ダボスから-1

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今年もまたダボス会議に来ました。これで9年連続の参加になります。今年はパネルも3つあり、結構忙しいのです。

話題の中心はなんといっても金融システムの崩壊と経済の大不況です。1日目に一番人気があったのは、RussiaのPutin首相のOpening Plenaryでした。始まる30分前から満席でしたね。彼のメッセージは「強気、強気」でした。この人との仕事は“怖そう”という印象を皆に与えたと思います。質疑応答にも強気の一点張りでしたからね。Webサイトで見ることが出来ます。

Dsc00501_2 写真2: Putin氏

プーチン首相の前には、中国の温家宝首相の講演が行なわれました。

皆さん、講演もなかなかですが、質疑応答で臨機応変に対応されるところもすごいですね。これはこういう場ではとても大事なことです。

2日目の朝はある朝食会に呼ばれていたのですが、そこになんとClinton元大統領が現れて、10分ほどスピーチされました。私も隣のテーブルにいたので握手してくれました。

Dsc00507_2 写真3: Clinton氏

2日目午前最後のPlenaryは、Tony Blair、PepsiのNooyiさん(インドのIITを卒業した女性です。参考12 )、IsraelのSimon Perez大統領などが登場し、なかなかよかったです。

Dsc00514_2 写真4: Blair氏(向かってその左がNooyiさん)

Dsc00519_2 写真5: Perez大統領

午後は化学産業界の理事会に4時間お付き合いしました。2年前まで英国首相の主席科学顧問だったDavid KingさんたちとAdvisorsとして出席。日本からは住友化学の米倉社長や三菱化学の小林社長が参加されました。

Dsc00526_2 写真6: 右から慶應の安西塾長、東大の伊藤教授、HarvardのMori教授、Nat’l University of Singapore Lee Kuan Yew School of Public PolicyのMahbubani学部長ご夫妻、Brown U. のSimmons学長、そして私

夜は、去年と同じく、東大と慶應が主催する「Japan Night」でした。ともに女性学長のAllison Richard(Cambridge U.)さんとRuth Simmons(Brown U.、こちらは初対面)さんにもお会いしました。

私はそろそろダボス会議への参加も遠慮する頃かなと考えています。

日本からも、もっと多くの若いリーダー達に参加して欲しいと思います。

またまたロンドンから

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去年の11月につづいて、またロンドン(11/1411/15 )に来ました。

ロンドンへはいつも、成田21時55分発、パリ4時30分着のAir Franceを使います。その朝5時半頃、Charles de Gaulle空港のLoungeでオバマさんが新大統領に決まり、彼の歴史的なスピーチ をTVで聞いたのでした。

今回は、家族計画運動の世界的なNGO、IPPFが資金援助している国や団体との年次会議があり(日本は外務省から参加)、そこで基調講演をします。あまり話題にはなりませんが、本当は多くの社会、健康問題の中でもとても大事なテーマです。特にこのような経済危機の最中ですから、責任が大きいですね。講演の原稿は夜中までかかって書き上げて、読ませてもらいました。講演録をお渡ししたかったこともあったので。日本の対応はJOICEF代表の石井澄江さん (去年の洞爺湖サミットでNGOの代表として大変にお世話になりました)。私の講演の評判はよかったとのことで、ほっとしました。

Dsc00487 写真1:IPPFのパネル

Dsc00483_kk4写真2:大使館から宮川さん、石井さん、私、IPPF Africa Regional Office DirectorのTewodros Melesse.

会議前日の朝にロンドンに到着。早速、Brown首相の科学顧問John Baddington 、続いてWHO Commission ChairのMichael Marmot とお会いしました。その後、西ヶ廣公使邸で公使、経済担当の岡公使、Royal Society の副会長、国際担当のLorna Castletonさんたちと昼食をさせていただき来ました。話題は尽きず、あっという間に時間がたちました。

Dsc00472_marmot 写真3:Prof Michael Marmotと

Dsc00478写真4:西ヶ廣公使、岡公使、Castletonさんたちと

夜にはIPPFの幹部、演者の方々と夕食の機会を持ちました。London塔のすぐ横のレストランです。

Dsc00479写真5、6:London Tower

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翌日のIPPFでの講演後、Heathrow空港からDavosへ向かいました。夜10時ごろにホテル着。今年は過去2年と比べ、雪があります。

国家のビジョンと新エネルギーと農業政策

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今年に入り、このブログでいろいろと国家ビジョンについて触れています

元旦のブログに始まり、7日20日21日のブログなどがそうです。それから、13日に書いたブログもこれに関連して、オバマ政権の政策について触れました。

そして今日は、22日の朝日新聞記事word file)で、12月と1月に行った講演に関するものです。これらの講演に関する記事が段々と長いものになってきたので、私の言っている“Story”が明らかになってきたのではないでしょうか。

このグローバル社会の大転換期、日本の危機的状況、オバマ新大統領の誕生、日米そして世界の動向を考えると、このように記事などで私の考えを取り上げてくださることは、本当にありがたいことです。

さて、これらをどのように一歩前に進めたらいいか、皆さんも動き出してください。

「脱・できない理由」

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朝日新聞の夕刊に「窓」という論説委員室のコラムがあります。

12月に行った私の講演を聞いて、村山論説委員が「脱・できない理由」というコラムを書いてくださいました。嬉しいですね。「大賛成!」「その通りだ!」というメールをいくつも頂きました。ありがとうございます。

このコラムは次のように進みます。

■日本は2050年に食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる。

■政策研究大学院大学の黒川清教授は一昨年、そんな目標を打ち出してはどうかと当時の安倍首相に助言したことがある。内閣特別顧問だったころだ。

■関係する役所からは、「そんなこと、できっこない」という否定的な反応ばかりが官邸に上がってきたという。

■日本の食糧自給率は40%ぐらいしかない。エネルギーとなると、わずか4%にすぎない。霞ヶ関のお役人でなくても、目標を実現するのはそうとうに難しいことがわかる。

■「でも、なにごとも、できない理由をあげていてはダメなんです」。黒川さんは、そう強調する。インパクトのある目標をわかりやすい言葉で発信し、みんなに「自分は何ができるのか」を考えてもらう。そうやって世の中を変えていくのが政治の仕事というわけだ。

■もうすぐ米国の大統領になるオバマ氏は、グリーン・ニューディール(緑の内需)政策で不況を乗り切る、という明快なメッセージを発信している。それに呼応して、各国が「低炭素社会に向けて何ができるか」を考え始めた。

■いまの日本には、政治のリーダーシップはない。だから、「できない理由」が幅をきかせている。

■黒川さんは最近、あちこちで説いて回っている。「食糧とクリーンエネルギーの輸出は、2030年にでも、実現できます」

<村山知博>

(出典:2009年1月19日(月)朝日新聞夕刊2面)

村山さん、ありがとう。

皆さんはいかがお考えですか。

科学技術振興機構の新春に、「日本の国家ビジョン」を

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Washington DCから帰京して早々の14日、政府、学界、産業界の科学技術関係者の多くが集まる科学技術振興機構(JST)の新春の会合がありました。毎年行なわれていて、会場は満員です。

今年は基調講演をさせていただき、1月13日16日のブログに書いた、ワシントンで感じたアメリカ新政権の感触、そして昨年12月に行なった2つの講演でも話した私なりに考える「日本の国家ビジョン」について話をしました。

20090114jst02dsc_04701写真: 講演する私

講演の要旨は、参加されていた元ジャーナリストの小岩井さん出口さんがそれぞれ紹介してくれています。私の意見を広めてくださり、ありがとうございます。嬉しいです。

講演の全体の概略はこちらで読むことができます。

「大学病院革命」、慶應義塾大学病院への提案

慶応義塾医学部新聞(2008年12月20日号、第686号)の1面に、戸山病院長と私の対談、“今こそ建学の精神に立ち戻り、未来へ向けた「大学病院革命を」!”が掲載されました。慶應義塾大学病院の将来がテーマです。

私の論点は「大学病院革命」にも書いた内容で、これまでも機会あるごとに発言していますが、現在の政府が進める第5次医療計画にも通ずる基本的考え方です。

このブログを訪れてくださる方々には何度も言っていることですが、このグローバル時代、何が自分の強みで、何が弱みなのか、何が自分を他と差別する特徴なのか、リーダーの責任は何か、などにも触れてお話ししました。

私は慶應義塾の応援団と自認していますが、対談ではその理由についても触れられています。福沢諭吉の思想と行動とそのスケールを考える時、特にその時代と社会の背景を考えれば考えるほど、とてつもなく大きい人だと感じます。こんな人が今の時代、一人でもいるでしょうか。

この対談に目を通していただき、日本の医療、大学病院の役割とそこへの改革の工程を考え、実行していただければ嬉しいです。

ワシントンから-2、科学者たちの新しい協力へ

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今回のワシントンでの3日間は、ほとんどを米国科学アカデミーの内部で過ごしました。何人かの方たちとの会談も、アカデミーに来ていただいて行いました。

8日はホテルにチェックインして一休み。午後からは、まずアカデミーの新しい報告書記者発表プレスに参加。共同委員長のJOHN HENNESSY(President of Stanford University)とBRENT SCOWCROFT資料1)、他に3人がプレスに出席しました。すごいメンバーですね。委員会でもアカデミーの会員ばかりでなく、その課題について必要な様々の方々に参加を頂いているのです。

委員会メンバーのJohn GageNorman Neureiter もこのプレスの会場に来ていましたが、私が途中で抜け出したので会えませんでした。John Gageとは翌日、会うことになりますが・・・。

翌日の朝は、NASでHarvard大学のCalestous Juma公開講演に参加。ここでJohn Gageさんに会えたのです。

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写真1-3: 講演するJumaさん;One laptop per ChildのNegroponteのlaptopを持つ女の子;John Gageさん、Jumaさんと

この2日間は、科学アカデミーに立てこもりで、次々といろいろな方たちとお会いしました。アカデミーを構成する3つの組織の各ヘッド、Harvey Fineberg(Institute of Medicine)、Charles Vest(Natl Academy of Engineering)、 Ralph Cicerone(Natl Academy of Sciences)と個別に会談し(Ciceroneさんとは慌しく)、新政権下での両国の科学者たちの協力、計画などについて話し合いました。国際担当局長のJohn Borightさんとほとんど一緒に動き回りました。

また世界銀行Atlantic CouncilFred Kempeさんなど主要なかたがたともお会いし、いろいろと議論しました。

Dsc00467_2写真4: Vestさんと

Dsc00469_2写真5: STS Forum会議、左から私、Rita Colwell さん、Yuan T Lee (資料1)さんなど。

10日は尾身幸次議員の主催するSTS Forumの委員会を開催。活発な議論で一日が過ぎました。ここでもまた、いろいろな友人に会えました。

新しい1年の始まりとして、とてもとても収穫の多い3日間でした。

ここに出てくる方たちは、このblogで何度も出てくるので、「サーチ」してみてください。

ワシントンから-1、オバマ政権首脳人事の「すごさ」と期待

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この3年、正月はじめにワシントンを訪問するのが恒例になっています。今年は例年とはまったく違う雰囲気です。新しい大統領に対する期待が、これまでに彼が人選を行なった閣僚や顧問団が極めて「質」のいいことで、さらに膨れ上がり、希望と期待に溢れているように感じます。

特に科学者たちの間ではエネルギー省長官にNobel物理賞のSteve Chu(Director, Laurence Berkeley National Laboratory)、特に科学に関係ある案件ですが、主任経済顧問にLawrence Sommers(Harvard U.)、科学顧問John Holdren (Harvard U.)、さらにNobel医学生理学賞のHarold Vamus (元NIH長官、現Sloan-Ketteringガンセンター総長)とEric Lander (MIT)、Ocean and Atmospheric庁長官がJane Lubchenco (元ICSU会長)等々、超一流の学者達、しかも従来から低炭素、環境問題等々で発言、活動をしている人たちばかりで固めています。科学者社会でも彼らに対する尊敬、信頼はきわめて高い人たちばかりです。すごいリストです。

今週あたりから、議会のヒアリングが次々と始まるようで、一切のコンタクトは禁じられているということです。猟官運動などと疑われかねないですからね。

エネルギー、環境等についてオバマ政権の方向は明白です。さて、日本は技術だけは「一流・最高」(?)。しかし、政治も、財界産業界も、役所も、メディアも、大学も、利害関係者と大きな抵抗勢力などとの調整ばかりで、「できない理由ばかり」です。もたもたしているうちに世界の潮流から取り残されてしまのでは?とても心配です。日本でも「新しい潮流」の出現が待たれるのですが・・・。

この2・3日、オバマさんの経済政策の一部の発表がありました。この歴史的なグローバル規模の大困難と大転換の時に、この国がすばらしいリーダーを持ったという誇りに近い雰囲気が、国民の間に(といっても直接に聞いたのは私の周りにいる方たちが主ですが、)広がっているようです。時間はかかっても、この問題を、協力しながら乗り越えようという自信がじわじわと湧き始めたというところでしょうか。課題はとてつもなく大きいのですが、世界のリーダーであろうとする国家の意思と国民の意識でしょうか。

日本ではこんな動きが現れないのでしょうか?兆しはありますかね?もどかしい限りです。

しかし、オバマ政権の困難は極めて大きいと思います。国内経済は言うまでもなく、Pakistan、Afganistan、Palestine-Gaza等々、難題は限りなく、しかも急を要することばかりです。

日本は国内問題で手いっぱい。世界への影響も、世界からの期待もそれほどでないので、まだ救われているといったところでしょうかね。本当に大丈夫でしょうか?

独自の特徴を伸ばす

私は成蹊学園で中高6年間を過ごしました。このブログでも何度か触れていますが、この時期は人間形成にとってとても大事な時期だと思います。

去年の6月、同窓会総会にお招きを受け、成蹊学園の課題について話をいたしました。少し長いのですが、ご興味があればと思い、講演のPDF を掲載します。以前紹介しましたが、少し短いインタビュー記事もあるのでこちらも見てください。

グローバル時代に、学校もいかに独自の特徴、価値を伸ばすか、他と差別できるか、これが要、といういつもながらの話です。

しかし、そうは言っても伝統というものはそんなに簡単に構築できるものではありません。しかし、私立学校には、その建学の精神にきわめて普遍性の高いものが多いのです。そこに立ち返るということです。特にグローバルなフラットな世界でも認められる特徴、これが大事です。生徒の人間形成に決定的な役割を果たすと思います。

それにしても、昭和24年の発行、いまや95版を数える名著、慶應義塾池田潔教授の「自由と規律」、これはぜひ皆さん、特に教育に関心のある方に読んで欲しい本です。

人づくりこそが、国の根幹です。

新年を迎えて、日本の国家ビジョンを

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去年は本当にひどい年でした。アメリカは新大統領を迎えて、経済危機にさしあたりどう対処するでしょうか。

地球温暖化の問題に対しエネルギー政策はどうあるべきか?これはどこの国でも大きな課題です。福田前総理のときにこの課題についての特別懇談会が設置され、トヨタの奥田さんを座長に、洞爺湖サミットに向けてまとめを準備することになりました。今の政権ではそれどころか、京都議定書の動き自体止まってしまっているようです。“それどころでない”ということもあるでしょうが、ここで誤ってはいけません。これはある意味で日本のチャンスなのです。

私の低炭素社会へのエネルギー政策の考えの一部をまとめた資料があります。皆さんはどうお考えでしょうか?

 ・総理懇談会第2回(4月5日)資料
 ・総理懇談会第3回(4月22日)資料
 ・自民党の農業委員会(加藤紘一座長)資料

私なりに考える日本の国家ヴィジョンは「2030年までに、食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる!」というものです。

そのために、10年、20年後の目標を立て、まず第1次、そして第2次5ヵ年計画を書き上げるのです。学者、官僚、企業など多くの参加を得ながら、「ミッション、戦略的ロードマップ、1年ごとの目標」を、省庁横断的に従来の構造を無視して書き上げるのです。

大蔵省も、より革新的な予算を作れ、構造改革への政策推進できるでしょう。もちろん、定期的国民への報告、プロセスの透明性は重要です。

また、これは長期将来計画ですので45歳以下の人で作成していくのです。もちろん、外国人も入れましょう、ヒアリングもいろいろ入れましょう。

以上のような趣旨で、去年の12月8日(月)に資源エネルギー庁主催のエネルギー政策で基調講演を50分、また、12月11日(木)には日本経済新聞主催のエコプロダクトの会議で、両方とも1,000人近い多くの熱心なかたがたがにお話しする機会があり、私の考えを聞いていただきました。講演の全体の概要はこちらで読むことができます。

2030年までにそんなことは不可能だというかもしれませんが、それでは1年前にオバマさんが米国大統領になると予想した人がいますか?

この国家ビジョンは政治と国民の意志の問題なのです。

「Yes, We Can」です。

2009年、日本は、世界はどのような年になるでしょうか。