アラブ首長国United Arab Emiratesの原子力発電は韓国の勝ち-その2

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原子力発電の国際入札で韓国の勝ちについて、私なりの現地のソースからはどんな受け止め方だったのでしょうか?大体、以下のようなものでした。

1. 「予想はしていましたがショックな結果です。あらゆる意味でSYSTEMの塊である原発プロジェクトを10%も安く韓国が提示、その信頼をかちえたことは日本の産業競争力の低下の現実でしょう。日本企業はPresentationで技術と機器の性能の高さばかりを強調、政府の安全管理、東電の操業能力にふれることもなくフランスの一体となった攻勢ときわだった違いがありました。この辺の認識の違い(技術信仰による「甘さ」)は、必ずしも発注側の期待とは整合していなかったようです(時間をかけた「個人的な人脈」つくりの軽視)。この辺の認識の違いについては、あちらのトップから日本のトップへアドバイスがあったほどだと聞いています。」

2. 「韓国は国全体でがんばりました。世界の変化の現実を知るには若いひとが海外にでていき、また外国の優れた人に来てもらう、これしかないかもしれません。私の会社もアブダビでメガプロジェクトを韓国企業に受注されました。日本の人材の国際化を図る、これが今後の経営の核と確信しています。」 

3. 「今回の受注は、韓電のみならず、他の分野(半導体、ICT, エネルギー(マスダール)、教育)においてもアブダビー韓国の協力強化にも結びつきました。」

4. 「今回の原子力協定のビッディングのポイントは以下の3点において、韓国が優れておりState of art の提案だったとの評価です。1) 競争的価格、2)完成までの時間が最短であること、3)原子力関係のUAE人材育成の支援、です。」

5. 「韓国の大統領は、状況に不安を抱いて11月中旬に大きなミッションを派遣し、その中枢には韓国の工科大学KAIST学長もはいっており、KUSTAR資料1)、 はUAE内で原子力のプログラムを提供する唯一の大学と指定されたわけです。今後は韓国から原子力の教員が着任し、学生もKAISTへ送り込まれるでしょう。」

6. 「韓国はアブダビが今、何を必要として、どのような協力を欲しているのか、相手の立場に立って考えていました。人材育成がアブダビにとって、サバイバルの課題だと理解していたのです。だから、皇太子の心を掴むことができたのです。皇太子と韓国の大統領は携帯電話でお互い連絡を取れる間柄だったようです(この辺については「その1」の朝鮮日報にある通りです)。」

7. 「また、「韓国は原子力発電に必要な部品をすべて国産で生産することができず、海外に受注せざるをえないのではないか、」という指摘には、韓国原子力研究院の梁明承(ヤン・ミョンスン)院長は「造船や半導体などでも部品の100%を国産化しているわけはなく、必要な技術は海外のものを使っている。重要なことは韓国が設計、施行、メンテナンスなどシステム全体を輸出する能力を持っているという事実だ」と述べました。」

8. 「日本が部品の特殊性能にこだわって、それを「ものづくり大国」として自画自賛している様子と対照的でした。」

9. 「韓国がいかに国単位で一丸となりアブダビに攻勢をかけたかの様子が分かります。このUAEでの受注で自信をつけて韓国は、次はトルコ、東南アジアのマーケットへと動き出しているそうです。李大統領はもともと建設会社出身者とあり、アブダビに提出する企画書にも注文をつけたり、練り直しに自ら参加していたようです。」

それに比べ、その頃日本のトップは政権交代で国内政治にあたふたしていて、格段の差があったのだろうと言い訳もできます。鳩山さんは去年暮れに、インド訪問、「日本はインドの原子力の協力をする」(誰の振り付けか、、)と発言したようですが、気が付くのが遅かったですね。この発言は、これからどう発展するのでしょうか。

インドでも日本に比べると、韓国ビジネスマン(資料1)の活躍は良く知られていますからね、日本のクリーンエネルギー技術などと言っていても油断はできませんよ。

今回のUAEの事例を政府も企業も共有し、敗因を分析し(野中郁次郎先生も繰り返し指摘しているところです、、)、次への計画をしっかり練る、行動する、これが一番大事なことです。だからこそ、あえてこのカラムを書いているのです。

時代は、基本的には「ものづくり」ではなく「ものがたり」なのです。そして、「Demand-driven」に転換しているのです。

GEW;日本経済新聞で広告報道

11月16-20日に開催した「GEW: Global Entrepreneurship Week」についてこのサイトでも2回にわたって報告しました。「GEW -1」、「GEW -2」 です。

この2つの講演会について、日本経済新聞の朝刊(12月22日)に見開き2面にわたって主要な講演を中心に広告報告が出ました。それぞれ[16日」「20日」についての記事を見ることができます。

「知の鎖国」、続編

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ところで、なぜ私がこの本「知の鎖国」に気がつかなかったのか。これが私にとってはちょっと気になっているのです。何しろわたしはこのことを繰り返し指摘し発言してきたのですから。

多くの大学関係者も私の発言には賛成する方、気にする方もおられましたが、余計なことをいう「ヤツ」だ、と思っていた人たちも多いことでしょうね。文部科学省の結構な数の人たちも私の主張は知っていましたから。

この本の書評がたぶんあまり出てはいなかったのかもしれませんし、新聞広告も出ていなかったのかもしれません。出版が毎日新聞社ですから、そこにはちょっと出たのかもしれませんね。しかし、この本では第2章で日本のジャーナリズムの鎖国性も明確に指摘していますから、新聞も、あまり報道も宣伝もしたくなかったのかもしれませんね。どなたか、真相をご存知でしょうか。単に私の見過ごしかもしれません。

Princeton大学の小林さんもこのことが気になっていたようです。米国では5つの書評を見つけてくださいましたが、日本語の書評は見つからなかったということです。

a. Japan Review.net: Interview of Ivan Hall by Victor Fic, January 26,2002.

b. “Apartheid Japan-Style,” Reviewer: J. Marshall Unger, Professor of Japanese, University of Maryland, in THE (Times Higher Education), July 17, 1998.

c. “The ‘Keep Out’ Signs on Japan’s Professions,” Reviewer: Robert Neff, Nov. 20, 1997, Business Week.

d. Review by Raymond Lamont-Brown in Contemporary Review. Oct, 1998.

e. Review by J. Mark Ramseyer (Harvard University) , Journal of Japanese Studies, Vol. 25, No. 2 (Summer, 1999), pp. 365-368

この本「知の鎖国」もぜひ読んでください。

今の時代になっても、日本の開国には、やはり「黒船」が必要なのでしょうか?もう「黒船はこない」でしょうけど、、、。情けないですね。

「知の鎖国:外国人を排除する日本の知識人産業」と、科学研究関係の「事業仕分け」

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この刺激的タイトルの本 は、米国で日本について学び (Princeton大学、 Harvard大学PhD)、日本で大学教授を含めて20数年(特派員、文化外交官、学習院大学等で教授など)を過ごした「知日家」の第1人者の1人、Ivan Hallさん の1998年の著書 「Cartels of the Mind: Japan’s Intellectual Closed Shop」 の邦訳です。以下のような構成です。

はじめに; 「ふつうの国」- ただし外国の知識人は受けつけない
第1章; 法律家の上陸- 弁護士がとりつく狭い橋頭堡
第2章; 隔離される報道陣- 外国人特派員
第3章; 学問の府のアパルトヘイト- 外面だけの大学教授
第4章; 通り過ぎていく人たち- 科学者と留学生
第5章; 操作された対話- 批評家に対する脅し
結論; 目を覚まして、日の光を浴びよう

内容も、それぞれに事実であり、鋭い指摘もその通りだと思います。Hallさんとのインタビューこの本の書評 (資料1(amazon.co.jp日本語)2 (Amazon.com))もあります。3年前にも来日して講演 (資料 (有道出人さんのブログより)) しておられます。

これらのHallさんの主張は私が従来から指摘 (資料)しているところです。日本でも「知的レベル」の高い人たちが、大学の先生たちが「鎖国マインド」(資料1) ですから、これでは大学も刺激的でないし、将来を担う学生にも間違った将来像を見せていることになります。このような大学から卒業してくる多くの人たちの社会では、さらに鎖国マインド傾向広がるのです。何とかして欲しいですね。これで日本の将来はいいのでしょうか?大学の先生たち、しっかりしてください。

この本の趣旨は、もう一人の知日家ジャーナリストのカレル・ヴァン ウォルフレンさんの一連の本「日本 権力構造の謎」、「人間を幸福にしない日本というシステム」などを通した分析、主張と同様と私は認識しています。

民主党政権になって、最近「事業仕分け」という極めてオープンで、単純明快なプロセスが話題になりました。以前の中国の「文化大革命」みたいですね。これには学者の世界からのノーベル賞受賞者、大学学長等々の大きな不満と批判がありましたが、一般的には政策のプロセスを国民が理解して点では評価されているようです。何が目的なのか、時間が短いとかの批判はありますし、科学技術に関してはSupercomputerをはじめとして、大型の研究のあり方も一つの話題になりました。どんなものでしょうね。

大型の研究では、計画の時点から海外の専門家も入れて検討すべきですし、大型施設への参加ももっと世界へ開かれたものにして人材育成の材料 (資料1)、の一つとして位置付けるなどすべきと思います。日本の産業基盤に関わるから日本人だけでとか、特許が盗まれるとか、2次的なうわべの言い訳をならべるのですね。世界を変えるような発想 (資料1)は誰から、どこから出てくるのか、もっと考えたほうがいいです。知恵とお金の出し方をもっと考えたほうがいいのです。政策のプロセスが開かれたことはいいことです。

いつもながら、科学者も「鎖国マインド」ですね。

‘Nature’誌のMentor Award; The Crazy Ones

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Natureといえば、科学界で知らない人がいないほどの科学雑誌です。

このNatureが、4年前に「Mentor Award」 を開設しました。編集長のPhilip Campbellさんの趣旨に私は全面的に大賛成です。

私のカラムからも、この賞の趣旨と同様のメッセージがいくつも読み取れると思います(例えば今年でもありますね)(資料1)。日本の「タテ」構造の社会では、自発的に広い世界へ出にくいところもあり、新しい人材、新しい「芽」が生まれにくいことを繰り返し提言してきました。連続する他流試合と、若いときに独立する、独立させることの大切さです。

「Mentor」の大事さはあまり一般には認識されず、成果中心に科学者(えてしてタテ社会では組織のボス)の功績が評価されている嫌いがあるのが現況でしょう。それはそれで素晴らしいことです。

先輩研究者は、自分が指導する大学院生、あるいはポスドクの期間の研究を通して、若い研究者がどれだけ自立して、新しい分野を開拓し、自分を追い抜くような人材になっていくのか、これが研究指導にある人たちにとって、自分の研究もさることながら、極めて大事なことだからです。

今年のMentor賞は日本の番でした。「Lifetime Achievement」 と 「Mid Career Achievement」 の2つのカテゴリーです。そして、12月1日、東京の英国大使館で表彰の式典があり、Warren駐日英国大使、この会のために来日したPhilip Campbell、Nature編集長の挨拶に始まる楽しい会でした。素敵なパンフレットが配布されました。

「Lifetime Achievement」受賞の大沢文夫さん、「Mid Career Achievement」受賞の北野宏明さんソニー研究所)、心からおめでとうございます。大勢のお二人のお弟子さんも集まりとても楽しいひと時を過ごしました。

この選考に当たっては、どなたも甲乙つけがたい素晴らしい候補ばかり60数名の推薦がありました。和田昭允さんを委員長とする素晴らしい選考委員会の6人の1人に加えていただき、私はとても光栄に感じていました。

一番びっくりしたことは、選考委員会のことです。採点ランクが選考委員6人の間で、不思議なくらい違いがないのです。討論に入ると、皆さんが本当に申請書をよく読み通していること、「Mentor」の意義についての価値観に多くの共有点のあることでした。

次世代の若者の「とんでもない可能性」を引き出す、次代の常識から外れている素晴らしい「Mentor」たちに乾杯。受賞のお2人の哲学 (資料1)にもそれが現れています。

ところで、北野さんの自分の哲学でしょう、推薦書類に自分の好きな言葉、モットーとして以下の「一部では有名」な文が書かれていました。

The Crazy Ones」;  Here’s to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square holes. The ones who see things differently. They’re not fond of rules. And they have no respect for the status quo. You can quote them, disagree with them, glorify or vilify them. About the only thing you can’t do is ignore them. Because they change things. They push the human race forward. And while some may see them as the crazy ones, we see genius. Because the people who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do.

北野さんは、自分はまだまだ十分に「クレイジーではないな」などといっていますけどね。

実は、「GEW-1」のカラムで紹介した私の基調講演「Entrepreneur = Change Agent」で、私はこの「The Crazy Ones」の1分ビデオを使おうと考えて、いろいろ工夫したのですが、ステージ、照明などの具合が上手くいかず、あきらめたばかりでした。

Global Agenda Council

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GEWから関空経由で早朝のDubaiに到着。World Economic Forum主催の「Global Agenda Council」(GAC),(資料1)に1日遅れで参加です。

空港から去年と同じJumeirah Al Qasr Hotel にcheck-in、シャワーを浴びて、早々に会場へ。GACには去年も参加 (資料1)しました。

世界の多彩なリーダーの参加する一種の「Brain Storming」を通したAgenda設定のプロセスは、ますますフラット化していくグローバル時代にあっては、次第に大事な意味を持ってくると思います。さらに、いろいろなCouncil自体に参加することは、とてもintenseで疲れますが、意見交換を通していろいろ学べ、啓発され、大いに刺激的です。

しかし、Future of Japan (FoJ; 竹中さんと私が委員長、今回のDubaiは竹中さん出席できず) はとても疲れました。東京で竹中平蔵さん、石倉洋子さんたち何人かと案を練っておいたのですが、朝の会合で相当に変化し、筋書きが変わり、書き直し。1月のDavosへのagendaにするべく知恵を絞りました。

その後は皆さん個々にとても忙しくCouncilに。私はInnovationなどのセッションに。さらに、FoJとFuture of China, Future of Koreaとの合同セッションもあり、この司会も石倉さんにお願い、なんと言ってもとても上手ですから。この合同委員会でも多くの皆さんが、お互いにDavosをはじめとするWEFが開催する会議で顔なじみです。

いくつもの写真も見れます

夕方、再度FoJ会議の再開。AflacのCharles LakeさんBCGの御立さん たちと事務局の土屋さん(石倉さんは、無理もないのですが、とてもお疲れ)たちが精力的に3時間ほどかけてようやく新しい原案が出来上ありました。石倉さんには1日中ずいぶん負担をかけてしまいました。皆さんのおかげですが、このプロセスをもっと工夫する必要があります。大いに反省です。

すっかり疲れて、これも去年と同じレストラン「鄭和 Zheng He」で皆さんのご苦労をねぎらいながら食事。これは楽しかったです。

翌日は、いくつかの総合討論セッションに参加、楽しかったですね。2時半頃に会議は終わりました。

西山田中わたし田村近藤さん写真1  Marco Poloi in JAL Hotel 写真2

写真1; FujairahのJAL Hotelのロビーで。左から西山さん、田中さん、私、多村さん、近藤さん

写真2; FujairahのJAL HotelのレストランMarco Poloで

翌朝Dubai空港0345出発まで時間があるので、いつもお付き合いしていただいている東大の田中明彦さん(2日前にお会いしたばかり、国際担当の副学長)、慶応義塾の田村治朗さん交渉学で第1人者の一人。Harvard Law School, Program on NegotiationDaniel Shapiro と一緒に仕事をしています。-若いけどとても切れる、いい人です)、空想空間(これがスゴイ会社)を立ち上げ活動する西山浩平さん、医療政策機構を引っ張る近藤Jamesさんの5人で車をチャーター。アラブ首長国連邦を形成する7つの首長国の1つ、ペルシャ湾ホルムズ海峡の要所に位置する軍事的にも大事な場所 Fujairahへ出かけました。

片道、約2時間の行程、町はあまり活気がありませんが、砂漠から砂漠の中の岩山を抜けて、夕暮れの海岸へ、石油基地など、そして古いモスクなどを尋ねました。なかなか立派なJAL Hotel があり、そこで夕食。皆さん1人ひとりの意外な面(政治学の田中さんが30年来のAppleオタクであるとか、iPhoneの中身がスゴイとか)を知ることもできて楽しい時間をすごしました。

夜中に空港に到着。ロビーで何人かの日本からの参加の方たちとお会いし、帰国の途に着きました。皆さん、お疲れさまでした。

GEW-2: メインイベント-グローバルに活躍する起業家

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GEWの今回の特別企画とも言うべきイヴェントが20日にGRIPSで開催されました。

気候変動についてCopenhagenでの「COP15」開催を3週間後に控え、さらに日本では新政権で「2020年までにCO2排出マイナス25%」という画期的目標を掲げたことを受け、さらにObama米国大統領訪日の1週間後というタイミングでの企画です。プログラムを見ていただければ、目的は明確と思います。

まず、開会は駐日Denmark大使による「京都からCopenhagenへ; Copenhagenのスマートな取り組み」というとても素晴らしい講演。日本への期待と強烈なメッセージがありました。

米倉誠一郎先生の司会によるパネルのあと、Dr Gunter Pauli によるまったく発想を違えたこれも素敵な新産業のあり方と理論と実例を示しながらのいつもながらの素晴らしい講演。

昼はHillary Clinton米国国務長官のビデオメッセージに続いて駐日Roos米国大使とNHKの道傳愛子さんとの「Entrepreneurship」をめぐる会話、そして菅 直人副総理からのビデオメッセージです。

内容の一部は「Japan Times」に掲載、また米国大使館ウェブサイトの11月24日付けで報告されています。

午後の3つのセッションでは、特に「日本についての外国人起業家の見解」が、参加者の皆さんにとっても新鮮な見方も多く、とても面白かったと思いました。日本をよく知り、しかもかなり違った見方は、「Japan Times」 が取りあげているように、多くの日本の方にとってはとても刺激的だったと思います。日本人には、このような違いを直感的に感じとる能力が欠けて(資料1)います。これこそが、グローバル時代のイノベーションにとても大事な「異質」、「多様性」の基本なのです。大相撲のもと大関、「小錦Konishiki」さんがおられたので、私も持論の「大学の大相撲化」 (資料1)についてコメントしました。

最後は駐日Norway大使によるRhapsody in Green」という素敵な講演でした。でも、私はドバイDubaiに行くためにこの講演の途中で失礼し、会場を後にし、羽田空港に向かいました。

ところで、このblog の「GEW-1」、「GEW-2」で紹介するGRIPSの16日、20日のプログラムの1部は いずれ日経新聞に出る予定ですので、そのときにまた報告します。楽しみにしていてください。

GEW -1: 「Entrepreneur = Change Agent」

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Global Entrepreneurship Week (GEW) は、英国Brown首相の提案で始まり、Kauffman財団が推進する、この時期に世界で同時に開催しながら世界にEntrepreneurshipを広げようというものです。Entrepreneurshipこそがイノベーションを起こす原動力ですから、私も協力しています。去年から本格的になり77カ国で開催、本田財団、GRIPSなどが核になって、日経などいくつかの団体などの支援、協力をえながら、多くの方たちとお手伝いしていますが、今年は88カ国が参加とか。11月16-23日の週とその前後にいろいろな企画が開催されました。

16日、GRIPSでのプログラムは私の基調講演「Entrepreneur = Change Agent」 (上の写真)で始まりました。私の言いたいことは、「Entrepreneurship」は日本にも昔からある行動様式のはず、ではそれに相当する日本語もあるはず、それは「進取の気性」だと。これは「シリコンバレー精神」などを書いている梅田望夫さんが考え出したことですが、まさにその通りと思います。ですから「Entrepreneur = Change Agent」とは:

「進取の気性に溢れる人」 = 「変革者」

これが私のGEW基調講演のメッセージ、ということです。なにもビジネス「起業」する人たちだけではなく、社会やすべての組織で「進取の気性に溢れる人」たちこそが、変革を起こすのだ、ということです。企業、政治、大学、政府、どこでも同じことです。前例にこだわり、できない理由がまず頭に浮かんでくる人は、「進取の気性」の対極にある人たちです。これは歴史的にもいつも正しいのです。

最近の日本は、何故か社会のどこかしこに「進取の気性があふれている感じがしない」ということです。概略が片貝さんのblog にも出ていました。

大企業でも、政府でも、大学でも、組織の多くの人たちに「進取の気性」を植え付け、そのような環境つくりこそが経営者、トップに求められるのです。「進取の気性に溢れる人」が多い、「進取の気性に溢れる組織」、「進取の気性に溢れる社会」、これらがイノベーションを生み出す組織、企業、地域なのです。そして「進取の気性に溢れる国」になれるのです。この100年でも、優良企業といわれているのは常にそのようなものです。どんどん変化する、だから環境の変化に対応できるのです。

10年前に企業のトップだった人の名前を何人挙げられますか?つまり記憶に残るようなトップということですが。なぜ名前を覚えているのでしょうか?これは最近のThe Economistに出ていた記事ですが、特にこの難しい時代にイノベーションを起こす企業リーダーの本質を突いているのでしょうね。

基調講演の後、近くのカナダ大使館へ駆けつけ、この日から2日間にわたって開催される、日本カナダ通商80周年の事業の一つとして開催する「GRIPS- Toronto大学」主催のイノベーションに関するシンポジウムの第1日目へ。そして昼にはGRIPSへとんぼ返り。

GRIPS昼のセッションは石倉洋子さん司会の「デザイン」がテーマで2人のデザイン界の「巨人」、坂井直樹さん奥山清行さんの対談パネル。イノベーションというと「技術革新」などと誤解する傾向の多い、「ものづくり」信仰と技術志向の強い日本の方たちにはとても刺激的なセッションだったと思います。

続いて、この11月19日がPeter Druckerの生誕100年を記念して、野中郁次郎先生の講演があり、その後のプログラムへと進みました。現代史的にもDruckerは特別の存在のようですね。私は、ここからまたカナダ大使館へ戻り、パネルへ。

夜は、GRIPSでのGEW、Canada大使館、そしてUCLA日本同窓会総会の掛け持ち。あわただしい一日でした。

APEC Business Summit、Lee Kwan Yewの対話

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IMG_1968 top Chaingi空港

Singaporeから帰国た11月6日から1週間、いろいろ講演や会議などで忙しく過ごした後、12日はAPECの一部であるCEO Summit へお招きを受け再びSingaporeへとんぼ返り。おおくの企業が参加して盛会でした。プログラムはウェブでご覧になれば分かりますが、多くの参加国政府首脳の講演、パネルなどがあり、とてもいい会議でした。政府間の公式会議は別に開催されているわけですが。Obama大統領の来訪が遅れたので間に合わなかったのは残念でした。講演のヴィデオ、要旨 (資料1)なども見れます。

テーマはなんと言っても経済の現状と各国の政策が中心です。首脳の講演で強いメッセージ(ビデオを見て、聞いて、あなたの評価は?)があり、特によかったのはタイ、マレーシア、韓国などでしょうか。勿論、中国の胡 錦濤さん は、現在の世界の経済を引っ張るエンジンですから講演には力があります。鳩山さんは2日間の会議の最後でしっかりと話されました。来年は日本がホスト国、次は米国ですから、これから1年間、しっかりと2年先を見据えた「グローバル時代の日本」への変化CHANGEの旗を高く掲げ、アジェンダをしっかり構築し、実行して欲しいところです。

IMG_1952 Hatoyama 講演する鳩山首相

パネルでもSovereign Wealth Fundのパネル(Norwayは世界第2のサイズで、投資先選択もクリーン、グリーン度に座標軸をおき、定評があります)。米国商工大臣もなかなかよかったです。勿論、このBusiness Summitでも日本企業が強い力を示して欲しいところですが、日本からの企業トップ参加者は少なく目立ちませんでしたが、楽天の三木谷さんがパネルでなかなか力強い話しをしました。この会議のサイトでいろいろ楽しんでください。

この2日で皆さんに一番の感動を与えたのは、13日の最後のパネル、Singaporeを建国からここまでひっぱってきたLee Kwan Yew前首相(Minister Mentorという肩書きです)の対話でしょう。86歳ですが、かくしゃくとしておられ、その思想も、世界情勢の把握と認識も、将来へのお考えも圧倒的に素晴らしいものでした。私も、とても感動しました。10日ほど前にWhite HouseでObama大統領と会談しています。司会者のこの会談にふれたイントロから、もっぱら対話、会場からの質問にも実に上手く答えるのです。Singaporeの大臣はじめ政府高官にもお会いしましたが、皆さんLee Kwan Yew氏と仕事をしてきたわけですが、「Minister Mentorのような人は世界にも滅多にいないよ」、と親しみと尊敬のこもった返事が返ってきます。会場でお会いした日本の若い起業家社長も「鳥肌が立つようだった」といっていました。

立派なリーダーをもつ国はそれだけのことがあります。多くの有能な人たちを育てているのです。これは政治に限らず、大学、企業、また役所でも同じことです。今の日本社会にあって、特に社会的に高い立場の人たちは、一人ひとりが自分の立場で、自分は何をしているのか、それでいいのか、これを客観的に、冷静に見つめてみることは大事です、「できない理由」 は言わないことです。特に急速に変化しているグローバル時代に何をするのか、これですね。

このような機会にお招きいただいたSingapore政府に大感謝です。

環境技術と日本の成長、アジアの成長

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日本の環境技術は優れています。世界一のものが多くあります。

グローバルにクリーンエネルギー、環境などの技術が注目を集めています。日本にとってこれらの技術を世界に広げる大きなビジネス成長の機会です。でもなかなかこれが見えないのです。日本のソーラーパネルも世界ではどんどん遅れていますね、これらは日本だけの技術ではありません。ドイツ、中国、米国、等々もこの技術を持っています。石倉洋子さんの最新書「戦略シフト」 にもありますが、グローバル時代のビジネスは、機会を捕らえ、「ANDもORも」、予測して手を打つこと、そしてスピード、これが大事なことです。

「内需拡大」は大事ですが、トータルの経済成長がなければ、国内の需要も増えません。ましてや、日本は世界に冠たる「(国民からの)借金大国」ですし、高齢化でも世界一ですから。高齢化の進行は人口動態予測でも確かなのに、どうするつもりなのでしょうね。情けないことです。

9月にNew Delhiに行き、日本の環境技術推進のお手伝いをさせてもらいました。私の意見(資料)も言わせてもらいましたが、せっかくの大きなビジネスチャンスなのにもったいないことです。積極的に成長する国、地域、つまり大きなアジアへもっともっと進出しなくてはいけません、EUも米国もCanadaもどんどん出ています。ここは産業界、しっかりしてください、内向きはダメです、グローバル展開です。世界でのCollaborationとスピードが大事です。

このNew Delhi会議の報告広告 (資料) が日経新聞に出ましたので、紹介します。