「イノベーション25」 最終報告

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25日に「イノベーション25」の最後の会議が官邸で開催されました。ようやくここまでたどり着いたという感じです。しかし、6月初旬に閣議決定する予定となっていますので、事務方は、関係者や与党を回り、まだまだ息を抜けない状態です。閣議決定の文書に「出る杭」などという言葉が入っていることは想像を絶することです。また、大学の入り口で「文系、理系の区分をなくす」など、かなり思いきった内容も書き込んであります。全文は「イノベーション25」のホームページで見ることができます。

また、座長として高市大臣宛に書いたお手紙、「イノベーション25戦略会議最終とりまとめにあたって」 もホームページで見ることができます。この2週間、スタッフは土日の休みもなく、しかもほとんど徹夜状態での作業でした。“閣議決定を目指す”ということで、各府省の合意を得なくてはならないため、どうしても「骨抜き」になりがちなのです。日本の政策立案と政府の意思決定プロセスにおける重要な課題の一つであることは、皆さんもご存知の通りです。

高市大臣の記者会見の後で、大臣と委員は総理公邸での夕食にお招きをうけ、総理からのねぎらいをいただきました。

この後、新幹線で浜松へ。50周年となる日本腎臓学会の総会に向かい、26日の午前中に特別講演をさせていただきました。

科学顧問の認識、イギリスでは?

ちょうど英国のMargaret Beckett外務大臣が来日されており、英国大使館で催された昼食会にお招きを受けました。この会では、1月にロンドンでお会いしたAshton氏にもお会いできることになっていました。緒方貞子さんをはじめ、多くの政治家、外務省関係者、財界人なども参加されていました。政治家の方々は別途会談があったようです。当然ですが。町村氏、高村氏、金子(一義)氏、小池(百合子)氏、等々もお見えでした。

座席は指定されていたのですが、なんと私は主テーブル。しかもBeckett大臣の隣でびっくりしました。このテーブルは著明な政治家の方々が多く、Beckett大臣の向かいはFry駐日大使で、私の隣は緒方貞子さんでした。もちろん居心地はあまり良くなかったですが、ちょっとお話を聞くと、英国では科学顧問はとても尊敬される立場にあるそうです。何か気恥ずかしいような感じでしたが、彼我の認識の違いに歴史の重みのようなものを感じると共に、責任の重さも感じました。英国の科学顧問David King氏はBlair首相と毎週のようにお会いするそうです。私はというと、毎月一度、安倍総理と2人だけで1時間ほど意見交換をしています。新聞に掲載される「首相の一日」で気がついている方もいるでしょう。

Shigeru Ban氏とその作品“Nomadic Museum”、そして銀座に“NG Hayek Center”

私の友人に坂茂さんという国際的にも著名な若手建築家がいます。去年のNewsweek誌で、世界で最もよく知られている日本人100人(昔の人も含めてです)にも選ばれている方です(100人の中にはもう一人、若手で私も仲良くしている伊藤譲一さんも選ばれています)。「9.11」の跡地、「Grand Zero」国際コンペでも最終の二部門に選ばれておりました。日本でもいくつか建築されたものがありますが、神戸大震災のときの紙の家、HanoverのExpoでの同じく紙で作った日本館などでも有名です。どの作品も本当に素晴らしいです。

  坂茂さんの作品はこちら

“Nomadic Museum”は去年のTimes誌でも紹介され、New York City、Santa Monicaと巡回し、ようやく東京・お台場で披露されました。これも坂さんが設計したもので、156個のコンテイナーを使った実にユニークで、素晴らしい展示場です。Gregory Colbertによる「Ashes and Snow」というタイトルの写真と映像が展示されており、その不思議さに感動します。自然と人間の根源を突き詰めて表現しているような美しさです。こちらの展示は、6月24日までですので、是非一度足を運んでみて下さい。

ところで、彼に以前からお誘いいただいていたSwatchの“HG Hayek Center”という面白い作品のオープニングが夜、銀座中央通り7丁目でありました。彼から話だけは聞いていましたが、本当に面白く、奇抜さは感じられない、なかなか洗練されているユニークなイベントでした。きらびやかな雰囲気はさすがです。ここも一度、訪ねてみてはいかがでしょうか。お台場では坂さんに会えませんでしたが、ここでようやく会うことができました。

でも、腕時計で高いものでは“2,000万円”とか“7,000万円”もするものもありました。バブリーなのでしょうか。私達には、かなり場違いかもしれません。

先日OPENした東京Mid-townのオープニングの時も、ゴージャスというか、こんなんでいいのだろうかと感じました。ここにあるクリニックはJohns-Hopkins大学と提携しています。このことは、私の本「大学病院革命」でも紹介していますので、本も読んでみてください。

ご無沙汰しました。イノベーション25最終段階へ

20070503002 しばらくぶりです。プロバンスからパリ経由で帰って参りました。パリは今が一番いい季節ですね。マロニエの葉の緑がさわやかです。

イノベーション25の最終報告を作り上げるため、この2週間は土日もなく、私もスタッフもほとんど毎日が半分徹夜状態です。大臣の“閣議決定”をという指示で、各省庁はあれこれと大変です。大変ではありますが、みなさんよく仕事をしますし、優秀ですので、このような才能を他にも有効に使えるのではないかと考えてしまいます。私も付き合って、このところ睡眠時間は2~3時間です。メールを真夜中に送信したり、指示したりということもあるのです。

イノベーション25についてはいろいろとメディア等に取り上げられているので、所々で目に触れているかもしれません。内閣府の英文広報誌にも、私のインタビューイノベーション25の中間報告概要が掲載されています。この中間報告はイノベーション25のホームページに英文でも掲載されていますが、高市大臣がゴールデンウイーク中に訪問されたドイツでは、この報告書について色々と聞かれ、注目度が高かったと伺いました。安倍総理もイノベーション25の注目度の高さについて発言されています。あきれたことですが、今までは日本の政策を世界へ発信するという発想そのものがなかったのです。

普段から、日本はその存在を10%程度しか海外で感じさせないのです。精神構造が鎖国である典型的な、そして言い訳も出来ない証拠です。英国はその反対で、その存在を10倍ぐらい感じさせます。考えてください。これは極めて大事な、基本的な国家戦略の一つです。ほとんどが、相手から追われて対応するというパターンです。大きなビジョンがないと戦略がかけない、だから戦術で勝負、ということになるのです。どこかで聞いたような話だと思いませんか。

南フランス プロヴァンス、カマルグから

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Singaporeから帰国したのは22日の日曜日の朝でしたが、午後には私達のNPO、Health Policy Instituteが主催する心臓病についての会議が国連大学講堂で開催され、私も参加しました。このNPOの活動もどんどん広がっているようで嬉しいです。これからの日本の社会のあり方を示す、一つの活動だと思います。

23日は朝早くから官邸で「大学改革」についての「教育再生会議」に参加。それからすぐにイノベーション25会議と盛りだくさんの一日でした。夕方には、科学技術振興機構主催の各国大使館科学アタッシェもお招きした会議でイノベーションについて講演し(沖村理事長も来ておられました)、その後すぐに成田に向かいました。私がよく利用するAir France成田21:55発のパリ行便です。この便はヨーロッパのどこに行くにもとても便利で、朝4:30にパリCDG着なので、午前中にはヨーロッパの主要都市に着くことができるのです。東京で一日仕事をしてからの出発ですし、12~13時間のゆっくりしたフライトがとても楽なのです。

フライト中に2本映画を見ました。新007の「Casino Royale」、そして「Dreamgirls」(Diana RossとSupremesがモデルですね。70年代に青春を過ごされた方たちには懐かしい名前と思います)です。それから、機内で元SONY社長の出井伸之さんや日産のゴーン社長の奥様にお会いしました。

出井さんは面白いことを始めましたね。「Quantum Leap」というコンサルティング会社です。 2006年12月に発売された出井さんの本、「迷いと決断:ソニーと格闘した10年の記録」(新潮新書2006)を読むとわかりますが、グローバル企業のトップは特に大変な仕事です。

今回の目的はSONYのComputer Science Laboratory(CSL)が主催する会議に参加することで、会議は南フランスのプロヴァンス、ローヌ川河口の湿地帯にあるCamargueで開催されます。CSLの所眞理雄所長も同じフライトで、現地パリのCSL所長Steelsさん、東京の吉田さんと北森さんたちと合流し、TGVで快適な旅をし、3時間ほどの車中ではワインでランチをしました。フランスは平らで広々と一面の緑と菜の花の黄色が広がり、天気は快晴でとてもいい気分です。

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写真1: シャルルドゴール空港のTGV駅で、左から所さん、北森さん、私

Camargueはローヌ川河口の湿原にあり、塩の産地でも有名です(写真2)。さらに、ダヴィンチコードのマグダラのアリアの従者であったとされる「黒サラ(サラ・カリ)」を祭る教会のある、Saintes-Maries de la Merが海辺にあります(写真3)。50年ほど前に「Crin Blanc」(「白いたてがみ」という意味ですが、邦題は「白い馬」でしたでしょうか・・・)というフランス映画があったのを思い出しました。Camargueの名物の白いたてがみの白馬と少年の物語で、白いたてがみの白馬が海を走る美しい最後のシーンが目に浮かびます。ここかしこに白馬がいて、乗馬なども楽しめるようになっています。

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写真2: 積み上げられた大量の塩の丘

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写真3: 教会の屋根で

今回は小さな会議(全員で15人程度)で、テーマは「持続可能な社会」でした。場所はHotel Mas de la Fouque (写真4)で開催され、なかなか魅力的なところでした。会議の内容もなかなか面白いもので、特にコンゴに3年も滞在して(すごいことに奥さんと3歳の息子も連れて)、未開の現地人と生活をしたLondon School of Economicsの話は、想像を超えていてとても面白かったです。自然の中に住む人間の知恵の深さを感じさせるような話でした。こんな研究をするなんてすごいですね。なぜ、コンゴなのか。ちゃんと理由があるのです。とにかく人がしない、したことのないテーマを追求することを求められるのだそうです。さすが、英国の強さだと感じました。

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写真4: ホテルの周りの風景

夜からはいつも仲良くしている北野さんも参加し、大いに盛り上がりました。

2日目の会議でも議論は尽きず、ヨーロッパの省エネ住宅(例えば、Passive-On Project)など、大変参考になるものばかりでした。

Singaporeから

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4月17日は久しぶりに外国人記者クラブ(FCCJ)に招かれ、イノベーション25の話をしました。この会見の内容は外国人記者クラブのサイトで見ることができます(いずれビデオでもご覧になれるようになると思います)。会見に先立ち、ちょうどScience誌(April 13th issue)に私のインタビューが掲載されたばかりだったので、イノベーション25の英文報告書と一緒にお配りしてお話しました。やはり英語でのインタビューは、言語の成り立ちの背景からも人間関係がフラットなので、話しやすいです。以前から言っていることですが、日本語で話すと、どうしても聞いている方たちの顔ぶれを見て社会的地位などを考えて遠慮したり、言葉を選んでしまい、それだけで結構気を使ってしまって本音の話がしにくいのです。

19日にはSingaporeに行きました。ここはアジアでもっとも急速に、また、ダイナミックに成長し、変革している場所ですね。20日に行われるバイオテク政策企画立案の中心である「A*STAR」の理事会、Member of the Boardに就任して初めての会議に出席することが目的です。たった18ヶ月という短い時間で設立されたBiopolisで開催されました。これまではPhilip Yeo大臣が科学政策を牽引してこられ、彼の貢献は世界中で注目されていました。とにかく自分でよく動lき、人脈が実に広い。また決断と実行力も抜群で政府中枢からの信頼も厚いことが感じられます。これからは文部次官等を歴任してこられたLim氏が担当されるようで、Yeo氏は新規起業などに関わっていくようです。よく考えよく勉強し、決定も決断も早いのが、この小さな政府の小さな国(人口約400万)の活力の源です。とにかく若者の教育、国際化を中心とした人材育成を長期戦略の中心として国家政策をすすめています。一方で効率よい政府と社会システムが、この国を最も知力に満ちた国に挙げている大きな要因でしょう。写真1は、同じ理事会メンバーのTachi Yamada氏(UCLA時代からの友人です。現在Gates FoundationのGlobal Health Initiative Directorとして世界中を駆け回っています)、久しぶりにお会いした元京都大学教授、ウイルス研究所所長で、ここのBiopolisで活躍されている伊藤嘉明教授と撮った一枚です。伊藤先生のような方がもっと出てくるといいのですけどね。

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写真1: 左から伊藤教授、わたし、Dr Yamada

また、今回は国立シンガポール大学病院の中にSyndey Brenner先生を記念した、分子生物学臨床研究所の開設式もありました(写真2)。沖縄大学院大学の設計にも関わっている建築家、Ken Kornberg氏による改築がされていて、なかなかいい印象です(写真3)。彼は、Nobel賞受賞のArthur Kornberg氏の息子さんで、去年お兄さんがNobel化学賞受賞しています。親子2代での受賞は3組目だと思いますが、その一組が、誰もが知っているCurie婦人とその娘Joliot Curie氏です。この母娘のすごさがご理解いただけるのではないでしょうか。

Singaporeはいま活力に満ち溢れています。

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写真2: Brenner研究所会所式典で、左からYeo大臣、Brenner先生、Lim議長

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写真3: Brenner研究所で、建築家Ken Kornberg氏と

沖縄へ、そして「メールの達人」とは? そしてイノベーション25の中国語版

今日(6日)は、日帰りで沖縄へ行き、そして大阪に戻ってきました。

沖縄では、沖縄科学技術大学院の建物の建設が開始されるにあたり、「鍬入れ」というのでしょうか、その儀式に参加しました。理事長のSydney Brenner先生、仲井真知事をはじめ、多くの方が出席された素晴らしい式典でした。これでいよいよ出発ですね。これまでも、そしてこれからも色々あると思いますが、応援お願いします。

西岡郁夫さんは、ベンチャーの旗頭の一人です。日経ビジネスオンラインの「経営新世紀」というサイトで、“西岡郁夫のIT道具箱”というコラムを掲載されています。第2回の「幹部だからこそメールを」では、“トップの方たち”のメールの使い方が紹介されており、私まで紹介していただいています。嬉しいですね。是非ご覧下さい。

また、「イノベーション25」の英語の要約がサイトに掲載されていますが、今度はなんと出口さんのDNDで中国語の要約が掲載がされました。嬉しいですね。フラットな世界では発信力が勝負です。評価するのは、自分達ではなくて、不特定多数の世界の人々です。フラットな世界とは、そういうものです、それにしても世界に向けた日本の発信力は実に弱いですね。発想のせいでしょうか?誰のせいかといえば、鎖国マインドのリーダーたちでしょうね。

憂国の歴史学者、エール大でシンポジウム 朝河貫一再び脚光

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週末、東京は桜が満開です。しかし、残念ながら天気は下り坂ということです。

さて、今回のタイトル「憂国の歴史学者、エール大でシンポジウム 朝河貫一再び脚光」は、3月29日の産経新聞に掲載されていた記事のものです。このブログを読んでいただいている方は、朝河先生の名前を既にご存知の方も多いでしょう。サイト内を検索しても、10件程度が検索結果に出てきます。

この産経新聞の記事の中見出しは、“先見性、日本の針路示唆”そして“朝河貫一の言葉 「日本は世界の信を失ふ」「米国は輿論の国」”とあります。私がこのブログで何度も発信している意見と同じ趣旨です。この100~150年を見ても、日本という国は基本的思考が内向きであり、俯瞰的にモノを見て、思考することが得意でない「鎖国マインド」です。これはなぜなのか?面白いテーマだと思います。

日本が世界の中で小さな存在であるならば、日本一国だけの問題で済んでしまうかもしれないし(それも困ったものですが!)、国際的にはあまりたいした問題にはならないでしょう。しかし、日本は世界第2位の経済大国です。グローバル時代に独りよがりでは済まないのではないでしょうか。今の世界情勢、急速に変化しているアジアの情勢や日本の動向を見ていると、ちょと心配です。

同じような“懸念”を感じたから、このタイミングで、このタイトルのシンポジウムが開催されたのしょうか?そうではありません。朝河先生がYale大学の教員になってちょうど100年ということで、この3月に開催されたのです。「Japan and the World: Domestic Politics and How the World Looks to Japan」というテーマの会議で、日本からも皆さんがご存知の方が何人か参加されています。今の世界の状況を考えてみると、日本にとっても、歴史的な100年ということも、みな偶然ですね。

朝河先生は、日本人で初めて米国の大学教授になった方です。それもYale大学でした。Yale大学に初めて正式に入学し、卒業したのは、これも何度か紹介している第6代東京大学総長で、会津藩白虎隊の生き残り、山川健次郎先生です。2005年、現Yale大学学長のRichard Levin氏が来日した時にも、東京大学の講演でこの二人を紹介しています。

日本の国際人50人ほどを連載で紹介している、在日留学生向けのサイト「月刊 向学新聞」というのがあります。大変意味深いサイトで、朝河先生や山川先生をはじめ、このブログで紹介している方々がここでも紹介されています。

“科学という「国境なきツール」を生かした国のビジョンを”(岩波書店 「世界」)という対談形式の記事でも「生命科学と倫理」を巡って書かれていますが、この記事の中でも朝河先生について触れていますので、一度読んでみてください。

"歴史は繰り返す"のでは困ったものです。ジュネーヴで行われた「World Knowledge Dialogue」のランチセッションでは、私の結論、「Have we become wiser?」がセッション報告の見出しになっていました。

「イノベーション25」中間報告の発信

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2月28日に書いた「イノベーション25」中間報告に関するご意見を、報道やblogなどで色々と拝見させていただいてます。また、3月12日に書いたblogと同じような考えが財政諮問会議でもあり、いよいよ大学改革の流れは同じ方向を目指し始めている様相です。大学が自発的に改革するのは難しいですね。今までの日本の大学成立のいきさつを考えれば、無理もありませんが。ここでも、出口さんDNDでは議論が盛り上がっています。ありがたいことです。

私の発信も増えています。皆さんの考えや意見を伺えるので発信は大事ですね。「JST News」2007年3月号に、「異能、異質、出る杭を育てる社会を」というタイトルでイノベーションの「キーワード」を発信しています。有線テレビでも政府広報の一環として発信されたようです。「見ましたよ」とお電話をいただいたのですが、残念ながら私は有線放送に加入していないので見れませんでした。

また、3月27日の日経新聞の「経済教室」では、「本質は社会制度の変革」と言うタイトルで、イノベーションの本質について触れています。見出しが「環境、格差を克服;政策競争で遅れをとるな」、中見出しは「後戻りできないフラットな世界」、「供給側の論理打破して連携」、そして「重要になる社会起業家」、といったものです。

また、「イノベーション25」の英語要約版が掲載されました。ちょっと遅くなりましたが、日本の政策としては珍しいのではないでしょうか?早速、ある会でお会いした在京英国フライ大使から「報告を見ましたよ」、とコメントをいただきました。このような発信と反応を知ることは大事だと思います。

とにかく、日本は外からは見えにくいのです。発信するという意識が、官も、民も、学も初めからないのです。このような状態で、このフラットなグローバル時代の世界でどうしようというのでしょうか。時々書くのですが、「目を開け、心を開け、そして考えよ」です。世界は広いのです。

Jeffrey Sachs教授とMillennium Village

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2000年に国連でMillennium Development Goals(MDG)が発表され、Columbia大学のJeffrey Sachs教授の指揮の下、2005年に「MDG報告書」が発表されました。世界各国の2025年への目標が示されています。なかなか難しい目標ですが、世界の将来へ向けた大きな提案であることは間違いありません。これをまとめたSachs氏のリーダーシップは心底、大したものだと思います。

彼とはこの1年、一緒に仕事をしています。2006/2/52006/1/28のブログでも紹介していますが、2005年のダボス会議で出会ってから、お付き合いしています。彼のHPでも分かるように、たぐいまれな秀才をお持ちで、超人です。29才でHarvard大学の教授になり、ラテンアメリカ、ロシアなどの経済再建計画等に大きく貢献した世界的にも著名な経済学者です。去年は「The End of Poverty」という著書を出版し、こちらも世界で高く評価されています。邦訳「貧困の終焉」も出ています。彼の活動を見ると本当に信じられないでしょう。

いつもニコニコして、人あたりがよく、偉そうな素振は全くありません。今でも、多くの国の顧問をしていて、特に多くのアフリカ諸国の国家元首顧問としても各国を飛び回っています。さらに、今年のBBCの「Reith Lecture」の栄誉を担っています。聞いたところ、もう既に一回収録したようです。

その彼が3月4~6日まで東京にいらっしゃいました。北欧、そしてBerlinから飛んできたのです。この後はソウル、そして北京という行程だそうです。私に色々な会合のセットを依頼され、それなりに大変でした。来訪の理由は、もちろんアフリカ問題に対して日本の貢献への感謝と更なる応援のお願いですね。何故か分かりますか?彼は、この難しい目標を自分達の力で少しでも進めるために、Millennium Village Project(MVP)を始めたのです。まず、エチオピアとケニアで各一箇所ずつ始めました。New York Academy of Sciencesにも「It Takes A Village」という感動的な記事があります。

彼の奥さんはMrs. Sonia Ehrlich Sachsと言います。あのPaul Ehrlichのひ孫です。Paul Ehrlichはご存知と思いますが、秦佐八郎を指導し、彼とともに感染症に有効な初めての化合物サルバルサン(梅毒の原因スピロヘータに対する特効薬です)を発見し、1908年にノーベル賞を受賞しています。Soniaさんは小児科のお医者さんでしたが、今は公衆衛生MPHを取得し、MVPの指揮を執っています。本当に、すごいですね。

2005年9月の国連のMillennium Summitでは、日本政府だけが、他に8箇所のMVPを支援すると申し出ました(小泉総理も出席致しました)。素晴らしい国際貢献ですが、日本の新聞ではほとんど記事になりませんでした。国連総会の直前に「本当に素晴らしい事、大感激だ」とSachs氏の仲間達からメールをいただきました。以来、私はことあるごとに「MVPと日本の貢献」を国内外で話しているのです。

日本のおかげで、Sachs氏のMVPに資金が集まり、現在アフリカで12箇所のMVPが動いているのです。

Sachs氏の滞在は短かったのですが、財務大臣、厚生労働大臣、同副大臣(武見さん)、緒方貞子JICA理事長、外務省高官等々にお会いいただきました。更に私の司会で、住友化学の米倉社長との対談(日経新聞掲載)のほかに、いくつかのインタービューを受けられ、大変喜んでいただいた3日間でした。関係者の皆さんのご支援に心から感謝します。また、ところどころでこれらの記事をご覧になられていると思います。写真はSachs氏とNPOの同僚のジェームス近藤さんと、私です。

これらを通して、日本の国際貢献、特にアフリカでの素晴らしい貢献を、国民の皆さんへ、そしてSachs氏から世界へ広めてもらおうというのが目的です。

ところで、住友化学は「Bed Net(Olyset Nets)」という、今マラリアに最もinnovativeな蚊帳カヤを、今は年間1000万作成しアフリカに提供している、世界的に大評判の会社なのです。MVPでも使われ、マラリアが激減し、子供達も元気になり、生産性は向上。教育も、食糧生産も増えています。さらに、生産工場はアフリカに2箇所、ベトナムと中国に各1箇所にあり、これらの国に雇用を提供し、従業員もこの製品のアフリカでの貢献に大変誇りを持って仕事をしているのです。これらもSachs氏との対談で紹介します。楽しみにしていてください。

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写真:中央がSachs教授