次期大統領オバマ氏、U Street(ワシントンDC市街)へサプライズ訪問

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先週ワシントンに3日間出張してきました(出張については近くブログでご報告します)が、滞在中に、クリントン政権で仕事をしていたこともある旧友とU Streetに出かけました。金曜日の夜のことです。このあたりは以前あまり治安が良くなかったのですが、ここ数年間で小さなレストランや洒落たジャズの店が立ち並ぶ安全な場所に変身しました。私達はその通りをぶらぶら歩き、店の一つにも入って楽しい時間を過ごしました。

翌日の午後、私が会議で一日中缶詰めになっている間に、なんと次期大統領のオバマ氏がFenty行政長官と共に同じエリアを訪問されたそうです。明らかに予定外のサプライズ訪問です。写真付の現地レポート(ワシントンポスト)がありますのでご覧下さい。

科学者としての天皇陛下

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今日23日は天皇陛下の75歳のお誕生日で休日。

先日12月16日のブログで、リンネ生誕300年にあたってロンドンのリンネ協会で行なわれた、天皇陛下のすばらしいご講演を紹介しました。

今週、書店に出ている週刊朝日の新年合併号(1月2、9日)に「科学者としての天皇陛下」という、動物行動学者の日高敏隆さんと画家の安野(あんの)光雅さん の対談が掲載されていて、そこでもこの講演について触られています。

この二人の巨人も、科学者としての天皇陛下のこのご講演について、私の感想と同じようなコメントをされています。つい嬉しくなり、そして皆さんにこの講演を是非読んで欲しいので、前回の紹介も偶然のタイミングでしたが、再び紹介します。

TIME誌のJet Li

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Jet Li を知っていますか?中国の有名なカンフーマスターで映画俳優です。私は彼のファンで、以前にもブログで彼のNGO、One Foundationでの新しい生き方についてご紹介しました。

ところで、最近のTIME誌に“The Liberation of Jet Li”(Jet Li の解放)と題する記事が載っていました。

このように最初はごく限られた人たちにしか知られていない活動が、次第に世界的なメディアで報道されるようになったという例は、他にもビル・ゲイツの“Creative Capitalism”なんかがありますね。これも以前ブログで取り上げました。

世界は絶えず動いていますが、その変化が数人の運動から始まったものも少なくありません。目を良く見開いて世の中で何が起こっているのかを知ることは大切です。目を覆って変化をやり過ごすことはできないのです。世界はつながっているのですから。

所得格差は死亡格差へ?

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日本でも国内も貧富の差が広がり、人為的事故が数多く報道されます。あまり、明るい将来が描けないのですね。国民の心は不安で、すさんでくるのです。これは家庭に、そして子供に伝わります。悲惨な事件が起こるのも、こうしたことと無関係ではないでしょう。人間は社会的動物です。一人では生きて行けません。

特に何もなければ、みながそれぞれそれなりに生活していくでしょうけど、何か起こった時は弱者が適応できずに犠牲になりやすいのです。この10年、日本での自殺の増加(約30%増、その増加分はほとんどが40代、50代の男性です、なぜでしょうか)、医療崩壊とか、あまりにひどい無責任「失政」年金制度、非正規雇用増加などなど、グローバル世界の変化に対応できない日本の政府、政治の責任です。貧困の犠牲者は増えるでしょう。

医療と教育、これら社会基盤の公的支援不備は、世代を超えて持ち越される社会の不公平であり、大きな社会不安定要因です。

低所得の人たちは身体の具合が悪くても受診を控える傾向があります。自己負担の増加、収入への不安、家庭内の問題などなど、経済成長期で構築された日本の社会制度がうまく機能しないのです。改革していくための政治、政府、社会が機能しないのです。20世紀後半の数十年にわたって出来上がった「政産官」を巻き込んだ既得権者の構造がしっかり構築されてしまっていて、改革がなかなか進まないのです。政治と役所と産業界の連携ががっちり出来上がってしまっているのです。経済成長しているときは社会への富の再分配が「鉄のトライアングル」でそれなりに機能していました。教育、年金、医療制度など、社会に必須な基本的も制度も機能していたのです。この従来からの既得権者たちが、日本を囲む世界環境の変化に対応できないのです。

「低所得の方たちは早く死ぬ」という現象はいくつも報告されています。これが基本的な人権問題ですが、先日2回にわたって報告したロンドンでの会議、WHOのCommission報告書の核になる大きなメッセージです。日本のようなOECD諸国では、この格差などは国内問題であり、政治の問題。ということは、皆さんが選挙で誰を選ぶかにかかっているということです(納得できなくてもこれが民主主義プロセスの基本ですから)。

この経済格差、健康格差、「寿命格差」について、最近の近藤克則先生たちの成績について朝日新聞に記事があり、私のコメントも掲載されています。もちろんスペースの制限で言い足りないところがあります。私たちのシンクタンク、医療政策機構調査でも同じような人々の行動が見られています。

Ferrari Californiaのお披露目

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イタリア大使館でFerrari Californiaのお披露目がありました。

なぜ私が?実は先日、「自動車イノベーション」でお声がけいただき、日本とイタリアの自動車の強さ、顧客を意識した「ものづくり」だけでなく、デザインなどで心をつかむ「ものがたり」の大事さについてお話ししました。Ferrariのデザインなどで著名な奥山さんが企画したのです。そこで、次の機会には、という話になったからでしょうか。

ちょうど日本でF1が開催されるタイミング。Ferrariチームのレーサー、キミ・ライコネン(フィンランド)とフェリペ・マッサ(ブラジル)も来ていました。なかなかうまいPRをするものです。

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写真 経済産業省の渡辺さんと

創造的資本主義 - Creative Capitalism-

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お気づきかもしれませんが、今年は“一つの包括的な社会”(参照:)に向けた社会的な動きの裏にあるグローバルな課題や根本的な変化について話す特別な機会に何回かお招きいただきました。

それらのスピーチにおける重要な主題の一つは資本主義の変わりゆく側面、すなわちCSR、“corporate social responsibility (企業の社会的責任)”についてです。そこでビル・ゲイツ氏が使う“Creative Capitalism(創造的資本主義)”という言葉を引用しました。みなさんはゲイツ氏がこの言葉で何を言わんとしているのかと思われることでしょう。

最近のTIME誌では“資本主義の解決策”と題したビル・ゲイツ氏との特別インタビューが特集されていますが、そこでは創造的資本主義のコンセプトについて議論され、現在の世の中の状況は既に古くなった20世紀の反映であると彼は見ています。記事は大変面白い個人的見解ですが、ビジネスのリーダー達には強いメッセージを発信し、私のスピーチで伝えたいメッセージとも一致しています。

皆さんがビジネスその他でやっていること、やろうとしていることを考える際に、このコンセプトや活動についてちょっと考慮していただけると嬉しく思います。

ビル・ゲイツ氏は今度11月に東京に来ます。

輝く女性研究者たちと赤いバラ

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以前にも紹介しましたが、化粧品会社として著名なL’Orealは、「For Women in Science」(ここのウェブサイトはなかなか綺麗ですので、いろいろ探索してみて下さい)というプログラムをUNESCOと共同で主宰し、世界にその存在感を示しています。このプログラムは今年で10周年を迎え、この春パリで、今までの受賞者たちをお迎えしてお祝いの会がありました。

日本でも3年前から国内の若手女性研究者を表彰する企画が始まりました。去年もこの表彰式と祝賀会に出席したのですが、今年も素晴らしい方たちが表彰され、式にはご家族、指導をされた先生や研究者仲間たちも出席して、とても素敵なお祝いの会になり、うれしい気持ちになりました。

今年は4人の素晴らしい方たちが選ばれました。晴れやかで、また楽しいひと時を皆さんで共有することができました。

女性誌の「Marie Claire」も活動に参加し、受賞された皆さんには赤いバラのブーケ(写真)が手渡されました。2日前に沖縄でご一緒した大隅典子さん、そしてやはり高名な科学者である大隅さんのお母さまにも、お会いしました。

Lorealjapan200801写真: 坂東さんと4人の受賞者

レセプションでは内閣府男女共同参画担当の坂東局長が、日本の科学者で、女性の割合がOECD諸国で最低であることなどについて述べられ、エールが送られました。私は乾杯の音頭を任されたのですが、日本では女性の開発指数(Gender Development Index)は世界でトップ10内なのに、女性の社会進出(Gender Empowerment Index)は世界70数国でも40番程度と低いこと、この差は実力主義でないオトコ社会であること、そして、今回の北京のOlympicでの野球とソフトボールの日本選手の違い、そしてサッカー、レスリング、柔道などに、日本の男子と女子の根本的な違いが見てとれはしないか、という話をしました。皆さんも考えてみてください。ここに日本社会の問題があるのも事実と思うのです。

受賞者の皆さん、ご家族の皆さん、支えあった研究仲間の皆さん、審査に関わった先生方、その他関係者すべての方々に、おめでとうと言いたいですね。

しかし、このような賞を作るところに、世界企業の戦略が見えますね。受賞者の一人ひとりが、これからの長い間、L’Orealの大使として、国内ばかりでなく、広い世界にスポンサー企業の広告塔として、世界の女性の心をつかみ、男性の心を動かす、素晴らしい役目を果たしてくれるのです。これほど素敵で、美しい広告媒体はなかなかないと思います。日本企業も、もっともっとこのような視点で社会貢献を考えてもらいたいと思います。これこそが、企業の社会的責任(CSR)なのですよ。

企業トップの人事、門外漢の素朴な疑問?

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日本経済新聞の「領空侵犯」というコラムの取材を受けました。インタビュー記事ですが、専門外のことについて素朴に疑問を呈してもらうという趣旨のものです。私なりのテーマがいくつかありましたが、企業統治の一面を取り上げてみました。2008年8月4日の朝刊5面に出た記事は“経営者に「任期」は不要-能力・実績に応じて決めよ-”というタイトルでした。記事は以下のように進みます。カッコの中が私の発言の要旨です。

■企業経営者の「任期」について疑問をお持ちとか。
「昔から、社長の在任期間は二期四年とか三期六年までといった慣例や、内規が存在する企業が多いようです。でも、それに何の意味があるのでしょうか。任期をあらかじめ決めておいたからといって、これまでの日本企業のガバナンス(統治)がしっかりしていたとも思えません」

■最近、大企業トップの在任期間は短くなる傾向があるようです。取締役の任期を従来の二年から一年に短縮する企業も相次いでいます。
「経営者の任期をあらかじめ短く設定してしまうと、目先のことしか考えず、長期的な視野に立った経営ができなくなるのではないでしょうか。それにもし自分の在任中に何か問題が起きたら、自分で解決しようとするより問題を後継者に先送りするようになります」「これは役所や、かつて私がいた大学の世界でも同じことです。役人は次々とポストが替わるから、問題については自分で何かするより先送りしようとする。大学の学部長や学長も任期が短いために、長期的な視野に立った人材育成ができません」

■逆に、経営者の在任期間が長期化することの弊害や「老害」批判もあります。
「『老害』を言うなら四十歳代の若いうちに社長にすればいいだけの話でしょう。そうすれば社長を十年やってもまだ六十歳前です。シャープやホテルオークラなど四十歳代の方が社長になった例もありますが、日本の大企業には若い経営者が少なすぎます。リーダーに必要なのはビジョンと、そのビジョンを人に伝える能力、知力と体力、それに揺るぎのない信念。年齢は関係ありません。もっと若い人材を抜てきすべきです」「それに『長期政権』はすべてダメなわけではありません。ソニーの盛田昭夫さんのように、長期間にわたって素晴らしい手腕を発揮した創業経営者は日本にもたくさんいます。サラリーマン経営者でも、長期政権で優れた業績を残せる人はいるはずです」

■問題なのは在任期間の長短ではないと。
「最初から任期を決めておくのではなく、その経営者の能力と実績を客観的に評価して、問題があればすぐに辞めさせる仕組みを作っておくことの方が重要です。でも実際にそういう仕組みが機能している日本企業がどれだけあるでしょうか。いったん就任したら慣例の在任期間を全うするまで辞めさせることができないのなら、ガバナンスが存在しないと言われても仕方がないでしょう」

■もう一言
大学教授は、いったんなれば定年まで身分安泰。これもおかしい。

■聞き手から
経営トップをどう選び、どう評価するのか。企業統治の根幹にかかわる重要な問題だ。帝人や花王など、社外の油脂記者や社外取締役が社長後継者の選出を審議する例もあるが、こうした先進的事例はまだ少数派。経営トップのあり方について黒川氏が抱いた素朴な疑問に、日本の経営者たちはどう答えるのだろうか。(編集委員 宮田佳幸)

この記事の内容についてはいろいろと意見、言い分はあるでしょう。もっと長くお話ししたのですが、少ないスペースでまとめていだきました。しかし、このグローバル経済の時代に自分たちの理屈だけでは通用しないと思います。特に世界第2の経済大国の企業なら、なおさらです。企業の信用、国家の信用でもあります。情報の時代、透明性を担保した企業統治は会社の価値の基本と思います。企業に限ったことではありませんが、隠そうと思っても世界から見えているのです。これが「フラットな時代」の怖さです。

さてそこで、この記事についての議論が日経ネットPLUSにいくつか出ています。これらは会員登録(無料)すれば見ることが出来ます。皆さんはどうお考えでしょうか。

世界の政治家の活動“GLOBE Tokyo G8+5 Legislators Forum”

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6月28・29日に、G8+5の政治家達の活動“GLOBE Tokyo G8+5 Legislators Forum”が東京で開催されました。日本側の会長は谷津前農林水産大臣です。1日目の第1セッションは英国ブレア政権で環境大臣を担当したMorleyさんの司会で(先日のG8環境大臣会合もお会いしました)、福田総理の挨拶に始まり、ブレア前英国首相と安倍前総理の基調講演がありました。みなさん、なかなかよかったです。

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写真1 福田総理の挨拶とブレア氏、安倍氏の二人の前首相

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写真2 ブレア氏の挨拶

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写真3 安倍氏の挨拶

この会議は1989年に発足、さらに1992年にRioで行われた地球サミットを機会に、各国超党派の議員を主体に形成されたものです。2005年のGleneaglesサミットの時には“G8 Gleneagles Climate Change Dialogue”の枠組みも立ち上げています。

米国のMcCainObamaKerrySnoweといった各上院議員からのビデオメッセージもありました。“米国では、新しくなる大統領も、議会も、多くの大企業、500を超える市長、さらに多くの州知事が参加して、明確に「低炭素社会」、「Cap and Trade」への大転換が始まるでしょう”とのメッセージがありました。日本だけが様子見という雰囲気なのでしょうかね。政治も、政府も、企業も、「市民」ももっと明確な覚悟が必要ですね。

GLOBEでの議論は大変に活発でした。

私も2日目に講演をしましたが(写真4)、森林、生物多様性のセッションでしたので、ちょっと困りました。依頼されたのが1週間前、しかも9ヶ国語の同時通訳なので、神戸で行った講演をベースにして、さらにこの2つのテーマを入れながら原稿を作成 、通訳、参加の皆さんにコピーを配布した上で話をしました(十分にプルーフできなかったので間違いが結構ありましたが)。

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写真4 2日目の講演