「医学生のお勉強」 Chapter2:避妊、中絶、ジェンダー・イッシュー(4)

知って欲しいことはピルやバイアグラの作用や副作用はともかくとして
その背後にあるもっともっと大きないくつもの問題です
セッションのオリジナルタイトル/Abortion, Contraception, and Gender Issues

 

■バイアグラを飲む人って・・・?

黒川:
さっき言った保険証の問題とかはとっても大きい問題。バイアグラだけど、「これを保険で認めますか?」っていう議論があったときに、さっきと同じ。保険証にでてしまったら、次は奥さんにばれちゃう。ばれても使う人っていうのは奥さんのために一生懸命つかっている人ばかりではないかも? それにもし使っているとなると、かなりの人はピルと違って年を取っているからじゃない? ピルは若い人が使う。でもバイアグラは年を取っている人が使って、しかもパートナーは奥さんじゃない、というケースもけっこうある。それが知られちゃいけないから保険で認める理由はあまりないかもしれない。もちろん両方あってもいいんだけどね。だけど保険で認めると保険証で「何錠処方した」ってわかっちゃう。これは家庭騒動になっちゃうんじゃない? これじゃ冗談でオフィシャルには言えないけど、「保険はやっぱり認めないほうがいいよ」という考えもある。なぜかというと能動的に飲むんだから。
でもピルは違う。しかもピルは3週間、毎日飲まないといけないんだよ。それで1週間休んでまた3週間。忘れるといけないんだから。でもバイアグラはそのときだけ飲めばいい。能動的だよね。だからそれは保険じゃなくてもいいかもしれない。保険証の問題もあるし、しかもどういう人が飲むかわからないし、むしろそれによってお金を使ったり、いろいろと相手に貢いだりして、国内の経済が活発になるかな? なんてね(笑)。それにバイアグラの場合には製薬会社はマーケットがすごくあると思ってるから、お金もたくさん使って、治験も一生懸命やってくるわけですよ。やっぱりデータを出されれば承認せざるを得ない。ということなんですよ。だから別にバイアグラがどうこうっていうことではなくて、たまたまピルが認可されるまで9年かかっているからいけない。

――:
バイアグラのほうが突然死がすごく多くて、それでも認可されるのが早かったのが不思議なような気がするんですが・・・。

黒川:
だって能動的に飲んでいるんだもの。

――:
それに自分の判断だってことだし。

黒川:
これに大きな声で賛同する男の人たちってどういう人たち? と私は思っているんだけど。
だからアボーションは年間40万ぐらいあるんだけど、各年代別のアボーションっていうのは10年前、20年前に比べると、10代の人たちがだんだん増えてきているんです。もちろんいろいろと問題があるから一概には言えないけど、今10代のアボーションが全部のアボーションのうちの5%を超えている。6%、7%。10年前くらいまでは2~3%だったんです。この数字は誰にでも理解できるんだけど、だけどね、けっこう多いのは30代、40代なんですよ。これは大きな問題なんじゃないかな。

――:
なんでそんなに問題になるんでしょうか?

黒川:
家族計画だよ。望まない出産。予定外の出産ってやっぱりキャリアウーマンもそうだし、子どもが2、3人いて一番下の子がもう中学生でもできてしまうことだってあるじゃない。

――:
そんな分別がないんでしょうかねえ。

黒川:
だけど日本の30代の夫婦の関係ってどう? 30、40代になったときに子供が2、3人いて、下の子が小学校3、4年生ぐらいになったときの夫婦の関係ってどう? 僕は知らないけど(笑)。一般的には。

――:
かなりクラシカルな夫婦を想像して、ご主人が仕事から遅く帰ってきて「今日は」というときにはおそらく先生がイメージしていらっしゃるように、その場で避妊するかしないかなんて考えるかどうかというと、ちょっと無理かもしれない。どちらかというと男性が主導になってしまって、というケースが多いんじゃないかと思います。
そういうことを考えると、とにかく選択権を、例えば「与える」っていう言い方はおそらく国が考えるんでしょうけど。「与える」と思っているうちは、女性が当然有するべき権利ですから、国が「与えよう」と思っているうちは、この国はだめなんだろうな、って思います。ピルは当然の権利だと思います。

黒川:
だけど本当に10代の女の子の中絶が増えてきたなあって。ある程度みんな予測してきたでしょ。けっこうな数だよね。未成年に対してピルを使わせたくないって陳情してくる人もいる。そっちのほうがいろいろと言いたくなるよね。あとはご夫婦で仕事をしている人も多いし、やっぱり計画出産っていうのがあるじゃない? それがやっぱりここでもでているように、予定外の妊娠の割合が多いのは、30代、40代の中絶っていうのが非常に多い、ということが理由じゃないでしょうか。それぞれのシチュエーションがあるとしても女性だけの問題じゃないからやっぱり啓蒙活動が必要だよね。
女性も子供がほしいから基礎体温なんて測っていることが多いと思うし、あとは危険日を予測するとか。生理がきちんとある人は、比較的自分が今リスクかどうかということを知っているから話ができるけど、基礎体温を測っていなくて、生理が不順な人は大変。だから女性は自分が今どのくらいリスクがあるのか、っていうことを知っていなければならない。いつも相手に頼ってばかりいてはだめ。もっと自分の体のことを知っていなければならないよね。そのためには啓蒙をしないとだめだね。

――:
今の考え方を逆にとっちゃうと、ピルが普及しだすと避妊は女性だけの責任になってしまって、「男性には関係ないからやりたいようにやる」なんていうようにも感じちゃっていやだなあと思ったんですけど。

――:
だからピルにもミスがあるから、男もそれをきちんと把握して自分もコンドームをつけるようにする。ミスっていうか、ピルを飲まない月もあるじゃない。100%じゃないんでしょ?

――:
そうやってだます人もいるんですよ。「飲んでいるわよ」なんて言って・・・(一同笑)。

黒川:
怖いね。それは個人的な問題。
でも、それもあるね。

――:
副作用がなければ僕は賛成だと思うんですけど。その副作用のことが僕の頭の中にもあって、「まだ安全かどうかわからない」っていうのがあって。10年後20年後にでたりする可能性だってあるかもしれないし、コンタクトレンズだって10年後どうなるかわからないって言われていたし。

黒川:
コンタクト、今は使い捨てだもんね。だけどさっきの、避妊はどっちの責任? みたいな心配もあるかもしれないけど、そういうシチュエーションになること事態は別にいいんじゃないかな? 自分のチョイス。

――:
そのときの男性と女性のパワーバランスがあるし。もしかしたら男性がコンドームをつけるのをいやがって、女性にピルを飲むようにすすめるかもしれないし。

黒川:
そういうことを強要するような男の人だったら別れるとか。でもそれは個人的なこと。

――:
今はすごくいいコンドームがあるし。つけたほうがいい、とか。

 

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■仲間たちの横顔 FILE No.8

Profile
京都大学農学部卒業。1990年よりJR西日本に10年間勤務。途中、Case Western Reserve Univ.(米ケースウェスタンリザーブ大学)にMBA留学。USCPA(米国公認会計士)

Message
この討論会風の授業は、あらかじめ用意されていたコースに飽き足らない学生が、黒川先生に「なんかおもしろいことやってくださ~い。せんせーが講師でー。」と直訴(?)したことから始まったものです。当時はまさか本になるとは思ってもいませんでした。どうりでみんなきわどい発言が多いなあ。

 

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