Global Agenda Council、Dubaiから

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11月27日からWorld Economic ForumのGlobal Agenda Council  (資料1)でDubaiに出かけていました。大半の方達は別のCouncilのメンバーでしたが、竹中平蔵さん、田中明彦さん、石倉洋子さん 資料1)などなど、20名ほどの方が日本から参加しました。述べ4日間で丸3日間の予定ですが、今回のプログラム構成は、各Councilに分かれた議論が中心で、プログラムの進め方がいつもと違って、かなり細かく決まっていることと、最終的には世界にいろいろ存在する、起こりうるGlobal Risk Responseに対応する「Network」構想の提案も視野に入れているので、結構タイトなスケジュール。

私はといえば「Japan Council」のChairという役を振り当てられていたので目いっぱいスケジュールが詰まっていて、Chairは一日早く到着して全体構想のbriefingなどがあり、全体の自由時間もなく、全体の動き、システムの動かし方、Briefing sessionなどなど、また他の大事なCouncilへ出かけるとか、結構大変でした。

特に北朝鮮の問題などもあるタイミングでしたので、気の使いようもあって、とても疲れた感じがしました。

でもこれがなかなか大事な経験の機会をくれたことになりました。特に中国、韓国Councilとの意見交換は、政治的課題、経済の行方、中国の経済成長などなど、大変に良い意見交差が出来たと思います。中国Council ChairはHe Yafei 在Geneva国連大使資料1)ですし、韓国Council Chairは旧知のYonsei大学のMoon Chung-In政治学教授  資料1)。このCouncilばかりでなく、この2人のChairからも実に示唆に富む、しかも一部の本音も聞けてともてよかったです。

2日目の夜のレセプションは世界で一番高いという「Burj Khalifa Tower」のテラスで。高い建築物を見上げ、周りをみまわし、多くの方に会い、なかなかのものでした。 

3日目にはBBC World News Debate、70分程度の討論をNik Gowingさんの見事な司会で、素晴らしい出来だったと思います。この番組を皆さんもどこかで見る機会があると思います。つい7月までAustraliaの首相だった、今の新政権では外務大臣のKevin Ruddとのやり取り、またHe中国大使、Malini Mehraさん、International Crisis GroupのLouise Arbour、Climate Change CapitalのJames Cameronさんなど、なかなかのものでした。特にRuddさんの即興での20秒のテレビカメラを通した「呼びかけ」は素晴らしかったです。この辺は、優れた政治家に必要な素養の1つです。

この3日間で学んだことの1つが、いかにヴィジュアルに問題を描きながら議論を進めていくことの大事さです。Design CouncilではHarvard University Design SchoolのToshiko Mori教授の素晴らしい仕事の片鱗にも触れることが出来ました。そして、いろいろCouncilの問題解決プロセスに「Design」「Innovation」のCouncilメンバーがいろいろサポートをしてくれたということで、なかなか見事な出来でした。

これからは来年へ向けて、宿題、課題がたくさんできました。

学ぶことの多い、4日でした。無事に、12月2日夜に成田に到着しました。

 

 

ドラゴン桜、またまた快挙

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早稲田大学の税所くんが休学してがんばっているBangladeshで貧しい村の若者を、不可能と思われる高い目標へ挑戦する「ドラゴン桜」 (資料1)。

11月30日の日経新聞「挑む」という特集にも税所くんの挑戦が紹介されました。

ちょうどこの記事が出たとき、私はDubaiにいましたが、彼から記事の話は聞いていました。記事を読んだ人たちは、さすが早稲田大学、と思われたかもしれませんね。しかし、これは税所くんとその仲間たちの力です。早稲田大学を休学 (資料1)したこと、そして大いに悪戦苦闘したことが良かったこともあるでしょう。

このよう挑戦する学生、未来の「世界のリーダー」を輩出することこそ、グローバル時代の大学の大きな使命のひとつでもあるのです。このような人が「Human Capital、人財」になる可能性を秘めているのです。大きな「Impact」を社会に、世界に与えるのです。

今日、帰国したところへ税所くんから、以下の朗報が入りました。

「黒川先生

ドラゴン桜。 初の 女子生徒合格!ジェレン アクター 18歳 女性

国立第2位 ジョゴンナ大学に合格!!
7万人の受験生のうち、2,038位の順位での堂々合格です!!

村の女子生徒が、村のe-Educationで勉強して、日本でいう一橋大学に合格したのです!

ヘラルに引き続き第2の奇跡!!それにしても70,000人中 2,038番。

現地からはまたも、「信じられない!!!」の声が続出しています。

イスラム教の下、村の女子生徒は人生の選択において厳しい環境にいる女性が多い中、新しい希望のロールモデルが本日バングラデシュに誕生しました。

ジェレン アクター    革命をありがとう!

彼女はヘラルに引き続きこの国で2番目の映像授業による大学受験合格者になりました。

速報でした。」

熱いですねえ、、。彼の新しいサイトは「ここ」

これが今の「内向き」といわれる若者たちに対して、大人が出来ることなのです。若者一人ひとりの心の底にある熱い思い (資料1) に気づかせ、暖かく応援、支援することです。

これが教育の真髄と思います。

 

「医療制度」改革の課題、JBPress私の意見

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私は、もともとは臨床医ですし、日本と米国で医師としての生活を10年以上しています。当然のことですが、医療制度にはとても身近なところにいますし、いろいろ考えることもあり、またとても気になっている日本の大きな社会的課題です。

このサイトをはじめとして、以前から問題点を指摘していますし、「ナンのカンの」と多くの日本の「権威の方たち」に言われながら、出来るだけのことはしてきたつもりです。その成果も、あまり見えないかもしれませんが、出ていると思います。制度改革は、なんと言ってもグローバル時代に適応できる人材の育成に尽きます。

関係するキーワードを入れると、いくつものpostingを見ることが出来ますし、一般向けの本としても「大学病院革命」、「日本の医療風土への挑戦」、「医学生のお勉強」 ほかにいくつもの本も出し、紹介しています

21世紀になり世界の様相はすっかり変化しました。医療制度関係では、根本的な問題が「高齢社会」、「慢性疾患、特に生活習慣病の増加」、さらにグローバル市場経済になったこの20年で「貧富の差の拡大」、そしてリーマンショック以降は「国の借金の急増」という課題です。

わが国の課題はどうでしょうか?先進国の中でも、高齢化は最も進んでいますし、とても問題が多いですね。

私どもの主宰する「医療政策機構」 (資料1)、「WHO」 などの活動も通して発言し、改革に微力は貢献したいとは思いますが、多くの利害関係者(抵抗勢力です)の力関係で、どこの国でも大きな政治課題であり、実行が難しいのです。

最近でもいくつも活動を報告し意見を述べていますが、最近は「e-Health革命 ITで変わる日本の健康と医療の未来」 、またOn-lineでもJBPressなど(資料1)でも始めています。

時間のあるときなどに、注目していただけるとうれしいです。

その点では10月のSeattleでの会議 から出た「12のアイデイア」 は大事と思います。

どのようにこの政治的プロセスを可能にできるのか、ここが課題です。以前紹介した本が参考になるでしょう。

基本的には「医療制度」ではなく、今の社会では「健康・医療政策」(資料1)とでも改名しないと、実情に沿った制度改革は結構、むずかしいと思います。

政策の命名は大事です。

 

 

「言葉の力」、「リーダーの知力と知性、判断力と感性」

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今年5月にお会いしてから、Harvard Kennedy Schoolの栗原さんについて、いくつかここでご紹介しました。

それ以来、栗原さんが帰国する機会には、何とかお会いできるように努めています。何しろ話題は豊富だし、ものの考え方がグローバルであり、しかも歴史・哲学・文学など広い範囲でよく本を読んでいる。さらに「外から」日本を見ることができる、だから本質を理解することの出来る数少ない人材(人財)の一人です。私とは違った分野の視点がたくさん頂けるので、ついつい話が弾んでしまうのです。

先日こられときも、ついつい2時間ほど話し込んでしまいました。彼はCambridge Gazette という定期報告を書いていますが、今年の最終版にそのときのことを書いてくれているのです。「洞察力と言葉の力」 とでもいうものでしょうか。

それがまた意外な話の展開になっていて、栗原さんの交友関係、人脈、歴史観から、日本の「本当に優秀」な人たちがいる一方で、あいも変わらないアホな「秀才」が国を誤るなど、原典・文献を紹介しながら、「ものがたり」を展開しています。

今の「悲しい日本」の状況をつらつら見ていると、この100年、本質的に日本は何も変わっていない(というか、「変われない」というべきでしょうね、、)ことに気がつくはずです。栗原さんの読書量、「個人」としての交友関係などなど、本当に感心してしまいます。大きな全体を「一つのものがたり」にてしまう手法と引用など、重層的な広い知識というか、知的好奇心というか、思考過程というか、いつも感心してしまうのです。

それにしても、日本の「リーダー的ポスト」の人たちの発言は特におかしいですね。知識はあっても「ことの本質」をつかめない、だから発言が軽い、心を打たない、なんとも悲しくなるこのごろです。いつも紙に書いたものを読んでいる、相手を見つめて自分の意思も、思想も伝えられない。自信も信念もないのでしょう。歴史も知らない、勉強もしない(大学入試偏差値のための勉強はしたのでしょうけど、、)、政策から議論まで、知識はあっても実に底が浅いというべきでしょう。そんなことに自分では気がつきもしない、理解もしない、言い訳ばかりはすぐにする、「偉い人」たち。

栗原さんの伊藤博文の英語のところもいいですね。そして今のグローバル時代の日本の英語教育政策議論の、あいも変わらないうわべだけの薄っぺらさ。

最近では解像力の良いテレビが普及しているので、話をしているときの目つき、表情がよーく見えてしまいます。国会の質問も、大臣の発言も、高級官僚の発言も、大学の偉い先生の発言も、財界トップの発言も、ジャーナリスという人たちも、深い洞察と、心からの思いのある言葉を聞いたことがほとんどありません。1億総評論家、問題があれば他人事、といった感じですね。

国民も悲しいのでしょうが、変な番組ばかりのテレビ、記者クラブ発の、しかも大量に発行される新聞記事にも毒され、テレビの人たちの言葉(しかも日本語番組を聞いてばかりですし、、)は本当に悲しいですね。

言葉は知力、知性(知識ではないのですが、、)の指標です。他人の心の内部まではうかがい知ることはできませんからこそ、言葉から人の心の度量、深さ、思いなど、人柄、人物がわかってしまうのです。

栗原さんは、今の日本の多くの知識人にはかけている、知性と「こころ」をお持ちです、あまり顔には出しませんが。次回にまたいろいろ教えていただける、「知的バトル」が楽しみです。

 

WHO事務局長Margaret Chanさんと会見

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Margaret Chanさん(資料1)が神戸WHO Centerでの会議に来日、そのあと東京にもこられました。久しぶりにお会いする機会をもてました。

私たちの医療政策機構で「Global Health」を担当している4人のスタッフと一緒に30分ほど、活発な意見交換が出来ました。彼女とはいろいろ会う機会資料1)がありましたが、今回は久しぶりのことでした。WHOのAssistant Director の一人の中谷さんも、厚生省の方と陪席してくれました。

Global Health、Chatham Houseでの会議、慢性疾患増加の問題、健康の社会的因子、来年1月のDavos会議のことなど、いくつかの課題について話が弾みました。

Global Healthにかかわる若いスタッフには、WHOを引っ張る女性Topとの会見に同席することはとてもいい刺激になったと思います。

若い人たちに、世界のリーダーを身近に接する機会を作ってあげることは、とても大事なことです。若者へのいい刺激になり、また若者たちが自分たちの目標をより高く持てるようになるでしょう。

「なぜ一番でなくてはいけないのか?」ではなくて、高い目標を感じ取れるからこそ、自分の仕事への励みになるのです。

これが若者たちへのAspirationになるのです。

慶応SFCクラス、乗竹亮治さんを迎える

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私の慶応SFCのクラス。10月27日は、私たちが主催している医療政策機構で大活躍している好青年、乗竹亮治さんをゲストにお迎えしました。

乗竹さんは、このSFCの2007年の卒業生。卒業とともに私たちの「Think Tank医療政策機構」に参加しました。以来、ガン対策、ガン患者さんの支援活動、そのほかにも脳卒中患者支援や、患者リーダー養成講座などで活躍し、いくつも成果を挙げながら幅広い活動をリードし、本当に大きくリーダーへと成長しています。この機構に欠かせない中心人物の一人です。

彼は、学生さんたちにとっても、SFCの先輩であり、お兄さんであり、その話は身近に感じられ、さらにいくつもの感動的な「自分のものがたり」があり、とても素晴らしい時間を皆さんと共有できたと思います。

特に2001年9月11日のWorld Trade Centerのテロ攻撃の時は、Oklahoma大学で学生生活をしていて、そのときの周囲の反応、彼自身の思いがけない「言葉のちから」への新鮮な感動などなど、本当にいい話でした。

このコースでの私の狙いは、出来るだけ学生さんにとって「グローバル時代」を目指すことの大事さと、その「ロールモデル」になれる人たちの、現実感のある「ものがたり」を聞かせたいという狙いがあります。その「ものがたり」が、本人の実体験からくる話だからこそ、若者たちへの説得力がある、若者たちがその様な人、キャリアを目指そうという気持ちになるのです。

皆さんもご存知かと思いますが、白洲次郎という快男子がいます。私のこのカラムで何度か紹介しています (資料1)。終戦後の日本で大いに活躍した、Cambridge大学で学んだ「英国紳士」です。彼についてはいつかの本がありますが、いつも「Principle」(ことの本質とでもいうのでしょう、、)を大事していたことで知られていて、痛快なエピソードにはこと欠きません。このような快男子、紳士は、このところトンと見かけませんね。

この次郎さんの書いたエッセイを集めた「Principleのない日本」をいう本があります。彼の住んでいた、「武相荘(ブアイソウ)」で購入しました。そこにこんなことが書いてあります。「教育とは、先生が自分の教えていることを、先生自身が実践しているかどうかなのだ、、」といった趣旨のことが書かれています。これは、特に高等教育では大事なPrincipleではないかと私も思っていることで、読んでいたときになんとなく頷いたことを覚えています。

乗竹さんの話は、私がいつも訴えているように、若いときに「外」の世界を体験することの大事さを明確に示しています。

乗竹さん、大事な話をありがとう。多くの後輩たちが「何か」を感じ取ったと思います。 

GEW2010@GRIPS、 全部ブロークン英語

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去年も報告資料1) したGEW (Global Entrepreneurship Week)  。今年は11月15-20日です。世界100カ国 で同時開催の週間イベントです。わが国でもいろいろな企画が開催されています。

GRIPSでは日本経済新聞と「Design Thinking」  というテーマを取り上げました(資料1)。このサイトでも紹介 している TEDxTokyoD-Lab Japan See-DSoketKopernik などを中心に活躍している「進取の気性にあふれる」(=entrepreneurship) 若者たちがGRIPSにあつまり、16日夜に実践的Workshopを開催。7時から3時間を越えて盛り上がりました。

お客さんにはTully’s Coffeeを日本で立ち上げた 松田公太さん(今は参議院議員)、空想生活Elephant Designの西山浩平さん、Magnus Jonssonさんなど、若い起業家の情熱あふれる「ロールモデル」をお迎えしました。

今週の各種関連企画はImpactJapan  などが中心に企画しています。

これらの活動は「出る杭」「進取の気性にあふれる」(entrepreneurs)若者たちの活動を、日本の国内はいうまでもないことですが、世界へとつなぎ、広げようという、24時間、365日の継続的な試みなのです。ウェブは人をつなげるツールですが、一人ひとりが共通の価値を目指して実際の時間やスペースを共有することはとても大事な実体験なのです。実体験とその繰り返し、そしてウェブ活用のインパクトは足し算ではなく、掛け算的に広がる可能性を秘めているのです。

みなさんも、応援をお願いします。若者たちの将来への道を開いていくことが国の将来の根幹を形成していくのです。

ところで、この日の使用言語は全部「broken English」、通訳なし。皆さんやるやる、そうです、やれば出来るではないですか。皆さん素晴らしかったですよ、本当に。

最後に、セルビアからの参加者でIT entrepreneur、 Sinisa Rudanさんの言葉をご紹介します: “We are taught to take business rationally, to focus on profit. However, I suggest that if you feel a particular project is good for you ? even a non-commercial one ? take it, because it will advance your skills or expand your network, possibly bringing you other, more-profitable projects. Choose projects you love. Do your business from the heart, and business comes to you!” (GEW website http://www.unleashingideas.org/より)

 

新しい地域医療を構築するチャレンジャー

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日本を含めた先進諸国では「高齢社会、慢性疾患、これ以上の公費出動は無理」、という状況で、従来型の「医療制度」は制度的に限界に来ていることは明らかです。

これについては従来から私も発言し (最近のではこれ(資料1、 )など)、政策提言し、実践を促しているのですが、従来からの利害関係者の「抵抗」で、なかなか政策の実現は進みません。

一方で、まずは出来ることから実践しようという人たちもいます。そのような一人に武藤真祐さんがいます。

彼は医師として恵まれた10年ほどを過ごしましたが、それには飽き足らず、より高い目標を設定して、この数年、医師ではない仕事でがんばってきました。

このような社会経験を経て、まったく新しい形の都会型地域医療を始めました。

これをはじめてから武藤さんが私に言ったことが本当に良かったのです。「いろいろ迷い、医師を離れ、自分の一生の仕事を捜し求めていたのですが、高齢化の進む都会の医療の現場に戻って、これこそが心から私がやりたかった仕事だと感じました」、と。

武藤さんと私の対談が出ましたのでご覧ください。

素敵な気持ちですね。ほんとうに素晴らしい門出です。心からの祝福を送りつつ、彼を応援しています。

 

「休学して学ぶ」、Ghanaからのメール

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休学してGhanaに行った学生さん資料1)は、100カ国を超える学生たちの国際交流ネットワークAIESEC資料1)を通じて紹介されたGhanaでのプログラムに参加する目的で現地に行ったようです。Ghanaの首都Accraに10日ほど滞在しましたが、この間に感じたこと、得たことは想像を超えるほど大きかった、とメールで教えてくれました。このあと、3週間ほどGhanaの北部へむかい、またAccraに帰ってメールをくれました。私の経験資料1)でもAccraで一流のhotelでもネットのつながりは不十分なのです。

彼からのメールは以下のような内容でした。
●ガーナ北部の農村に滞在して、現在はアクラにいます。もっとガーナを知りたいと思い、恐らく最も所得が低いであろう農村で生活してみると、行ってみないとわからない途上国、援助の姿が見えました。

●ガーナで貧困地帯というくらいだから、NGOの援助を頼りにしているのだろうと思っていました。しかし彼らは自給自足で生きています。村中を歩いているにわとりを捕まえ、とうもろこし、ヤム、野菜、豆などを栽培して食べ物には全く困っていません。お金はどこから調達するのかといえば、たまに通りかかるバスの乗客に売ったりして得ています。男性は働かずに、ボードゲームに熱中したり、ボーとして1日を過ごします。女性は畑仕事や食事作り、洗濯で忙しそうなのですが、、。

●小学校は村の中にあるのですが、2人の先生で6学年分を教えているので大変そうです。学校に通う為の経費は微々たるものらしいのですが、学校に行かない子供たちも中にはいます。本当にお金がなくて学校に行けない子供は少数で、家の手伝い(ほとんどが洗濯) が忙しくて行かない子が多いようです。外からきたよそ者の私には、「学校で公用語の英語を学ばないと村の外に出れず将来の可能性がなくなってしまうのでは」と思えたのですが、昔から自給自足で村で一生を、という暮らしをしている彼らにとっては、村の言葉さえわかれば問題ないだろうと思っているようです。

●この現場体験を通して最も衝撃だったことは、僕がお世話になったNGOが村人からあまり感謝されていないと感じた事でした。このNGOの資金源は、全て創設者のポケットマネーから出ています。ローカルスタッフもポケットマネーで雇用しています。

●活動としては、農業を通じて自立を図るというもので、今は稲作に力を入れています。今後は村人を巻き込んで稲作をしようとしています。中古の農業機材を寄付したり、学校に教科書や制服の支給もしています。

●これだけ多くの援助をしているのに、どの村人も心の底からNGOに感謝しているとは思えませんでした。「特に生活に困っているわけではないが、何かくれるならもらおう」といった状況です。というのも、オーナーがポケットマネーで経営している為、オーナーが外から見て必要だと思う事を自由に援助しているからだと思います。本当に村人に必要で、外国人がすべきことは何か、という視点が欠けているような気がしてなりませんでした。実際に、現地NGOスタッフや村人に「NGOはとってもいいことをしているね!」、と話しかけても笑うだけでほとんどの人が同意してくれませんでした。

●先進国の人間が途上国に足りないものを見出すのは簡単だが、彼らの価値観に照らし合わせてすべきことをするということの難しさを痛烈に感じました。先進国の人間が途上国と関わる以上、「宣教師的態度」になっていないか、いつでも顧みる必要があると学びました。

●あと1つ、現場体験をして気づいた事があります。アフリカ人は「違い」を否定的にとらえないということです。日本にいると「そんなこともできないのか、情けない」だとか、自分が出来る事は他人にも出来るものだとおもいこみ、出来ないと否定的にとらえる風潮があると思います。「自分達と違う」=「マイナス」というイメージが付きまといます。しかし、アフリカ人はいつでも涼しい木陰を探して僕に教えてくれたり、食べ物のこともよく気にかけてくれます。「君は日本人で、アフリカとは食べ物も気候も全然違う。」と口にし、違いを認めたうえで、外国人と付き合ってくれます。決してその違いを否定的にはとりませんでした。

●多様な価値観を理解し、人と付き合うという点では、日本人はまだまだアフリカ人にはかなわないと感じました。

この学生さんは、こんなことを感じてくれて、メールをくれたのです。多くのODAでは、この様なことを検討した上で活動を推進していることも多いと思いますが、現場の感覚が最終的にどこまで理解されて実施されるのか、いろいろ課題があるのが現実です。

ODAについては山本敏晴さんがたくさんのとても貴重な情報、現場の課題等々を発信しています。この学生さんが感じたようなこともいくつも記載されています。しかし、最後は、現地を知っているかどうか、現場感があるのかどうか、実行するのか、これがいずれ自分の勝負を決める時がくると思います。

若いときにこのような現場感を体得することは、この学生さんの将来のキャリアに大いに役に立つことでしょう。勿論もっともっと調べてから現地に行くことも可能でしょう。なんでも「詳細に検討してから動く」ということも大事ですが、これは慎重になりすぎて結局は何もしないことになることが多いのです。この学生さんの行動力、これが今の日本には決定的にかけているのだと思います。

自分で行動してみて感じ取れることの価値の大きさ、特に若い人たちにはこのような行
動を起こすことが大事だと思います。このような現場感、現地感はなかなか身につくものではありません。いつの間にか、この若者も、自分の世界観が変わり、違った視点で自分の目標を探りつつ、大きく成長していくでしょう。

Ghanaに到着して1週間して、この学生さんからメールをもらいました。「たった1週間で、自分が多くの人と知り合いになり、繋がり、世界が違ってくるような感じがする、本当に不思議です」と。

このようなウェブの時代だからこそ感じられるメールや携帯電話の便利さ、すばらしいです。まさに世界は1つにつながっています。

慶応SFCクラス、所 眞理雄さんを迎える

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私の慶応SFCのクラス前回の10月29日は西山浩平さんをお迎えして、 とても楽しいユニークな「空想空間、Elephant Design」というビジネスの話をお聞きしました。

10月27日はSony Computer Science Laboratory の創設者であり社長、そして慶応大学の教授でもある所 眞理雄(Marioとつい言ってしまいますが、、)さんを お迎えしました。所さんは慶応義塾の矢上キャンパスでの大学院生のコースを持っていて、私も参加させていただきました。

トピックスは「Open Systems Science」というもので、所さんがこの何年か、これからの科学研究の課題を考えていた成果といえましょう。「オープンシステムサイエンス-原理解明の科学から問題解決の科学へ」というタイトルの著書を日本語 、英語で出版されています。

また 「天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所」という本も出ています。この研究所の特徴とユニークな人財の話です、とても面白い本で、ぜひ読んでください。現所長の北野宏明さんは、去年Nature誌のMentor Awardで受賞した2人のうちの1人、とてもユニークな、私も大好きな「Crazy Ones」です。

ちょうど、この講義の1月前にStanford大学で同じテーマのセミナーを(これは英語で)されているので、今回は日本語で話をすることになりました。

クラスのサイトで楽しんでください。近代科学の歴史の背景から、これからの科学のあり方について、とても示唆に富む話です。私もいくつか補足的なのコメントさせてもらいました。

これからの科学研究のあり方と、科学教育のあり方にも関係することです。