ダボスから、その2

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第1日目の最後に行われた基調講演は米国のRice国務長官でした。今のアメリカとこれからの世界とアメリカの責任について、明確なメッセージをゆっくりと、堂々と話されました。その後、Blair、Kissinger、J. Dimon(JPMorgan and Chase)、KV Kamath(ICICI Bank、India)、IK Nooyi(Pepsi、有名なインドのIIT出身の女性・・・日本の企業で想像できますか?)、DJ O’Reilly(Chevrons)、Wan Jianzhou(China Mobile Communications Corporation)等、世界中の政治、ビジネスのトップが壇上に上がり、いくつかの質疑応答があり、Riceさんの対応も立派なものでした。これが世界なのです。大勢の見ている前での応答です。

今年は特に参加者が多く、しかも国家元首が20人以上こられるそうです。第1、2日目だけでも、Karzai (Afhjanistan)、Musharraf(Pakistan)、Yushchenko(Ukraine)、Simon Perez(Isreal)等々、さらにAl GoreやBill Gatesです。

日本は2001年の森総理以来でしょうか、福田総理がこられます。TICAD、G8サミットのホストとして世界が期待しています。どのようなメッセージを発信されるでしょうか。役所の文章からはるかに離れた、世界第2の経済大国としての首脳に相応しい格調高いパンチの効いた演説であることを期待しましょう。「政治家は言葉」ですからね、国内はともかくとして。海外プレスへの戦略的対応も大事です。

緒方貞子さんは言うまでもなく日本を代表する国際人ですが、竹内弘高、石倉洋子の一ツ橋ビジネススクールの国際派、また竹中平蔵さん等々が、いろいろなパネル、司会などで大活躍です。WorkSpaceというbrainstormingセッションでも、竹内さんの司会は皆を楽しませながら話を進める、いつもながらの腕前です。これはちょっとまねができませんね。

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写真1 会場で鳩山さん、藤崎大使と

夜は東大・慶応大のホスト、帝人・双日の支援で、Japan Sushi Receptionがあり、多くの政治、学会、ビジネスに携わるお客様が大勢こられました。このような催しは財界が率先してすべきですね。ここはあくまでも世界経済フォーラムなのですから。

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写真2 Japan Receptionで
武田製薬の長谷川さん、インドの有名な政治学者で友人のChallaneyさん、経済同友会の桜井さんと

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写真3 NHK「Close-Up現代」の国谷さんと

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写真4 北京大学長と

政治家では中川秀直、尾身幸次、鳩山由紀夫(小沢一郎党首がこられなくなったそうで)、塩崎恭久、古川元久、猪口邦子さん等、ビジネス界からはトヨタの奥田さん、住友化学の米倉さん、経済同友会の桜井(リコー)代表幹事、帝人の長島さん、武田の長谷川さん等、会長や社長が多士済々。藤崎大使、G8サミットシェルパの外務省河野審議官、NHKの今井さん、国谷さん、そして北京大学長のXu Zhihongさん、Gates財団 Global Health InitiativeのDr. Tachi Yamadaも顔を出して、皆さんで日本の貢献などについて話しました。Googleの創始者S. Brimもちょっとだけ顔を出しました。そうそう、iPSで一躍世界に躍り出た京都大学の山中さんも来られてました。

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写真5 竹中さん、Dr. Yamada、Bonoのスタッフ2人と

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写真6 Dr. Yamada、石倉洋子さん、慶応大学の安西塾長と

今年は福田総理が来られるということで、どこまで世界政治のリーダーの一人として、どこまで高い理想と踏み込んだ政治家の発言ができるか?、皆さん期待とちょっとした不安がないまぜ、といった雰囲気といえましょうか。

過去のダボス会議の報告も見てください。お馴染の顔も出ています。

ダボスから

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例年のことですが、1月末にはダボス会議が開催されます。今回で8年連続の出席です。過去にも同じ時期にブログで報告をしているので見てください。

去年からですが、雪がとても少ないです。昨日は少し降りましたが本日は超快晴です。

今年は26日に総理が来られて演説をされるので、いつもより財界人の出席も多いようです。いいことですね。トヨタの奥田会長も24日にいらっしゃるそうです。往路のフライトでは緒方貞子さん、住友化学の米倉社長さん(ご両者ともご夫婦でした)、そしてNHKの今井さんたちとご一緒しました。

さて、23日初日の最初のセッション「Update 2008: Defining Innovation」に参加しました。IDEOTPG GrowthDoblinなど、米国のCEOとPartner、Index(NPO、Denmark)のCEO、それと私の5人で、司会はNussbaumさん(Business Week)で行なわれました。クリーンエネルギー投資、弱者救済、open innovation等の話がメインで、皆がグローバルな課題を中心に問題設定をしているのは頼もしく感じました。ちょっと「おや?」と意外に感じたほどです。TPGのMcGlashanさんの話から、私の友人でもあるSteven Chuの話が出て、そのことを話すと、「彼のことはよく知っている、大変素晴らしい方で、応援している、彼のprojectにも投資しているよ」と言っていました。

さて私は何をしゃべったかというと、“Googleの10年”、“10年前には瀕死だったAppleから、iPod、 iPhoneが”、“大ヒットしているNintendo ‘Wii’で、ビデオゲームに弱いお父さんが孫と遊んで汗をかく”、“Nergroponteの‘One laptop per child’のコンセプトはSoftwareからして画期的”等々、最近のフラットなグローバル社会のinnovationとして例示し、世界が抱える課題への貢献意識が世界中に広がっていることを指摘しました。加えて、2006年、2007年のノーベル平和賞がグローバルの課題に対する回答、つまりinnovationの目標として啓示的であることを話し、皆さん納得してくれたと思います。この辺の問題意識は、1月2日10日のブログなどでも繰り返し発信しているところですので、このブログを見てくださっている方たちには理解していただけるかと思います。

その後、隣に座った二人で相談しあって、新しい提案を出すというセッションがありました。結構面白いアイデアが出るものですね。感心しました。

後で何人かの方が、私の問題提起は明確で、刺激的で、とてもよかったと言ってくださり、嬉しかったです。フィードバックはありがたいです。いいときは褒めましょう、特に子供達をね!

今年のダボス会議ではClimate Changeのセッションが“28”も設けられていて、ビジネス界における問題意識の大きさを示しています。日本の産業だけが閉じこもり症候群に見えます。

その後のセッションでは、去年のノーベル平和賞IPCC座長のPachauriさんにお会いしました。来月、東京にお招きしていますので、楽しみにしていてください。

野依さんとの対談

理研ニュース 1月号に理化学研究所理事長の野依さんとの対談が掲載されました

ご存知のように、野依さんも私も、大学・大学院教育や研究者の育成について、皆さんと同じく熱い思いを持っています。特に、グローバルに活躍する人材を育成するという思いが私たち二人には強いところが、他の多くの方たちと少し違うところかと思います。

少し短いので私たち二人の気持ちが十分にはお伝えできなかったところはありますが、私たちの思いを少しでも汲んでいただければと思います。

日本のGDPは?

元日のブログ「行った年2007年、来た年2008年、日本はどこへ」の中で、「週刊 東洋経済」12月29日/1月5日迎春合併号の「10賢人が語る世界の大変革」という特集に、私の意見が“賢人の意見(?)”として出ていることをお知らせしました。読まれた方も多いと思いますが、本日付けで版権の問題が解禁になりましたので、早速、こちらに掲載しました。ご意見いただければ幸甚です。

 世界に通用する「個人力」がイノベーションの源泉だ(PDF)

ニューヨークから

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ニューヨーク(New York City, NYC)に来ました。アメリカ最初の科学アカデミーであるNew York Academy of Scienceを訪問する為です。この何年かお付き合いしていて、去年移転した新しいオフィスに伺いました。会長のEllis Rubinstein(写真1)のオフィスは、9.11の起きた“グランドゼロ”の隣にあるビルの40階。“グランドゼロ”を直下に見下ろすことができる場所です。朝8時半から約45分間のインタビュー。10時からは、「Scientists Without Borders」(写真2)という新しい企画の評議会が行なわれました。聞いたことのあるような名前じゃないでしょうか?そうです、「国境なき医師団(Doctors Without Borders)」から取った名前です。同じようなミッションを考えているのです。私を入れた12人ほどがAdvisoryメンバーとなっています。

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写真1 Rubinstein会長と彼のオフィスで
(彼の奥様、Dr. Joanna Rubinsteinさんは、Jeffery Sachs氏が推進するプログラムのExecutive Directorをされていて、この日はDr. SachsとEthiopiaにいるようです)

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写真2 Advisoryに参加のメンバー、NYASスタッフと

AdvisoryメンバーにはKenyaのDr. Wakhunguも参加されています。ご存知かと思いますが、Kenyaは大統領選挙の直後で、不正の疑いがあるなどとして大騒ぎが起こっています。特にキベラスラムなど、大変なことになっていると報道されていたので状況を聞きましたが、本当に大変なようです。2006年6月のブログにも書いたOlympic学校2007年10月のブログでも触れています)も焼かれてしまったそうです。なんとか復興させたいですね。

また、昨日のWashington DCでもお会いして、ブログでも紹介したDuke UniversityのVictor Zhauさんも、このAdvisoryメンバーに参加していて、今日も一緒です。昨年10月にもご紹介したIntl AIDS Vaccine Initiative(IAVI)Dr. Seth Berkleyもメンバーの一人で、実体験に基づくアイデアをいろいろと出してくれます。3時間延々とBrain Stormingをし、このICTの時代、登録方法を含め、いろいろな可能性と運営方法、資金等、課題がたくさんありますが、いい勉強です。Columbia大学医学部M.D.-Ph.D.コースの学生(ご両親と一緒にインドから移ってきたそうです)も一人参加しています。若い人たちも参加させながら、このような新しい企画を作っていく。なかなかいいですね。時間がかかっても立ち上げたいです。

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写真3 NYASの受付に置かれたDarwinの胸像の前で、NY総領事館の三浦副領事と

午後は「Foreign Affairs」で有名なCouncil of Foreign Relationsへ。なんと昨日、以前にも紹介したGates財団のTachi Yamadaが、「Global Health」の講演をしていたのでした。私もWashington DCの世界銀行で同じテーマの講演をしていたのですから、偶然とはいえ面白いものですね。あとで早速メールしておきました。目的はこの「Foreign Affairs」2007年1・2月号に、「AIDS援助プログラムには実に無駄が多い」と指摘する素晴らしい論文を書いたSenior Fellow for Global HealthのLaurie Garrettさん(写真4)に会うためです。私はこの論文に注目して、今年の5月に横浜で開催されるTICADにあわせて第1回の受賞式が行われる、小泉元総理の提案で始まったNoguchi Hideyo Africa Prizeの選考委員になっていただいたこともあり、そのお礼も兼ねて意見交換に来たのです。

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写真4 Laurie Garrettさんと

ニューヨークも暖かいです。この街には独特で不思議な魅力がありますね。

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写真5 NYCの街角で

続いてRockefeller財団を訪問です。Managing DirectorのDr. Ariel Pablos-Mendez(写真6)に会いにいきました。彼が主催した会議の報告書、「Pocantico II:The Global Challenge of Health Systems」に注目し、意見交換に来たのです。Rockefeller財団の会長、Dr. Judith Rodinからは、「どうしても時間が合わなくて・・・」、というメッセージが残されていて、残念ながら今回は会えませんでしたが、2週間後に行なわれるダボス会議で会えることでしょう。

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写真6 Dr. Ariel Pablos-Mendezと

Dr. Rodinは、1994年にIvy Leagueの大学で初めて女性の学長になった方です。私のアメリカでのキャリアが始まったPennsylvania大学の学長としてです。今では、Ivy Leagueの8校のうち、4校(Princeton、 Pennsylvania、Brown、Harvard)で、女性が学長をされています。日本はどうでしょう、私はくどいぐらい繰り返し発言し、プッシュしているのですけどね。

彼女の前のポストはYale大学のProvostだったのですが、何度か紹介していますが、現在のCambridge大学のDr. Allison Richard、MITのDr. Susan Hockfield等も、その前職はYale大学のProvostだったのです。偶然ですかね?これはYaleの人を見る目が素晴らしいうということでしょうか。

この日はNew Hampshire州でアメリカ大統領の予備選挙が行われ、クリントン候補がIowa州での負けを取り返し、Obama氏と1勝1敗になりました。初の女性大統領となるのでしょうか。

この2日間の訪問と講演の主な目的は、今年1、2月に東京で開催されるGlobal Health関係の会議(WHO、世界銀行、Gates財団、NPO医療政策機構、日本政府などが関与しています)への準備と、それらを通して、TICAD、そしてG8サミットへの広報とその準備という面が大きいです。

夜は、午前中に一緒だったDr. RubinsteinとDr. Berkeley、そして今年の夏に東京でお会いした、今はColumbia大学大学院、School of International and Public Affairsで勉強している中曽根君を呼んでSohoでディナー。彼はとても素晴らしい若者です。世界を目指して大いにがんばってほしいですね。名前から感じたかもしれませんが、そうです、中曽根康弘前総理のお孫さんで、お父さんは中曽根弘文参議院議員です。

9日の朝、JFKAirportから帰国の途につきました。

ワシントン、そしてニューヨークへ

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1月6日、成田からWashington DCへ。去年と同じで結構暖かいです

午後、私たちの“Think Tank”、医療政策機構English)から同行してくれたジェームス近藤くんと、Holocaust Memorial Museumに行きました。企画も、建物も、よくデザインされています。なんてばかげたことをしたのかと感じますが、程度の違いこそあれ、今でも似たようなことが世界のどこかで起こっているのです。狂気の沙汰です。このような歴史資料、文書の保存、展示、開示は大事なことです。それでなければ何も学ぶことができず、同じことを繰り返してしまうのです。愚かなことですね。

翌日7日の午前は、National Academy of Sciences(NAS)での会議(写真1)。昼食はNational Academy内の会員専用サロン(国務省科学顧問のNina Fedoroff博士のご招待だったのですが、よく考えてみれば私もInstitute of Medicine(IOM)の会員なので、このサロンを使えたはずなのですが・・・)で、Fedoroff博士と有本さんとで、いろいろと相談ごとです。話しているとすぐにいろいろな方たちとのネットワークがつながります。

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写真1 左から、Goldin元NASA長官、National AcademyのCicerone会長、何度もご紹介しているAlexandria図書館長のSerageldin博士

この日は、ちょうどIOMの理事会があり、朝、会場の入口で旧友のVictor Zhau氏(「イノベーション25」の応援団としてお世話になっているDigital New Dealでおなじみの大阪大学の森下竜一さんの先生で、いまやDuke大学の医学部から病院の全てを仕切っている切れ者です)とばったり。また、ちょうど1年前に昼食を共にしたIOM会長のFineberg氏ともお会いしました。プロの友達はいいものです。

(ところで、先ほどのDigital New Dealで、「DNDパーソン・オブ・ザ・イヤー2007」に私が選ばれていました。)

また、12年もの間、National Academyの会長を務め、特に途上国への援助に力を注がれたBruce Alberts氏にも、去年10月以来ですがお会いしました。大学(UCSF)に戻ったけど少し退屈だったと言っていました。今年3月からは「Science」誌のEditor-in-Chiefになられるそうです。「これで有名になるね!」なんて冗談を言ってあげました。

午後は世界銀行へ。East Asia and Pacific RegionのVice President、James Adams氏、そしてScience and Technology Program CoordinatorのAlfred Watkins氏等とお会いし、講堂で彼らの司会の下、「Innovation for Development」の講演を約45分行いました。これもwebcastで見ることができます。新年早々でしたが、日本大使館等からも案内があったようで、かなりの日本の方が見えられていました。質問も多く、楽しかったです。

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写真2・3 世界銀行での講演の後で。(写真2の私の向かって左がWatkins氏。)

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写真4 世界銀行の出口で、日本大使館の江端さんと(江端さんは以前イラクのサマワにも赴任していました。)

夕方はBush大統領の科学顧問、Marburger博士を訪問しました(写真5、6)。その後またNational Academyへ戻り、National Academy of Engineeringの会長で、10余年に渡ってMITの学長を務めたCharles Vestさんとお会いし(写真6)、これでNational Academies 3部門全ての会長とお会いできたことになりました。

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写真5・6 Marburger博士の会議室で。(写真6は秘書のJoan Rolfさん。日本に2年ほどいたことがあり、日本ファンです。)

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写真7 左から、私、Dr. Goldin、Dr. Vest、有本さん

夕食の途中で失礼し、Ronald Reagan AirportからNew Yorkへ向かいました。

それにしても、忙しい一日でした。

昼の気温は18度程度、実に暖かでした。去年は20度を越えていましたけどね。温暖化ですね、確実に。

科学技術と国家政策

去年の11月のblogでも少し触れましたが、11月16日に、朝日新聞科学部50周年記念のシンポジウムに参加しました。立花隆さんの基調講演と私も参加したパネルが行われました。ちょっと時間が少なかった嫌いもありますが、立花さんの話はさすがでした。この内容はアサヒコムで見ることができるのでアクセスしてみてください。

環境、低炭素社会技術ヒートポンプ

イノベーション25でも提言しているように、日本の環境技術、低炭素社会への技術には素晴らしいものがあります。これらの技術はこれからの経済成長のエンジンとなり、国際貢献の中心になれるものなのです。ヒートポンプもその一つです。

学者の立場から多くを発言し、政府税調議長を務めるなど政策立案と実行に多く関与してきた加藤寛先生、そして大学改革をリードする東大の小宮山総長との鼎談が、12月19日の日経新聞朝刊に見開き2面にわたって掲載されました。これは記事広告ですが、なかなか意味のあるものでした。小宮山先生は省エネの見本のようなご自宅を建てています。これは本来、低炭素社会への政策誘導をすべき具体例のひとつで、住宅、ビルに当てはまる政策課題です。抵抗勢力はどこにでもありますが。

ヒートポンプ製造の90%以上は日本が占めています。このような優れた環境技術は、海外諸国へ売り込み、経済成長する発展途上国への技術移転や製品の売り込みを通して気候変動対策、低炭素社会構築への国際貢献を世界にアピールできる絶好の「ネタ」です。国内の市場は規制等で政策誘導、一方で海外へは国際貢献、外交手段として生かすのは政策の選択でもあります。

しかし、1960、70年代に活躍したSONYの井深さん、盛田さんのように、何が何でも世界一を目指して世界のどこへでも積極的に出て行く企業リーダーの高い志とイノベーション精神が大事です。技術は素晴らしいけど、それを社会的、経済的価値へ転換する戦略が、国内ばかりを見ていては、上手く立てられないのです。これは、最近紹介した海外のレポートでも指摘されているところです。いろいろと理由や理屈はあるのでしょうが・・・。

世界遺産の町Bathから

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14日、LondonからBathへ車で約2時間の移動です。Bath郊外にあるLuckman Park(写真1)という広々とした荘園でしょうか、Hotel、会議の会場として使われています。昔は狐狩りなどもしていたのでしょう。このようなところには何度か行ったことがありますが、英国の豊かさを感じさせられます。ここが会議場なのですが、とにかく寒くて、天気は雨模様、とても外に出る気分ではありません。もっとも、到着してすぐに昼食を取り、ちょっと一休みした後は、ほとんど目的のCarnegie会議でしたけど。

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写真1 「母屋」玄関からエントランスを見る

ホスト国UKのKing顧問、USのMarburger顧問、ロシアのFursenko大臣、カナダのCarty顧問、MexicoのHicks氏(Director、National Council for Science and Technology)と私で会議を開始。各国の科学政策動向、気候変動への対策等についてプレゼンと議論を行い、話は大いに弾みました。EUのPotocnik大臣は飛行機が大幅に遅れて夜遅くに到着、フランスのPecresse大臣は15日早朝の到着となりました。ドイツSchavan大臣(King、Carty両氏とともに10月の京都STS Forumでお会いしました)は急遽入った公務で欠席です。

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写真2 前列向かって左からCanada、UK、France、後列左からRussia、USA、Mexico、EU、Japan

翌15日はドイツを除く全員が会議に参加。私は日本で2008年に開催されるG8、TICAD他の予定、また2008年はMillennium Development Goalsの中間年であること、そしてまだ出たばかりの環境審議会の報告書ドラフトなどを中心に議題を提供しました。午後にはBaliの「COP13」の速報が入り、夕方にはLondonからTVのライブ取材が来てKing卿が対応。この辺が、英国の報道と政府対応の上手さですね。感心します。

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写真3 左から、EU、Japan、UK、Mexico、USA

夜はBathの街をツアー。ガイドのおばさまがとても張り切って、丁寧に案内してくれました。街の中心を30分ほど歩きましたが、気温は零下、とても寒かったです。食事はLuckmanで。

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写真4 食前のChoir

翌16日午前は、シェルパを入れての会議。2008年のG8サミット、これからの大型科学政策、低炭素社会科学技術への意見、要望等々が話し合われました。

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写真5 玄関前で左から、西ヶ廣公使、私、板倉参事官

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写真6 玄関前で、松浦一等書記官と

会議終了後はLondonから前夜から来てくれていた西ヶ廣公使、松浦書記官たちと歓談。しばしの後、板倉参事官とHeathrow空港へ向かいました。17日月曜の午後に成田着。短い旅はいつものことですが、しかし、くたびれた100時間の旅でした。

Londonから

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いよいよ今年もあと残すところ3週間。12月13日からロンドンへ向かいました。14~17日、BathでG8科学顧問、担当大臣が集まるCarnegie会議なのです。

London到着後、一休みしてRoyal Societyへ。会長のLord Martin Reesさん(写真1 コラム:2006/2/82006/9/11)を訪問しました。2005年のGleneagles G8 Summit以来、Royal Societyと日本学術会議との間では親密な協力関係が構築されています。来年のG8では日本学術会議の活躍を期待しています。

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写真1 Royal SocietyでMartin Rees氏、大使館の松浦一等書記官と

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写真2 Royal Societyのバルコニーで、Barnie Jones氏、Rees氏と
(ちょっと見難いですが、私の右後方のオレンジ色の二つの「目玉」のようなものはBig Ben。左に見えるのは観覧車です。)

13日は野上大使公邸で夕食会(今年の1月にもお世話になりました)。今年の初めまで日本学術会議事務局長を勤めた西ヶ廣公使、高岡公使、松浦一等書記官、同行の板倉参事官、そして11月のAbu Dhabiにも参加してもらった、ロンドンベースの「クリーンエネルギー」分野に特化したベンチャーキャピタルの野村さんがご一緒です。野上大使は政治ばかりでなく、経済に実に詳しい。また、第2次大戦で日本の捕虜になった英国人(POW)との年次会などに参加され、誰かが亡くなると万難を排して葬儀に出られているそうです。地味ですが、このような目立たない活動は本物の外交の基本です。どこでも付き合いというのは人間同士なのです。

それにしても、英国はこの10年でGDPが約40%も成長していて、その中心はサービス産業ですが、金融力も恐るべし。このところCityの取扱額はNYSEを超え、さらに「サブプライム」を嫌って米国から、人も資金もCityに集まり、さらに活発化しています。後に知った情報ですが、今年のCityのボーナス全体も極めて巨額(1兆円を超える!)で、景気の良さを反映しています。その辺の事情、政策、Gordon Brown首相の人気の急激な低下等々、野上大使の分析は地に着いていて、たいしたものです。

話が弾みに弾み、結局、夕食会は夜中の12時まで続きました。野上大使、そしてお付き合いいただいた皆さん、ありがとうございました。