ACCJ 2010 Person of the Year、なぜわたしが?

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ACCJとは「American Chamber of Commerce in Japan」 の略で、「日本にある米国商工会議所」です。多くの国に、そのような組織があるのは当然です。2国間交流のなかでも、ビジネスや産業界の交流は双方にとって経済の根幹ですから。何回か講演の機会もいだきました。

いくつもの政策提言などを発表するのも1つの大事な機能です。最近では、日本の成長戦略健康政策などへの提言を発表しています。

しかし、私はビジネスマンではありませんし、この連絡を受けたときは、本当のところびっくりしました。でも、お話を聞くと、日常的に私のしていること、発言していることの根幹は、日本を世界へ開かれた国にすること、激変するグローバル世界に,日本と将来を担う若者の育成に最も重点を置いていたことなどを高く評価していただいた様でした。このような活動は、私は教育の世界にいるのですから当然のことですけどね。

私のインタービュー記事資料1) も読むことができます。かなり辛らつと感じられる方も多いかもしれませんが、これらは私が医師という日本の組織に関係のない「個人の資格」で、15年ほどの在米から1980年代中ごろに帰国してから常日頃から言っていたことであり。このサイトや、多くの著書 、エッセイなどでも発信していることです。

いろいろご意見はあると思いますが、これは個人への批判でもなんでもなくて、私が日ごろから懸念している日本への発言の趣旨とほぼ一致していると思います。

わたしをこんな人間であると認識して選んでくれたACCJに感謝しています。そして、これを名誉ではなく、私に与えられた1つの任務として、日米ばかりでなく、日本と世界をつなぐことで、ACCJの活動を通して、私が出来ることをしていこう、と考えています。例えば、`今までの大学での活動や「Think Tank」 強化のほかにも、最近立ち上げた「Impact Japan」 の活動とか、いろいろ考えられます。

この「事件」について何人の方達からメールを頂き、石倉洋子さんがblog で紹介してくれました。

ACCJを拠点に1つ新しい任務が出来たみたいで、ワクワクしています。

「若者は内向き」なの? では大人たちは?

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このところ、「内向きの若者」という意見がメデイアなど、そこかしこで見られるようになっています。

本当でしょうか?このサイトでも1月12日付けで書きましたがそんなことはない、さらにほかにも「そんなことはないのでは?」 という意見が出てきています。

1月12日でも書いてあるように、「いまどきの若者の親の世代」を囲む日本の社会状況や、「それよりも上の世代」にしても、自分で決断し、自分で退路を絶って海外へ出かけた方(特に男性)はそれほど多くはないと思います。

経済成長していた1960-90年の間、そしてその後でも、多くの方達は、社命や、役所からの留学、海外駐在が多かったのでしょう。そして、多くは数年で帰国するなりしています。自分の決定で滞在している海外ではないのです。言うなれば、何年海外にいても基本的には「出張」なのです。

Harvard Kennedy Schoolの栗原さんも最近の「Cambridge Gazette」で、同じような見解、体験を発信しています。皆が心配しているのです。(今回の「Harvard Gazette」は少し長めなので、まず最後の編集後記から読むのも面白いと思います。)

若者のことには意見を言っても自分たちのことはタナに上げている。若者たちは直感的に「そうかな?」、と気が付いているのでは、と思います。この点については、白洲次郎も指摘 しています。

若者を励まし、応援することこそが、大人たちの役目です。

「休学のすすめ: 海外出る若者 応援しよう」

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去年1年、機会のあるごとに「休学のすすめ」 を学生さん中心に提案してきました。若者反応は悪くないです。少しずつですが広がりを見せているように思いますが、「朝日新聞」に投稿しました。これが1月14日の朝刊「私の視点」に掲載されました。

きわめて限られたスペースで、以下のように、話は進みます。このタイトルが、このカラムのタイトルです。ゲラ段階で修正できなかた所も2,3ありますが、皆さんで、メール、blog、twitterなどでも広げていただけるとうれしいです。

若者は決して内向き (資料1)ではありません。「若者は社会を映すかがみ」なのです。

政府も、企業も、教育機関もしっかりしてください。若者こそが日本の将来を担う人材、人財なのですから。

「私の視点」

■ 「大学の学部生のうちに、休学してでも海外に出て見聞を広めてほしい。かねて、そんな「休学のすすめ」を訴えてきた。

■ どんな分野であろうと、リーダーになるには幅広い人脈がものをいう。さらにグローバル化が進むこれからの時代には、若いときに独立した個人として「同じ釜の飯」を食べた外国人の友人たちは、その後の人生の貴重な財産となるからだ。

■ 大学に短期留学するもよし。途上国でNGOの活動に加わるもよし。海外企業でインターンシップを経験するのも意義があろう。ところが、いまの日本には、「海外に出てみよう」という若者を後押しする体制がきわめて心もとない。私にメールをくれたり、会いに来たりする学生たちが真っ先に気にするのは授業料の問題である。

■ 国公立大学だと休学中は授業料が免除されるが、私立大学は授業料を支払わせる場合があるようだ。人材を育成するはずの大学が経営を優先しているようにも見える。実に情けなく、嘆かわしい。休学している間は授業料を免除できないものか。行政ももっと関心を持って取り組んでほしい。

■ 問題は授業料だけではない。海外の大学との単位の互換や一定期間の転校など、海外での経験を復学後の実績として生かせるようなシステムも充実させるべきだ。大学はどう考えているのだろうか。

■ 若者のみなさんにも注文したい。内向きになるのではなく、海外に飛び出してみるというチャレンジ精神をもっと持とう。バブル崩壊後、若者も親も安全で安定した人生を第一に考えるあまり、海外留学のリスクを避けるようになってはいないか。

■ 大学3年生になるとシューカツ(就活)に走り回り、少しでも早く、一つでも多く内定を取ることに血道をあげる。グローバルな人材など育ちようもない。すでに国際的な政治や経済、外交における日本の存在感が薄れつつあるというのに、次世代の人材まで育っていないようでは地盤沈下を止められない。そんな危機感を抱く。

■ 各国の若者は、優れた人材が輩出してきた欧米の名だたる大学に果敢にチャレンジしている。質のいい教育を受けられるのはもちろん、国籍や人種を超えた交友のネットワークを広げられる。歴史や文化の背景が異なる仲間たちに刺激されれば、自分のやりたいことや目標も見えてくるだろう。個人のキャリアの利益になるだけではない。グローバルな人材は、その国の政治や経済、社会の根幹となり、国の将来をも左右する。それが世界の常識だ。

■ 日本の将来を背負う若者の背中を押し、どんどん武者修行してもらう。大学も企業も親も、社会全体でそういう意識を共有しなければならない。休学して海外に出る若者をみんなで応援することが「人財」を育て、日本の将来を明るくする。」

2011年1月14日(金)朝日新聞19面より

 

税所くんの正月、Dhakaから

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Bangladeshで大活躍する早稲田大学の税所くん については、何度もポスト (資料1)しています。

最近では日本のメデイアでも取り上げられていますが、今年も早速、正月3日の朝日新聞朝刊の2面「ひと」にも取り上げられています。

記事を読んでいる朝10時ごろ、Dhakaにいる税所くん本人からメール。「本日の朝日新聞朝刊のひと欄に僕が掲載されているらしいです。ダッカにいるので記事を見れないのですが、 笑」と。

すぐに、新聞記事の内容をそのまま書いて、メールで返事。

「全文ありがとうございます!感謝です。
さっそく、今日ユヌス博士に報告してきます。
行ってきます!」、と税所くん。

私からは;
「My Hello to Yunus-san.
We may meet in Davos (Ref.1) later this month」

こんなことが30分でやり取りできるのですから、世界のどこにいても狭いものです。

「Design Thinking」、新しい時代の動き

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明けましておめでとうございます。

2011年こそは、日本ももう少し活性が感じられるといいですね、期待したいですが、、。

この2,3年のことでしょうか、「Design Thinking」という言葉が広がりはじめたように思います。人によってその解釈は違うと思いますが、グローバル世界になって、問題の複雑さへの多くの知恵の結晶かもしれません。

私のサイトでも、紹介していると思いますが、「Design」という言葉が、単なる、物や形のDesignという次元を超えて、多様で、異質な考えなどを広く、多角的に取り入れながら、複雑な問題 complex problemsを分析、理解し、「現実的な解」 practical solutionsを提示するという考え方がその背景にあるように思います。「Design Thinking」というプロセスと理解するとでも言うところでしょうか。

これは多くの分野で見られる現象だと私は感じていて、科学研究のアプローチから言えばSonyの所マリオさんの「Open Systems Science」 という考えかた、Harvard, Stanford大学などのGraduate School of Design, dSchool、また東京大学の「i.School」が出てきた背景なのだと思います。

さらに問題を整理するうえで、しばしば図示するプロセスが取り入れられます。World Economic ForumでのIdeasLabもそんな感覚でしょうか、また最近Dubaiで参加した「Global Redesign Summit」(資料1)「Global Risk Response Network」(資料1)などでも「Design、Innovation」 などのCouncilが素敵なヴィジュアルのデモを作成してくれているのも、複雑な問題の「見せる」、「見える化」することの大事さを示しています。

ここ数年、いわゆるdesignerという方達のビジネスでの活躍が目立っているのも、時代の流れと情報を図示化してみせる技法が、デジタル技術の発達で多様になっていることにも関係しているのかもしれません。奥山清行さん (資料1)、三宅一生さん 資料1)、佐藤可士和さん 資料1)などの方達です。

皆さん国際派でもあり、人間の心の本質をいつも考えているからこそ、「Open- and Demand-driven Innovation、新しい価値の創造」という時代に要請にこたえるべき視点が、自然に身に染みついているからなのかもしれません。

2009年に続いて開催した2010年のGlobal Entrepreneurship Week (GEW)でも「Impact Japan : Design Thinking」(資料1)をテーマに、若い人たちのグループをお招きしてWorkshopを開催したものそのような意図があったからです。ここから始まって「Impact Japan」という組織を立ち上げましたが、このGEW企画の活動「Design Thinking」が日経新聞の年末12月29日朝刊に、広告記事として掲載されました。

新しい時代へ対応すべく、世界の知恵が動いているように感じます。今年の日本はどうなのでしょうか。

 

「GLOBE2010」、朝日新聞GLOBEに掲載

朝日新聞のGLOBE特集の2周年記念のイヴェント「GLOBE2010」 についてポストしました。On-lineでも、山脇編集長のコメントで、この記念イヴェントにちょっと触れています。

そのときのユニークなパネリスト6人の記事が 朝日新聞GLOBEの12月20日号に掲載されたので、ここに紹介します。山脇編集長の「突破する力」についてのコメントの下に、6人のコメントがまとめられています

ドラゴン桜、またまた快挙

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早稲田大学の税所くんが休学してがんばっているBangladeshで貧しい村の若者を、不可能と思われる高い目標へ挑戦する「ドラゴン桜」 (資料1)。

11月30日の日経新聞「挑む」という特集にも税所くんの挑戦が紹介されました。

ちょうどこの記事が出たとき、私はDubaiにいましたが、彼から記事の話は聞いていました。記事を読んだ人たちは、さすが早稲田大学、と思われたかもしれませんね。しかし、これは税所くんとその仲間たちの力です。早稲田大学を休学 (資料1)したこと、そして大いに悪戦苦闘したことが良かったこともあるでしょう。

このよう挑戦する学生、未来の「世界のリーダー」を輩出することこそ、グローバル時代の大学の大きな使命のひとつでもあるのです。このような人が「Human Capital、人財」になる可能性を秘めているのです。大きな「Impact」を社会に、世界に与えるのです。

今日、帰国したところへ税所くんから、以下の朗報が入りました。

「黒川先生

ドラゴン桜。 初の 女子生徒合格!ジェレン アクター 18歳 女性

国立第2位 ジョゴンナ大学に合格!!
7万人の受験生のうち、2,038位の順位での堂々合格です!!

村の女子生徒が、村のe-Educationで勉強して、日本でいう一橋大学に合格したのです!

ヘラルに引き続き第2の奇跡!!それにしても70,000人中 2,038番。

現地からはまたも、「信じられない!!!」の声が続出しています。

イスラム教の下、村の女子生徒は人生の選択において厳しい環境にいる女性が多い中、新しい希望のロールモデルが本日バングラデシュに誕生しました。

ジェレン アクター    革命をありがとう!

彼女はヘラルに引き続きこの国で2番目の映像授業による大学受験合格者になりました。

速報でした。」

熱いですねえ、、。彼の新しいサイトは「ここ」

これが今の「内向き」といわれる若者たちに対して、大人が出来ることなのです。若者一人ひとりの心の底にある熱い思い (資料1) に気づかせ、暖かく応援、支援することです。

これが教育の真髄と思います。

 

「内向き、鎖国マインド」の日本人はいつから?

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最近、日本人の内向き志向、鎖国マインドについて、多くのコメントがなぜか急速にメデイアで取り上げられています。

なにか変ですね、何かのサインなのでしょうか?そんなことは、私を含めて一部の人たちは以前から言っていたことです、「知の鎖国」(資料1)とかの言葉でね。この国の多くの「立派な立場」の人たちが、まじめに考えて、しかも気がついていなかったのか、一部では気がついていても認めたくなかったのでしょうか。

最近、日経朝刊の11月28日号で取り上げたそうですが、Dubaiに来ているので、直接は読んでいないのですが、「ニッポンこの20年;長期停滞から何を学ぶ」という特集の第3部の「薄れた存在感」(1)という1ページの特集記事です。「消えるグローバル人材: 語らぬトップ、内向く若者」という記事が出たそうです(論説副委員長の脇 祐三さん記事)。ほかに囲み記事で行天豊雄さん、山本 正さん、ダボス会議を運営するLee Howellさんのインタヴュー記事が出ています。日経On-lineでも読むことが出来るようですが、これは無料では読めないのです。(ちょっと一言、日経On-line版、先日「On-line」版が賞を取ったようですが、どこが新鮮なのでしょうかね?賞をとれた理由を知りたいものです)

まあ、当然といえば当然ですが。ちょうど11月27日付けで、同様の趣旨のことと私の提案をポストしたばかりでしたが、、。

なにかさびしいというか、情けないというか、今頃になって「なぜ?」、という感じです。

 

「医療制度」改革の課題、JBPress私の意見

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私は、もともとは臨床医ですし、日本と米国で医師としての生活を10年以上しています。当然のことですが、医療制度にはとても身近なところにいますし、いろいろ考えることもあり、またとても気になっている日本の大きな社会的課題です。

このサイトをはじめとして、以前から問題点を指摘していますし、「ナンのカンの」と多くの日本の「権威の方たち」に言われながら、出来るだけのことはしてきたつもりです。その成果も、あまり見えないかもしれませんが、出ていると思います。制度改革は、なんと言ってもグローバル時代に適応できる人材の育成に尽きます。

関係するキーワードを入れると、いくつものpostingを見ることが出来ますし、一般向けの本としても「大学病院革命」、「日本の医療風土への挑戦」、「医学生のお勉強」 ほかにいくつもの本も出し、紹介しています

21世紀になり世界の様相はすっかり変化しました。医療制度関係では、根本的な問題が「高齢社会」、「慢性疾患、特に生活習慣病の増加」、さらにグローバル市場経済になったこの20年で「貧富の差の拡大」、そしてリーマンショック以降は「国の借金の急増」という課題です。

わが国の課題はどうでしょうか?先進国の中でも、高齢化は最も進んでいますし、とても問題が多いですね。

私どもの主宰する「医療政策機構」 (資料1)、「WHO」 などの活動も通して発言し、改革に微力は貢献したいとは思いますが、多くの利害関係者(抵抗勢力です)の力関係で、どこの国でも大きな政治課題であり、実行が難しいのです。

最近でもいくつも活動を報告し意見を述べていますが、最近は「e-Health革命 ITで変わる日本の健康と医療の未来」 、またOn-lineでもJBPressなど(資料1)でも始めています。

時間のあるときなどに、注目していただけるとうれしいです。

その点では10月のSeattleでの会議 から出た「12のアイデイア」 は大事と思います。

どのようにこの政治的プロセスを可能にできるのか、ここが課題です。以前紹介した本が参考になるでしょう。

基本的には「医療制度」ではなく、今の社会では「健康・医療政策」(資料1)とでも改名しないと、実情に沿った制度改革は結構、むずかしいと思います。

政策の命名は大事です。

 

 

新しい地域医療を構築するチャレンジャー

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日本を含めた先進諸国では「高齢社会、慢性疾患、これ以上の公費出動は無理」、という状況で、従来型の「医療制度」は制度的に限界に来ていることは明らかです。

これについては従来から私も発言し (最近のではこれ(資料1、 )など)、政策提言し、実践を促しているのですが、従来からの利害関係者の「抵抗」で、なかなか政策の実現は進みません。

一方で、まずは出来ることから実践しようという人たちもいます。そのような一人に武藤真祐さんがいます。

彼は医師として恵まれた10年ほどを過ごしましたが、それには飽き足らず、より高い目標を設定して、この数年、医師ではない仕事でがんばってきました。

このような社会経験を経て、まったく新しい形の都会型地域医療を始めました。

これをはじめてから武藤さんが私に言ったことが本当に良かったのです。「いろいろ迷い、医師を離れ、自分の一生の仕事を捜し求めていたのですが、高齢化の進む都会の医療の現場に戻って、これこそが心から私がやりたかった仕事だと感じました」、と。

武藤さんと私の対談が出ましたのでご覧ください。

素敵な気持ちですね。ほんとうに素晴らしい門出です。心からの祝福を送りつつ、彼を応援しています。