研究者のモラル、小保方さんが開けたパンドラの箱

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かなり下火になっているようには見えますが、研究者をめぐっていろいろと問題が起こっています。

理研の小保方さんの事件、東大を含んだ教授と製薬企業との「癒着」の問題などです。繰り返し起こって、しばらくメディアで大きく取り上げられますが、しばらくするとまた繰り返すのです。

このような問題は どこでも起こりうることですが、そこから学ぶ姿勢、さらにもっと社会的にも、根本的な問題にも注意を払う必要があります。研究者の「自律精神」の欠如です。

国会事故調で明らかにしたのも、そのような日本社会に深く存在している問題を指摘したのです。

今年の5月19日のブログ「日本の科学と精神」でも指摘したところです。日本の研究は基本的に「家元制」だと。

米国で、独立した研究者として私と同じように長い年月を過ごした市川さんは、理研問題の外部審査の委員も務めました。そこから見えたことについて、きわめて示唆に富んだ意見を「小保方晴子が開けたパンドラの箱」として述べています。

ぜひ参考にしてください。これは正しく鋭い指摘です。

特に関係者は知っていることかもしれませんが、「不都合な真実」を無視することなく、意識して解決していくことこそが、指導者たちの責任と思います。

将来の研究者を育てる意識が不足している、あるいはその精神が受け継がれていないのではないかと思います。

「プロメテウスの罠」

朝日新聞朝刊の連載「プロメテウスの罠」は、この新聞社の特別報道部によるもので、福島原発事故から数か月たった2011年10月から始まった連載です。その後もこの連載は延々と続き、シリーズは51を数えます。いくかのシリーズ終了後に単行本としても発刊、最近では第7巻が発売されました。

この第1,000回を迎えて、朝日新聞に1ページの記事が掲載されました。そこに私と加藤登紀子さんのインタビューが出ています。

福島原発事故は、世界を驚愕させた大事故です。大災害に起因したとはいえ、背景には日本の「政・産・官、メディア、学者」も巻き込んだ政治の統治機構の欠陥があった大事故です。

私がこのシリーズを評価した点は、新聞としての本来のスタンスに立っていることです。つまり取材された人、記事を書いた人とも実名で、記者の視点に任せて、連載の回数を決めずに書かれているところ、などです。

多くのみなさんとも共有できる視点ではないか、と思います。

「自由と正義」2014年4月号

元国会事故調委員の櫻井弁護士、総務統括宇都宮弁護士他の方々の「国会事故調」についての論文が、日本弁護士連合会の機関誌「自由と正義」に掲載されました。

「元委員が振り返る国会事故調」
櫻井正史

「国会事故調の事務局運営とリスク管理」
宇都宮純子

「国会事故調における調査活動の統括とプロジェクトマネジメント」
松澤香、高橋尚子

「国会事故調における弁護士の調査活動」
渋谷卓司、芝 昭彦、藤戸久寿、美﨑貴子

「アカウンタビリティ」と「リスク・コミュニケーション」;カタカナにご注意

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このブログでも、栗原潤さん1)のことを何度か紹介しています。

彼の広く、古典などを含めた読書歴と知識、しかも英語だけではなく、複数の言語で原書を読む力量などからくる洞察の深みが素晴らしいので、いつも議論が弾み、楽しい時間が持てます。

私が日ごろから発言している言葉に「アカウンタビリティ」があります。日本では「説明責任」となっていますが、これは大きな間違いです。「自分の立場に付与されている責務を果たす」という、責任よりもっともっと大事で、大きな意味がある言葉、という主張をすぐに理解してくれた一人です。

この点については、山本清さんの優れた学術書が出版されました。栗原さんも早速に引用しています。これについてはまた説明します。

去年の6月、米国科学アカデミーで行った私の講演でのことですが、この「アカウンタビリティ」を日本では「説明責任」と言っているが、これは「典型的な」「Lost in Translation」であると指摘した時の、参加している方たちの反応について触れました。

似たようなことですが、最近、栗原さんのコラムで、「リスク・コミュニケーション」についてもコメントをしてくれました。国会事故調では、この言葉を使っていません。なぜでしょうか?

外来語をすぐにカタカナにするのは大きな誤解を生む可能性もあります。皆さんも注意しましょう。

‘Be Movement’と私のインタビュー記事

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‘Be Movement’は、ウェブ時代の新しい形の「社会メディア」です。若い人たちが、グローバル時代の変化を受け取りながら、いろいろ試していることはうれしいことですね。
最近この「日本特集」が出ました。東北大震災+福島原発事故から3年を迎えたタイミングを意識した特集なのでしょう。

私も応援している“Table For Two”の小暮さんの記事が、私のインタビュー記事のすぐ後に
出ています。

このような時期ですから、国会事故調の問題も含めて、うまくまとめてくれています。

英語で数ページ、ちょっと長めかもしれませんが、時間のある時にちょっと目を通していただけると嬉しいです。

JAPAN’S SPIRIT -Strength through the Storm-
(be movement pp114-122)

Cassie Limさんとチームに感謝。

北岡伸一さんとの対談

北岡さんは日本政治外交史の学者ですが、国連代表部次席大使を務めたこともあるという点で、異色の体験・経験をされた学者です。もっとも諸国ではこんな任命は良くあることですが、、、。つまり、日本のような、極めて狭い「タテの単線路線エリート」人事で動いているというわけではない、適材適所の任官は、大使、外交官ばかりでなく、政府高官にでも当然のこととしてよくあることです。

奥様も社会活動に熱心で、MDGなどでも活躍しているJeff Sachs12)さんとも一緒になってアフリカ支援などにも参加しておられ、ご主人が国連大使でNew Yorkにおられる時でも、ご自分は別行動で、個人の身分でアフリカ諸国にも出かけられていたと思います。

「北岡さんとの対談」の企画を提案されましたので、このようなちょっと違った方との話は面白いでの、北岡さんが引き受けるのなら、と引き受けました。

対談に出かけてみると、この企画した方の思惑にあっているのか、私たち2人ともよくわからなくなりましたが、2人ともに、企画の方のほうからの質問には、忌憚のない議論をしましたので、それなりに楽しい時間でした。

対談を終わってから、北岡さんとは、「言いたい意見は、遠慮なく言えたし、これでいいか」ということにしました。

この対談の原稿を読まれるとわかるのですが、タイトルや見出し、添付の写真には、編集の専権事項ですから、こちらからは特に意見を出しませんでしたが、編集の方の苦労がうかがわれます。

私たちは2人とも素直なものですね。いかが思われますか?

私の背景

私のことを時々書いていただきますが、先日の日経の山田さんのインタビュー連載記事も、私の昔を知っている方は少ないので、いろいろな方から「そうだったのか、、」などというコメントをいただきました。

最近も、私の記事(前編後編)を書いていただきましたが、ありがたいことです。

私のことをもっと知っていただけると、なんで私がいつも「変なこと」を言っているのか、少しは理解していただけるかもしれません。

日経「人間発見」のわたし: 「「出る杭」が日本を変える」

日経夕刊に「人間発見」という月曜から金曜までの5回のシリーズでひとりの人を紹介する企画があります。

3月初めの週に私が紹介されました。編集委員の山田康昭さんが私とのインタビューからまとめてくれたものです。いろいろな話題がありましたが、いくつかのポイント絞って、上手にまとめてくれました。

 

第1回 (2013/3/4付 日本経済新聞 夕刊)


第2回 (2013/3/5付 日本経済新聞 夕刊)


第3回 (2013/3/6付 日本経済新聞 夕刊)


第4回 (2013/3/7付 日本経済新聞 夕刊)


第5回 (2013/3/8付 日本経済新聞 夕刊)


 

3つほどの全体のタイトルを考えてくれました。私は第4回のサブタイトルの「教育は恩返し」がいいと思ったのですが、「出る杭」をいれたタイトルになりました。

良いシリーズと感じていたければ、山田さんの腕です。

 

Distinguished Achievement Award by the Tokyo American Club

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Tokyo American Club (TAC) からDistinguished Achievement Awardという名誉をいただきました。1995年に始まった賞だそうです。過去の受賞者リストを見ても、ここに加わると思うだけで、とても誇らしく、うれしいことです。

「iTOUCH」という月刊誌の1月号の表紙に私が出ていて、これは成田空港のラウンジなどにも置いてあるので何人かの方からメールをいただきました。私のインタビュー記事がそのpp. 23-27 に「The Protruding Nail」という題で掲載されています。わたしのCalifornia大学時代の仲間との古いちっぽけな写真も掲載されていてちょっと照れてしまいますね。

記事を読んでみると、だれが推薦してくれたのかわかりますね。素直にお礼です。

Bostonから帰国した翌日2月18日にTACでお祝いの会がありました。三菱商事の槙原稔相談役、Roos大使夫人、去年まで駐米日本大使だった藤崎大使ご夫妻(大使は所要で先に出られましたが)ほかの、GRIPSHGPIIMPACTJapanなどの多くの友人が集まってくれました。

授与式は私の紹介に始まり、私の短いスピーチがあり、そのあと40分ほどの和やかな意見交換がありました。

スピーチでは私は「まともな」日本人であること、日米の懸け橋になられた何人かの方、特に去年暮れに亡くなられたBeate Sirota Gordonさんについて触れました。ちょっと読んでいただけるとうれしいです。

いろいろとうれしいことが続きました。

 

大学改革は待ったなし、日経シリーズ

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大学改革は遅々として進みません。東大の秋卒発表はメディアも大きく取り上げ、一歩踏み出していますが、社会の受け皿とか、とにかく各論に入って、できない理由ばかり取り上げるのですね。

今やトップの大学は教育にも、研究にも「多様性とグローバルに開かれた大学」でなければ意味がないでしょう。

最近の日経新聞が朝刊の一面で大学改革シリーズを出していますが、これに同時並行でウェブでのシリーズも出ています。

私もこのシリーズでインタビューを受けましたが、小泉総理のころから主張していた「大学の大相撲化」(1)(こちらからこの日経シリーズがいろいろ読めます)というキーワードでまとめられています。このブログで「大学改革」「大相撲化」などで検索すると多くの記事を見ることができるでしょう。

相変わらず「知の鎖国」(12)なのです。

日本社会は日本の大学教育を本気で心配しているのでしょう。しかし、社会のほうも大学で評価し、学生本人を見る目がなったのでしょう。双方が適当だったのですね。それは所詮、過去の枠組みの中の日本だったからなのです。

国の根幹は人づくりです。どんな人を育てるのか、この先の見えない世界で、各界の「リーダーは」日本をどこへ向けたいのでしょうか。

若者たちのせいにしてはいけません。「子供は社会を映す鏡」なのですから。

すぐにでもできることは学生さんたちの選択肢です、「休学のすすめ」(1)、「Gap Year」などでしょうか。