うれしい便り – 3

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日本を代表する企業、東芝をめぐるスキャンダルは、世界を驚かせました。残念なことです。

その背景には「企業文化」という議論もあったわけですが、先日このサイトに掲載したように、わたしたちが国会事故調で指摘した「日本人多くの「マインドセット」、つまりは「日本の文化」論と根本的問題は同じだ、東芝問題は日本企業、組織の例外ではないのだろう、と指摘されているのです。

福島原発の事故の根底にある問題、”Root Cause”を指摘した国会事故調の指摘を、世界も認識しているのでしょう。

企業統治などのコンサルを手掛ける「Reputability」”Loyalty – Virtue and Risk” というコラムの中で指摘しています。ここでは日本組織で典型的に見られる ”Groupthink”12)についても意見を述べています。

福島ほどの大事故からさえ学ばない、何とかごまかしている、福島原発事故を表面的な問題の対応で片付けている、それなりに責任ある立場の人たちの意識というか、ご都合主義、再稼動をめぐっての諸課題にも、世界の識者は結構注目しています。

失敗から学ぶ、責任を果たす ”Accountability”、これは組織、企業、政府、国家など、グローバル世界での信頼の根本です。

東芝問題に見られる懸念、国会事故調の指摘と同根

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東芝が大変なことになっています。日本を代表する企業の一つですから、国内外での懸念も、注目度にも大きなものがあります。

問題の根っこは4年前のオリンパスのスキャンダルと同じ企業統治の問題だ、と世界では理解されるでしょう。もっともなことです。

主要な記事に Newsphere の解説、そして Financial Times (FT) の大きな見出しの記事(閲覧には登録が必要です)があります。さらに、この FT の記事の最後に出てくる Leo Lewis 氏による囲み記事 ”Problem of culture; Ever fiercer profit target imposed” では、わたしが委員長を務めた、いわゆる「国会事故調」の指摘した中心的メッセージと同じ問題が根底にある、と指摘しています。

The description is eerily similar to that used in the independent report on the Fukushima nuclear disaster, which blamed Japan’s “reflective obedience” and “reluctance to question authority” for contributing the poor handling of the disaster.

ウェブに広がる世界の中では、透明性、公開性、自律性こそが信頼の基本なのです。日本の企業統治の信頼が揺らいでいるのです。社外取締役を置いても形だけなのではないか?監査はどうなのか?ということです。

このサイトで去年の9月22日から10月27日にわたって掲載した、国会事故調の調査統括を担当した宇田左近さんの著書「なぜ「異論」の出ない組織は間違うのか」の趣旨が、組織統治の重要事項であることを、改めて認識し、改めることです。

「日本の文化」に見て取れる「思い込み、日本の常識」の課題です。一度失われた信頼を取り戻すのは大変なことなのです。

うれしい便り – 2

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英米カナダで広く学び、教鞭を取ってきた歴史学者、ジャーナリスト、いくつもの著書を表し、カナダの野党党首(Liberal Party 自由党; 2008-2011)でもあり、現在はHarvard Kennedy Schoolの教授であるMichael Ignatieff氏が、6月4日の午後、面会に来られました。

Carnegie Council, The Voices for Ethics in International Affairsの100周年記念のプログラム「Ethics for a Connected World」を主催していて、その講演シリーズの一つ、「“Resilience and the Unimaginable” Technology and Risk: Lessons from Japan」で来られたのです。

翌日の午前10時過ぎには、「会談のお礼と、今晩の講演の原稿です」と、メールと原稿を送ってくれました。さすがですね。原稿の速さと、わたしの報告・文献などにもキチンと目を通しているのが、はっきりしています。さすがに一流大学で勉強してきた学者、歴史家、著書でも受賞しているぐらいの政治家でもあった方です。

彼の講演原稿をここにリンクしてあります。ちょっと目を通してみてください、なかなかの内容だと思います。

数日後、6月8~10日はWorld Dementia Councilでハーグに行きましたが、10日の午前、帰国前にマウリッツハイス王立美術館に行ったところ、ばったり国連大学学長のDavid Maloneさんにお会いしました。Maloneさんは国連大学着任前はカナダの外交官ですから、Ignatieff氏をよく知っているわけで、「Prof Ingatieffの講演は良かったよ、あなたの国会の福島原発事故調査委員会の報告書について何度も触れていた」と。

うれしいですね、こういうの。

 

最近のうれしい便り

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ウェブの時代には思いがけないことがあるものです。このブログへ時々メールが舞い込んでくるのですが、今度は米国海軍の軍人 John Zimmerman、Program Manager Submarine Combat and Weapons Control からです。福島原発事故の「国会事故調」の報告書について、とても感動し、彼のLinkedInにも書いたので、見てくださいというものでした。

以下が、彼のメッセージです。私もお礼の返事を書き込みました。

The Most Honorable Act
May 17, 2015

On 11 March 2011 a magnitude 9.0 earthquake occurred off the eastern coast of Japan. The resulting tsunami killed over 15,000 people and destroyed over 400,000 homes and buildings. Fifty minutes after the earthquake struck a tsunami measuring over 40 feet high overflowed the seawall at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. While the plant’s nuclear reactors had already been shutdown in response to the earthquake, the flooding resulted in a loss of power to pumps that were needed to cool the nuclear power plants’ reactors. In the days to come reactor core damage and hydrogen explosions would cause substantial radioactivity to be released to the environment.

In response to the disaster Japan’s government set up an independent commission to investigate what had occurred. The report can be found on the internet – Fukushima Nuclear Accident Independent Investigation Commission.

If the commission wanted to find excuses for this tragedy it would not have been difficult to do given the natural disaster that had occurred. Yet it is clear to me that this commission wasn’t looking for excuses. It was looking for the truth. What struck me very hard in the beginning of the report was Kiyoshi Kurokawa’s ‘Message from the Chairman’.

“What must be admitted – very painfully – is that this was a disaster “Made in Japan.” Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture: our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity.”…

“The consequences of negligence at Fukushima stand out as catastrophic, but the mindset that supported it can be found across Japan. In recognizing that fact, each of us should reflect on our responsibility as individuals in a democratic society.” …

With all of Japan and the world watching the commission’s main message was – this horrible tragedy was of our own making.

How often do you confront issues that you don’t address because you are worried about what might occur, people or organizations that could be embarrassed, retribution that might occur? Today we seek leaders and organizations we can trust. Honor, Courage, and Commitment are our Navy’s core values. We want people who have the courage to confront real problems and ‘tell it like it is’. Only through courage and commitment can the most challenging issues be addressed.

Some may have thought the commission’s report brought dishonor on Japan. To me Chairman Kurokawa’s Message and the report’s honesty, integrity, and transparency was – The Most Honorable Act, befitting the very best traditions of a great country and people.

“Having chosen our course, without guile and with pure purpose, let us renew our trust in God, and go forward without fear and with manly hearts”  Abraham Lincoln

Chatham Houseでの原稿

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この2,3年、Chatham Houseとの交流がいくつかありました。今年の2月はじめにもロンドンに出向きました。

去年の10月のはじめ、 2日間にわたって、東京でChatham Houseと日本財団の共催で「The Role of the Nation State in Addressing Global Challenges: Japan-UK Perspectives」のテーマで会議が開催されました。

私は「福島原発事故」のパネルに参加、その時の私の原稿が、John Swenson-Wright氏のIntroduction、そしてAdam Roberts、David Steinbergの3人との論文からなる小冊子(私のPartはpp18-23です)(日本語版 pp19-24)として、Chatham House のWebサイトに掲載されました。

お時間のあるときにでも、ちょっと目を通していただけるとうれしいです。

SafeCastの4周年、東京と郡山で「スーパープレゼンテーション」

SafeCastについてご存知ですか?福島原発事故直後から、ガイガー測定器は手に入らないし、政府や報道では何が何だかはっきりしない。それで、何人かがネット上で集まって、つなぎ、ひろげ、出来上がった、本当の意味での「グローバル市民ネットワーク」で作り上げてきた、時代の先端をいく放射能測定システム。いまや世界60ヵ国に広がり、IAEAも認めている「SafeCast」です。

SafeCastグループと、NHK Eテレの「TED、スーパープレゼンテーション」でよく知られるMIT Media LabのJoi伊藤さん1)が中心になって、3月22日と25日に、それぞれ東京と福島県郡山市で「トーク・イべント」がありました。

東京でのイベントのテーマは「Citizen Science, Open Science, Big Government」、郡山のイベントは「スーパープレゼンテーション in 郡山」。後者は郡山市の品川市長さんの企画によるご招待です。

両方とも、Joiのイントロから、福島100年構想委員会の渡辺利一さん、SafeCastのPieter Frenkenさん、そして私も、話をもちまわり、なるべく楽しく刺激的な雰囲気を盛り上げたいと奮闘しました。東京は英語中心、郡山は、日本語が基本でした。

私の最近の講演では、映画「Matrix」の中心的なテーマの部分を短く見せたり、「わかりやすい国会事故調」のビデオを紹介したり、また、最後の「シメの言葉」を工夫したり、プレゼンに気を使っています。

講演のシメの言葉では、今年になって、3・4回ほど、有名なJFKの大統領就任の時の「Ask Not 、、、」の修飾版を使っています。今回の、東京での講演でもこれを使いました。

これらのイベントの様子は、こちらから観ることができます。

https://vimeo.com/safecast/videos

https://vimeo.com/123727406

東北復興に躍動する若者たち、仙台での出会い

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3月14日は、午後から仙台へ。「震災復興での起業家の役割 Role of Entrepreneurs in Disaster Recovery」をテーマにしたイベントの「トリ」としてプレゼンです。これは、国際防災世界会議パブリックフォーラムとして、仙台市がホストするものです。

東北大学の福嶋 路教授による基調講演の後、5人の素晴らしい  「進取の気性あふれる」若者たちのプレゼン1)です。

皆さん一人ひとりが、四年前の東北大震災をきっかけに、自分の仕事を捨てて、自分の故郷へ戻ってきた人、家族を失った人、故郷に呆然と立ち尽くしていた人、あるいは海外での仕事を辞めて東北へきて活動してきた人など、多様な若者たちです。

磐城高箸の高橋正行さん、島津麹店の佐藤光弘さん、気仙沼ニッティングの御手洗瑞子さん、Watalisの引地 恵さん、農業生産法人GRAの岩佐 大輝さん等です。

みんな、本当に、本当に、とても素晴らしい若者たち。皆さん、一人ひとりが地元の伝統、文化、環境などのユニークな特徴を生かして、まわりの人たちを巻き込んで「新しい社会価値を創造」する(これが私の「イノベーションの定義」ですが…)、自分の「思い」、「志」を貫いて、問題を乗り越えていく、そのプロセスで応援する人たちが現れ、参加し始める、そこに新しい共同体ができはじめ、周りの人たちとの「生きがい」を生みながら共有していく。早くも世界を視野に入れて活動の枠を広げている御手洗さんとはこの一年で三回目の出会いです。

最後は、私がIMPACT Japan、Qatarという国、そしてQatarによるIntilaqの仙台卸町の「東北イノベ―タハブ」の計画、つまり東北復興へ向けて、このような新しい活動をしている若者たち、そのような若者たちを育てよう、という計画を紹介しました。

素晴らしい若者たちと感動を共有した、とてもうれしい時間でした。

2日前にあったばかりのDartmouth大学Tuckビジネススクールの院生の内の5人にも、ここでお会いしました。

日系リーダー訪日団と、そしてDartmouth Tuck Schoolの学生さんと

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3月12日、昼は国際交流基金日米センターの企画による「日系リーダーと日米関係」にご招待を受け、昼食を交えた交流の機会を頂きました。米国側のまとめ役はDaniel Inouye上院議員の奥さまであったIrene Hirano Inouyeさん。今回、本来のイベントは広島で「高齢社会と認知症」 というテーマで行われたので、Prof. Morimotoほか、関係の方々ともお会いできて、とてもよい時間を過ごしました。

私は、福島原発事故の調査委員会1)に対する最近の動向と、最近の活動として英国政府主導のG8による「世界認知症評議会」1)について手短に紹介しました。

快晴の明治記念館、素晴らしい方たちの出会いを楽しみました。いずれ「日系リーダー」訪問の詳細は国際交流基金日米センターのサイトにも掲載されると思いますので、その時に、またお知らせします。

午後はGRIPSで、Dartmouth大学のTuck Business Schoolの学生たちを相手にセミナー。タイトルはいつもの「Uncertain Times」。皆さんは、私が国会の福島原発事故調の委員長であったことを知らされていますから、まずは、朝河貫一のことから始めました。なんといっても朝河貫一先生は 日本人初のDartmouth学部卒、そして日本人で初めてYale大学教授(海外先進国の大学の教授になった初めての日本人ですから…)になった偉人あり、国会事故調報告書の「はじめに」で、私が引用した方です。また、現在の世界銀行のJim Kim総裁もDartmouthの学長の時に選ばれたことにも触れました。

引率の先生が、「素晴らしい2時間でした、お呼びしたらDartmouthに来てくれますか?」とおっしゃるので、「もちろん」と即答しました。

相当に楽しめた一日でした。

会合のお知らせ

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3月22日(土)、第1回 Safecast カンファレンスが開催されます。
放射能測定をはじめとし、市民科学の現在と未来、そして、福島第一の実際の話から未来まで、国際色豊かな登壇者と参加者の議論や意見交換に加わりませんか?

Safecast の設立4周年を記念して、第1回目の Safecast カンファレンスが今月22日(日)~24日(火)に開催されます。その中で、会期中最大のイベントであるシンポジウムが22日(日)に Digital Garage(東京・恵比寿)にて12時より行われ、私も講演やパネルディスカッションに参加します。(25日(水)は福島/郡山でカンファレンスが行われます。詳細はこちらから→ http://fuku100.org/event/

登壇者は、私のほか、MITメディアラボの伊藤穰一氏(@Joi)、早野龍五氏(@hayano)、こどもみらい測定所(@kodomiraInfo)の石丸偉丈氏、元米Microsoft主席ソフトウェア設計者 Ray Ozzie氏、MITメディアラボ准教授 Joe Paradiso氏、米NRDC(天然資源保護協議会)ディレクター Matthew McKinzie氏などが登壇します。

参加者には一般の方、教育者、ボランティア、研究者、プロジェクト・リーダー、メディア、技術者やその他の専門の方が含まれます。参加される方の分野や専門知識は問いません。カンファレンスはネットワークを広げ、意見を交換し、福島や放射能に関して新しい発見をし、環境データや市民科学を知る最適な機会となるでしょう。

当日は英語での開催となりますが、同時通訳が入ります。参加は無料です。

お申込みはこちらから。
http://scc2015.peatix.com

みなさまと当日お会いするのを楽しみにしております.