嬉しいメール

19日、台風を迎えつつある広島に国連機関のUnited Nations Institute for Training and Research(UNITAR)の講演に行ってきました。所長のイラン人でスイス育ちのAzimiさんは、大変に教養のある素敵な女性です。彼女からこんな嬉しいメールをいただきました。皆さんにご紹介します。

※UNITAR Roundtablesで行った講演の内容はこちらです。

Dear Professor Kurokawa

Your expose of yesterday was like lightening — and it clearly touched the minds and hearts of many: since this morning I have been receiving numerous impressed, thoughtful and, clearly, moved testimonies from some of yesterday’s participants. I think part of UNITAR’s duty is to contribute to elevating the thinking and the conversation wherever we are, and I think I speak if not on behalf of everyone at least on behalf of my own colleagues at UNITAR — you most definitely succeeded in doing so. Thank you for your presence and also for your generosity in sharing with us what must have taken you decades to learn, think through and understand.

We normally do not do a summary of the roundtables after the event — however in light of the importance of yesterday’s topic we intend to produce a brief summary and post it on our website. I will send this to you for your review, as well as an official letter requesting that our website be linked to the Science Council’s site.

I hope you were able to make your way back peacefully and safely to Tokyo and that the typhoon did not cause any concern?

with my warm personal regards.

では、また。

津田梅子の“Peeress’ School”

久しぶりです。このところ、出張でやたらと忙しいのです。何故かと考えてしまう程です。

8月17日のブログに書いた「津田梅子とTH Morganの1894年の論文を読む」で、津田梅子の所属の“Teacher in the Peeress’ School, Tokio, Japan”について何か教えてくださいとお願いしたところ、ありがたい事にちゃんと調べてくれた方がおられるのです。

それによりますと;

『“Peeress”は、「1.貴族婦人、2.(自らが爵位を持つ)有爵婦人」と訳され、Peer(貴族、華族)+essということでしょうか。津田塾大学ホームページ日本語版では、「塾創立まで」の中で、「1886年(明治19) 梅子、華族女学校教授となる」とあり、同英語版では、津田梅子が帰国後、“She accepted the position of lecturer at the Peeresses’ School”とあります。最後の“es”の有無でスペルは若干違いますが、以上から、黒川先生のサイトホームページにある“Peeress’ School”は、「華族女学校」のことだと考えられます。

津田梅子は最初の帰国後もこの学校で教えていましたので、その当時の事でしょうか。

さらに、「華族女学校」についてですが、学習院大学のホームページ日本語版には、明治18年9月(1885)に「華族女学校を創設する(四谷区尾張町)」、明治39年4月(1906)「華族女学校と学習院を併合し、華族女学校を学習院女子部と改称する」等の沿革が記されています。学習院女子大学のホームページ英語版では、“September 1885, The Peeress’ School (Predecessor of the Girl’s Division of Gakushuin)was founded.”とあります。その後、学習院女子部は女子学習院となり、戦後、学習院と女子学習院が統合され、さらに創設された短期大学が学習院女子大学に変わっていったということのようなので、華族女学校がそのまま現在の学習院女子大学につながったわけではないようです。』

ありがとうございました。

2004年10月

第34回日腎西部学術大会ランチョンセミナー
日程: 2004年10月1日(金)
会場: 岡山コンベンションセンター ママカリフォーラム
演題: 「糖尿病性腎症の治療最前線」

"Focus on the new European Clinical Trials Directive-the German Way"
「新欧州臨床試験指令ードイツ・フォークスの対応」
会場: JETRO ビジネスサポートセンター(赤坂ツインタワー)
演題: "Drug development and human healthcare, prospective of the next 10 years"
日程: 2004年10月12日(火)

成蹊大学講演会
日程: 2004年10月13日(水)
会場: 成蹊大学本館講堂
演題: 「日本の課題、世界の課題」

高血圧と糖尿病フォーラム(仙台)
日程: 2004年10月16日(土)
会場: 仙台サンプラザ3階クリスタルルーム
演題: 「糖尿病合併高血圧患者の治療が変わる」

高血圧と糖尿病フォーラム(岡山)
日程: 2004年10月19日(火)
会場: ホテルグランビア岡山4階フェニックス
演題: 「糖尿病合併高血圧患者の治療が変わる」

UNITAR Roundtables (ユニタール・ラウンドテーブル)
日程: 2004年10月19日(火)
会場: 広島商工会議所
演題: Scientists in the 21st Century:What new role in society?

(株)三菱総合研究所
「社会保障クライシスへの対応戦略~持続可能な社会保障制度の構築に向けて~」
日程: 2004年10月20日(水)
会場: 虎ノ門パストラル
演題: 「これからの医療・福祉のあり方」

福山市医師会循環器病研究会
会場: 福山ニューキャッスルホテル
演題: 「糖尿病合併高血圧患者の治療が変わる」
日程: 2004年10月21日(木)

高血圧と糖尿病フォーラム(滋賀)
日程: 2004年10月23日(土)
会場: 大津プリンスホテル
演題: 「糖尿病合併高血圧患者の治療が変わる」

第5回 北里ハーバードシンポジウム
(The 5th Kitasato University – Harvard School of Public Health Symposium)
日程: 2004年10月25日(月)
会場: 東京全日空ホテル
演題: 「Emerging Science and the Challenges of the New Century」

読書漫遊「リーダーよ歴史のうねりは見えているか」

読書漫遊 「リーダーよ歴史のうねりは見えているか」

 「東大議事録 文明を説く」 (堺屋太一著、講談社)
 「なぜ日本は行き詰ったか」 (森嶋通夫著、岩波書店)
 「図説世界の歴史 全10巻」 (J.M.ロバーツ J.M. Roberts著、創元社)

出展: WEDGE (2004年9月号)

「大学発」ベンチャー

7月に新聞紙上で、大阪大学発のバイオベンチャーで、大学で初めてバイオ関連で上場したという「AnGes」についていくつかの報道がされていました。公開前の株の売買で学部長が儲けたとか、株を所有している研究者と患者さんの間に利益相反がある事などについて報道されたのです。これは結構難しい問題ですが、現在の世界の状況と、最終的な成果が国際的市場を目指しているので、どうしても海外のルールの傾向と変化を知っている必要があるでしょう。国内的視点からだけの問題提起では解決できませんし、問題の認識、提起ごとに、知恵を絞って、しっかりした透明性の高いプロセスと透明性の高い「ルール」を構築していく必要があります。これは各研究者や、各大学に任せるようなことではありません。国の政策の問題です。こんな事を研究者の責任ととらえているようでは、研究者は研究に集中できません。これは上場した会社の経営者の責任でもあります。

このようにリスクの高い「大学発」ベンチャーを奨励しておきながら、所詮素人の大学の研究者の責任追及をするばかりでは、研究者はやる気をなくし、社会や患者さんから疑いの目で見られ、しかも社会の理解も支援もなく、明確なルールもないとなれば、戸惑ってしまうばかりです。いくら政府が研究費を投資し、大学発ベンチャーを奨励して、数の増えた事ばかり宣伝しても、本来、多くは失敗する可能性の高い(だから「ベンチャー」というのです)「大学発ベンチャー」は、結局は失速してしまうでしょう。

これらについては、朝日新聞の7月30日の朝刊に「私の視点: 治験と株保有、強制力ある規制が必要」としてコメントをしました。

皆さん、どう思いますか。

アウトカム研究会

9月2日、3日と軽井沢へ行ってきました。

京都大学の福原教授を中心に、臨床研究をどのように進めるのかといった本格的なブレインストーミング目的とした、アウトカム研究会というものに招待されて、講演を行ってきました。今回は腎臓病をターゲットとしたもので、若い人たち12人が参加、1週間の合宿を行っていました。以前からこのような研究の重要性は認識されていますが、誰もやってこなかったことです。例えば、なぜ New England Journal of Medicineとか、British Medical Journalなどの世界の主要な臨床学術誌が、1980年はじめから臨床研究の成績が中心になったのでしょう。EBMという言葉が出てきたのもこの後ですが、日本ではもっぱら医学博士号のための分子とか、遺伝子の研究が中心で、臨床医学の中でも重要な臨床研究は、ほとんど見向きもされませんでした。日本では臨床研究をやっている人はどこの大学でも教授になれないのですかね。しかし、会に参加していた若い人たちは本当によく勉強していました。これからもがんばってほしいです。応援しています。

今度、厚生労働省で「戦略的臨床研究アウトカム研究計画」のグループを立ち上げました。政策的に重要な臨床研究のアウトカムを予測できるように、計画、推進しようというものです。はじめに「糖尿病」と「うつ」を取り上げたいというのが行政の政策と言う事で、関係学会や専門家と意見を交換しながらも、研究のデザインはこの研究班で立案、計画するということを考えています。どれだけ理解されるか、見物です。こういったやり方が米国のNIHや英国の政策を見据えた公的資金による臨床研究のあり方なのです。

今回の軽井沢に参加した若者たちはこのような研究の立案にどっぷりと頭をひねったという事です。皆さん、初めての経験に目が輝いていました。

StockholmからSingaporeへ

お久しぶりです。

先月26日からStockholmで開催されたEuroScience Open Forumに招かれ、“The Future of European Science Policy in a Global Context”で、“Asian Perspective”という演題で話をしました。この会議では、もっぱら米国に対してのECの科学政策に話題が集中しており、よく知られていることですが、ECの中心であるBrusselの官僚的対応についてちょいちょいと話が飛び火しました。かなりの危機感と人材育成への配慮の不足が話題に挙がりました。これらについてはちょうどNatureの8月19日号に、英国科学アカデミー会長のLord Mayのコメントが載っていたので、彼に私も同感だという旨をすぐにメールで送っておきました。

StockholmではRoyal Swedish Academyを訪問しました。18世紀にかの有名なLinneらによって設立され、毎年、物理、化学のNobel受賞者が発表されるところです。ところで、Linneが私たち哺乳類の名前を“mammal”とした人であることを知っていますか?このことをちょっと前にお話しましたが、皆さんあまりご存知なかったようでしたね。

さて、Stockholmには尾身前科学技術担当大臣もいらっしゃっていて、お会いする機会がありました。それから、大塚在スウェーデン大使らとホテルで昼食をとっていた時に、偶然Nobel博物館館長のLindqvistに2年ぶりにお会いしました。お母さんの85歳の誕生日とかで一家総出でランチに来ておられたとのことです。どこにいても誰かに会いますね。

Stockholmに2泊してからSingaporeへ飛びました。Nobel医学賞受賞者のBrenner博士と沖縄大学院プロジェクトについて3時間ほど打ち合わせた後、内科医・腎臓専門医として以前から良く知っているシンガポール国立大学(NUS)のTan学長を訪問しました。まだお若い方ですが、今年4月に就任されたばかりで、それまでは厚生省に4年いらっしゃいました。

また、ここで活躍している元京都大学教授で現ウイルス研究所長の伊藤教授、そして腫瘍内科のWong教授とも夕食の席でお会いしました。Singaporeでは何事にも前向きで、決断が早く、人のつながりを介しながら国の将来の戦略を進めている事をひしひしと感じます。

2004年9月

日本透析アウトカム研究会 第1回臨床研究デザイン塾
日程: 2004年9月3日(金)
会場: ホテルメゾン軽井沢
演題: 「30代研究者へのメッセージ」

第7回治験の国際化シンポジウム
日程: 2004年9月4日(土)
会場: パシフィコ横浜 会議センターメインホール
演題: 「我が国の治験は、今後、どうあるべきか」

日本私立大学連盟 平成16年度「大学活性化研修」
日程: 2004年9月6日(月)13:45~15:00
会場: グランドホテル浜松
演題: 「評価時代を迎えた大学社会における私立大学の在り方」

社会連携推進機構設立記念行事
日程: 2004年9月10日(金)
会場: ホテルセンチュリー21広島
演題: 「科学と社会」

未来工学研究所技術同友会講演
日程: 2004年9月14日(火)
会場: 経団連会館
演題: 「日本の未来と学術会議」

高血圧と糖尿病フォーラム(神戸)
日程: 2004年9月18日(土)
会場: 神戸メリケンパークオリエンタルホテル
演題: 「糖尿病合併高血圧の治療が変わる」

抗加齢医学の実際2004 「新しい医療を学ぶ2日間」
日程: 2004年9月20日(月)
会場: 東京コンファレンスセンター品川
演題: 「21世紀の医学、医療の課題」

高血圧と糖尿病フォーラム(千葉)
日程: 2004年9月22日(水)
会場: 京成ホテルミラマーレ6階 ローズルーム
演題: 「糖尿病合併高血圧の治療が変わる」

透析医療フォーラム
日程: 2004年9月30日(木)
会場: ホテル日航大阪「鶴の間」
演題: 「これからの透析医療と腎不全対策」

米国式 症例プレゼンテーションが劇的に上手くなる方法

Book040818

米国式症例プレゼンテーションが劇的に上手くなる方法
-病歴・身体所見の取り方から診療録の記載,症例呈示までの実践テクニック

岸本 暢将 (編集)

いよいよ臨床研修が必修化される。新しい研修医も指導医も期待と不安にその日の来るのを待っている。特に大学病院では従来と違って、他の大学卒業生も多く、このシステムが相互評価の第1歩と考えると、「他流試合」を通じたこれからの教育(卒業生を他大学や病院で評価される)と研修(他大学や病院からの卒業生に評価される)という点で、これからの医師の育成に期待できるシステムといえる。人間は言葉で相互理解を進める能力を獲得している点で、ほかの種とは際立って違うのである。では、臨床教育、研修の要点は何か。まず、「症例プレゼンテーション(プレゼン)」である。自分の担当した症例をカンファレンスで、回診で、また電話でのコンサルテーションで、どこでも明確に、要点を抑えて、呈示することが相互の理解と討論の始まりであり、優れた教育の第1歩であろう。この方式で初めて「考える」能力が育成され、プレゼンのプロセスでより適正な診断仮説を構築し、検査の理由が理解でき、治療戦略への共同作業が始まるのである。このような対話こそが医師としての「頭の運動」とスキル向上へのきわめて効果的で、必須の方策である。

この本の著者は、いまや人気抜群の沖縄県立中部病院で臨床研修を終えた後、ハワイ大学での内科レジデント、さらに今年からニューヨーク大学でのリウマチのフェローを予定される新進気鋭の医師である。先日も、きわめて具体的でわかりやすいアメリカでの臨床研修への手引きの書『アメリカ臨床留学大作戦』(羊土社)を上梓し、大変な好評を得ている。何しろ、これも自身の体験を明確に記載して、しかも痒いところに手の届くような具体的な記述がすばらしい「How to」ものになっている。協力された先生たちのご努力にも感謝したい。

新患のプレゼンは通常5分、せいぜい7分で終わらないと、失格である。フォローアップの症例のプレゼンは1~2分。新患では、現病歴から始まり、これに関係して意味があると担当医が考える既往歴、家族歴、職業、社会活動などが述べられる。そして身体所見。「positive findings」ばかりでなく、「pertinent negative」について一言、二言入れないと、担当医が何を考えているのか、聞き手に何を考えているのか理解されにくい。ここではじめて基本ラボデータとなる。プレゼンする人と聞き手の知的対話であり、腕を見せ合う「格闘技」なのである。相互評価の基本である。だからこそ楽しいのであり、お互いに「生き生き」とプレゼンを通して意見を交換する。プレゼンに知的刺激を受けないのであれば、ただ疲れるだけであろう。

皆さんにもおなじみかもしれない日本びいきのTierney先生の言葉「病歴と身体所見だけで疾患の診断は8割方つく」も引用されている。翻って日本ではどうか。B4判にぎっしり書かれたコピーが配布され、だらだらとプレゼンし、ずらずらと検査成績、画像を並べてはいないか。第一、いまだ主訴の後に、「既往歴、家族歴、現病歴」と並べるプレゼンがあるのだからあきれる。これが学会の症例呈示にもまだまだ見られるのだから、どんな教授か、なんという教室か、どんな教育を受けているのか、悲しくなる。まず「集めた情報をどう分析し、どう呈示するか」これが腕の見せ所なのである。「SOAP」でプレゼンするが、まず「Opening Statementと主訴」でパチンと始まる。楽しいねえ。これが臨床の醍醐味なのです。ところが、これを身をもって理解し、「やって見せ」られる先生が少ないところに悲しい現実があるのではないでしょうか。だから学生にも研修医にも理解が難しいのです。

しかしそんなことは言っていられない。プレゼンはくり返し練習し、上手い人のを真似するのが一番。「真似」をする、そして、失敗は上手くなる糧です。先日、町淳二先生(ハワイ大学外科)、児島邦明先生(順天堂大学外科)のカンファレンスのあり方について書かれた本『米国式Problem-Based Conference-問題解決、自己学習能力を高める医学教育・卒後研修ガイド』(医学書院)が出たが、同じようにこれは理屈ではなく、実践なのだ。「習うより慣れろ」なのだ。だからこそできるだけ多くの人と接して自分なりのプレゼンを練習し、構築していくしかない。テニスでもいくら本を読んで、ビデオを見ていても、上手くはならない。実際にラケットで球を打ってみて、コートに出てみて、また本を読む、ビデオを見る。またコートに出る。コーチにつく。これですね、プレゼンは。型から入る、習い事なのです。また、この本は実に多くの細かい配慮がされている。各章のタイトルを見ただけで、わくわくしませんか? しかし、早くよい先生に会わないといけませんね。この本を参考にしながら、恥もかくのも上達の道、と心得てぜひ読んで、お互いに実践してください。本当にわかりやすくて、親切で、具体的で、著者の実体験の苦労がにじみ出て、すばらしい「お習い事のお手本」です。真似しましょう。そして、皆さん、すばらしい研修を、診療を、そして指導をお願いします。