日本国のビジョン、私の考え

今年の元旦のブログから「国家ビジョン」について繰り返し発信しています(参考: 1234 )。

この背景には、去年12月に2回、そして今年1月に1回、同じ趣旨で講演する機会のあったこと、オバマ新政権の布陣からの必然、そして、今後の世界の変化を踏まえて予測(「想像」とは違います)されること、その中での日本のあり方を考えた上でのことです。

これらの3つの講演は、どれも1時間弱の時間でしたが、それぞれの会場で約800人、1,000人、600人と、しかも殆ど重複はなく、社会的に重要な地位にいる方々が多かったので、3度とも大体同じ内容の話にしました。

ありがたいことに、この講演の一つがほぼ全文、(社)産業環境管理協会の「環境管理」2月号に掲載されることになりましたので、ここにもPDFで紹介します。

「何をバカな」、「無理だよ」、あるいは「できない理由」がすぐに頭の中に浮かんでしまうのでしょうか。

朝日新聞の村山論説委員が書かれた、「窓」という記事も参考にしてください。

 “グローバル時代、日本の課題は?”
 2008年12月11日に開催された「エコプロダクツ2008 記念シンポジウム」での基調講演

グローバルヘルス Global health

→English

このサイトでいろいろな形で繰り返し出てくるのが、私たちのNPO 「Health Policy Institute, Japan」活動の一つの柱の「Global Health」関係です。これは国内の、そしてグローバル世界のいろいろな方々、たとえば世界銀行、ゲイツ財団、Rockefeller財団、また政府、政府機関とも協力しながら進めています。

これらの活動は「市民社会」活動といえるもので、このような動きムーブメントの推進を通して去年はGlobal Health Summitアフリカ開発会議TICAD4G8サミット等へも貢献できたと思います。このサイト内でもいろいろ「search」してみてください。

世界には、信じられないようなとても不幸な状況の方たちが大勢いるのです。その一つの企画にも参加することができました。以前にも報告しましたが、Imperial College、BBC、Gates財団の協力、Rockhopperの製作「SURVIVAL」 というfilm documentary seriesです。これが一応完成して、ウェブ上で英日独仏語で見ることができます。私もメッセージを出しているのですが、これは日本語で書いてあるのですが、英語でしゃべっています。ちょっと変ですね。

国家のビジョンと新エネルギーと農業政策

→English

今年に入り、このブログでいろいろと国家ビジョンについて触れています

元旦のブログに始まり、7日20日21日のブログなどがそうです。それから、13日に書いたブログもこれに関連して、オバマ政権の政策について触れました。

そして今日は、22日の朝日新聞記事word file)で、12月と1月に行った講演に関するものです。これらの講演に関する記事が段々と長いものになってきたので、私の言っている“Story”が明らかになってきたのではないでしょうか。

このグローバル社会の大転換期、日本の危機的状況、オバマ新大統領の誕生、日米そして世界の動向を考えると、このように記事などで私の考えを取り上げてくださることは、本当にありがたいことです。

さて、これらをどのように一歩前に進めたらいいか、皆さんも動き出してください。

科学技術振興機構の新春に、「日本の国家ビジョン」を

→English

Washington DCから帰京して早々の14日、政府、学界、産業界の科学技術関係者の多くが集まる科学技術振興機構(JST)の新春の会合がありました。毎年行なわれていて、会場は満員です。

今年は基調講演をさせていただき、1月13日16日のブログに書いた、ワシントンで感じたアメリカ新政権の感触、そして昨年12月に行なった2つの講演でも話した私なりに考える「日本の国家ビジョン」について話をしました。

20090114jst02dsc_04701写真: 講演する私

講演の要旨は、参加されていた元ジャーナリストの小岩井さん出口さんがそれぞれ紹介してくれています。私の意見を広めてくださり、ありがとうございます。嬉しいです。

講演の全体の概略はこちらで読むことができます。

次期大統領オバマ氏、U Street(ワシントンDC市街)へサプライズ訪問

→English

先週ワシントンに3日間出張してきました(出張については近くブログでご報告します)が、滞在中に、クリントン政権で仕事をしていたこともある旧友とU Streetに出かけました。金曜日の夜のことです。このあたりは以前あまり治安が良くなかったのですが、ここ数年間で小さなレストランや洒落たジャズの店が立ち並ぶ安全な場所に変身しました。私達はその通りをぶらぶら歩き、店の一つにも入って楽しい時間を過ごしました。

翌日の午後、私が会議で一日中缶詰めになっている間に、なんと次期大統領のオバマ氏がFenty行政長官と共に同じエリアを訪問されたそうです。明らかに予定外のサプライズ訪問です。写真付の現地レポート(ワシントンポスト)がありますのでご覧下さい。

新しい国家ビジョンを

→English

元旦に、「新年を迎えて、日本の国家ビジョンを」というコラムを書きました。そして、12月8日と11日に、私なりに提案する国家ビジョン、「2030年までに、食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる!」について触れた2つの講演も紹介しました。

その11日の講演要旨が「日本物流新聞」(1月1日版)に掲載されました。「食糧とエネルギーの純輸出国になろう」という見出しで、以下のような内容です(数箇所、テニオハや言葉など少し加筆しています)。

●「イントロ」
東京で開かれた環境展示会「エコプロダクツ2008」(産業環境管理協会、日本経済新聞社主催)で政策研究大学院大学の黒川清教授が12月11日、基調講演(抄録はこちら)をした。歯に衣着せぬ物言いで、グローバル時代に日本が生き残るための課題やエネルギー問題を指摘した。

■日本のモノづくりは垂直型に終始している。世界で1日に携帯電話は300万個売れているが、そのうち40%はノキア製。モトローラ、サムスン(各15%)と続き、4位にようやく日本のソニーエリクソン(9%)が入る。が最近、韓国LG に抜かれ、モノづくり立国といってもぜんぜん売れないのが実情。とはいえ部品の65%はメイド・イン・ジャパン。質がいいから。部品で生きていこうとするならインテルみたいにならないとだめだろう。日本は2次、3次、4次の下請けをせっせとやっているが、物語のつくり方、想像力、世界観が欠如しているのではないか。

●「使える技術はいくらでも」
■エネルギー問題でも日本の強さをどう生かすかが重要。与えられた自然の条件としては水、森、温泉、、、がある。もちろん地震という弱さもあるが。それらをどうしてエネルギーとして使わないのか。電力を例に挙げると、火力65%、水力10%、原子力25%のままでいいのか。やはり日本はやるな、と世界に思わせる国にしたいと思いませんか?

■原子力はこれからも一時的にはいいと思うが、アメリカのような大きな国でもその廃棄物を捨てるための法案がなかなか通らない。そのくらい廃棄物についてはみんな神経質になる。事故は今の技術では起こらないといわれるが、絶対にないとは言い切れない。テロはどうか(加筆した)。他国に対し技術導入することはあっても、日本には原子力を使わなくてすむ技術がまだいくらでもあることを訴えたい。たとえば地球にふりそそぐ太陽エネルギーの2%だけで、世界中のエネルギーがまかなえることがわかっている。

■既存の照明から消費電力の少ないLEDなどに代わるのに反対する企業もあるが、反対するのはそれをつくってないメーカーだろう。こうした問題はアルミサッシにもあり、先進国で一番多く使っているのは日本だろう。断熱を進めるうえでは熱を通しやすいアルミを窓に用いるのはばかげている。使うなら塩ビや木だろう。これもアルミ業界が反対しているだけか。世界は変わっているんだから、遅れをとるようなことはやめた方がいい。

●「将来の絵、描くのは若手に」
■食糧とクリーンエネルギーの純輸出国になろうという目標を私は提案するが、その気になれば2030年までに達成できるのではないか。そのためには10年計画を立て各5年ごとのミッションをあげてロードマップをつくる。それを常に皆で評価する。計画を立てるのは役所でもシンクタンクでもいいが、将来の絵を描くのだから45歳以上の人は参加しないでほしい(笑)。

■ 節目の年を迎えた。ダーウィンの『種の起源』出版からちょうど150年。その一番のメッセージは、長い歴史でサバイブしてきたのはその時代の一番強い者ではない。一番賢い者でもない。環境の変化に適応した者だと。いま環境はものすごく変わった。日本は相変わらず人の後ろに続くのか。

こんな趣旨なのですが、いかがでしょうか?

ばかげてる?そういう方は、元旦のコラムの最後の5行を読んでください。

講演の全体の概略はこちらで読むことができます。

ひどい風邪で講演

11月はひどい風邪を引いて、一週間ほど、ほとんど声がでない時がありました。そんな時に限って、4日も続けざまに講演の予定が入っていました。これらの会合に聴きに来ていただいた方たちには聞きにくい声での講演で申し訳なかったです。ごめんなさい。

一つは慶応大学の丸の内キャンパスでの講演。これはすごい人たちをお招きしています。私もお招きいただき感激。私の講演の感想も出ています。ありがとうございます。慶応義塾も今年で150年。無事にその式典も終ったそうですが、残念ながら私は海外にいたので参加できませんでした。おめでとうございます。

二つ目は、GRIPSで共産党中央学校の60人ほどの方たちの訪問を受けてのセミナーです。こことは、相互交流をしています。学問の場がこのような活動を続けていることは大事なことと思います。

次いで、日経ウーマンなどが主催するWomens Health Forum。この私のサイトを探索してみるとわかるように、私は明確に女性の応援団と思われています。今回は基調講演ということで、しかも私の後には専門の方たちが「乳がん」「動脈硬化」「女性医療」等のお話があるので、もっと広い視点でお話しをしました。「ピル」「10代の人工中絶」についても触れました。短くまとまったものが「日経ヘルス」(日経BP社)2009年1月号に出ました。聴きに来てくれた方たちの反応はどうだったのでしょうね、興味あるところです。

次の日に神戸で「神戸先端医療構想10周年」で記念講演をさせていただきました。出版物が出るかどうかわかりませんが、要点はblog(ページ4 and 5)で見ることができます(こちらのブログもご覧ください)。週末でもあり、国会解散があるかも、といううわさで持ちきりの時期でしたので、渡海元文部科学大臣を始め、地元の代議士さんも大勢見えておられました。本当にごくろう様です。

熱い若者たちの訪問

→English

最近、2組の若者たちからぜひ相談したい、というメールがありました。

午前に5人の大学生たち(慶応大学の方が主ですが)がきました。みんなそれぞれが熱い思いで、これからのグローバル時代、自分たちの可能性と進路について、という相談でした。いったい世界に何が起こっているのかなど、いつもの私のメッセージの理由とか、どんなことができるのか、したらいいのか、いろいろ議論しました。

ちょうど終わりのころにWilliam Saitoさん杉田典子さんが来たので(お二人とは、最近、京都へご一緒しました、と紹介しました)。明らかに日本人では「超変わった」経歴です。こんな経歴は身近には想像もできなかったでしょうね。

Kurokawaandstudents_20081写真1: 午前の5人組とSaitoさん(私の隣り)と杉田さん(左端)

午後も、同じように熱い思いの6人の若者たちが来ました。早稲田大学の2年生の3人が中心です。かれらは、今年Bangladeshに行ってあまりの違い、ひどさにびっくりし、短い間でしたが、いろいろできることを試したそうです。グラミン銀行のことも知っていて、このような状況を変えることに努力し、日本を変えたい、と。しかし、帰国して大学などで、いろいろ聞きまわっても、納得できるような返事が得られないと。さらに思いを強くしていたころに私のこのサイトにであい、どうしても会いたい、ということでメールをくれたのです。

20081216c6l写真2: 午後の6人組

これらの皆さんには、「社会起業家」Social entrepreneursへの認識があって、あまり日本では聞きなれないキャリアであるので、どんなことをしたらいいのか等、迷っているのでした。

このブログにあるような話しをしながら、議論をし、みなとても元気に帰っていきました。

要するに、何か根源的なことに気がついているのですが、どのようにすればいいのか、何かわからないことだらけ、ということなのですね。当然ですが、迷うのです。この根源的なことは、今まで教えられていた、常識と思っていた日本の社会的価値とはあまりにも違うので、戸惑うのは当然です。でも、世界では多くの若者、将来のリーダーがこのような進路(Peace CorpTeach For Americaなど)から社会人としての活動を始めることも人気が高いのです

皆さんに、まずAppleのSteve Jobsのスピーチを見る、聞くことを薦めました。何人かから、早速メールの返事がありました。

私もこのような「ウェブ時代の手法」で発信しているので、このような若者たちと会えるのです。うれしいですね。

時々、会うことになるでしょう。

「生物資源の保存」シンポジウム、天皇陛下のリンネの記念講演

→English

12月9日、神戸での学会で「生物資源保存」についてのシンポジウムがあり、基調講演(プログラムフルテキストPDF )にお招きいただきました。講演の前に、生物資源保存の展示 に伺いました。たくさんの資源が集められ、研究されていて、すばらしかったです。皆さん、とてもがんばっています。若い方たちに、「これだけ多いサンプルなのに、すべてに名前がついているのは不思議だと思わない?」と聞きました。

今回私は用意しておいた資料に沿ってお話しましたが(最近は、原則としてpowerpointを使わないことにしているのです)、講演の内容については、このブログを時々読んでくれている方には、見当がつくものだと思います。

資料の順序に沿って話しましたが、講演で特に伝えたかったのは後半部分です。

まず、去年(2007年)リンネの生誕300年にあたって、天皇皇后両陛下がSwedenをご訪問され(参照 1 2 3 )、Uppsala大学(1477年設立)の名誉会員になられました。これはSweden国王を含めて4人しかいないと聞きました。(こちらのサイトでも様々な写真が閲覧できます。

その後、Londonのリンネ学会にも訪問され(参照 1 2 )、陛下の格調高記念講演がありました。それを読んでみるととても感動します。この背景には国民が皇室を尊敬し、誇りに思う基本があると私は考えるのです。格調高い本当にすばらしい内容と構成です。多くの動植物種に学名がついていることのリンネの貢献についても触れられています。ぜひ読んでみてください。

Uppsala02写真: Uppsala大学長Hallbergさん一行が訪日のときにSweden大使館で。陛下の訪問が話題になりました。

この原稿は誰が書いたと思いますか?ほとんどが天皇陛下ご自身としか考えられません。本当にすごいことです。ご公務を考えれば、そのご努力がどれほど大変なものか、想像してみればすぐ理解できると思います。

この陛下のご講演をいつか皆さんにも読んでもらいたい、と思っていたのですが、今回は本当にいい機会でした。

もう一つは、「アメリカ大陸に最初に来たヒトはアイヌ?」という最近の話題です。資料はとにかく集めて整理しておくことが大事なのです。サンプルがなければいくら解析技術が進歩したところで何もできません。

科学でも何でもそうですが、私たちの現在は多くの先人の努力の積み重ねの上に成り立っているのです。小手先の「なんの役に立つのか?」などというばかりの学術政策、研究費配分、役所への陳情など、みな発想からして貧困です。

TIME誌のJet Li

→English

Jet Li を知っていますか?中国の有名なカンフーマスターで映画俳優です。私は彼のファンで、以前にもブログで彼のNGO、One Foundationでの新しい生き方についてご紹介しました。

ところで、最近のTIME誌に“The Liberation of Jet Li”(Jet Li の解放)と題する記事が載っていました。

このように最初はごく限られた人たちにしか知られていない活動が、次第に世界的なメディアで報道されるようになったという例は、他にもビル・ゲイツの“Creative Capitalism”なんかがありますね。これも以前ブログで取り上げました。

世界は絶えず動いていますが、その変化が数人の運動から始まったものも少なくありません。目を良く見開いて世の中で何が起こっているのかを知ることは大切です。目を覆って変化をやり過ごすことはできないのです。世界はつながっているのですから。