野口英世アフリカ賞、私達の伝えたいこと

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野口英世博士は近代日本でも有数の有名な医者でありヒーローです。日本以外ではあまり知られていないのですが、1904年の大学創立時から研究し、後に20世紀初頭にこの新しい研究機関を世に知らしめたロックフェラー大学の図書館には銅像が飾られています。千円札の肖像画にもなっていますね。

日本政府は今年5月に野口英世アフリカ賞を創設し、イギリスのブライアン・グリーンウッド博士とケニアのミリアム・ウェレ博士が受賞し、私の過去のブログにも書いたように、TICAD(第4回アフリカ開発会議)初日の夜である2008年5月28日に授賞式がありました。

そのストーリーが記事になりました。賞に関する詳しい話を読んでいただき、野口先生の精神をアフリカや世界の友人達と共有いただければ幸いです。

「医療制度改革:現実見極め基本法制定を」

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医療崩壊、医療制度改革、医師不足、勤務医の疲弊とか、医療の話題には事欠きません。舛添大臣も政治主導とがんばってはいますが、これはなかなか難しい問題です。私もこの20年発言し続け、一部でいろいろと実践もしてきたところです。最近も、合併症のある妊婦の緊急入院受け入れを大学病院でさえもでしなかったという問題が、東京という世界も屈指の大都会で起こるなど、医療制度は国内政治の大問題のひとつです。

朝日新聞、10月30日朝刊「私の視点-ワイド-」に「医療制度改革:現実見極め基本法制定を」という見出しで私の発言が掲載されました。以下のような内容ですが、見出しにあるように、結局は基本法が必要なのではないかと考えます。現在の政治状況を考えても、これは「マニフェスト」、できれば年金制度とともに超党派の国内政策の中心に据えてほしいものです。安心できない社会では、不安で誰も元気も活気も出ません。新聞という、極めて少ない字数制限の中で精一杯というところなのですが。

「医療制度改革:現実見極め基本法制定を」

「●医師不足や救急医療体制の問題に打開策が必要との声が高まるなか、舛添厚生労働相は「安心と希望の医療確保ビジョン」の策定を始めた。大臣主導で識者を集め、先月、具体化に関する中間とりまとめが公表されたが、内容に疑問を持った。現状の具体的な分析や長期的なビジョンがなく、基本的には「医師数の大幅増」という量的拡大に頼ろうとしている。日米の医療現場に40年以上かかわり、安倍内閣の特別顧問として、国民の健康作りの施策に助言してきた経験から、苦言を述べたい。

●中間取りまとめでは「50%程度医師養成数の増加を目指す」とあるが、どのように養成し、配分するかを示していない。社会状況を考慮せず、単に医師を増やすだけでは問題は解決しない。国民1人当たりの医師数を増やすと同時に、体系的な取り組みが必要だ。

●まずは医師の地理的な偏在だ。10万人当たりの医師数は、最大の京都府は292人、最少の埼玉県は142人と、2倍以上の差がある。現在、病院ごとに定員はあるが、都道府県など地域の枠組みでの定員は考慮されていない。研修医の定員を地域の実情に応じて設定すれば、かなり解消できる。研修医は2年目以降、無医地区での診療を数カ月程度、義務づければ、研修医の経験の幅を広げ、無医地区解消にもつながる。

●医師の診療科別の偏在は、広く知られるようになった。外科や産婦人科で医師が足りない一方、精神科や形成外科などでは医師は増加している。国民に必要とされる医療を提供するには、医学界自らが専門別に定数を配分し、資格要件を明確にするなど、医師の養成制度を根本的に見直す必要がある。私は米国の大学病院で15年過ごしたが、医師は研究者、教育者でもあり、常に学び合い、切磋琢磨することで強い責任感を築いていた。専門医になる訓練や要件の厳しさを見習うべきだ。

●医療の提供体制にも改善の余地がある。日本は他の先進国に比べてベッド数が極端に多いが、似たような医療機関が狭い地域に密集し、地域別の配分が悪い。都道府県を基本にした医療計画にもとづき、病院間での診療科や施設の重複を解消し、質の高いバランスのとれた配置にするべきだ。このことを通じ、患者1人当たりの医師数が増え、医師の労働環境も結果として改善できる。このような医療計画は、今回の妊婦のたらいまわしなどへの防止策としても有効であろう。医師の数ばかりでなく、医療提供システムと運営の改革も進められる。

●以上は、私論ではあるが、中間とりまとめには、こうした現状認識や改革の方法論についての具体案がほとんどない。審議に招かれた多くの専門家は、現場の切実な声を訴えたはずだ。

●国民にとって重要なのは、単に医師数が増えるだけではなく、質の高い優れた医師が増えることだ。専門性のみならず、社会経験など多様な経歴と高い目的意識を持った総合的な判断能力を持った医師の養成が必要だ。カナダ、米国で定着し、豪州、韓国にも広まった「メディカル・スクール」は、医学部卒でなくても、大学卒業後に医師を目指して4年制の医科大学院へ進学できる制度だ。日本でも推進する好機だ。

●医療が国民の関心を集める今こそ、個別の問題への場当たり的な政策ではなく、医療の基本理念を定める新たな「医療基本法」の制定に取り組む絶好のタイミングでもある。」

以上になりますが、現在の自分の立場ばかりでなく、高い見地から、広い視野で、国民へ向けた視点で発言し、発信して行きたいと思います。また、日本医療政策機構でも広い活動を推進していますので、ご支援お願いします。

 

グローバルヘルスと日本を考える、「日本内科学会講演」

今年は、東京アフリカ開発会議があり、G8サミットがあり、日本はグローバル世界から注目された1年でした。しかし、これらの大事な会議が終わってまもなく、福田総理が安倍総理と同じように、就任1年で突然退任されました。

今年の春、私は内科学会総会のパネルにお招きを受けました。過去にも何度かこのような機会をいただきましたが、特に今回はグローバル時代を踏まえて、今盛んに論議が湧き起こっている国内の医療問題や政策関連には触れず、外の世界へとを思いをはせていただけるように世界の中の日本という話をしました。他のパネルの方たちが国内の問題に限定した話が中心になることを考えた上のことのです。

聞いていた方たちから、多くのコメント、励ましをいただきました。

この講演の内容が日本内科学会誌に掲載されましたので紹介します。

 「グローバル世界と日本の課題」(PDFをダウンロード)

ワタミの渡邉美樹社長、教育、そして農業特区

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「和民」の社長の渡邉美樹さんは、すばらしい情熱と夢を実現していく熱血漢、起業家、経営者です。いくつもの本も出版されているので、amazonで調べてください。教育を大事に考えておられて、日本ではいうまでもないのですが、カンボジア(最近ではネパールも)でも多くの子供の教育支援など、ご自分でできる活動をどんどん展開しています。本当に立派なことです。

原油の値段が上がり(今は、一時的にちょっと落ち着いていますが・・・さて、いずれはどこまで?)、ただでさえ世界的に食料が不足していて(さらに気候変動、水不足などで、悪化する様相)、現在でも毎年数百万の人たちが飢え死にしている現状(「2C+3F」:-Climate Change and Fuel, Food, Feed-ともいわれますが・・・) は決してよくなるとはいえないのです。日本の農業技術はすばらしいのですから、長期的は視点でこれを成長産業に育成すべきと考えています。いくつもの世界的なブランドもできるでしょう。もちろん、食料の自給率も向上します。さらに、食用以外の部分で再生可能エネルギー源としても大きな可能性があり、研究開発は世界的な競争になっています。

私も機会を捉えて発言しています。今年5月には加藤紘一さんが座長で、茂木幹事長、さらに農林水産大臣もされた谷津議員も出席された自民党の委員会でも、農業政策について話す機会がありました。

渡邉さんは農業特区(実は使いにくいのです、なぜでしょうか)も使っておられるので話しを伺いたいと思っていたところ、渡邉さんが機会を作って下さり、1ページほどに短縮した対談も出ることになっています。対談の様子の一部は、渡邉さんのBlogにも出ています。

 「農業の今、そして未来」  (「ecocolo」 10月20日掲載)