3月11日、福島原発事故から5年、「規制の虜」を出版、そしてコーネル大学へ

→English

あの悲惨な東日本大震災と福島原発事故から5年の時が流れました。どの程度の復興が進んでいるのでしょうか?むずかしい問題ですね。

いくつかの原発が再稼働されていますが、すぐに事故とか、ちょっとしたことがいろいろ起こっているようです。

福島の原発事故も、この処理についてはこれから何十年もかかるでしょう。想像もできないような時間ですし、今でも、またその先にもいくつもの難問・難関があります。

この機会ですので、「憲政史上初めて」の国会による福島原発事故調査委員会の委員長を務めたものとして、「規制の虜:グループシンクが日本を滅ぼす」という著書を出版しました。書店でも、アマゾンでも購入できます。できるだけ多くの方に読んでいただけると幸甚です。日本の”将来”はいまのままでは厳しいと思います。

出版に先立って、日本記者クラブ外国人記者クラブで、記者会見を開催しました。これらはYouTubeでも見ることができます。

日本記者クラブでは、福島原発事故に関係した講演は今回で5回目なのですが、その都度のメッセージは、基本的に「変わる世界、変われるのか日本」でした。

その後すぐにIthaca(NY)にあるコーネル大学にいきました。ここのマリオ・アイナウディ国際関係研究センター(センタ―長は宮崎教授)による企画で、3月11日に合わせて、「原発事故から何を学んだのか」を議論しようという目的です。

議論の相手は、プリンストン大学のペロウ教授、ヴァージニア・ポリテクのシュミット教授1)です。こういう議論に参加するのは、いつも楽しいです。その後は、レセプション・ディナー。

翌日も日本からの学生、先生たちとの朝食。快晴の中、広いキャンパスを散歩し、夜は日本と中国からの二人のポスドクをディナーにお誘いして、いろいろと話を聞きました。

共通の話題は、日本からの学生も先生も、”数が少ない”ということでした。

世界は広いのです、若い人たち、もっともっとチャレンジしてください。世界のみんなが待っていますよ。

国会事故調の本「規制の虜:グループシンクが日本を滅ぼす」を上梓

→English

2011年3月11日の東日本大震災、そして歴史的に残る福島原発の大事故。あれからもう5年の月日がたとうとしています。

あの大震災と原発大事故の3ヵ月前には、今や世界を席巻している「アラブの春」が、チュニジアで始まったのです。

このアラブの春は、その後、北アフリカ、中東に広がり、今では、北アフリカやシリアから、欧州へ多数の難民が押し寄せるという、予想もしない状況となっています。

この5年の世界の大変化の中で、日本はどうなのでしょうか?

そんな思いもあって、「規制の虜:グループシンクが日本を滅ぼす」というタイトルで、福島原発事故から5年、私が委員長を務めた、”日本憲政史上初”の国会による、独立した「福島原発事故の調査委員会(通称「国会事故調」)」を通して、「あまりにも変わらない日本」について、この本を書き上げました。

3月10日に発売予定ですが、アマゾンから予約もできます

今日は日本記者クラブで、この本の紹介を兼ねて、記者会見をしました。

この本を、みなさんが手にしていただけると幸甚です。

お知らせ

福島原子力事故から見えてしまった今までの日本社会、責任逃れする「責任ある立場」の大人たち、そして事故から学び、自分のこととして行動する若者たち。

河北新報の掲載記事を紹介します。

1:「<話そう原発>「なぜ」生徒ら問う」 国会事故調報告書を読んで(上)

2:「<話そう原発> 自主性を引き出す」 国会事故調報告書を読んで(下)

3:「<話そう原発> 民主主義が機能せず」

 

ペンシルベニア大学

オタワから、次はフィラデルフィアへ向かいました。ペンシルべニア大学の法科大学院ロースクールのお招きです。

ペン大は、40数年前ことですが、私が初めて海外留学したところです。

2年ぶりのフィラデルフィアでしたが、以前ちょっと勘違いをしていたことに気が付いていたので、40数年前に住んでいた、郊外のアパートを尋ねてみました。名前こそ変わっていましたが、いまでも結構モダンな感じのままで、サイズは当時感じていたのよりも小さく感じました。貧しい日本から来たのですからそんなものなのでしょうね。

夜はちょっと遅くなったのですが、Havarford大学に留学している、HLABの第1回に高校1年生で参加した野村くんを夕食にお呼びして、いろいろ話を聞きました。このような若い人たちがいろいろと苦労をしながら活躍しているのは、頼もしい限りです。

さて、今回の訪問の主目的は、ペン大ロースクールでアジアフォーカスのプログラムを立ち上げ、その記念行事の一つとして、アジアでの「大災害と賠償」のテーマで、組まれたカンファです。

取り上げられたのは、中国の四川大地震、インドボパールのユニオンカーバイトの化学工場の大惨事、そして福島原発事故の3つです。もちろん、私は福島の原発事故の関係でお招きを受けたのです。

前夜にKenneth Feinbergさんの基調講演がありました。質疑応答を入れて約90分にもなるセッションでした。「9.11」、「英国石油BPのメキシコ湾の石油採掘災害」などの大災害の補償について、飽きることない、迫力といい、説得力といい、お人柄そのままの素晴らしい講演でした。彼の講演は、教育者として、また活動の実績からも大変な評判があるようです。

講演前にしばらくお話をしたのですが、このような大惨事の補償について、日本政府からも聞かれたことがあるけどね…、といったお話も伺いました。

2日目は、1日にわたるセッションで、なかなか良かったです。四川、ボパールはそれぞれ中国、インドの政治学者と演者とのパネルでした。私はロースクールで講演するのは初めてですので、皆さんあまりパワポを使わないとか、ちょっと戸惑ったのですが、MITの日本政治の研究者であり、福島原発事故後の日本について、「3.11: Disaster and Change of Japan」(2013)を著したRichard Samuelsさんとの二人でプレゼンとパネルを行いました。

夕方の1時間ほどペン大のキャンパスを巡り、昔の研究室のあたりには、医学部の活動の様子を映すように、いくつもの新しい建物があって、活躍ぶりがうかがえました。

最後の夜は友人と3人で夕食、翌日トロントで1泊後、羽田へ、11月9日(月)出発、23日(月)帰国という長旅でした。最後の日に風邪をひき、声が出なくなりました。

うれしい便り – 3

→English

日本を代表する企業、東芝をめぐるスキャンダルは、世界を驚かせました。残念なことです。

その背景には「企業文化」という議論もあったわけですが、先日このサイトに掲載したように、わたしたちが国会事故調で指摘した「日本人多くの「マインドセット」、つまりは「日本の文化」論と根本的問題は同じだ、東芝問題は日本企業、組織の例外ではないのだろう、と指摘されているのです。

福島原発の事故の根底にある問題、”Root Cause”を指摘した国会事故調の指摘を、世界も認識しているのでしょう。

企業統治などのコンサルを手掛ける「Reputability」”Loyalty – Virtue and Risk” というコラムの中で指摘しています。ここでは日本組織で典型的に見られる ”Groupthink”12)についても意見を述べています。

福島ほどの大事故からさえ学ばない、何とかごまかしている、福島原発事故を表面的な問題の対応で片付けている、それなりに責任ある立場の人たちの意識というか、ご都合主義、再稼動をめぐっての諸課題にも、世界の識者は結構注目しています。

失敗から学ぶ、責任を果たす ”Accountability”、これは組織、企業、政府、国家など、グローバル世界での信頼の根本です。

東芝問題に見られる懸念、国会事故調の指摘と同根

→English

東芝が大変なことになっています。日本を代表する企業の一つですから、国内外での懸念も、注目度にも大きなものがあります。

問題の根っこは4年前のオリンパスのスキャンダルと同じ企業統治の問題だ、と世界では理解されるでしょう。もっともなことです。

主要な記事に Newsphere の解説、そして Financial Times (FT) の大きな見出しの記事(閲覧には登録が必要です)があります。さらに、この FT の記事の最後に出てくる Leo Lewis 氏による囲み記事 ”Problem of culture; Ever fiercer profit target imposed” では、わたしが委員長を務めた、いわゆる「国会事故調」の指摘した中心的メッセージと同じ問題が根底にある、と指摘しています。

The description is eerily similar to that used in the independent report on the Fukushima nuclear disaster, which blamed Japan’s “reflective obedience” and “reluctance to question authority” for contributing the poor handling of the disaster.

ウェブに広がる世界の中では、透明性、公開性、自律性こそが信頼の基本なのです。日本の企業統治の信頼が揺らいでいるのです。社外取締役を置いても形だけなのではないか?監査はどうなのか?ということです。

このサイトで去年の9月22日から10月27日にわたって掲載した、国会事故調の調査統括を担当した宇田左近さんの著書「なぜ「異論」の出ない組織は間違うのか」の趣旨が、組織統治の重要事項であることを、改めて認識し、改めることです。

「日本の文化」に見て取れる「思い込み、日本の常識」の課題です。一度失われた信頼を取り戻すのは大変なことなのです。

うれしい便り – 2

→English

英米カナダで広く学び、教鞭を取ってきた歴史学者、ジャーナリスト、いくつもの著書を表し、カナダの野党党首(Liberal Party 自由党; 2008-2011)でもあり、現在はHarvard Kennedy Schoolの教授であるMichael Ignatieff氏が、6月4日の午後、面会に来られました。

Carnegie Council, The Voices for Ethics in International Affairsの100周年記念のプログラム「Ethics for a Connected World」を主催していて、その講演シリーズの一つ、「“Resilience and the Unimaginable” Technology and Risk: Lessons from Japan」で来られたのです。

翌日の午前10時過ぎには、「会談のお礼と、今晩の講演の原稿です」と、メールと原稿を送ってくれました。さすがですね。原稿の速さと、わたしの報告・文献などにもキチンと目を通しているのが、はっきりしています。さすがに一流大学で勉強してきた学者、歴史家、著書でも受賞しているぐらいの政治家でもあった方です。

彼の講演原稿をここにリンクしてあります。ちょっと目を通してみてください、なかなかの内容だと思います。

数日後、6月8~10日はWorld Dementia Councilでハーグに行きましたが、10日の午前、帰国前にマウリッツハイス王立美術館に行ったところ、ばったり国連大学学長のDavid Maloneさんにお会いしました。Maloneさんは国連大学着任前はカナダの外交官ですから、Ignatieff氏をよく知っているわけで、「Prof Ingatieffの講演は良かったよ、あなたの国会の福島原発事故調査委員会の報告書について何度も触れていた」と。

うれしいですね、こういうの。

 

最近のうれしい便り

→English

ウェブの時代には思いがけないことがあるものです。このブログへ時々メールが舞い込んでくるのですが、今度は米国海軍の軍人 John Zimmerman、Program Manager Submarine Combat and Weapons Control からです。福島原発事故の「国会事故調」の報告書について、とても感動し、彼のLinkedInにも書いたので、見てくださいというものでした。

以下が、彼のメッセージです。私もお礼の返事を書き込みました。

The Most Honorable Act
May 17, 2015

On 11 March 2011 a magnitude 9.0 earthquake occurred off the eastern coast of Japan. The resulting tsunami killed over 15,000 people and destroyed over 400,000 homes and buildings. Fifty minutes after the earthquake struck a tsunami measuring over 40 feet high overflowed the seawall at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. While the plant’s nuclear reactors had already been shutdown in response to the earthquake, the flooding resulted in a loss of power to pumps that were needed to cool the nuclear power plants’ reactors. In the days to come reactor core damage and hydrogen explosions would cause substantial radioactivity to be released to the environment.

In response to the disaster Japan’s government set up an independent commission to investigate what had occurred. The report can be found on the internet – Fukushima Nuclear Accident Independent Investigation Commission.

If the commission wanted to find excuses for this tragedy it would not have been difficult to do given the natural disaster that had occurred. Yet it is clear to me that this commission wasn’t looking for excuses. It was looking for the truth. What struck me very hard in the beginning of the report was Kiyoshi Kurokawa’s ‘Message from the Chairman’.

“What must be admitted – very painfully – is that this was a disaster “Made in Japan.” Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture: our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity.”…

“The consequences of negligence at Fukushima stand out as catastrophic, but the mindset that supported it can be found across Japan. In recognizing that fact, each of us should reflect on our responsibility as individuals in a democratic society.” …

With all of Japan and the world watching the commission’s main message was – this horrible tragedy was of our own making.

How often do you confront issues that you don’t address because you are worried about what might occur, people or organizations that could be embarrassed, retribution that might occur? Today we seek leaders and organizations we can trust. Honor, Courage, and Commitment are our Navy’s core values. We want people who have the courage to confront real problems and ‘tell it like it is’. Only through courage and commitment can the most challenging issues be addressed.

Some may have thought the commission’s report brought dishonor on Japan. To me Chairman Kurokawa’s Message and the report’s honesty, integrity, and transparency was – The Most Honorable Act, befitting the very best traditions of a great country and people.

“Having chosen our course, without guile and with pure purpose, let us renew our trust in God, and go forward without fear and with manly hearts”  Abraham Lincoln

Chatham Houseでの原稿

→English

この2,3年、Chatham Houseとの交流がいくつかありました。今年の2月はじめにもロンドンに出向きました。

去年の10月のはじめ、 2日間にわたって、東京でChatham Houseと日本財団の共催で「The Role of the Nation State in Addressing Global Challenges: Japan-UK Perspectives」のテーマで会議が開催されました。

私は「福島原発事故」のパネルに参加、その時の私の原稿が、John Swenson-Wright氏のIntroduction、そしてAdam Roberts、David Steinbergの3人との論文からなる小冊子(私のPartはpp18-23です)(日本語版 pp19-24)として、Chatham House のWebサイトに掲載されました。

お時間のあるときにでも、ちょっと目を通していただけるとうれしいです。