Global Entrepreneurship Week、若い起業家の芽を育てるNPO

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Kauffman財団というEntrepreneurshipをテーマに活動している財団があります。]

この財団が11月17~23日、起業家精神の理解と行動をグローバルに進める企画“Global Entrepreneurship Week”が世界の約80ヵ国で展開されました。日本では、本田財団、私も所属する政策大学院大学GRIPSAsia Productivity Organizationなどが中心となって東京と京都の2箇所で開催しました。東京開催の前日が本田賞の授与式でした。会議の公用語は全部英語。

まずはGRIPSで講演会、次いで“エレベーターピッチ”という「エレベーターの中で出会ったエンジェル投資家に自分のアイデア、企画を30秒で売り込む」という企画がありました。ビデオを見て40近い企画応募から3つが選ばれ、3人一組のプレゼンがありました。Asia Pacific University秋田国際教養大学チームが勝ちました。秋田からの参加者3人はみな女性で日本人学生はいなかったようです。この2校は日本では例外的に本格的な国際化をしている大学です。

APU学部学生、約5,000人の約50%が留学生で、授業の半分は英語。

秋田国際大学の生徒の入学時の偏差値は「80」を超えているそうです。ここは本格的リベラルアーツの小さな大学で、1年目は全員が寮生活、1年間は海外の大学へ留学、入れ替わりで交換留学生が来ているのでキャンパスにいる学生の約40%が海外からの生徒。選択科目の日本語やフランス語などの授業は別ですが、授業は原則全て英語です。

京都では立命館大学で開催されました。ここでも参加した講師は素晴らしく元気があって楽しかったですね。

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写真 京都大学の会場、子供起業家も

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翌日は学園祭の最中だった京都大学の時計台で、NPO法人アントレプレナー開発センターが主催する小学生も参加した、実践的な地域のエコを目指すビジネスのプレゼンとブース出展がありました。この日は全部日本語です。プログラムの雰囲気はイベントのWebサイトで見ることができます。なかなか楽しかったですし、子供たちも学生さんも、皆さんユニークで、面白いことを考えています。企業がちょっと手を貸すと、スルスルと育ちそうなものもあります。すばらしい教育であり、経験だと思います。皆さんで応援しましょう。

主宰する原田きくこさん、がんばっています。皆さんも応援してください。賛助会員、企業からの支援もお願いします。一度、このNPOのWebサイトをたずねてください。子供たち、元気でいいですね。

「ものづくり」から「ものがたり」へ

最近、“「ものづくり」から「ものがたり」へ”といったテーマで発信しています。結構、ご存知の方も増えてきているようです(参考: 1 2 )。うれしいですね。このブログでも繰り返し取り上げているテーマでもあります(参考: 1 2 3 )。

日本の強みは「ものづくり」なんて言ってもダメなのです。一番大事なことは「ものがたり(Story-telling)」。人の心を掴み、「感動」させること。「ものづくり」はその中の一部なのです。

Harvard Business Review(日本語版)の「Opinion」欄をご存知ですか。機会を頂き、今年最後となる12月号に「ものづくり」について書かせていただきました。

 「ものづくり」から「ものがたり」へ
 (Harvard Business Review 日本語版 2008年12月号)

思いがけない偶然があ.ったのですが、これについては読んでみてのお楽しみ。

Summit on the Global Agenda、ドバイから-2

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9日、朝早くから会議場のテラスで、日本からの参加者と朝食をとりながら会議(写真1~4)。日本からの参加者のほぼ全員でしたが誰かわかりますか?

写真1~4: 日本からの参加者の会議

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その後はBrain stormingの続きとまとめのセッション。前日から引き続き、8つのテーマにまとめ、各6分程度でプレゼンするというものです。是非このBBCのNick Gowingが司会するセッションをwebcastで見て、聞いてください。皆さん、時間と競争しながらまとめ、話すのはなかなか見事です。

会議終了後は、ホテルでひと休みした後、世界で一番高い建物になる建築中のBurj DubaiのすぐそばにできたばかりのDubai Mallに足を運びました。SONY、Canon、Panasonicなどの日本のflagshipが見える中、本屋の紀伊国屋が出ています。中には大きな水族館がありここの壁の厚さは75cmとか。もちろんこんなものを作れるのは日本の企業、日プラです。

写真5~10: Dubai Mall

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今回の会議参加者は400人ほどでしょうか、いつもより多くの日本の方が参加しました。金融危機、経済低迷をきっかけに世界は新しいパラダイムへの移行をうかがわせる大混乱のときに、このような会議で日本のプレゼンスが上がることはいいことです。しかし、全体として、金融、経済の不確実なタイミングになったので、政治、ビジネスなど実務関係者は欠席が多かったと見えます。日本を含めて学者や「独立系」が比較的多かったというのが私の直感でした。金融関係者はもちろんダメです。

夜は波多野大使たちとレストラン、鄭和 Zheng He参考:この人がコロンブスに先立つこと50年余も前にアメリカ大陸を発見したという説があります)で食事。

「鄭和」でのディナーの写真です。

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10日の午前2時45分、ドバイ空港を発ち、関空経由で10日の夜に帰京しました。

Summit on the Global Agenda、ドバイから-1

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ロンドンから6時間半のフライト。ちょっと寝不足で11月8日の朝、ドバイ空港に到着しました。ホテルJumeirah Al Qasrにcheck-inして、早々に会場へ。World Economic Forum主催の第1回「Summit on the Global Agenda」 と銘打った壮大なBrain-Stormingです。サイトを見ていただければわかりますが、8つの大きなテーマが更に68のサブテーマに分かれていて、3時間ほど議論の連続でした。私は「Innvation」と「Global Health」のメンバーです。ほぼ集中して「Innovation」のセッションに参加しました。10月に行われた京都のSTS Forum、そして今年1月のダボスでも一緒だったJohn Gageさんともこのセッションでご一緒しました。つい先日紹介したIEDOのTim Brownさんも「Design」のセッションに参加されていて、今年5回目となる遭遇でした。その他にも多くの方たちとの再会がありました。議論と集中力、なかなか疲れるセッションです。会議に参加された石倉洋子さんのblogの4報( 1、 2、 3、 4、)を見ると、この“疲れる”感じがわかるかも知れません。

夜はバスで40分ほどいった砂漠でレセプションがありました。いくつか写真を紹介します。

Dsc00288写真1: 東大の小宮山総長(日帰りだそうです)、田中明彦さん伊藤元重さん秋山弘子さん

Dsc00290写真2: 緒方貞子JICA総裁、駐米藤崎大使ご夫妻と

Dsc00295写真3: 騎馬のデモンストレーション

東京、ロンドンとかなり集中した会議の連続でさすがにちょっと疲れました。

しかし、しかし、なのです。JICA総裁の緒方貞子さんは6日にDubaiからAfganistanのKabulへ行き、国際空港ターミナル竣工の式典に、日本総理大臣の代理としてご参加。そしてトンボ帰りでこの会議へのご参加ですから、本当に頭が下がります。そして夜も私たちと同様に砂漠でのレセプションに参加されました。

世界のどこへ行っても緒方さんの周りには人が集まり、緒方さんに対する心からの畏敬と尊敬がありありと見て取れます。

所得格差は死亡格差へ?

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日本でも国内も貧富の差が広がり、人為的事故が数多く報道されます。あまり、明るい将来が描けないのですね。国民の心は不安で、すさんでくるのです。これは家庭に、そして子供に伝わります。悲惨な事件が起こるのも、こうしたことと無関係ではないでしょう。人間は社会的動物です。一人では生きて行けません。

特に何もなければ、みながそれぞれそれなりに生活していくでしょうけど、何か起こった時は弱者が適応できずに犠牲になりやすいのです。この10年、日本での自殺の増加(約30%増、その増加分はほとんどが40代、50代の男性です、なぜでしょうか)、医療崩壊とか、あまりにひどい無責任「失政」年金制度、非正規雇用増加などなど、グローバル世界の変化に対応できない日本の政府、政治の責任です。貧困の犠牲者は増えるでしょう。

医療と教育、これら社会基盤の公的支援不備は、世代を超えて持ち越される社会の不公平であり、大きな社会不安定要因です。

低所得の人たちは身体の具合が悪くても受診を控える傾向があります。自己負担の増加、収入への不安、家庭内の問題などなど、経済成長期で構築された日本の社会制度がうまく機能しないのです。改革していくための政治、政府、社会が機能しないのです。20世紀後半の数十年にわたって出来上がった「政産官」を巻き込んだ既得権者の構造がしっかり構築されてしまっていて、改革がなかなか進まないのです。政治と役所と産業界の連携ががっちり出来上がってしまっているのです。経済成長しているときは社会への富の再分配が「鉄のトライアングル」でそれなりに機能していました。教育、年金、医療制度など、社会に必須な基本的も制度も機能していたのです。この従来からの既得権者たちが、日本を囲む世界環境の変化に対応できないのです。

「低所得の方たちは早く死ぬ」という現象はいくつも報告されています。これが基本的な人権問題ですが、先日2回にわたって報告したロンドンでの会議、WHOのCommission報告書の核になる大きなメッセージです。日本のようなOECD諸国では、この格差などは国内問題であり、政治の問題。ということは、皆さんが選挙で誰を選ぶかにかかっているということです(納得できなくてもこれが民主主義プロセスの基本ですから)。

この経済格差、健康格差、「寿命格差」について、最近の近藤克則先生たちの成績について朝日新聞に記事があり、私のコメントも掲載されています。もちろんスペースの制限で言い足りないところがあります。私たちのシンクタンク、医療政策機構調査でも同じような人々の行動が見られています。

再びロンドンへ-その2

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WHOコミッションの最後の会議ではすばらしい講演やパネルを聞くことができ、また3年間一緒に仕事をしたCommissionersとは最後のフォーマルな会合でした。この報告書は特異な存在で、WHOが社会要因などというある意味常識的にはタテ社会の管轄範囲を超えた特別委員会なので、当然、実行するには時間も、不可能なことも多くあるでしょう。ここからどう進められるか、これが一番のチャレンジになるのです。これは単に始まりなのです。

これからの「Hot, Flat, and Crowded」(Thomas Friedmanの最新作)な未曾有の地球規模のすごい変化が起こる。そして人間社会が適応していかなければ、とんでもないことが起こるに違いありません。すでに不穏な動きはあちらこちらで起こっています。多くの人が故郷を追われ、暴動、衝突、戦争がいたるところで始まっています。問題はアフリカばかりでありません。Pakistan、Palestine、Iraq、Kashmirなどいたるところです。これからもっとひどくなるのではと懸念されます。世界は貧困、水、食料、エネルギー、そして人の動きなどで、いっそう不安定な動きが頻発するでしょう。

オバマさんが大統領になるなどという、1年前でさえ、世界の誰もが予想さえしなかったようなことが起こり、アメリカが国際社会での信頼を取り戻せそうに感じられたのは一つ明るいニュースです。しかし、オバマさんもアメリカに雇用を取り戻すという選挙公約がありますから、初めは世界のことばかり向いているわけにも行かないでしょう。

グローバル世界では、企業、NGOは、国家の枠組みをこえてグローバル化していくでしょう。しかし、民主国家での政治家は、国内の選挙というプロセスで選ばれなくてはならないのですから、基本的にはローカルなのです。

会議で取ったいくつかの写真を掲載しましょう。会議のサイトとともに、webcastも楽しんでください。5月にG8環境大臣会議でお会いしたHilary Ben(写真1、2)、Paul HuntMary Robinson(写真3、4)などのすばらしい講演をwebcastで視聴することができます。私も2日目午後のCafe Conversationに出ています。

Dsc00241写真1: 環境大臣Hilary Benさん

Dsc00275写真2: Ben大臣と(Ben大臣の胸の赤い花はというと、戦没者を偲ぶ日“Poppy Day”なのです、私も胸につけていました。)

Dsc00276写真3: Mary Robinsonさん

Dsc00280写真4: Mary Robinsonと総合司会 BBCのJohn Humphrysさん

2日目の金曜日、最後のセッションを失礼して、夕方4時半に会場を出発。ヒースロー空港からドバイへ向かいました。

G8サミット・グローバルヘルスフォローアップ東京会議

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今年の洞爺湖サミットでは、エネルギー、気候変動、食料高騰、さらに金融危機など、急激に出現した大きな問題がありました。しかし、この難しい時に、日本が結構がんばったのです。特にグローバルヘルスにおける、医療提供制度システムとG8とのフォローアップは世界でも特に評価の高い成果でした。

そのフォローアップ会議が11月3、4日に、東京で、外務省などの協力を得てJCIEの主催で開催されました。WHOのMargaret Chan事務総長(写真1。6月のシアトル以来です)、Gates財団グローバルヘルスのトップ、Dr. Tachi Yamada(3週間前のFusionopolisでも一緒でした)、メキシコの前厚生大臣で今度Harvard University School of Public Healthの学部長に決まったDr. Julio Frenk(こんなこと日本の大学で想像できますか?)、そして、The Lancet編集長のRichard Hortonなど、この分野の世界のトップが集まり、議論しました。5月のTICAD4で発表された「野口英世アフリカ賞受賞」のMiriam Wereさんも来られて、再会をお互いに喜びました。本当に多くの日本そして国際社会の関係者が集結した会議でした。皆さんご苦労様でした。

Rimg00192whodg2008113写真1: 左端からUNFPA Tokyo OfficeのMs. Ikegami、UNFPA事務局次長Dr. Mari Simonen、 私、WHO Director General、Dr. Margaret Chan、Academy for Nursing Studies and Women’s empowerment Research Studies 事務局長 Dr. M Prakasamma。

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写真2・3: パネルタイトルと司会の私。左に外務省の山本さん、イタリアの外務省次年度G8担当官のお二人。

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この会議で、日本の意見、そしてプランを固め、次のG8サミットのホスト国Italyへ引き継ごうという日本政府の意思があるのです。これは前厚生労働副大臣だった武見敬三さん(現在Harvard University School of Public Health のSenior Fellow)が動いてくれています。すばらしいことです。このような役所ばかりでなく、多くのグローバルNGOや市民社会運動団体などが関与しながら進める政治的活動は、日本そしてグローバル世界の大きな社会変化といえます(G8環境大臣会合で行なったスピーチなども見てください)。関係者一同におおいに感謝します。私もパネルに参加(写真2、3)しました。レセプションには中曽根外務大臣がご挨拶にみえました。

夜にもいくつかの予定が入っていて、UCLAのManagement SchoolのOlian学部長と、副学長、卒業生の一人で私の友人、渋沢さん(参考: 1 ) とご一緒(写真4)しました。

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写真4: UCLA Management SchoolのOlian学部長、渋沢さん、後ろは同じくAssistant Dean、Dr. Schakelfordさん。

忙しい一日でした。

野口英世アフリカ賞、私達の伝えたいこと

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野口英世博士は近代日本でも有数の有名な医者でありヒーローです。日本以外ではあまり知られていないのですが、1904年の大学創立時から研究し、後に20世紀初頭にこの新しい研究機関を世に知らしめたロックフェラー大学の図書館には銅像が飾られています。千円札の肖像画にもなっていますね。

日本政府は今年5月に野口英世アフリカ賞を創設し、イギリスのブライアン・グリーンウッド博士とケニアのミリアム・ウェレ博士が受賞し、私の過去のブログにも書いたように、TICAD(第4回アフリカ開発会議)初日の夜である2008年5月28日に授賞式がありました。

そのストーリーが記事になりました。賞に関する詳しい話を読んでいただき、野口先生の精神をアフリカや世界の友人達と共有いただければ幸いです。

グローバルヘルスと日本を考える、「日本内科学会講演」

今年は、東京アフリカ開発会議があり、G8サミットがあり、日本はグローバル世界から注目された1年でした。しかし、これらの大事な会議が終わってまもなく、福田総理が安倍総理と同じように、就任1年で突然退任されました。

今年の春、私は内科学会総会のパネルにお招きを受けました。過去にも何度かこのような機会をいただきましたが、特に今回はグローバル時代を踏まえて、今盛んに論議が湧き起こっている国内の医療問題や政策関連には触れず、外の世界へとを思いをはせていただけるように世界の中の日本という話をしました。他のパネルの方たちが国内の問題に限定した話が中心になることを考えた上のことのです。

聞いていた方たちから、多くのコメント、励ましをいただきました。

この講演の内容が日本内科学会誌に掲載されましたので紹介します。

 「グローバル世界と日本の課題」(PDFをダウンロード)

ワタミの渡邉美樹社長、教育、そして農業特区

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「和民」の社長の渡邉美樹さんは、すばらしい情熱と夢を実現していく熱血漢、起業家、経営者です。いくつもの本も出版されているので、amazonで調べてください。教育を大事に考えておられて、日本ではいうまでもないのですが、カンボジア(最近ではネパールも)でも多くの子供の教育支援など、ご自分でできる活動をどんどん展開しています。本当に立派なことです。

原油の値段が上がり(今は、一時的にちょっと落ち着いていますが・・・さて、いずれはどこまで?)、ただでさえ世界的に食料が不足していて(さらに気候変動、水不足などで、悪化する様相)、現在でも毎年数百万の人たちが飢え死にしている現状(「2C+3F」:-Climate Change and Fuel, Food, Feed-ともいわれますが・・・) は決してよくなるとはいえないのです。日本の農業技術はすばらしいのですから、長期的は視点でこれを成長産業に育成すべきと考えています。いくつもの世界的なブランドもできるでしょう。もちろん、食料の自給率も向上します。さらに、食用以外の部分で再生可能エネルギー源としても大きな可能性があり、研究開発は世界的な競争になっています。

私も機会を捉えて発言しています。今年5月には加藤紘一さんが座長で、茂木幹事長、さらに農林水産大臣もされた谷津議員も出席された自民党の委員会でも、農業政策について話す機会がありました。

渡邉さんは農業特区(実は使いにくいのです、なぜでしょうか)も使っておられるので話しを伺いたいと思っていたところ、渡邉さんが機会を作って下さり、1ページほどに短縮した対談も出ることになっています。対談の様子の一部は、渡邉さんのBlogにも出ています。

 「農業の今、そして未来」  (「ecocolo」 10月20日掲載)