「知の鎖国:外国人を排除する日本の知識人産業」と、科学研究関係の「事業仕分け」

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この刺激的タイトルの本 は、米国で日本について学び (Princeton大学、 Harvard大学PhD)、日本で大学教授を含めて20数年(特派員、文化外交官、学習院大学等で教授など)を過ごした「知日家」の第1人者の1人、Ivan Hallさん の1998年の著書 「Cartels of the Mind: Japan’s Intellectual Closed Shop」 の邦訳です。以下のような構成です。

はじめに; 「ふつうの国」- ただし外国の知識人は受けつけない
第1章; 法律家の上陸- 弁護士がとりつく狭い橋頭堡
第2章; 隔離される報道陣- 外国人特派員
第3章; 学問の府のアパルトヘイト- 外面だけの大学教授
第4章; 通り過ぎていく人たち- 科学者と留学生
第5章; 操作された対話- 批評家に対する脅し
結論; 目を覚まして、日の光を浴びよう

内容も、それぞれに事実であり、鋭い指摘もその通りだと思います。Hallさんとのインタビューこの本の書評 (資料1(amazon.co.jp日本語)2 (Amazon.com))もあります。3年前にも来日して講演 (資料 (有道出人さんのブログより)) しておられます。

これらのHallさんの主張は私が従来から指摘 (資料)しているところです。日本でも「知的レベル」の高い人たちが、大学の先生たちが「鎖国マインド」(資料1) ですから、これでは大学も刺激的でないし、将来を担う学生にも間違った将来像を見せていることになります。このような大学から卒業してくる多くの人たちの社会では、さらに鎖国マインド傾向広がるのです。何とかして欲しいですね。これで日本の将来はいいのでしょうか?大学の先生たち、しっかりしてください。

この本の趣旨は、もう一人の知日家ジャーナリストのカレル・ヴァン ウォルフレンさんの一連の本「日本 権力構造の謎」、「人間を幸福にしない日本というシステム」などを通した分析、主張と同様と私は認識しています。

民主党政権になって、最近「事業仕分け」という極めてオープンで、単純明快なプロセスが話題になりました。以前の中国の「文化大革命」みたいですね。これには学者の世界からのノーベル賞受賞者、大学学長等々の大きな不満と批判がありましたが、一般的には政策のプロセスを国民が理解して点では評価されているようです。何が目的なのか、時間が短いとかの批判はありますし、科学技術に関してはSupercomputerをはじめとして、大型の研究のあり方も一つの話題になりました。どんなものでしょうね。

大型の研究では、計画の時点から海外の専門家も入れて検討すべきですし、大型施設への参加ももっと世界へ開かれたものにして人材育成の材料 (資料1)、の一つとして位置付けるなどすべきと思います。日本の産業基盤に関わるから日本人だけでとか、特許が盗まれるとか、2次的なうわべの言い訳をならべるのですね。世界を変えるような発想 (資料1)は誰から、どこから出てくるのか、もっと考えたほうがいいです。知恵とお金の出し方をもっと考えたほうがいいのです。政策のプロセスが開かれたことはいいことです。

いつもながら、科学者も「鎖国マインド」ですね。

「戦略シフト」

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私の友人、石倉洋子さんの最新書「戦略シフト」については以前にも触れましたが、本書はビジネスリーダーの方々にとって必読書であると思いビジネスマン向けの週刊誌「週刊ダイアモンド」に書評を書きました。ご一読いただければ幸いです。

Global Agenda Council

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GEWから関空経由で早朝のDubaiに到着。World Economic Forum主催の「Global Agenda Council」(GAC),(資料1)に1日遅れで参加です。

空港から去年と同じJumeirah Al Qasr Hotel にcheck-in、シャワーを浴びて、早々に会場へ。GACには去年も参加 (資料1)しました。

世界の多彩なリーダーの参加する一種の「Brain Storming」を通したAgenda設定のプロセスは、ますますフラット化していくグローバル時代にあっては、次第に大事な意味を持ってくると思います。さらに、いろいろなCouncil自体に参加することは、とてもintenseで疲れますが、意見交換を通していろいろ学べ、啓発され、大いに刺激的です。

しかし、Future of Japan (FoJ; 竹中さんと私が委員長、今回のDubaiは竹中さん出席できず) はとても疲れました。東京で竹中平蔵さん、石倉洋子さんたち何人かと案を練っておいたのですが、朝の会合で相当に変化し、筋書きが変わり、書き直し。1月のDavosへのagendaにするべく知恵を絞りました。

その後は皆さん個々にとても忙しくCouncilに。私はInnovationなどのセッションに。さらに、FoJとFuture of China, Future of Koreaとの合同セッションもあり、この司会も石倉さんにお願い、なんと言ってもとても上手ですから。この合同委員会でも多くの皆さんが、お互いにDavosをはじめとするWEFが開催する会議で顔なじみです。

いくつもの写真も見れます

夕方、再度FoJ会議の再開。AflacのCharles LakeさんBCGの御立さん たちと事務局の土屋さん(石倉さんは、無理もないのですが、とてもお疲れ)たちが精力的に3時間ほどかけてようやく新しい原案が出来上ありました。石倉さんには1日中ずいぶん負担をかけてしまいました。皆さんのおかげですが、このプロセスをもっと工夫する必要があります。大いに反省です。

すっかり疲れて、これも去年と同じレストラン「鄭和 Zheng He」で皆さんのご苦労をねぎらいながら食事。これは楽しかったです。

翌日は、いくつかの総合討論セッションに参加、楽しかったですね。2時半頃に会議は終わりました。

西山田中わたし田村近藤さん写真1  Marco Poloi in JAL Hotel 写真2

写真1; FujairahのJAL Hotelのロビーで。左から西山さん、田中さん、私、多村さん、近藤さん

写真2; FujairahのJAL HotelのレストランMarco Poloで

翌朝Dubai空港0345出発まで時間があるので、いつもお付き合いしていただいている東大の田中明彦さん(2日前にお会いしたばかり、国際担当の副学長)、慶応義塾の田村治朗さん交渉学で第1人者の一人。Harvard Law School, Program on NegotiationDaniel Shapiro と一緒に仕事をしています。-若いけどとても切れる、いい人です)、空想空間(これがスゴイ会社)を立ち上げ活動する西山浩平さん、医療政策機構を引っ張る近藤Jamesさんの5人で車をチャーター。アラブ首長国連邦を形成する7つの首長国の1つ、ペルシャ湾ホルムズ海峡の要所に位置する軍事的にも大事な場所 Fujairahへ出かけました。

片道、約2時間の行程、町はあまり活気がありませんが、砂漠から砂漠の中の岩山を抜けて、夕暮れの海岸へ、石油基地など、そして古いモスクなどを尋ねました。なかなか立派なJAL Hotel があり、そこで夕食。皆さん1人ひとりの意外な面(政治学の田中さんが30年来のAppleオタクであるとか、iPhoneの中身がスゴイとか)を知ることもできて楽しい時間をすごしました。

夜中に空港に到着。ロビーで何人かの日本からの参加の方たちとお会いし、帰国の途に着きました。皆さん、お疲れさまでした。

GEW-2: メインイベント-グローバルに活躍する起業家

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GEWの今回の特別企画とも言うべきイヴェントが20日にGRIPSで開催されました。

気候変動についてCopenhagenでの「COP15」開催を3週間後に控え、さらに日本では新政権で「2020年までにCO2排出マイナス25%」という画期的目標を掲げたことを受け、さらにObama米国大統領訪日の1週間後というタイミングでの企画です。プログラムを見ていただければ、目的は明確と思います。

まず、開会は駐日Denmark大使による「京都からCopenhagenへ; Copenhagenのスマートな取り組み」というとても素晴らしい講演。日本への期待と強烈なメッセージがありました。

米倉誠一郎先生の司会によるパネルのあと、Dr Gunter Pauli によるまったく発想を違えたこれも素敵な新産業のあり方と理論と実例を示しながらのいつもながらの素晴らしい講演。

昼はHillary Clinton米国国務長官のビデオメッセージに続いて駐日Roos米国大使とNHKの道傳愛子さんとの「Entrepreneurship」をめぐる会話、そして菅 直人副総理からのビデオメッセージです。

内容の一部は「Japan Times」に掲載、また米国大使館ウェブサイトの11月24日付けで報告されています。

午後の3つのセッションでは、特に「日本についての外国人起業家の見解」が、参加者の皆さんにとっても新鮮な見方も多く、とても面白かったと思いました。日本をよく知り、しかもかなり違った見方は、「Japan Times」 が取りあげているように、多くの日本の方にとってはとても刺激的だったと思います。日本人には、このような違いを直感的に感じとる能力が欠けて(資料1)います。これこそが、グローバル時代のイノベーションにとても大事な「異質」、「多様性」の基本なのです。大相撲のもと大関、「小錦Konishiki」さんがおられたので、私も持論の「大学の大相撲化」 (資料1)についてコメントしました。

最後は駐日Norway大使によるRhapsody in Green」という素敵な講演でした。でも、私はドバイDubaiに行くためにこの講演の途中で失礼し、会場を後にし、羽田空港に向かいました。

ところで、このblog の「GEW-1」、「GEW-2」で紹介するGRIPSの16日、20日のプログラムの1部は いずれ日経新聞に出る予定ですので、そのときにまた報告します。楽しみにしていてください。

GEW -1: 「Entrepreneur = Change Agent」

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Global Entrepreneurship Week (GEW) は、英国Brown首相の提案で始まり、Kauffman財団が推進する、この時期に世界で同時に開催しながら世界にEntrepreneurshipを広げようというものです。Entrepreneurshipこそがイノベーションを起こす原動力ですから、私も協力しています。去年から本格的になり77カ国で開催、本田財団、GRIPSなどが核になって、日経などいくつかの団体などの支援、協力をえながら、多くの方たちとお手伝いしていますが、今年は88カ国が参加とか。11月16-23日の週とその前後にいろいろな企画が開催されました。

16日、GRIPSでのプログラムは私の基調講演「Entrepreneur = Change Agent」 (上の写真)で始まりました。私の言いたいことは、「Entrepreneurship」は日本にも昔からある行動様式のはず、ではそれに相当する日本語もあるはず、それは「進取の気性」だと。これは「シリコンバレー精神」などを書いている梅田望夫さんが考え出したことですが、まさにその通りと思います。ですから「Entrepreneur = Change Agent」とは:

「進取の気性に溢れる人」 = 「変革者」

これが私のGEW基調講演のメッセージ、ということです。なにもビジネス「起業」する人たちだけではなく、社会やすべての組織で「進取の気性に溢れる人」たちこそが、変革を起こすのだ、ということです。企業、政治、大学、政府、どこでも同じことです。前例にこだわり、できない理由がまず頭に浮かんでくる人は、「進取の気性」の対極にある人たちです。これは歴史的にもいつも正しいのです。

最近の日本は、何故か社会のどこかしこに「進取の気性があふれている感じがしない」ということです。概略が片貝さんのblog にも出ていました。

大企業でも、政府でも、大学でも、組織の多くの人たちに「進取の気性」を植え付け、そのような環境つくりこそが経営者、トップに求められるのです。「進取の気性に溢れる人」が多い、「進取の気性に溢れる組織」、「進取の気性に溢れる社会」、これらがイノベーションを生み出す組織、企業、地域なのです。そして「進取の気性に溢れる国」になれるのです。この100年でも、優良企業といわれているのは常にそのようなものです。どんどん変化する、だから環境の変化に対応できるのです。

10年前に企業のトップだった人の名前を何人挙げられますか?つまり記憶に残るようなトップということですが。なぜ名前を覚えているのでしょうか?これは最近のThe Economistに出ていた記事ですが、特にこの難しい時代にイノベーションを起こす企業リーダーの本質を突いているのでしょうね。

基調講演の後、近くのカナダ大使館へ駆けつけ、この日から2日間にわたって開催される、日本カナダ通商80周年の事業の一つとして開催する「GRIPS- Toronto大学」主催のイノベーションに関するシンポジウムの第1日目へ。そして昼にはGRIPSへとんぼ返り。

GRIPS昼のセッションは石倉洋子さん司会の「デザイン」がテーマで2人のデザイン界の「巨人」、坂井直樹さん奥山清行さんの対談パネル。イノベーションというと「技術革新」などと誤解する傾向の多い、「ものづくり」信仰と技術志向の強い日本の方たちにはとても刺激的なセッションだったと思います。

続いて、この11月19日がPeter Druckerの生誕100年を記念して、野中郁次郎先生の講演があり、その後のプログラムへと進みました。現代史的にもDruckerは特別の存在のようですね。私は、ここからまたカナダ大使館へ戻り、パネルへ。

夜は、GRIPSでのGEW、Canada大使館、そしてUCLA日本同窓会総会の掛け持ち。あわただしい一日でした。

APEC Business Summit、Lee Kwan Yewの対話

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IMG_1968 top Chaingi空港

Singaporeから帰国た11月6日から1週間、いろいろ講演や会議などで忙しく過ごした後、12日はAPECの一部であるCEO Summit へお招きを受け再びSingaporeへとんぼ返り。おおくの企業が参加して盛会でした。プログラムはウェブでご覧になれば分かりますが、多くの参加国政府首脳の講演、パネルなどがあり、とてもいい会議でした。政府間の公式会議は別に開催されているわけですが。Obama大統領の来訪が遅れたので間に合わなかったのは残念でした。講演のヴィデオ、要旨 (資料1)なども見れます。

テーマはなんと言っても経済の現状と各国の政策が中心です。首脳の講演で強いメッセージ(ビデオを見て、聞いて、あなたの評価は?)があり、特によかったのはタイ、マレーシア、韓国などでしょうか。勿論、中国の胡 錦濤さん は、現在の世界の経済を引っ張るエンジンですから講演には力があります。鳩山さんは2日間の会議の最後でしっかりと話されました。来年は日本がホスト国、次は米国ですから、これから1年間、しっかりと2年先を見据えた「グローバル時代の日本」への変化CHANGEの旗を高く掲げ、アジェンダをしっかり構築し、実行して欲しいところです。

IMG_1952 Hatoyama 講演する鳩山首相

パネルでもSovereign Wealth Fundのパネル(Norwayは世界第2のサイズで、投資先選択もクリーン、グリーン度に座標軸をおき、定評があります)。米国商工大臣もなかなかよかったです。勿論、このBusiness Summitでも日本企業が強い力を示して欲しいところですが、日本からの企業トップ参加者は少なく目立ちませんでしたが、楽天の三木谷さんがパネルでなかなか力強い話しをしました。この会議のサイトでいろいろ楽しんでください。

この2日で皆さんに一番の感動を与えたのは、13日の最後のパネル、Singaporeを建国からここまでひっぱってきたLee Kwan Yew前首相(Minister Mentorという肩書きです)の対話でしょう。86歳ですが、かくしゃくとしておられ、その思想も、世界情勢の把握と認識も、将来へのお考えも圧倒的に素晴らしいものでした。私も、とても感動しました。10日ほど前にWhite HouseでObama大統領と会談しています。司会者のこの会談にふれたイントロから、もっぱら対話、会場からの質問にも実に上手く答えるのです。Singaporeの大臣はじめ政府高官にもお会いしましたが、皆さんLee Kwan Yew氏と仕事をしてきたわけですが、「Minister Mentorのような人は世界にも滅多にいないよ」、と親しみと尊敬のこもった返事が返ってきます。会場でお会いした日本の若い起業家社長も「鳥肌が立つようだった」といっていました。

立派なリーダーをもつ国はそれだけのことがあります。多くの有能な人たちを育てているのです。これは政治に限らず、大学、企業、また役所でも同じことです。今の日本社会にあって、特に社会的に高い立場の人たちは、一人ひとりが自分の立場で、自分は何をしているのか、それでいいのか、これを客観的に、冷静に見つめてみることは大事です、「できない理由」 は言わないことです。特に急速に変化しているグローバル時代に何をするのか、これですね。

このような機会にお招きいただいたSingapore政府に大感謝です。

毎日が活動日

Ottawaに始まり、Singaporeで終わった12日間の「世界一周」、会議の連続から帰国しました。

早朝に成田に着いた午後は「日本-スペイン」の科学技術政策についての元宇宙飛行士、科学未来館館長の毛利さん 司会のパネルに出席、久しぶりにスペインの方たちとの対話で楽しめました。六本木の国際文化会館です。

夕方からNature主催のMentorship Award の選考会。今年は日本の番なのです。

さらに翌日の土曜日は同じく国際文化会館で「新渡戸国際塾」第1期塾生主催による「今、どう動くか:現代日本の突破口を探る」 に参加。参加者は若い人たちが大部分で、パネリスト川崎さん長さん井上さん、と私、皆さん日本の常識から見れば「変人」ですが、「グローバル」。これが大事なのです。なかなか活気のある議論が展開されました。すばらしかったです。

後日の話もいろいろ (資料) あります。

翌日は日曜日、五井平和賞の受賞式へ。去年はBill Gates、今年はDr Bruce Lipton。トークセッションも面白かったし、特に「若者が描く科学の未来」の2人の受賞者、Indonesiaからの若者と、AfghanistanからのYale大学医学部で学ぶ若者が、休みのときは祖国の首都Kabulの学校で教えている姿が素晴らしかったです。Afghanistanは今のグローバル世界の一番の不安定要素ですが、このような活動が中長期的に見れば、未来を構築する数少ない可能性と思います。素晴らしい若者たちです。

Singaporeにて、Asia Health Forum

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Abu Dhabi から Dubai空港を経由してSingaporeに飛びました。Singapore政府EDB (Economic Development Forum) 主催のAsia Health Forumに出席するためです。計画立案を討議するセッションに参加しました。会場はSentosa島の美しいCapella Hotelでした。

Forumのメンバーは医学、薬学、公衆衛生学の分野で世界をリードする専門家約15名とMcKinsey(著名なコンサルティング会社)チームでした。セッションは一日で、Singaporeの厚生大臣 Dr Khawによる歓迎の挨拶の後、大臣も交えて約40分間のディスカッションでした。 Khaw大臣はSingaporeの医療政策の基本理念やユニークな歴史を理解している上に、現在の医療政策の細かい現状と問題点を把握しています。問題点があるといっても、現在Singaporeの医療サービスはGDPのたった4%であるにも拘わらず、その質は世界最高との評価を得ています。

会議を充分楽しんだ後、夜遅いフライトで日本へ。Ottawaから始まった12日間の世界一周の旅を終えました。

 

Torontoからー2、ガードナー財団Global Healthシンポジウム

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ガードナー賞50周年記念の今回、特筆すべき新企画はGlobal Health賞の創設です。グローバルな現代においてグローバルヘルスは重要かつ緊急な課題ですから、この賞は大変タイムリーであると言えるでしょう。初の受賞者はDr Nubia Munoz で、子宮頸がんの原因パピローマウィルスの同定とワクチンの効果に関する世界規模の疫学研究が評価されました。

10月28日の午後、Dr. Munozを主賓に迎えてトロント大学Dalla Lana School of Public Health でガードナー Global Health シンポジウムが開催されました。私は最初のセッション(セッションは2つ)でモデレーターを務めましたが、パネリストはEmory大学、Dr.Jeffrey Koplan 、 Gates 財団、Dr. Tachi Yamada、Wellcome Truse、Dr. Mark Walport、Toronto大学、Dr. Peter Singer  (資料1)というグローバルヘルスの頼もしい4人組でした。パワー溢れるこのセッションを司会するのはとても面白かったです。満席の会場からも熱気を感じました。

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写真1-4:レセプション。写真1;Dr Oliver Smithie (ユーモア溢れるスピーチはいかにも彼らしかったです);写真2;Gairdner Wightman 賞を受賞されたMcMaster大学Dr.David Sackett (左)-臨床疫学とEBMで知られています、とJohn Dirks (ガードナー財団の理事)、写真3;小川先生ご夫妻、山中先生と私;写真4;小川先生、森先生と私

夜のレセプションはトロント大学のMaRSで開かれました。多くの友人、過去のガードナー賞受賞者、今年の受賞者が来られて大変楽しいひと時でした。日本からは小川誠二先生森和俊先生山中伸弥先生の3名の受賞者が出席されました。

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写真:Dr. Blackburnと共に

沢山のゲストに混ざって今年度ノーベル医学生理学賞を受賞されたDr Elizabeth Blackburn(受賞理由はテロメラーゼの発見)と、彼女の元教え子で共同受賞者(三人)の一人Dr. Carol Greiderもお見かけしました。Dr. Blackburnもガードナー賞の受賞者であられますが、L’Oreal女性科学者賞を10周年記念の年に表彰されていて、私は当時、審査委員の一人に加わるという名誉に与かっています。

今日は実に素晴らしい、刺激に満ちた一日でした。本当に光栄で稀有な体験でした。

オタワでグローバルヘルス、トロントでイノベーション

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カナダは来年G8サミット(おそらく最後のG8で最初のG20となるでしょう)の主催国となります。当然のことながら、グローバルヘルスをサミットでの主要な議題とするために、カナダの様々な分野でいろいろな努力が重ねられ、交渉や準備がなされてきたことでしょう。

CCGHRもその一環としてある会議を開催しました(10月25日)。この会議はどちらかといえばリサーチに重点を置いていて、出席した会員約150名のうち25%は海外の方々でしたが、私はここで基調講演に招待されました。大変な熱気で、私もいくつかのワークショップに参加、役員会にはゲストとして出席、G8の議題についてカナダの視点から協議する内輪のセッションにも出席しました。大変有意義で学ぶことも多く、沢山の新しい友人や仲間との出会いにも恵まれた一日でした。

10月の終わり頃のオタワはそれなりに寒いですが、天気は良かったです。ここで、1人の女性の日本人研究者にお会いしました。McMaster大学で学部教育を受け、McGill大学で疫学、生物統計学、産業衛生学の修士号、博士号を取得された方です。彼女は小さいときにほんの数年を日本で過ごし、現在は南アフリカで、アフリカにおけるメンタルヘルスと貧困に関するイギリスとの共同プロジェクトにポスドク・フェローとして参加し、勉強しています。やりがいのあるミッションですね!

次の日はトロントを再訪し資料1)、いくつかの仕事をしました。トロント大学のMunk Center では私のための夕食会をMassey College で開催して下さいました。

その翌日はMunk Centerで「イノベーション、グローバリゼーションと大学」と題するパネルがあり、私の手短な基調講演の後、活発で建設的なパネルセッションが行われました。今後ますます相互依存を強める世界において、一流大学は将来のリーダー達を育成し、彼らをコネクトし、将来の課題に備えさせるための開かれた場にならなければいけないという点では皆さんの意見が一致しているように思いました。現在のグローバルな国際社会では途上国及び低開発国が抱える諸問題やその地域は彼らだけのものではなく私たちのものでもあるのだということを認識しなければなりません。ここでも、日本の女性放射線医師に出会いました。彼女は東京女子医大の出身で、Massey Collegeのresident junior fellowとして医学教育研究の勉強を始めたばかりだそうです。このような経験は彼女のキャリアにおいて広い視野や考え方を身につける貴重な機会ですね。トロント大学は多民族性、多様性、カリキュラムや講義の幅広さで知られる素晴らしい大学ですから。