毎日が活動日

Ottawaに始まり、Singaporeで終わった12日間の「世界一周」、会議の連続から帰国しました。

早朝に成田に着いた午後は「日本-スペイン」の科学技術政策についての元宇宙飛行士、科学未来館館長の毛利さん 司会のパネルに出席、久しぶりにスペインの方たちとの対話で楽しめました。六本木の国際文化会館です。

夕方からNature主催のMentorship Award の選考会。今年は日本の番なのです。

さらに翌日の土曜日は同じく国際文化会館で「新渡戸国際塾」第1期塾生主催による「今、どう動くか:現代日本の突破口を探る」 に参加。参加者は若い人たちが大部分で、パネリスト川崎さん長さん井上さん、と私、皆さん日本の常識から見れば「変人」ですが、「グローバル」。これが大事なのです。なかなか活気のある議論が展開されました。すばらしかったです。

後日の話もいろいろ (資料) あります。

翌日は日曜日、五井平和賞の受賞式へ。去年はBill Gates、今年はDr Bruce Lipton。トークセッションも面白かったし、特に「若者が描く科学の未来」の2人の受賞者、Indonesiaからの若者と、AfghanistanからのYale大学医学部で学ぶ若者が、休みのときは祖国の首都Kabulの学校で教えている姿が素晴らしかったです。Afghanistanは今のグローバル世界の一番の不安定要素ですが、このような活動が中長期的に見れば、未来を構築する数少ない可能性と思います。素晴らしい若者たちです。

Singaporeにて、Asia Health Forum

→English

Abu Dhabi から Dubai空港を経由してSingaporeに飛びました。Singapore政府EDB (Economic Development Forum) 主催のAsia Health Forumに出席するためです。計画立案を討議するセッションに参加しました。会場はSentosa島の美しいCapella Hotelでした。

Forumのメンバーは医学、薬学、公衆衛生学の分野で世界をリードする専門家約15名とMcKinsey(著名なコンサルティング会社)チームでした。セッションは一日で、Singaporeの厚生大臣 Dr Khawによる歓迎の挨拶の後、大臣も交えて約40分間のディスカッションでした。 Khaw大臣はSingaporeの医療政策の基本理念やユニークな歴史を理解している上に、現在の医療政策の細かい現状と問題点を把握しています。問題点があるといっても、現在Singaporeの医療サービスはGDPのたった4%であるにも拘わらず、その質は世界最高との評価を得ています。

会議を充分楽しんだ後、夜遅いフライトで日本へ。Ottawaから始まった12日間の世界一周の旅を終えました。

 

サンディエゴからアブダビへ、Festival of Thinkersとブガッティ

→English

Dscn0625

トロントから太陽の輝く美しいサンディエゴに飛び、一泊して2つの重要な会議に出席しました。1つはDOPPS という末期慢性腎臓病の臨床診療パターンを世界規模で評価、比較する大型プロジェクトの会議でこれが始まったのは10年前の丁度Googleが起業した頃です。この事実を世界の変化がいかに早かったかを示す例として参加者の皆様に指摘しました。もう1つは製薬会社で開催された、世界のリーダー幾人かとFDAのコンサルタントによる高度にイノベーティブな医薬品に関する諮問会議です。時が経つにつれてだんだんと医師、腎臓専門医であったころの自分に戻ったようなくつろいだ気分になりました。なかなか良い感覚でした。

翌日はアブダビへ。2009年Festival of Thinkers に参加するためです。前回も参加しましたが、これはブログ (資料)にも書きました。今回はグローバル化と文化と言語というパネルに出席しました。このテーマは私の大好きなテーマで、ディスカッションも良かったです。しかし、今年のFestivalでは日本のプレゼンスは(ご想像に難くないでしょうが)弱かったですね。どうも日本は私一人だったようです。2007年は違ったのですが。。。

写真1-7;Festival of Thinkers

写真8-12;ブガッティ1932年型

アブダビにはFIグランプリ最終日の翌日に到着しました。残念なことにイベントには間に合いませんでしたが、会議の会場となったEmirates Palace(資料)のロビーでは、新旧織り交ぜて12台のF1車が展示されていました。素晴らしい造形物です。美しい車体とメカニックを写真でご覧下さい。

写真13-18;ビンテージのメルセデスと最近のFI車

展示の1つがブガッティの1932年型です。ちなみに私はもう何年も前から白洲次郎に関心があり、或る機会には彼に関する本の2冊目が出たところで紹介していますが。白洲はケンブリッジ大学に留学し、ブガッティを所有していました。そのブガッティで生涯の友となるRobin Byng(英国の由緒正しい家柄の出身)と共にフランス、スペイン、その他の国を経由してジブラルタルー英国往復を2週間という当時の道路事情を考えれば信じられないようなスピードでドライブしたという武勇伝が伝わっています。その他にはビンテージもののメルセデス、マセラティ、フェラーリや、もっと最近のモデルなどがありました。写真もあわせてお楽しみ下さい。

Torontoから-1、‘Wikinomics’の‘成功者’との出会い

→English

前回のカラムでご報告しましたように、私は今トロントに来ています。トロント大学とGRIPSが共同で今年の早い時期から進めているプログラム資料1)のことでトロント大学と打ち合わせをしています。

Munk Centerでの私のセッション終了後、Rob McEwen氏が主催するガードナー賞50周年記念ディナーレセプションにお招きを受けました。氏はカナダを代表するビジネスリーダー 、(資料1)で、Wiki時代のビジネス(以下にご説明します)においても広く知られた著名人です。

Rob McEwen氏は医学研究・医学教育の主要な支援者として知られており、彼の広大な邸宅は、ご想像の通り、トロントでも「超」がつく高級住宅地にあります。

McEwen氏はトロント大学附属病院であるToronto General HospitalにMcEwen再生医療センターという幹細胞研究専門の研究機関を創設しました。私は氏が医学研究の支援者であることを知っておりましたので、ガードナー賞の今年度受賞者の一人である京都大学の山中伸弥教授資料1)にお会いして大変喜んでいらっしゃることを存じていました。言うまでもありませんが、山中先生は胚性幹細胞の使用に伴う倫理的問題に抵触することなく皮膚やその他の細胞を幹細胞にプログラムしなおし、iPS細胞作製という画期的な業績を上げられました。

Img_1913 写真:Rob McEwen氏と

Robさんと彼のビジネスや共通の話題についていろいろとお話をしているうちに突然閃いたのが、彼は ‘Wikinomics’ という本の第一章にオープンイノベーションの代表的なイノベーター起業家として紹介されている人に違いないということでした。そこで「あれはあなたのことだったのですか?」と伺ったら答えは「Yes」でした。私は最近講演などで話をするときによく彼のことを「出る杭」的思考の典型として紹介し、彼によってGoldcorpという金採掘会社が救われ発展した話をします。業績を見ても明らかなようにこの会社は大成功を収めました。 Robさんがどのような考え、やり方でこのような偉業を実現したのかをめぐってお話を伺い、大変楽しい会話となりました。

予期せぬ出会いはどんな時でもとても楽しいものです。たびたびブログに書いていることですが、視野や考えを広く深くしてくれます。いつも言うように「グローバルに考え、グローバルに行動しよう。楽しいことが沢山あるから。」ですね。

オタワでグローバルヘルス、トロントでイノベーション

→English

カナダは来年G8サミット(おそらく最後のG8で最初のG20となるでしょう)の主催国となります。当然のことながら、グローバルヘルスをサミットでの主要な議題とするために、カナダの様々な分野でいろいろな努力が重ねられ、交渉や準備がなされてきたことでしょう。

CCGHRもその一環としてある会議を開催しました(10月25日)。この会議はどちらかといえばリサーチに重点を置いていて、出席した会員約150名のうち25%は海外の方々でしたが、私はここで基調講演に招待されました。大変な熱気で、私もいくつかのワークショップに参加、役員会にはゲストとして出席、G8の議題についてカナダの視点から協議する内輪のセッションにも出席しました。大変有意義で学ぶことも多く、沢山の新しい友人や仲間との出会いにも恵まれた一日でした。

10月の終わり頃のオタワはそれなりに寒いですが、天気は良かったです。ここで、1人の女性の日本人研究者にお会いしました。McMaster大学で学部教育を受け、McGill大学で疫学、生物統計学、産業衛生学の修士号、博士号を取得された方です。彼女は小さいときにほんの数年を日本で過ごし、現在は南アフリカで、アフリカにおけるメンタルヘルスと貧困に関するイギリスとの共同プロジェクトにポスドク・フェローとして参加し、勉強しています。やりがいのあるミッションですね!

次の日はトロントを再訪し資料1)、いくつかの仕事をしました。トロント大学のMunk Center では私のための夕食会をMassey College で開催して下さいました。

その翌日はMunk Centerで「イノベーション、グローバリゼーションと大学」と題するパネルがあり、私の手短な基調講演の後、活発で建設的なパネルセッションが行われました。今後ますます相互依存を強める世界において、一流大学は将来のリーダー達を育成し、彼らをコネクトし、将来の課題に備えさせるための開かれた場にならなければいけないという点では皆さんの意見が一致しているように思いました。現在のグローバルな国際社会では途上国及び低開発国が抱える諸問題やその地域は彼らだけのものではなく私たちのものでもあるのだということを認識しなければなりません。ここでも、日本の女性放射線医師に出会いました。彼女は東京女子医大の出身で、Massey Collegeのresident junior fellowとして医学教育研究の勉強を始めたばかりだそうです。このような経験は彼女のキャリアにおいて広い視野や考え方を身につける貴重な機会ですね。トロント大学は多民族性、多様性、カリキュラムや講義の幅広さで知られる素晴らしい大学ですから。

2つのExecutive Session; リーダーシップ、イノベーション、女性のパワーについて考えたこと・感じたこと

→English

最近私は2つのExecutive Sessionに出席する機会がありました。その一つはロンドンで開催された業界トップクラスを誇るグローバルな会社の世界戦略に関する会議です。この会社は最近或る買収合併に成功したばかりです。

この会議のメンバーは全部で10カ国から10人(女性は1人)でしたが、その多くが自国の政治・行政において高い地位にある方々、即ち、大臣、最高裁裁判官、国や地域(EU)の議員であったという点において他の同様な会議とは一線を画していました。

例えば、会議の議長をされたPat Cox氏は欧州議会の議長(2002-04)であられましたし、Chuck Hagel氏は今年1月まで12年間共和党の議員でいらっしゃいました。Hagelさんとは少しお話をしましたが、それだけでも氏が大変思慮深い、人間としても立派な政治家であるということが良く分かりました。彼はブッシュ大統領の対イラン政策を最もはっきりと批判したことでも有名です。年の初めにもブログでご報告しましたが、彼はAtlantic Council というワシントンDCに拠点を置く有力な「シンクタンク」の会長に就任され、そのことは私も知っていました。そして今回彼から直接聞いたのですが、オバマ大統領から外交に関する委員会のメンバーにもなるように頼まれたそうです。大変良いニュースですね。

Pat Cox氏の議事進行は素晴らしかったです。流れるようで暖かく、会社の上層部によるプレゼンからその後の質疑応答、提案まで一切を取り仕切り、各委員や幹部の発言だけでなく席順までメモを取って記録されていました。いつも思うのですが、このように立派な経歴を持つ方々とディスカッションやプライベートな会話を通じて知り合うことができるというのは、大変光栄なことです。実に多くのことを教えられます。ところでついでに申し上げると、この会社の代表者の半分は議長を含め女性でした。

東京に戻ってもう一つのexecutive sessionに出ましたが、こちらは日本のグローバルブランドの会社で、国内での売り上げは年間総売り上げの25%です。CEOを中心とするチームは私たちが議論すべき当日の議題を一生懸命考えてくれました。普段はあまり経験しないような活気に溢れた質疑や討論があって、楽しく会議をすることができました。これは、なぜかというとメンバーがかなり「出る杭」的な人たちだからです。例えばiモードを発明した夏野さん資料1)とか。役員レベルに女性が居ないことはさておいても全15人の会社側出席者のうち、女性は1人だけというのは驚きでした。。

この会社の考えは私から見ると男性の発想であり、且つ男性の考えをターゲットにしています。そこで私からの質問は、日常の買い物をするときや大きな買い物をするときの意思決定は女性がしているという、ニューズウィークの‘The Real Emerging Market’と題する記事でも紹介されている事実に関するものでした。私もニューズウィークの表紙の写真入カラムでこの記事を取り上げていますし、その後の2009年10月26日発行のタイム(米国版)‘What Women Want Now’  (資料1) にも同様な趣旨の記事が出ています。言っておきますが、製品は男性向けであるかもしれませんが、それを買うかどうかの意思決定は想像以上に女性によって行われているのです。

男女共同参画の問題は日本の社会に広く存在する喫緊の課題です。このブログでも繰り返し書いていますし、最近ではジャパンタイムズのインタビューでも述べましたが、女性の活用は日本社会、経済にとって「変革の鍵」となり得るのです。

もう一つこれらの二つのセッションに出て思ったのは、このような大会社の要職におられる方々は、急速にフラット化している世界すなわち‘Open and Demand-driven Innovation’の時代に世の中で何が起きているのかを実感していらっしゃらないのではないかということでした。‘Open and Demand-driven Innovation’はグローバルな現代において、どのビジネス分野にとっても非常に重要な、基本的な考え方となっています。

STS Forum、科学技術担当大臣会合、Young Scientistsとのセッション

→English

京都で開催されるSTS Forum (Science and Technology in Society Forum) に参加しました。始まりのときから手伝っています(資料)。世界から政治、ビジネス、科学など広い分野の方々が集まって議論、課題を共有しようという大胆な試みです。

今年は、開会のパネルで副総理、科学技術担当大臣の菅 直人さんの挨拶を兼ねた演説がありました。なかなか好評でした。

私の役割は、第1日に、Nature編集長のPhilip Campbellと科学技術担当大臣会議(写真1-4)で基調講演。24カ国(Africaから9カ国)の大臣がご出席。議長は日本の科学技術政務官、民主党の若手のホープの一人、津村啓介さんです。その後、各大臣からの各国の政策、課題などについて活発な発言がありました。

Dsc_0093_2Dsc_0102

Dsc_0197Dsc_0198

写真1-4; 会議の参加諸氏と

第2日、「Proposals from Young Scientists」で、TWAS などで大活躍している旧友Mohamed Hassan と共同議長。2時間に及ぶセッションでしたが、8人の若手が自己紹介のあと、4つのテーブルに別れ、各テーブル8-10人ほどの参加者と1時間にわたり議論を展開し、最後にまとめていろいろ提言してくれました。なかなか素晴らしいセッションでした。セッション要旨 も見ることができます。何人かの方から、私は若者のほうに入るね、などとからかわれました。

203f3session 写真;5 参加のYoung Scientistsの皆さんと。前列中央は私、スポンサーとなったJSPS小野さん、Hassanさん。

NYASのPresident and CEOのEllis Rubinsteinは途中から参加するよ、といっていたのですが、よそに参加で動けなくなったようでした。NYASでは私も「Scientists Without Borders」、 に諮問委員として参加しています。

MITのD-Lab、学生との起業

→English

先日もMITのD-Labを紹介しました。ここで活躍している遠藤くんが、日本を訪問した機会に、ということで私を尋ねてきました。私のイノベーション関係の研究や教育活動に参加してくれているDr William Saitoさんも参加して、いろいろ話が弾みました。遠藤くんは慶応大学で学部、修士を終えて、MITでPhD、現在MITでD-Labに参加しながら、自分の研究活動にも活躍しています。

遠藤さんのD-Labでのテーマは、途上国の義肢(義足、義手等々)を必要としている人たちに、安く、しかも使いやすい義肢を提供しよう という計画です。交通事故、戦争、地雷などで、不自由な生活を強いられているのです。また、現地での義肢は質も悪く、使いにくいとか、なかなか上手くフィットしないとか、すぐに壊れるとか、社会基盤、技術の程度を考えれば、致し方ないところもあるのですが、これを開発して普及させたい、このような人たちの自立を助けたいという、壮大な計画です。素晴らしい活動です。

Img_1889_top 写真; 左からSaitoさん、遠藤くんと

このような活動が実際の社会活動、事業へ発展することも多いようで、上手くいかないのが多いのは当然です。しかし、このサイトに掲載してあるのはまだ続いているものだそうで、起業したものの26%が残っているということです。William Saitoさんはアメリカで学生のときに起業し、それが大成功した人ですが、「この比率はすごいね」、とすぐにコメントしました。本当ですね。

遠藤くんは、世界記録を破れるような高度の義足の開発にも関係しているようですね。高い目標と、とても広い視野での活躍です。慶応の学生のときにソニー研究所北野宏明さん とAIBO の開発にかかわったそうです。

Asia Innovation Forum開催;「外から」日本を見る目

→English

Dscf0076

先日ご紹介しましたが、元SONY会長の出井さんが主催する「Asia Innovation Forum」が、9月14、15日の両日にわたって六本木ヒルズで開催されました。プログラムをご覧になると分かるように「Group20」 が苦労しながらの作品、いい仕上がりです。大勢の方が参加され、うれしいことでした。会議の運営についてはTwitter、webcastなども取り入れ、いっそうの効果を出そうと工夫しました。

今回は初めからの予定で主たる参加者を日本の方にしたので、日本人でない方は少数派でした。他にも用事があり第1日目のはじめの部分は出られませんでしたが、セッションは快調に進んだようです。スピーカー はそれぞれ一人ひとりの方たちが素晴らしいし、皆さん論客であり、時間の制限のなかで言いたいことも多いので、司会の方は苦労しましたね。司会の方たちも素晴らしかったです。

第2日は一日出席しました。ランチのときの奥山ケンさん資料1)久しぶりにお会いしましたが、雄大な話と実践力は素晴らしいものがあります。また、ベネッセの福武社長の世界でよく知られた名所「直島」の話は素敵、その後の米倉さんのパネル司会も心優しくてとてもよかったです。最後の「Group20」のパネル、時間の関係もあり、ちょっと不満がのこり気味。最後は緒方貞子さんでしたが、社会起業を目指している方たちのセッションもあり、素晴らしい締めくくりでした。

新しい試みとして「Twitter」を使い、またWebcastも見ることができます。事務方、スタッフたち本当にご苦労様でした。

この「Group20」は従来の日本のビジネス界から見れば、かなり際立って異質と見られるかもしれない人たちかもしれません。従来の「エリート」とはまったく違ったグローバル時代に挑戦している実力のある若手のリーダーたちです。でも、発言を聞いていると、基本的には日本から世界を見ること以上にはなれない限界がある、これが弱みだ、と思いました。つまり、日本を本当に「世界からの視点」からはまだ実感し、見ていないのではないでしょうか。でもこれが外国人の日本を見る視点なのですけど。。。。これは実際に日本の組織、企業を辞めて、海外で「個人として」長い生活経験がないと難しいと思います。いくら長期に海外滞在しても、所詮本社の決断にしたがっているのは「長期の出張」ですから、日本社会、日本の会社の文化から出ることができません。この辺がパネルへ参加した外国人からの質問にいくつも現れていると感じました。自分の「強み」と「弱み」を知ることが大事です、皆さん全員が日本を担う大事な人材ですから。

私のまとめの話資料1)は、その辺の日本人の海外での実践、実体験のなさを中心に話しました。女性の活用程度の低さも大きな問題と指摘しました。翌日の「Newsweek International版」(9月21日号)には、「The Female Factor」(トップの写真をご覧下さい。)という特集記事「The Real Emerging Market」が出ていました。私の意見もですが(このサイトでもしばしは出てくるテーマです)、これは世界の趨勢と思います。日本だけが特殊な国などということを考えていてはいけないと思います。で、ちょっときつめのコメントにしました。今回のテーマ「地球の限界、アジアの成長、日本の責任」 は、日本に期待したいからこそ、なのです。まだまだやること、やるべきことはたくさんあります。行動あるのみです。

サマーダボス・大連で:「D.Light」 など、活躍する社会起業家たち

→English

夏のダボスでも「社会起業家」たちは注目です。日本は技術先進国ですし、とかく世界を国内からばかり見ているので、国際貢献といっても、思考、製品の基本に「現地での感覚がかけている」、「進んだ技術に気をとられすぎる」傾向があり、これが日本の「弱さ」だということに気がつかなくてはいけません。

このような視点で立ち上がってきたのが、すでに紹介したMITのD-Labです。

社会起業家をテーマにしたIdeasLabで提示された事例の一つが「D.Light」(資料1)のNed Tozanで、これは最も注目を集めました。インドやアフリカでは電気がなく、夜はケロシンを燃やしているところもあります。危険ですし、健康にも良くない、貧しい人にとってそれなりのお金もかかります。これを何とかしたい。ここから始まります。皆さんの意気込みが伝わってきます。

他にも;1)出稼ぎに来た人たちにそれなりの教育と能力開発をし、帰国して自立できるようにしようという活動、2)小さな土地しかない人たちを自立させてきた活動、3)カンボジアなどで若い売春婦にさせられた女性を自立させてきた活動などなどです。

Tozanさんに、「これはD-Lab (資料1)から出てきたの?」と聞くと、「そうです」、といっていました。先日、MITが始めた素晴らしいコースとして紹介しましたが、そのときにも卒業生を通してどんどん広がって、Stanfordの学生が始めた成功事例として話を聞いていましたが、やっぱりそうでしたね。創業者のSam Goldman資料1) の背景からもアメリカの若者 たちの、若いときからの世界へという考え方、活力、駆動力、それも受け止めるエリート大学のイノベーションは素晴らしいと心の底から感じます。

日本のビジネスも若者も、世界の問題に自分で実体験として接してみると、このような人たちが、もっともっと出てくるのでしょうね。引きこもりなんてもったいないです。自分たち世代から20歳、30歳年上の周りの「おじさんたち」を見ていると、それしか選択肢がないと思い込んで、将来が暗くなってしまうのでしょうか。そんなことはありません。「若者にはもっと外の世界を見せ、体験させる」(資料)このことこそがこれからの世界の日本の構築には大事なのです。いつも言っていることですが、再確認しました。世界は広いのです、Steve Jobsの「Don’t Settle, Keep Looking」資料1)です。