。

Dsc00467_2写真4: Vestさんと

Dsc00469_2写真5: STS Forum会議、左から私、Rita Colwell さん、Yuan T Lee (資料1)さんなど。

10日は尾身幸次議員の主催するSTS Forumの委員会を開催。活発な議論で一日が過ぎました。ここでもまた、いろいろな友人に会えました。

新しい1年の始まりとして、とてもとても収穫の多い3日間でした。

ここに出てくる方たちは、このblogで何度も出てくるので、「サーチ」してみてください。

ワシントンから-1、オバマ政権首脳人事の「すごさ」と期待

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この3年、正月はじめにワシントンを訪問するのが恒例になっています。今年は例年とはまったく違う雰囲気です。新しい大統領に対する期待が、これまでに彼が人選を行なった閣僚や顧問団が極めて「質」のいいことで、さらに膨れ上がり、希望と期待に溢れているように感じます。

特に科学者たちの間ではエネルギー省長官にNobel物理賞のSteve Chu(Director, Laurence Berkeley National Laboratory)、特に科学に関係ある案件ですが、主任経済顧問にLawrence Sommers(Harvard U.)、科学顧問John Holdren (Harvard U.)、さらにNobel医学生理学賞のHarold Vamus (元NIH長官、現Sloan-Ketteringガンセンター総長)とEric Lander (MIT)、Ocean and Atmospheric庁長官がJane Lubchenco (元ICSU会長)等々、超一流の学者達、しかも従来から低炭素、環境問題等々で発言、活動をしている人たちばかりで固めています。科学者社会でも彼らに対する尊敬、信頼はきわめて高い人たちばかりです。すごいリストです。

今週あたりから、議会のヒアリングが次々と始まるようで、一切のコンタクトは禁じられているということです。猟官運動などと疑われかねないですからね。

エネルギー、環境等についてオバマ政権の方向は明白です。さて、日本は技術だけは「一流・最高」(?)。しかし、政治も、財界産業界も、役所も、メディアも、大学も、利害関係者と大きな抵抗勢力などとの調整ばかりで、「できない理由ばかり」です。もたもたしているうちに世界の潮流から取り残されてしまのでは?とても心配です。日本でも「新しい潮流」の出現が待たれるのですが・・・。

この2・3日、オバマさんの経済政策の一部の発表がありました。この歴史的なグローバル規模の大困難と大転換の時に、この国がすばらしいリーダーを持ったという誇りに近い雰囲気が、国民の間に(といっても直接に聞いたのは私の周りにいる方たちが主ですが、)広がっているようです。時間はかかっても、この問題を、協力しながら乗り越えようという自信がじわじわと湧き始めたというところでしょうか。課題はとてつもなく大きいのですが、世界のリーダーであろうとする国家の意思と国民の意識でしょうか。

日本ではこんな動きが現れないのでしょうか?兆しはありますかね?もどかしい限りです。

しかし、オバマ政権の困難は極めて大きいと思います。国内経済は言うまでもなく、Pakistan、Afganistan、Palestine-Gaza等々、難題は限りなく、しかも急を要することばかりです。

日本は国内問題で手いっぱい。世界への影響も、世界からの期待もそれほどでないので、まだ救われているといったところでしょうかね。本当に大丈夫でしょうか?