Safecast、新しい時代の放射能調査のあり方

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福島原発の事故以来、放射能のモニター、日本政府の公式発表などについては、“予測していなかった”事故とはいえ、世界からもその信頼性についていろいろ批判され、懸念されているところです。

事故の1週間後には放射能の測定を開始し、「勝手連的」に広く地元の人たちと情報共有しながら活動してきた一つに「Safecast」があります。先日、このblogでも触れたところです。

はじめは自分たちで測定器も作り上げ、測定値の正確性をチェックし、データをすぐにオープンにするという、素晴らしい発想と技術。透明性と公開性こそが信頼の基本と、すぐに活動を始めているのです。

世界の状況を反映するかのように、この測定器の作り方やWebへ掲載するところまで、どんどん自動化され、誰にでもできるので、世界に広く広がり始めているのです。

さらに素晴らしいことに、最近IAEAにも招かれ、この時代の流れを表すようにSafecastが高く評価されたのです。

その経過や様子などの報告については、以下の2つのサイトに目を通してください。
→ http://atomicreporters.com/2014/02/22/hans-brinker-the-iaea/
→ http://blog.safecast.org/2014/02/safecasting-the-iaea/

“No wonder Safecast has a following at the IAEA. Two random guys in Japan became more widely trusted by many than 60-years of UN-agency authority.”と、この“Atomic Reporter”レポートにあります。

ちょっと長いかもしれませんが、その時のIAEAの様子などがわかりやすいので、読んでみ
ることをお勧めします。IAEAの内部でも、多くのSafecastファンができたようです。

今のようなネットとハイテクの広がる時代の世界では、私が繰り返して主張している、「独立性、透明性、科学性、国際性」こそが信頼の根幹であることの証拠です。国会事故調も、その精神が基本でした。

では、日本政府や東京電力、行政、企業、メディア、大学等々、既存の組織の在り方、公開性、透明性、国際性などは、どんなものでしょうか?

このSafecastには、いろいろな形で参加も、応援もできます。自分たちで放射能測定器を組み立てる、それを使って測定に参加するとか。

Safecastの活動は、日本中に、そして世界にも広がっているのです。

坂茂さん、Pritzker受賞おめでとう

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坂茂(ばんしげる)さん。世界的に活躍する建築家。さらに災害支援などで人間愛を、世界中で実践する素晴らしい人。

Pritzker賞 受賞、おめでとう。

坂さんとは10年来の友人で、ブログでも何度か紹介しています。しかも私と同じ成蹊学園の卒業生。この成蹊学園の図書館も社会からも注目されている図書館で、これも彼の設計です。

はじめて会ったのは、確か2002年にNew York Cityで開催されたWorld Economic Forumだった思います。この年だけが、ダボス以外で開催された唯一のWorld Economic Forumです。前年の「9.11」の追悼の気持ちを込めた会議でした。一番記憶に残っているのは、私も参加した「科学者と各宗教のリーダー」との昼食形式の討論セッションでした。

坂さんは2013年のTEDxTokyoに出てくれました。このプレゼンにこそ、彼の思想がよくあらわれています。是非、見てください。

ある時のこと、彼に相談事があったので、数ヵ月先の予定を聞いたことがあります。返事は、なんと「1ヵ月以上先の予定はなにも入れていません。どんな事故が起こり、どこに行くことになるかわからないので...」ということでした。

若い人たちをまとめながら、L’Aquilaの地震、Christchurchの地震、Haitiへ、東北へ、紙を使った素晴らしい建築物を残しながら、世界を回り続けています。

でも私が最も感動したのは実にユニークな移動展示会場のNomadic Museum、そしてその展示物「Ashes and Snow」です。また、銀座にあるSwatchのランドマーク、NG Hayek Centerもユニークで、おしゃれで、素敵です。

世界の坂さん、おめでとう。とても嬉しい。

「原子力の安全」:米国GAO報告書と国会事故調報告書

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民主制度では「三権分立」が基本であり、政府(行政府)の仕事をチェックする独立した機構とその機能は大変大事なプロセスです。

米国ではGAO(Government Accountability Office)という機関があります。これは立法府の議会のもとにあり、2004年まではGeneral Accounting Office(日本では「会計検査院」)でしたが、2004年に「General Accountability Office」と改名しています。この GAOが議会-立法府-のもとにあり、行政府のチェック機構になっています。

つい最近のことですが、GAOから“Nuclear Safety:Countries’ Regulatory Bodies Have Made Changes in Response to the Fukushima Daiichi Accident”という報告書が出ました。この中で国会事故調の報告書が6、7回引用されています。

日本の統治機構の改革に、「憲政史上初」である国会事故調がお役に立つと思うと、私たちチームはとてもうれしいです。従来の日本の統治機構の脆弱さを見せたのが国会事故調だったのです。いうなれば、患者さんの「全身CTスキャン」で、からだの内部の問題を見つけてあげたのです。どうする?と患者さんに問いかけているのだと言えるでしょう。だから、海外からも高く評価されているのだと思います。

ところで国会事故調で「日本の文化」、「マインドセット」という言葉を使ったので、結構批判されました。しかし、このGAO報告書もそうですが、さらにIAEAでは、4月8日-11日に「Workshop on Global Safety Culture – National Factors Relevant to Safety Culture」を開催されます。福島の事故を受けての企画ですが、このような切り口からの会議は初めてということです。

私には日本政府等からも、IAEAからも、連絡もお招きも受けませんでした。なぜでしょうね。私は海外の専門家から、この会議の件を知らされました。

2012年にも同じようなことがありました。なぜなのか、考えてください。

3年を迎えた3月11日

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このところご無沙汰ばかりですが、申し訳ありません。

今日は書かないといけないですね。多くの人々がとんでもない被害を受け、受け続けている3年前の「3.11」東北大震災と福島原子力発電所の大事故。そしてこの大事故をきかっけに、日本の憲政史上初の国会による「独立した福島原発事故調査委員会」が始まり、報告書が国会の両院議長に提出されて1年8ヵ月が経過しました。私はこの「国会事故調」の委員長でした。

その間にも国内外で大きな変化が起こっています。シリア、ウクライナなどなど、急変する世界の状況です。日本の状況は、あれだけのことが起こっても、基本的にはほとんど何も変わらない「政産官」の状況と世界では思われている「フシ」があります。アベノミックスは例外的ですが。

昨日の10日は午後からプレスセンターで、報道関係の方が多いのですが、事故当時の米国原子力規制委員会委員長だったG. Jaczkoさん、政府の事故調の畑村委員長、いわゆる「民間事故調」の北沢委員長、そして私の4人が参加して2時間ほどの討論会でした。この様子はYouTubeでも見ることができます(日英語が音声の右左で選べます)。

私は、まず6分程度と時間もないので、初めに「わかりやすい国会事故調」の「国会事故調ってなに?」をお見せして、国会の事故調と他の事故調やその他の数多くの報告書、出版物との違いを理解してもらおうとしました。さらにアカウンタビリティーの意味などを説明しました。細部よりは、「大きな民主国家統治の枠組み、変わる世界と日本」を知ってもらいたいと思って討論に参加しました。いろいろな議論がありましたが、皆さんのご意見はいかがでしょうか。

私は、社会的により権限ある人たちの責任感と覚悟を問いかけ、さらに、皆さん一人ひとりが、この事故から何を学び、何を感じとり、何をするのかを問いかけようと考えました。さらに、お集まりの方は主にメディア関係者ですから、その方たちは何を考え、どう行動しているのかを問いかけようと考えたのです。

また、South China Morning Post にインタビュー記事も掲載されました。
1)http://www.scmp.com/news/asia/article/1443158/japanese-investigator-says-lessons-fukushima-disaster-ignored

ここには、「わかりやすい国会事故調」のビデオも紹介されていますね。うれしいことです。

2)Safecastについても私のコメントが入っています。

福島原発の事故とその日本の対応を世界はウォッチしています。何しろ世界には440基ほどの原子力発電所があり、また70基ほどが建設中なのですから。

情報がどこにでも広がるグローバル世界では、国家も、政府も、企業も、メディアも、大学も、透明性は信頼の基本です。失われた信頼を回復するのは容易なことではないのです。

今年の1月

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すっかりご無沙汰です。正月以来です。

1月10日からボストンへ。沖縄科学技術大学院の将来計画の委員会。Boston、New Yorkの方も多いので、このようなことになりました。英国からHuntさんも。前日まで米国中東部は大雪でしたが、10日からは大丈夫でした。

2泊して帰国、翌日から沖縄へ。沖縄科学技術大学院での「オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」に出席。ここで実際に実験もされているデモもあり、なかなかの試みでした。

これからのエネルギー政策の基本は「分散型、ローカルな再生可能エネルギー資源、スマートグリッド、電気使用の見える化とアプリ」へと進むことです。インターネットでは「http – www – iPhone – iPad」というように、21世紀になってネット関係は規制改革、各種のソフトと次々と起こる技術革新によるアクセスの充実とともに急速に進んだように、分散型サービスによって、使い手の意識が変わってくるのです。エネルギーでも政治も企業もどんな組織でも、リーダーは大きな方向性を示すことが大事です。

18日は、恒例の医療政策機構による「医療政策サミット」を主催。企画とパネルの皆さんほか、大勢の方たちの参加があってとても盛り上がった会になりました。

20日の週にはいろいろありましたが、仙台へ。東北大学の長い友人のお葬式で弔辞を奉読させていただきました。ご遺族にも久しぶりにお会いしました。前夜は東北大学にお願いして、東北大学を代表する女性科学者の方たち4人と夕食を楽しみました。

27日の午後は、英国から来ているRoyal Societyの副会長でもあるAnthony Cheethamさんと、英国大使館でHitchins大使、Elizabeth Hogben科学・イノベーション担当部長の4人で午後のお茶。ちょっと優雅な時間を楽しみました。

30日は医療政策機構の今年初めての朝食会。恒例なのですが、新年の挨拶を兼ねて私のセミナーでした

あっという間に1ヵ月が過ぎてしまいました。

仕事始めの2日

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2014年の仕事の始まるまで、長い休みでした。早々から仕事のあった方も多いでしょう。

私は6日には、新年会がいくつか。

7日はもうクレイジー。朝8時前から竹内弘高教授に連れられてきたHarvard Business Schoolの学生さん30人ほどとセミナー。なかなか楽しかったですね。主要テーマは国会事故調とその政治的、国際的な意義などについて、いろいろ議論しました。

午後はいくつもの面談の連続。Professional bilingual(日英)journalistになろうとしている方、Harvard Kennedy Schoolの大学院生の論文のためのインタビュー、彼女の先生からの紹介です。新しい教育プログラムを展開している方。さらに、6月のKuala Lumpurでのアジア学術会議の講演の打ち合わせ等々です。

夜は2つ機会があり、最後はDr. Graham Fleming(Vice Chancellor for Research、UC Berkeley)と数人で、久しぶりに11時半ごろまで過ごしました。

9日にはBostonへ向かいます。

12月、いろいろな交流、忙しい日常

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12月に入り2日のGarrettさんのセミナーに続いて、世界銀行と日本政府主催のUniversal Health Care1)に参加(5、6日)。素晴らしい基調講演をされたJim Yong Kim総裁とも2人でお話しする機会をいただきました。Kim総裁がWHOに勤務していた時に私がWHO Commissionerをしていたこともあり、お互いに間接的に知っていたのです。

6日の夕方は数年ぶりに東海大学医学部へ向かい講演、7日は東大で公共政策大主催のコロンビア大学、シンガポール等の7つの公共政策大学院の「GPPN」で、100人弱の学生さんたちと福島原発事故後のグローバルリスクについて、司会はエネルギー政策の国際派の田中伸男さん

9日はフランス大使館で、フランスの「エイズ、及び、伝染病対策担当大使」を務めるPhilippe MEUNIER大使をお迎えして数人での昼食。

11日は米国マサチュセッツ州のPatrick知事とご一行をお迎えして、医療政策機構1)の主催で議員会館国際会議場でHarvard大学のJohn Hamalka教授もSkypeで参加。これはとても素晴らしい会議となり、知事も大満足でした。夜は知事をお迎えして米国大使館でレセプション、ホストがケネディ大使、大勢の方を迎えて大変でした。

12、13日は出井さんたちとのAsian Innovation Forumで、これはもう報告しましたね。

14日からカリファ大学の理事会へ、3週間前に数日間に渡って滞在していたアブダビに向かいました。15日にカリファ大学学長から、海外からの理事3名への報告、翌日の理事会はよい議論と前向きの計画が進みました。

昼食後、素晴らしいYas Linksでゴルフをたのしみ、空港へ向かいました。

17日に帰国。帰宅して一休み、夜はNorway大使館でErik Solheimさんを迎えたディナー。Solheimさんは若くして政治家をめざし、大臣も経験、しかも世界的に大事な活動もしています。

やたらと忙しいのですが、いろいろな出会いがあります。

Laurie Garrettのセミナー

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Laurie Garrettさんは、Council on Foreign RelationsのSenior Fellowとして活動している素晴らしい方です。このたび1週間の訪日ということでGRIPSでもセミナーをしていただきました。素晴らしい経歴で、生命科学の研究者から出発、そこから転向しPulitzer賞ほか、ジャーナリストとしても経歴は見事と思います。

Global Healthでも現場を基本にした多くの意見を書いていて、2007年の彼女のForeign Affairsの論文から交流が始まったのです。このblog postの中の写真にもあるように、最近亡くなったNelson Mandelaをとても尊敬していて彼女の部屋には尊敬する等身大のMandelaさんがいます。そして私が委員長をした第1回、第2回ともHideyo Noguchi Africa Prizeの選考委員になっていただいたのです。その時も、彼女の意見は、基本的に現場での観察と高い見識にあるのでほんとうに頼りになりました。

そういえば思い出しました。ダボス会議の時のことですが、緒方貞子さんを紹介したのですが、しばらくすると涙を流しているのです。「どうしたの?」と聞くと、緒方さんのことは「本当に尊敬しているのでつい感激で涙が. . .」ということでした。

彼女のGRIPSでのセミナーは50人ほどの方が参加、好評でした。あとから何人もの方からお礼のメールが来ました。

参考となる文献は、今年のForeign Affairs、11-12月号のトップに掲載の「Biology‘s Brave New World: The Promise and Perils of the Synbio Revolution」に書いてあることが中心です。

他にも参考になるCouncil on Foreign Relations 関係の資料が以下にあります。

1)Staying Safe in a Biology Revolution
2)Making the New Revolutions in Biology Safe
3)H5N1; A Case Study for Dual-Use Search

これからのバイオテクの行く末は、どんなことが起こるのかわかりません。しかし、ICT、ナノ、バイオなどの技術は進むばかりですから、Singularity1)へ向かって人類が進んでいくことを止めることはできません。

私たちは、どんな世界へ向かっていくのでしょう。

Asian Innovation Forum、世界の若者たち集まる

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Asian Innovation Forum(AIF)1)は元SONYの出井さんが始めたもので、私もお手伝いしながら何回か参加しています。

今年も12月12、13日に、私の活動の中心でもあるGRIPSで開催しました。私も講演したり、パネルにも出させていただいたりしましたが、2日目に行われた若く元気な人たちの「Young Entrepreneur Award」はなかなか良かったです。ここでも講演をさせていただきましたが、審査員も素晴らしく、プレゼンも世界から選ばれた人たちでしたので、とても良かったです。インドのマドラス、ロンドン、香港、ダッカなど、日本からは慶應、早稲田など、多くの候補から選ばれた人たちでした。

Timothy Draperさん1) も講演、自分の話をもとになかなか楽しい話をしてくれました。こういう「変な人」たちが数多くいるところに米国の強さがあるのでしょう。私もすぐ前に座っていたので、いろいろとお話しする機会がありました。この日のことをご自身のblog にちょっと書かれています。

このblogでもしばしば出てくる「ドラゴン桜」税所くんのBangladeshでのパートナーのMaheenくんにもはじめて会いしました。

多様な若者が集まってプレゼン、議論する。それを支援する企業家たちの集まり。いいですね。

11月の海外いろいろ -4: 台北、医師の教育の話題

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春頃でしょうか、台湾の内科学会から講演のご招待を受けました。その後、台湾の原子力関係からもご招待を受けました。ちょうど日にちが3・4日ずれていたので、何とか摺合せをお願いして今回の訪問になりました。

22日にアブダビから帰国し、家で久しぶりに一泊。翌日、台北へ向かいました。内科学会総会には2年前にも参加しましたが、今回は米国内科学会オレゴン支部からのThomas Cooneyさんとご一緒でした。根っからの教育者です。

医師の教育の話題だったので、映画「The Doctor」について私がコメントしたところ、そのモデルはDr Edward Rosenbaumで、立派な医師のご一家です。同じオレゴン大学病院で勤務、またご子息(といっても年配ですが、、)もオレゴンでの同僚の一人で、お孫さんは Univ Penn のDr Liza Rosenbaum、New Yorkerにも寄稿しているよく知られたカラムニストでもあるのです。何でも話題を出してみることですね。いい話を聞きました。

お互いに講演が前後でしたが、医学教育・研究に本当に立派な見識を持って、実践されています。

翌日は台湾の原子力関係者との交流、講演ですが、私のほかにも国会事故調で協力してくれた方も参加してくれました。

「わかりやすい国会事故調」の6部のビデオは大好評でした。「字幕は漢字だからわかるし、英語のナレーションでよくわかった」よ、と言われました。

大事故の教訓を共有することは大事なことです。