借金漬け、日本は崖っぷち

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世界、特に「先進国」では公的出費が増え続け、しかも経済の回復が遅いので(日本ほどではないにしても、、)、国の債務が増えることに対して懸念が問題にされています。

EUではギリシャが債務超過になり、ついでスペイン、ポルトガルも債務過剰になりそうでユーロの価値の危機です。

日本の経済はあいも変わらず調子が悪いですね、この20年、ほとんど成長できないのです。今年の予算は、税収より国債のほうが多く、打ち出す政策は公費の出費が多くなるばかりです。国の債務(借金)がGDPの200%近くになりました。

しかし、日本ではあまりにも債務が巨額(GDPの200%)だからでしょうか、国債発行にもまったく規律が欠けていますし、よそに比べても国内ではこの債務への懸念が、学者も、報道などもあまり大声では叫ばれていません。「麻薬中毒」状態です。しかも、高齢化が進み、借金返済はほとんど不可能ですね。将来の世代はますます暗い気持ちでしょう。この世代は実に無責任です。

日本の「偉い人たち」などが、日本には国民の貯金その他で1,400兆円ほどあるから、国全体としては債務過剰ではないから大丈夫、などといっていましたがさすがにそんな発言は、最近は不思議に減っているように感じませんか?なぜでしょう。

今年1月末、格付け機関Standard and Poor’s (最近のGoldman-Sacks問題などに関して、企業格付けでまた不正を働いたようなこともあるようですが、、)が日本の国の信用を1ランク下げました。日本の報道では、不思議なことにちょっとしか扱われなかったですね、こんな大問題なのに。

思い起こせば前回の格下げは2002年5月でしたか、そのときの日本は大騒ぎの報道と、財務省まで抗議文、広告を送りつけなどしました。次の記事などがあります。覚えていますか?今回とはずいぶんな違いです。なぜなのか、考えてみましたか?

本当はどうなのでしょう。確かに日本の借金は返済不可能でしょう。国の信用は低下していくでしょう、経済成長もなかなか難しそうですね、、、。来年度は日本が発行する国債が国内だけでは売れさばけず海外に購入してもらうより仕方ありません(普通は国内だけで売っているほうがおかしいのですけどね)。このときは金利が4-5%程度には上がる、借金の返済はさらに苦しくなり、国の借金は急速に増え、インフレになり、国民の生活はさらに苦しくなるでしょう。

今の政治のひどさ、今までの「政産官の鉄の三角」もひどいものです。政治財務省などの「エリート」の考えていることは大体想像できますね、自分たちは責任を採らない、政治の貧困のせいだと。国民、特にこれからの世代は困窮というシナリオでしょう。ひどいものです。その先の手も読めそうな気もしますが。

最近、亀井大臣が郵便貯金の上限を2,000万円にあげました。不思議ですね。来年の国債を国内だけで買いきれるようにしようとの陰謀にもみえます。だから金利の上昇、インフレをさしあたり1年延ばそうという、いつもながら「問題の先送り」、「陰謀」でしょうか。あまりにも突然ですしね。では、その翌年は予算が成立するのでしょうか?

結局、国債の金利が上がり、返済額が増え、日本円は安くなり、ひどいインフレになるでしょう。ひどいことですよ。

選挙を前にして政治家は消費税上げることを言えず、役所に大鉈を振るえず、決断できず、役所も、学者もね。報道も政府に操作されているのか、広告料で企業に遠慮しているのか、あまりつらいことには意見を広く発信しません。

大体、日本はバブルがはじけて、1998年ごろから超低金利、私たちの預金はみんな国外へ出て行ってしまって、結構「サブプライム」の引き金の1部になっていた可能性は高いのです。サブプライムでバブルがはじけて、私たちの預金は実はもう返ってこない、と思いますが。

日本国の財政状況は極めて危険水域(資料)です。政治は選挙を前にして減税はできない、企業も集中と選択がなかなかできない。外人や女性を重要なポストにつけたくないとか、希望ないですね。「あれもこれも」と議論しているのは結構なのですが、問題は実行です。大企業も内向きで元気ないですね、もっともっと「M&A」など積極的な、厳しい経営が必要と思います。

世界では日本への信頼はガタ落ちで、できれば相手にしたくないという雰囲気も出始めていますね。日本経済は「弱い」のではなく「麻痺している」のです。

今回も、もっぱら「The Economist」の記事を引用している理由は、2月15日のカラム「トヨタの問題と苦悩」 に書いた通りです。

トロントの4日、米国内科学会、トロント大学など

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4月21日、トロント入り。去年の5月、10月以来の訪問です。米国内科学会年次総会に参加です。私は日本支部長 (資料1)なのですが、この何年かは日程が立て込んでいて欠席続きで、上野副支部長が出席されていて本当にありがたいことです。久しぶりの出席でしたが多くの旧友、新しいリーダーたちにもお会いする機会になりました。このような機会はとてもうれしいものです。

日本支部は南北アメリカ大陸の外では唯一の支部ですが、私たちの活動は本部をはじめとしで皆さんによく知られています。今年も2年続けてですが、表彰されました。 特に女性医師の活動に焦点を当てた委員会プロフェショナリズム委員会 の活躍、そして研修医、学生会員を増やしながら臨床教育活動を引っ張る若手医師たちのおかげです。

新しい7人のフェロー(FACP)、次期日本支部長の小林さんがマスターへ(MACP)、日本内科学会理事長の寺本さんが名誉フェローなど、その式典を含めて、皆さんと楽しいひと時を共有できました。偶然なのですが、日本の医局制度を「脱藩」してこちらで活躍する日本の若手医師にもお会いすることができました。亀田病院の研修医のポスターが発表に選ばれ、参加してくれています。これらの活動も今回の表彰を受けています。指導に当たった小原さんたちも参加、本当にうれしいことです。

プログラムでは臨床の課題である診療、教育、研修などを中心としたものが多く、皆さんとても熱心です。開会式では国境なき医師団 (資料1)で活躍するDr James Orbinskiさんの特別講演「Equity and Global Health」がとてもすばらしく、皆さんの感動を誘いました。

いろいろな委員会、レセプション、プログラムなどの合間に、Toronto大学へ出かけてDr David Naylor学長と1年ぶりの歓談 (金曜日5時、最後のアポだったので2人でちょっと1杯しながら話が弾みました)、Munk School of Global Affairs とGRIPSとの共同プロジェクトの打ち合わせ、MARSでDr Peter SingerとGlobal Health新プロジェクトの進行状況(私も参加していますので、、、5月23日に公式の記者発表の予定)、Gairdner財団のDr John Dirks (資料1)などとお会いしました。

前回ポストした朝日新聞「Globe」の「カナダ特集」 のことも話題にしました。この朝日新聞のすばらしい特集が英語にならないのは本当にもったいないことです。

トロントは4日とも雲ひとつない快晴、この素敵な街ですごしました。CN Tower に昇ってきました。上からの写真もお見せします。

新しい息吹きと遭遇のいろいろ

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4月になって、いろいろ新しい社会への動きを感じる機会がありました。

若いとき、南アフリカのアパルトヘイトからの道のりにもかかわった感動的な経験から、紛争、対立の対話の推進などの活動を進めるReos PartnersKahenaさんとLeanne Grilloさんを迎えて、いわゆる広い意味での「社会変革イノベーション」についてのお話を聞く機会です。このウェブサイトから伺い知れるように、多様な、多くの利害関係者の中での難しい状況の経験を通した、何かとても大事な基本的なスタンスをお聞きすることができました。

お招きを受け集まったのは10数人ほど。半分は女性ですが、「単線路線」の方はおられませんでした。残りの男性たちも「単線路線」よりは、海外も含めて多彩なキャリアで活動してきた方たちで、社会をよくしたいと、いろいろ活動しておられる方たちです。少数派の「単線路線」のかたでも、実際に組織とは離れて社会活動もされている方たちです。 SoL (Society for Organizational Learning)の日本支部として活躍している方たちの主催です。

いろいろ理由を言いながら変われない日本の中で、社会を変えよう、世界を変えようという広い裾野が広がりつつあるのが、個人個人の行動として感じ取れるとても気持ちのいい会合でした。このような方たちとお会いできるのは、素敵なことです。

米国内科学会日本支部年次総会(資料)でも女性医師の問題、「プロフェッショナリズム」を中心に取りあげる活動、症例提示スキルアップなど、若い人たちの活発な参加が目立ついい会に成長してきていると感じます。今回もDr Gremillionさんをはじめとして米国医師、米国研修帰りの医師たちの参加もあって、若い人たちの盛り上がりを感じました。2次会、3次会にも参加しましたが、学生さん、研修医のみなさんも含めて、若い人たちが大いに盛り上がりました。ありがとう。

久しぶりに国際腎臓学会主催の集まり「Nexus」に少しの時間ですが出席でき、世界の旧友、新しい人たちとの時間をすごせました。

これからの人たちが、若いときから広い世界とつながることを大事にしながら、日本社会で、また世界でのキャリアをつんでいく選択も意識できる、その能力を高めていくことができると、これからの日本にとっても素敵なことでしょう。

いろいろな場を通じて、これからフラットな世界での、そして新しい世界の価値を見出そうとしている日本を担っていく人たちとお会いし、若者たちが育っているのを感じ取れることはすばらしいことです。

 

休学のすすめ -3: 「留学しない東大生」

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4月になって、このサイトで2回続けて「休学のすすめ」(資料1)の大事さ、これからの時代の人材育成を担う大学への要請の変化について書きました。

世界にビジネスを展開しようにも、特に新興国などの新しい経済成長圏では、個人的コンタクトがないとなかなかアプローチも難しいものがあります。

この個人的コンタクトができるのが高校生、大学生時代です。英米ではいわゆる「ボ-デイングスクール」、大学学部時代などもあります。大学院留学は基本的に同じ業種の人たちですから、横への広がりは弱いのですが、日本からの大学院留学も減っているようです。

これからのグローバルの時代にはこの「横の広がり」は業種や国境を越えた、世界のネットワークになります。この認識があるからこそ、多くの大学では世界の若者、将来のリーダーの育成に学部学生の留学・海外経験や交流を増やす工夫をしています。

これからさらに広がるグローバル世界では、一人一人の若者たちにとって将来の仲間となるべき世界の次世代との「職業、組織を超えた」「個人としての信用」を基本にしたネットワークはきわめて大事な財産になるでしょう。

グローバルな世界での成長は、自分の強さと弱さを認識した、国境を越えた「顧客志向」の企業の活動にあります。特に「単線路線」「終身雇用」「年功序列」のタテ社会の男ばかりの「身内組織」では、違う意見も出にくくなり、変化、異変の時にはうまくいかないことも多いのです。日本の大企業、組織に共通する弱さでもあるのです。ましてや日本人ばかりでしょうから、ますます弱いのです。口先では多様性、異質性などといっていてもこの有様です。

最近も、これらの要因が背景にあると思われる事件 「トヨタ問題はトヨタ固有のものか?」について指摘しました。

ところで、日本では東京大学が大学のトップとして変化への牽引車であることを期待されているのでしょうが、東京大学が新入生を迎えて1週間後の4月19日の朝日新聞に、いつも核心を突いたコメントを出している辻 篤子 論説委員から、私のこの趣旨を共有するカラムが出ていました。

以下のようです。

「●留学しない東大生   ―「窓」  論説委員室からー <辻 篤子>

●日本の若者は海外に出たがらない。そういわれて久しい。とりわけ外に出たがらないのが東京大学の学生らしい。

●東大が発表したデータによれば、学部学生のうち留学経験者の割合は理系4.6%、文系4.1%、これに対して他大学の平均はそれぞれ8.1%、14%で、とくに文系の差が大きい。

●「授業が忙しいこともある」と浜田純一総長はいうが、自ら「外国語でコミュニケートする能力」が身についていないと認める学生が7割を超える。「国際化」を最優先課題の一つに挙げる東大にとってはかなり悩ましい現実だ。

●米ハーバード大学を卒業後、東大に1年半留学したベンジャミン・トバクマンさんも「東大生はもっと留学すべきだ」とするが、それには別の理由もある。

●経験をもとに両大学の教育を比較した著書「カルチャーショック ハーバードVS東大」(大学教育出版)によれば、ハーバードの教授は、学生に質問させ、考えさせることで教えるのに対し、東大では、答えを与えることで教える。これでは、自立的に考える学生が育たない。

●東大にも学生の質問を歓迎する教授はいるが、その多くは外国で学んだ経験があり、教授と学生が対等に議論することの価値を知っている。学生がもっと留学し、東大に戻って教えられるようになれば、学生はもっと考えさせられ、勉強の意欲も高まるはず、というのだ。

● 問題はどうやら、学生だけ、東大だけにとどまりそうにない。」

浜田総長は学部学生の国際交流推進への意識が高いと聞いています。期待していましょう。

このトバクマンさんの本が出版された直後に彼にもお会いしました。中国に行くといっていましたが、まだ中国なのでしょうか?

世界銀行と日本の「科学技術と開発」、Win-win協力のチャンスだが

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4月16日、京都での「ISN Nexus」から早朝に出発。10時から世界銀行の東京事務所で、世界銀行のAl Watkinsさん一行と「科学技術と開発」の会議です。

私は世界銀行のこのプロジェクトには2008年1月から関係していて、これが日本で開催されたTICAD4 Toyako G8 Summit、またG8科学顧問会議 (資料)などの「場」へつながり、「タテ、ヨコ」につながりながら成長しているのです。

2008年1月の講演から世界銀行へは2回ほど(2009年4月) (資料1)、2009年12月とWashington DCへ出かけ、この会議とワークショップなどに参加しました。

これらの3回の会議は、これら私のサイト以外にも、世界銀行の「科学技術政策」サイト で詳しく見ることができます。

2008年1月の講演 

2009年4月の会議 

2009年12月のフォーラム 

世界銀行のサイトも進化しているのが見てとれます。

その間に日本の科学技術政策も「科学技術外交」の政策テーマで「日本-アフリカの架け橋」を作るなど、進化していきます。これはとてもいいことです、世界も変わっていくのですから。

2国間で行われる2国間支援(ODA)、世界銀行のような多国間組織を通した支援などをどのように調整、協調していくのか、これは大きな課題です。

このようなプロセスを経て、世界銀行の政策を、日本の政策とどうすり合わせできるか、これが今回の会議の目標の一つでした。去年12月の世界銀行のフォーラムにも出席した内閣府の岩瀬審議官、JICA後藤さんをはじめ関係各省担当者の参加もあり、難しいですが、意味のある時間をすごせたと思います。日本のODA政策の評価は、世界銀行でもとても高いのです。すばらしいことです。もっと国内外への宣伝も必要です。

世界銀行では、出資額に比べて、日本人職員が余りに少ないことはよく知られています。最近、日本からの4,5人の公募に対して400人ほどが出願したとか、いい傾向です。このような機会だけでなく、もっともっと「外」へ、「国際機関へ」、多くの日本人が積極的に参加してほしいです、日本のためにも、若者のキャリア形成のためにも。

世界は広いのです、数多くの機会が、将来の友人やパートナーとともに、あなたたちを待っているのです。

「外から見る」方たちの懸念、「外へ出る」元気な若者の「GCMP」

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今日4月13日の朝から、すでにこのサイトでもご紹介しているPrinceton University名誉教授の小林久志さんと、東京大学理事に就任した、もともとはHarvard Business Schoolで学びそこと日本の関係構築にかかわってきた江川雅子さんと朝食。

東大の入学式の翌日で、小林先生は大学院生入学式でのスピーチのお招きでこられたのです。

小林先生は、私も同じですが、このグローバル時代にあって日本の大学生の内向きさかげんに、本当に心配をされています。ここにリンクしてある先生のメッセージを、特に大学の教員に、そして大学生にしっかり読んでほしいです。

江川さんも何とか役に立とうと思って考え、行動しようとするのですが、まあ例によってなかなか難しいのですけどね。

午後は、以前からこのサイトでも紹介している早稲田大学の学生さんの1人、税所くんがたずねてきました。1年前から休学してBangladeshで活躍し、「GCMP」(資料1)としていろいろなプロジェクトを立ち上げ、Grameen BankのYunusさんの支援を取り付けるところまできました。本当に大きく成長するものですね。すばらしい企画、ビジネスモデル、現場での経験はとても貴重です。みな燃えています。今回は休学が1年経過したので6ヶ月の延長の手続きで帰国したのです。アイデアもたくさん持っています。

国内で事務局をとりまとめていた三好くんもいよいよ休学してBanlgadeshにまもなく出発です。さらなる事業の展開、進展があるでしょう。このGCMPでは去年は日本の大学生20人をBangladeshで3週間生活、活動させるプログラムを企画しましたが大成功でした。

かれらの企画の一つに「日本の大学生をBangladesh」に迎え、3週間ほど生活してもらい、仕事もしようというのがあります。参加している学生には海外に行くのは初めてという人たちも結構いますね。去年の夏に20人ほど3週間。参加した学生さんもずいぶん変わったようですよ。もうすでに3,4人が南米、インドなどいろいろと出かけて仕事をしながら事業を計画しているようです。今年の2月には10人ほどの学生を10日ほど連れて行ったようです。これにはなんと一橋大学のあの米倉誠一郎先生も参加、学生みんなが体重を減らすなかで、先生お一人だけが体重が増えたという、さすが先生。

世界の課題を変えるには、このような現場に出てみる、現場感を身につけることが大事なのです。

「休学のすすめ」-1: 慶應義塾大学SFC新入生へのメッセージ

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4月6日は、慶応義塾大学SFC の新入生1,000名を迎えて、いろいろな行事があるのですが、今年の特別講演にお招きを受けました。光栄なことです。村井 純 (資料1)(環境情報学部)、国領二郎 (資料1)(総合政策学部)の両学部長としばらくお話しをした後、θ館講堂で(入れなかった人たちは別室でもテレビ中継があったそうです) 80分ほどの時間をいただきました。

SFCは今年が開校20周年。4月4日にはその記念行事が盛りだくさんあったようです。私も何人かの卒業生とは仕事の関係でよく知っています。皆さん、「日本の常識」を外れた、グローバルキャリアの方ばかりですが、、、。それが、あまり変でないところがSFCのひとつの特徴でしょう。これからの計画などについてもお話をうかがうことができました。

ホームページを見れば、SFCの歴史、内容、キャンパス、その素敵さが想像できると思います。

約18%の新入生が留学生、かなり(40-50%程度か?)が海外生活の経験があるということです。在学中に海外留学も推進、来年からは英語の授業だけで卒業できるようにする計画とか。

私の講演もこのサイトにもリンクしますが、講演の後半の背景に、講演の内容に関係のあるいろいろな光景を流しました。

ところで、私はこの2年ほど、2,3度以外は講演にpowerpointスライドを使わないことにしているのです。なぜか?講演のテーマにもよりますが、大体、政治家はそんなもの使わないですよね。オバマ大統領にしても、小泉元総理にしても、スライドを使った講演を見たことがありますか?あまりないですね。これが理由です。いかにコアのメッセージを伝えるか、研究成果の報告ではないですし、私にとってはこれが大事だと思います。

私の話は、多くの新入生が生まれた1992年前後の日本、世界の変化などについて話しながら、これからのグローバル化世界の動き、日本の課題などについて話を進めました。私のサイトにいろいろなタイトルで、いろいろな形で、繰り返し出てくるテーマです。

特に多くの男性は「単線路線」のキャリアが常識と考え、それに縛られていたのです。女性は単線路線では、最後のほうは限界がある制度なので、どんどん自分で複数路線になってきていた、だから、この新入生の生まれた頃からの、この20年になると海外でも「個人力」が出る人が多いのです。男性は「タテ社会」の「単線路線」キャリアがおかしいと感じても(あまり感じていないのかもしれませんが、、)、思考も、行動も、内向きになる、横に広がりにくいのでしょう。

明治維新以後の近代日本では、慶応義塾設立者の福沢諭吉の「学問のすすめ」(1876年)ですが、グローバル化が進むこれからの時代、学部生が4年で卒業する必要はない、5年のうち1年程度は社会活動もよし、留学もよし、いろいろな海外での活動もよし、いろいろなところでの生活も、旅行もよし。「外」へ出る、「外」で感じることで自分を見つめ、多様な世界を知り、違いを感じ、だからこそ「外」から日本を見る、感じ取ることができる。ここから多層な、国境を越えた仲間ができる。この「異質性、多様性」への感性が獲得できる。このような感性、能力、人の繋がりこそが、グローバル世界に向けて自分の本当にしたいこと、価値を見つける。だからこその「休学のすすめ」なのです。

大体、「学部3年時に内定」などという企業は、あまり将来があるとは思えません。そんな大学、企業が主力だ、というような日本の社会は世界でも例外的と思います。日本「社会の上」のほうにいる皆さん、いい加減に目を覚ましてほしいです。

最後に、Appleの創設者、iTune, iPod, iPhone, iPadなどなど作り出して世界を変えてきたSteve JobsのStanford大学卒業式の「私のお気に入りの14分の講演」をちょっと見せて、私がまとめました。

講演が終わってから、大勢の学生さんに囲まれてとてもうれしいひと時をすごしました。

家を出かけるときからキャンパスに着くまで3つのtwitterを発信しました。いくつかのパワフルなメッセージが出ていました。これもうれしいことです。

大学トップの招聘; KUSTARとOIST

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前回ポストしたMIT D-Labの翌日は日曜日。アブダビへ向かいました。KUSTARの理事会出席のためです。KUSTARは、何回も書いていますが、アラブ首長国連邦の科学技術高等教育の中心にしたいという意欲的なプロジェクトです。このサイトでこの1月に何回も報告したアブダビで韓国の原子力発電事業の勝利にも、この大学での人材育成大事な要件でした。

今回は招聘する学長を決める大事な案件があり、約6時間にわたって、短い休みを2,3度入れながら議論が続きました。候補者4人のうち2人もこられ抱負、質疑等のインタヴュー。皆さんすばらしい方ばかりでした。もうしばらくで決まるでしょう。

アブダビでは原子力エネルギーへ向けて着々と手を打っています。IAEAとの連携も視野に入れて人材獲得に向け動いています。日本の人材ももっと現地へ行って活躍してほしいものです。関係の何人かの方とお会いしてきました。またIAEAの人材育成の会議も開催されたばかりで、日本からも何人か参加されていました。

ところで、帰国して2日後の夜から沖縄へ。沖縄科学技術大学院大学 OIST 移行への理事会です。ここでも招聘する学長が大きな課題です。基本的に、国の支援を受けながら運営する新しい形の「私立大学」となる予定ですが、何をするにも前例のないことをする手続きが大変です。「グローバル世界の大学、研究所」などと言葉では言っていても、いつまでたっても大学でさえ「知の鎖国」(資料1)状態ですから。

成長するアジア、グローバル化する世界で、日本の高等教育の劣化が目立ち、「出る杭」枠を外れる若者は頭をたたかれ、財界も、政界も、政府も、大学も、いつまでたっても変われないですね。

私はこの10日間で、SingaporeではA*STARの会議東京でMITのD-Labの紹介、Abu Dhabi、日本(沖縄)と大学、大学や研究中心の課題を中心として会議に参加してきましたが、「外から見た日本」のスピード感のなさ、リーダーの影の薄さ、存在感のなさは、情けないです。

MITのD-Labの素敵な1日、外に出た若者たち

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20日(土)の朝早くSingaporeから成田へ到着、家に直行。シャワーを浴び、着替えて私の本拠のGRIPSへ急ぎました。

今日は1日、GRIPSで「「大学」x 「技術」x 「BOP」」 というタイトルでMITのD-Lab を開催するのです。このサイトでも何回か紹介資料1)、 、しましたが、グローバル時代にふさわしい、学部生対象の新しい企画です。主催者は現在MITでD-Labプログラムに関わっている土谷君遠藤君 (資料1)、陸さん、そして私たちGRIPSの「イノベーションチーム」です。3日前の夜はMITの宮川教授資料1)ともお会いして、この企画の話をしていたところです。とても喜んでおられました。

多くの方からOn-Lineで申し込みがあり、GRIPSの講堂はちょうどよいほどにいっぱいでした。講演もパネルも充実しており、質疑応答も活発、参加の皆さんの満足度は高かったと思います。私が最後に「D-Lab」の意義を中心に「まとめ」の話をしました。

皆さんの満足度のあらわれでしょうか、レセプションは3時間にわたり、皆さんとても「熱かった」です。夜の9時ごろに閉会となりました。

松下さんの熱いblog posting など、いくつかのblog も参考になるでしょう。多くの若者がグローバル時代への大きな目標、可能性を感じ取ってくれたと思います。ウェブでライヴでも見れたようですが、、チェックしています。

これが成功したのは、主催の3人だと思います。遠藤君土谷君 は日本の大学でMaster取得のあとMIT/HarvardでPhD、陸さん(女性)は日本の高校からMITへ、というキャリアの若者で、今現在もいろいろな形でD-Labに関わっているということでしょう。実際に行動し、活動している若者が日本の若者へ思いを伝えたいというこの思いが伝わったのでしょう。

この3人を見ていると、「若者は外へ出ること」だ、これがいかに大きな視野と可能性をつかませるか、よくわかります。皆さんも、思い切って出てみることです。

Singaporeの水事業

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Singaporeは小さな島です。歴史的に水の供給の大部分はMalaysiaに依存しており、Johor Bahrから水を送ってもらうことになります。ここの水プラント、管理等はすべてSingaporeが負担です。これは交渉ごとであり、国の弱みでもあるので、長期的には当然のことですが、国の生命線として致命的になる可能性もあります。

日本でも同じですが、1960年代までは川や海は、生活廃棄物も含めて工業排水さえも流していました。水俣病などの公害もこのような結果のひとつです。1962年のRachael Carson著「Silent Spring」も大量規格工業製品生産と消費社会の環境破壊への警告書です。Singaporeの川にも生活排水も、ごみもたくさん捨てられていました。

そこで、長期の国家計画のひとつが水計画 です。

今回、19日に定例のA*STAR会議 (資料1)終了後にMarina Barrage資料1) 、を見学、すばらしい建造物の全体もさることながら、その歴史、計画、実現へ、ほかの水関係事業など、ビジョン、戦略、事業計画などなど、総合力の優れた国家事業です。

2009年のSingaporeでもWater EXPOでもSingaporeの水事業のpackageの展示が注目を集め、日本の展示は質のよい「部品」展示ということで、この視点はNHKでも報道されていました。これでは国際競争にも負けてしまいます。システムの「トータルパッケージ」の提示ができないからです。

今年の6月末にもSingapore International Water Week も大々的に計画、発信され、水事業システムの新興成長国への売り込み計画にもぬかりありません。

日本の水処理技術には定評があり、「水の技術は日本」などと最近まで認識されていたようですが、これはいつのことでしょうか?これも所詮は海水の脱塩膜処理など、所詮は水システム全体を事業として見れば、5%程度以下の部分としての部品の性能と品質なのです。

携帯電話、原子力発電、ソーラーパネルなど数多くの例と同じように、水もまたまた「ガラパゴス部品屋さん」 (資料1) として下請けになって活動していくつもりなのでしょうか?