ダボスから-4

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Dsc00566 写真1

31日は英国のGordon Brown首相の後に、麻生総理の力強い演説がありました。特にAfghanistanでの学校や医療施設の建設や援助、Kabul国際空港の復興支援、Palestineでの日本の活動、またAfricaへの援助の増加など、世界から高く評価される話題に触れられたのがよかったです。これらのことはもっともっと積極的に国内外へ政府が広報すべきですが、こういうところで私たちにも新鮮に感じられてしまうのでは、ちょっと残念に感じました。でも、全体に力のある講演でした。

その後、総理はいくつかの面談をこなされて昼食を取られましたが、ここにお招きを受けました。ここでも海外の要人たちとの活発な議論がありました。積極的な会話は大事です。

Dsc00561_pmaso 写真2~3: 麻生総理の講演と昼食会

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Dsc00575_ogata 写真4: 昼食会場でJETRO林理事長、緒方ご夫妻、UNESCO松浦事務局長と

会場での昼食はなんとユニクロ(UNIQLO)がSponsorで、大変好評でした。気の利いた展示、いくつもの映像が流れていて(最初の写真など)きれいでした。またお弁当もとてもおいしかったようで、これも大好評。この日のお昼前後は、日本の存在がとても目立ちました。皆さんご労様でした。

斉藤環境大臣も総理に同行されたようで、私の友人でもあるYale大学のDaniel Esty教授と歓談されました。

Dsc00579_three_with_kk 写真5: 斉藤大臣、Esty教授と

最終日の2月1日は、Global Agenda Councilへ参加。

最後のセッションは南アフリカのTutu大主教(Apartheidの廃止などで活躍。その後も人権問題などで活動を続けて、1984年ノーベル平和賞 を受賞しています。)と若者達の対話が、なかなか面白く、さすがに宗教家、人権問題の活動家ですね。とても話が上手です。

Dsc00599_panel 写真6: Tutuさんと若者達の会話

今回の世界の転換期を象徴するダボス会議の締めくくりは、こちらのWebサイトで見ることが出来ます。

帰りがけにホテルのロビーで、Microfinanceをはじめて、Bangladeshの女性の自立を支援したGrameen銀行のYunusさん(ノーベル平和賞受賞。グローバル時代の社会起業家という大きな存在として何度も講演などで紹介しています)にお会いしましたので、日本の若者たちの意欲などについてお話しました。3月にも来日されるそうです。またお会いできると嬉しいです。

Dsc00604_india_and_kk 写真7: Yunusさんと

この後、Zurich空港へ移動し、これからNew Delhiです。

日本国のビジョン、私の考え

今年の元旦のブログから「国家ビジョン」について繰り返し発信しています(参考: 1234 )。

この背景には、去年12月に2回、そして今年1月に1回、同じ趣旨で講演する機会のあったこと、オバマ新政権の布陣からの必然、そして、今後の世界の変化を踏まえて予測(「想像」とは違います)されること、その中での日本のあり方を考えた上でのことです。

これらの3つの講演は、どれも1時間弱の時間でしたが、それぞれの会場で約800人、1,000人、600人と、しかも殆ど重複はなく、社会的に重要な地位にいる方々が多かったので、3度とも大体同じ内容の話にしました。

ありがたいことに、この講演の一つがほぼ全文、(社)産業環境管理協会の「環境管理」2月号に掲載されることになりましたので、ここにもPDFで紹介します。

「何をバカな」、「無理だよ」、あるいは「できない理由」がすぐに頭の中に浮かんでしまうのでしょうか。

朝日新聞の村山論説委員が書かれた、「窓」という記事も参考にしてください。

 “グローバル時代、日本の課題は?”
 2008年12月11日に開催された「エコプロダクツ2008 記念シンポジウム」での基調講演

国家のビジョンと新エネルギーと農業政策

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今年に入り、このブログでいろいろと国家ビジョンについて触れています

元旦のブログに始まり、7日20日21日のブログなどがそうです。それから、13日に書いたブログもこれに関連して、オバマ政権の政策について触れました。

そして今日は、22日の朝日新聞記事word file)で、12月と1月に行った講演に関するものです。これらの講演に関する記事が段々と長いものになってきたので、私の言っている“Story”が明らかになってきたのではないでしょうか。

このグローバル社会の大転換期、日本の危機的状況、オバマ新大統領の誕生、日米そして世界の動向を考えると、このように記事などで私の考えを取り上げてくださることは、本当にありがたいことです。

さて、これらをどのように一歩前に進めたらいいか、皆さんも動き出してください。

「脱・できない理由」

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朝日新聞の夕刊に「窓」という論説委員室のコラムがあります。

12月に行った私の講演を聞いて、村山論説委員が「脱・できない理由」というコラムを書いてくださいました。嬉しいですね。「大賛成!」「その通りだ!」というメールをいくつも頂きました。ありがとうございます。

このコラムは次のように進みます。

■日本は2050年に食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる。

■政策研究大学院大学の黒川清教授は一昨年、そんな目標を打ち出してはどうかと当時の安倍首相に助言したことがある。内閣特別顧問だったころだ。

■関係する役所からは、「そんなこと、できっこない」という否定的な反応ばかりが官邸に上がってきたという。

■日本の食糧自給率は40%ぐらいしかない。エネルギーとなると、わずか4%にすぎない。霞ヶ関のお役人でなくても、目標を実現するのはそうとうに難しいことがわかる。

■「でも、なにごとも、できない理由をあげていてはダメなんです」。黒川さんは、そう強調する。インパクトのある目標をわかりやすい言葉で発信し、みんなに「自分は何ができるのか」を考えてもらう。そうやって世の中を変えていくのが政治の仕事というわけだ。

■もうすぐ米国の大統領になるオバマ氏は、グリーン・ニューディール(緑の内需)政策で不況を乗り切る、という明快なメッセージを発信している。それに呼応して、各国が「低炭素社会に向けて何ができるか」を考え始めた。

■いまの日本には、政治のリーダーシップはない。だから、「できない理由」が幅をきかせている。

■黒川さんは最近、あちこちで説いて回っている。「食糧とクリーンエネルギーの輸出は、2030年にでも、実現できます」

<村山知博>

(出典:2009年1月19日(月)朝日新聞夕刊2面)

村山さん、ありがとう。

皆さんはいかがお考えですか。

「大学病院革命」、慶應義塾大学病院への提案

慶応義塾医学部新聞(2008年12月20日号、第686号)の1面に、戸山病院長と私の対談、“今こそ建学の精神に立ち戻り、未来へ向けた「大学病院革命を」!”が掲載されました。慶應義塾大学病院の将来がテーマです。

私の論点は「大学病院革命」にも書いた内容で、これまでも機会あるごとに発言していますが、現在の政府が進める第5次医療計画にも通ずる基本的考え方です。

このブログを訪れてくださる方々には何度も言っていることですが、このグローバル時代、何が自分の強みで、何が弱みなのか、何が自分を他と差別する特徴なのか、リーダーの責任は何か、などにも触れてお話ししました。

私は慶應義塾の応援団と自認していますが、対談ではその理由についても触れられています。福沢諭吉の思想と行動とそのスケールを考える時、特にその時代と社会の背景を考えれば考えるほど、とてつもなく大きい人だと感じます。こんな人が今の時代、一人でもいるでしょうか。

この対談に目を通していただき、日本の医療、大学病院の役割とそこへの改革の工程を考え、実行していただければ嬉しいです。

科学者としての天皇陛下

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今日23日は天皇陛下の75歳のお誕生日で休日。

先日12月16日のブログで、リンネ生誕300年にあたってロンドンのリンネ協会で行なわれた、天皇陛下のすばらしいご講演を紹介しました。

今週、書店に出ている週刊朝日の新年合併号(1月2、9日)に「科学者としての天皇陛下」という、動物行動学者の日高敏隆さんと画家の安野(あんの)光雅さん の対談が掲載されていて、そこでもこの講演について触られています。

この二人の巨人も、科学者としての天皇陛下のこのご講演について、私の感想と同じようなコメントをされています。つい嬉しくなり、そして皆さんにこの講演を是非読んで欲しいので、前回の紹介も偶然のタイミングでしたが、再び紹介します。

ひどい風邪で講演

11月はひどい風邪を引いて、一週間ほど、ほとんど声がでない時がありました。そんな時に限って、4日も続けざまに講演の予定が入っていました。これらの会合に聴きに来ていただいた方たちには聞きにくい声での講演で申し訳なかったです。ごめんなさい。

一つは慶応大学の丸の内キャンパスでの講演。これはすごい人たちをお招きしています。私もお招きいただき感激。私の講演の感想も出ています。ありがとうございます。慶応義塾も今年で150年。無事にその式典も終ったそうですが、残念ながら私は海外にいたので参加できませんでした。おめでとうございます。

二つ目は、GRIPSで共産党中央学校の60人ほどの方たちの訪問を受けてのセミナーです。こことは、相互交流をしています。学問の場がこのような活動を続けていることは大事なことと思います。

次いで、日経ウーマンなどが主催するWomens Health Forum。この私のサイトを探索してみるとわかるように、私は明確に女性の応援団と思われています。今回は基調講演ということで、しかも私の後には専門の方たちが「乳がん」「動脈硬化」「女性医療」等のお話があるので、もっと広い視点でお話しをしました。「ピル」「10代の人工中絶」についても触れました。短くまとまったものが「日経ヘルス」(日経BP社)2009年1月号に出ました。聴きに来てくれた方たちの反応はどうだったのでしょうね、興味あるところです。

次の日に神戸で「神戸先端医療構想10周年」で記念講演をさせていただきました。出版物が出るかどうかわかりませんが、要点はblog(ページ4 and 5)で見ることができます(こちらのブログもご覧ください)。週末でもあり、国会解散があるかも、といううわさで持ちきりの時期でしたので、渡海元文部科学大臣を始め、地元の代議士さんも大勢見えておられました。本当にごくろう様です。

‘From Japan With Love’ (日本から愛をこめて)

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最近TIME誌に掲載された巻頭記事、From Japan With Love (日本から愛を込めて)”に気づかれましたか?

表紙のデザインもとてもセンス良くできていますね。記事を読めない方でも、この記事に込められているメッセージのフィーリングはこちらから感じ取っていただけるのではないかと思います。

ソフトパワーの威力に乾杯!

自分の力に誇りを持つことは大切です。ただし、弱点もきちんと自覚すること。

「毎日フォーラム」(2008年12月号)の記事

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「毎日フォーラム」(2008年12月号)の「視点」に私の記事が掲載されました。

小学校を核に「全員参加型PTA」で地域力向上
研究者や大学生は地元学校でボランティア活動を

健康であるためには健康なファミリーが必要で,健康なファミリーには健康な地域コミュニティーが必要だ-。昨年4月に政府の新健康フロンティア戦略会議の座長として「新健康フロンティア戦略」をとりまとめたが、この基本理念を強く訴えている。

内容は子供の健康、女性の健康、働き盛りの健康、高齢者の健康寿命を延ばそうというのが柱で、その中で私が主張したのは、予防を重視した健康作りを進めるうえで、家庭の役割を見直し、地域コミュニティーを強化することだった。都市化、核家族化、少子化、女性の社会進出の進展で文化や伝統とともに家庭や子育てなど世代を超えた知恵の伝承が難しくなり家庭力は弱まり、崩壊しかけている。若い夫婦は子供の突然の発熱に戸惑い、いきおい救急センターに駆け込むことになる。一番の問題は子育ての知恵が継承されておらず家庭力が崩壊しているということだ。

木に例えるなら家庭力、地域力を高めることが根と幹であり、個別の政策はその先の枝であり、葉の部分だ。そうした大局観のない論議をしているから、政策も小手先の対応になりがちだ。

現代社会でこの家庭力を補うのが、地域コミュニティーだ。都市も田舎も、日本はコミュニティーの一体感、結束力がなくなっている。一体感を失ったコミュニティーは、何か起きた時に一番リスクが高い。逆に、普段から一体感があるところは、一人暮らしのお年寄りの異変にも気づきやすく、災害など何かが起きた時に強い。家庭力を作るためには普段から地域力を付ける必要がある。

ヨーロッパは、街中に人が集まる広場があり、価値を共有するような教会など、もともと集まる場所があるが、日本にはそれがない。まずは全国に約2万2000校ある小学校の活用を提言したい。1年生から通う場所なので都会でも地方でも、人の集まる場所として比較的近い場所にある。これを核に時間のあるときにはお年寄りや若者、地区の母親などが集まる。みんなが見ているから先生はより授業に集中できるし、子供たちを先生に任せきりにすることもなくなる。常設の「地域全員参加型PTA」だ。子供が病気になった時も「こうすれば大丈夫」とか、母親同士で教え合う。子どもが病気なら気の合う知り合いに預けたりもできる。普段からそうした関係があると「お医者さんは誰がいい」という話も出て、地域の医師もみんなの仲間になる。自治体は巡回ミニバスなどを提供し、土日もこれらの自発的な地域活動を支援する。

コミュニティーの中では子供の健康、食事などをいろいろな人が見ていて、「朝はご飯をちゃんと食べなさい」とか、学校でお年寄り、他人が注意する場面も出てくる。しかられた経験のない子供が増えている現状では、周りとのこうした関係の構築は大切だ。街でもみんなが子供たちに自然に声をかけるようになり、子供たちも見られているから態度や姿勢もよくなる。多くの人が参加する学校に子供を6時まで留め置くと、大人のいるところで自習、復習、読書、運動、遊びといったさまざまな時間の過ごし方ができるし、親も安心だ。先生も自分の仕事に時間をさけるし、父母との関係もよくなるだろう。

一体感で予防医療に貢献

核家族の中で育った女性は(これは男性もだが)、兄弟姉妹や祖父母との接触が少ない、子供を抱いたりあやしたりする経験は、結婚して出産するまでほとんどしていない。コミュニティーの中では、妊娠時から「子供ができたのね」とか声がかかり、普段から周りが応援するようになると安心できるし、もっと明るい社会になるのではないか。たばこをやめた人や、運動でメタボから脱却した人がいればお互いの話題になり、試してみる。行政のトップダウン施策ではない、一体感のあるコミュニティーが予防医療も充実させる。

また、全国には保健所が約500ヵ所あるが、保健師や看護師などが積極的に地域に出ている地域は比較的には一体感があるという。それらの人たちが地域コミュニティーに入り込み、普段から交流することも大事だ。

もう一つは、大学の教員、大学院生、学生、事務スタッフのみんなが、自分の住んでいるところの近くの少、中、高校に行き、年間20時間程度の地域ボランティア活動(土日も含む)をすることを提唱している。学校の先生と一緒に授業をやれば、院生、大学教員も自分の発揮できる専門性に自信を持つし、先生からは子供たちの教え方を学ぶことになる。さらに大学生、院生にはインセンティブとして将来、学校の先生になれる資格を付与する。ボランティアをやった大学生には学校の先生を志望する人も多く、そういう人たちを30代からでも先生に登用するシステムを作れば教育現場も様変わりするだろう。流動性のある仕事やキャリアのあり方も、小学校を中心にした地域コミュニティーを強固にすると思う。こうしたプログラムは中高校、幼稚園、老人施設、病院などでも展開できる。全員参加型地域社会の形成であり、これを自治体が支援する。

働く女性を支援する組織で、病児保育の「フローレンス」というNPO法人があり、加入者が年間数万円を出し合って運営している。病気の子供を登録した人たちが1日預かってくれて、場合によっては医師に連れて行ってくれる。このようなボトムアップの活動を社会事業といい、担い手を社会起業家と呼んでおり、世界的に広がり始めている。こうした事業の広がりは地域コミュニティーの形成にもいい影響を与える。

コミュニティーは地方自治体などの上から与えられるのではなく、自分たちで作るものだ。世代を超えた交流の場を作っていかなければ、都会も地方も「地域社会のないこと」から日本は崩壊していく。健康も医療も「Back to Basics」で基本に立ち返ることが大事だ。すべての政策は健康な地域のコミュニティー作り、家庭力の回復から始まるということを強調したい。

 小学校を核に「全員参加型PTA」で地域力向上
 研究者や大学生は地元学校でボランティア活動を
 (毎日フォーラム 2008年12月号)

TIME誌のJet Li

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Jet Li を知っていますか?中国の有名なカンフーマスターで映画俳優です。私は彼のファンで、以前にもブログで彼のNGO、One Foundationでの新しい生き方についてご紹介しました。

ところで、最近のTIME誌に“The Liberation of Jet Li”(Jet Li の解放)と題する記事が載っていました。

このように最初はごく限られた人たちにしか知られていない活動が、次第に世界的なメディアで報道されるようになったという例は、他にもビル・ゲイツの“Creative Capitalism”なんかがありますね。これも以前ブログで取り上げました。

世界は絶えず動いていますが、その変化が数人の運動から始まったものも少なくありません。目を良く見開いて世の中で何が起こっているのかを知ることは大切です。目を覆って変化をやり過ごすことはできないのです。世界はつながっているのですから。