Singapore、Paris、そしてCassisへ

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24日の午後、Singaporeへ向けて出発。日付の変わる頃にホテルにチェックイン。25日はA*STAR理事会です。いつもながらテキパキとした議事と議論が進み、午後には新しく設立された免疫研究室を訪問しました。日本はこの分野は強いので、若い研究者が独立するにはよい場所だと思います。ここで活躍している元京都大学ウイルス研究所の伊藤教授とも電話でお話しました。

Singaporeに滞在して24時間もたたない25日の夜遅く、Parisへ向けて出発。1日ゆっくりしながら、夜はParisにいるフランス人の知人から、SONY Computer Science LaboratoryMario Tokoro社長北野さんのお二人と一緒にご招待を受けて、5人でSt. Honoreの日本大使館と英国大使館の間にある素敵な会員制のクラブで食事をしました。いろいろと話が弾みましたが、やはり、一緒にいる人たちと場所の雰囲気や伝統、環境といったものは大事ですね。これはマネをしようとしてもなかなか無理ですが。

Parisは素晴らしい天気。空気はからっとして、木々は濃いミドリ。一年で一番いい季節ですね。とても気持ちいいです。去年もこの時期にParisに滞在しました。たまには、ゆっくり海外で時間を過ごすのは素敵です。とはいっても、結構忙しい日程です。

26日、Gare de Lyonを出発し、Marseilleへ。そこからCassisへ向かいました。SONY研究所の主催する“Sustainability”をテーマにした、こじんまりとした会議です。去年はCamargueで開催されました

3月にはUNESCO-L’Oreal 、4月にはPecresse大臣の来訪、さらにフランスのテレビ局の取材などが続き、このところどっぷりとフランスに浸かっているような気分です。

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写真1 Cassisの港

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写真2 泊まっているホテル

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写真3 Cassisの海岸線

写真1?3はCassisの風景です。白い崖に囲まれたリゾート地で、日本でいうと逗子のような雰囲気ですね。最近ニュースにもなりましたが、ここはあの「星の王子様」で有名なサン・テクチュぺリ の飛行機が撃墜されて沈んだ場所でもあるのです。

フランス文部科学大臣来訪

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4月10日、フランスのFillon首相とPecresse文部科学大臣が来日され、11日の朝に文部科学大臣のMs. Valerie Pecresseの訪問を受けました。大臣とは昨年の6月12月にお会いしています。彼女は学生の頃に日本語を勉強し、過去に2度ほど日本で仕事をされています。部屋に入ってくるなり、いきなり日本語で「キヨシさん、お元気ですか!」。

話は、今年のG8洞爺湖サミット前の6月に沖縄で開催されるG8科学担当大臣会合の件や、いくつかの科学政策・高等教育政策についての議論が中心でした。Franceは大学と国立研究所の大改革の最中で、学生や大学関係者たちのデモなどもあり奮闘しています(日本にはデモをするエネルギーもないようですけど)。まだ40歳という若さで、お子さんも二人を育てながらの活躍は素晴らしいです。

Minissterpecress02写真1 Pecresse大臣と

夜はFrance大使館でFillon首相の歓迎レセプションに出席しました。団十郎さんの流暢なフランス語のご挨拶と邪気払いの“にらみ”、眼力のご披露がありました。Fillon首相の挨拶の後、Swiss大使公邸に向かい、今年行われたダボス会議の“お礼”レセプションに出席。さらにそこから移動して米国内科学会会長のDale先生ご夫妻との会食に向かいました。

野口英世アフリカ賞の受賞者発表

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小泉総理が2006年5月のアフリカ訪問中に発表した野口英世アフリカ賞は、Africaの健康問題に対する医学的貢献と健康保健への貢献という2つの部門で授与される賞で、Africaだけでなく世界にも注目されている賞です。授賞式はこの5月末のTICAD開催にあわせて行われます。このたび2人の受賞者が決まり、発表されました。私は選考委員長を務めましたが、全員一致の結論が得られてとてもうれしかったです。

医学では英国のGreenwoodさん。医師として30年間もAfricaで活躍、マラリアや各種感染症対策に貢献されました。

健康保健分野ではKenyaのWereさん。この方も多くの反対にもかかわらず、40年にわたって基本的な衛生環環境づくり、特に女性と子供にフォーカスした活動を地道に続け、KenyaそしてAfricaの健康増進に大いに貢献されたのです。

このニュースは世界中で報告され、特に野口英世が活躍した場であり、その支援を惜しまなかったRockefeller大学、WHO、またWereさんの活動の中心のUZIMA Foundation、世界銀行などで報告があげられたそうです。

5月のTICAD、7月のG8サミットへ向けて、日本のリーダーシップに勢いをつける機会になるといいのですが。

以下のサイトは各国でなされた報道や反応です。ご参考まで。

British Embassy in Japan
Ministry of Foreign Affairs

<international organization>
WHO
World Bank
Rockefeller University
Gates Foundation
Rockefeller Foundation
Roll Back Malaria Partnership
London School of Hygiene and Tropical Medicine
PEPFAR
AMREF
Medicines for Malaria Venture
Association of School of Public Health
Global Health Council
USAIDS
Society for International Development
UN radio
University 500 news

<press coverage inside Japan> (English version. There were many articles in Japanese.)
Japan Today

<press coverage outside Japan>
Kenya Broadcasting Corporation
Breitbart
Capital FM
Africa Science News Service
Apanews

Africa News Source
Africa News
The Nations (Kenya)
Medical News Today
Medical Health Articles
Health Care Industry
a2 media group
Med Store News
Latin America News Agency
Kinhua PR Newswire
Institute of Medical Infomation/Medical Library in China
YNCDC in China

それにしても、日本の海外援助の凋落が目立ちますね。1990代は世界一であり、アジアの再興、成長にも大いに貢献したのに、いまやGDPで世界第2の国でありながら、今や米、独、仏、英にも抜かれて第5位、このままではオランダ、スペイン等に次々と抜かれると予測されています。財政事情があるとはいえ、残念なことですね、これは国家の信頼と信用問題です。政策を変えられないのですね。

世界がドンドン変わってきているのに、国内事情ばかりで変われないとか。政治、官僚、産業、学など、それぞれのリーダー的立場の人たち、しっかりしてください。できない理由をいうことは誰にもできるのです。責任ある行動です。

誤訳?いえいえ!

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最近参加したパネルで‐おおよそ20人くらいのパネリストだったでしょうか‐日本人と外国人の割合が6:4の中、気候変動について熱い議論が戦われていました。何人かの日本の政治・経済のリーダー達は日本の省エネ技術こそ最も効率的で1973年中東戦争のオイルショック以降エネルギー効率を上げるために”サムライの精神”で取り組み、二酸化炭素排出量を減らすには革新的な技術こそが鍵であると訴えました。
一方、その他の日本人や外国人はそれでは不十分であり、”キャップアンドトレード”を含むルールや規制が実行されるべきだと主張していました。日本側はセクターごとに各国がベストプラクティスを追求する”セクター別アプローチ”を主張しています。
EUはもとより、アメリカまでもがさまざまな政策の実行や革新的な技術を導入するだけでなく“キャップアンドトレード”に向けて動いているように思えます。日本が独自にイニシアティブをとらない限り、新たな世界のルールを追随せざるを得なくなり、この種のビジネスから取り残されるかもしれません。
ビデオスクリーンでは本来「侍」を意味する“Samurai Warrior”と翻訳すべきところ、“Samurai Worrier”(心配する侍)となっていました。アメリカ人がこの誤りに気づいたのですが、間違いではなくこの方がむしろ正しいメッセージを伝えているかもしれないと言っていました。時には翻訳の方が本来の意味が伝わることもあるものですね。

Blair首相との会見、そして「ブレアプロジェクト」参加へ

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3月14~16日、「G20エネルギー、環境担当大臣会合」が幕張で開催されました。

13日の朝はJeffrey Sachs教授とお会いして、先日のGlobal Health Summitのこと、Bush大統領がAfrica訪問中に発表された、AfricaのHIV、Malaria、結核以外の感染症への支援に関する発表などを受けて懇談しました。いろいろな形のODA貢献や、目に見え、成果の挙げられる貢献、資金援助のあり方などです。夕方からはColumbia大学の上海会議があり、私もお招きを受けていましたが今回は残念ながらご辞退しました。

その後すぐにGIES 2008に参加。これが第3回目です。GIES 2007は去年6月に開催され、私の「Innovation 25」の話もwebcastで聞くことができます。

14日朝は、「G20」に参加している英国のMalcolm Wicksエネルギー大臣と会談。15日の午前は去年まで英国首相であったTony Blair氏と会談(写真1)。Blair氏はこの日の朝に「G20」で基調講演を行っていて、気候変動に関するG8 Summitの政策、中国政策、そして他の途上国への対応等について意見交換をしました。彼は2005年のGleneagles G8 Summitで始めて気候変動を主要テーマにしたのです。だからこそBlairさんは、フォローアップの努力を今も続けているのです。Davos会議もよく活用していて、今年行われた福田総理の講演の座長もしました。チームを作って活動を進めるとのことで、今回から私もそのチームに参加することになりました。楽しみです。Blairさんはこの後に北京、New Delhiと訪問予定で、その間にもスタッフとメールで、早速やり取りをはじめています。また、忙しくなりそうです。

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写真1 Tony Blair氏と

16日の午後は、環境省、東京都などと日本経済新聞主催の「温暖化シンポジウム」で昼食会(写真2)。その後、Blair氏の基調講演、さらに鴨下大臣、石原都知事などのパネルが行われました(写真3)。詳細はいずれ日経新聞に出ると思います。

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写真2 昼食会で、左から、私、首都大学長西沢さん、並木環境大臣政務官、Graham Fry在日英国大使、Blair氏、石原都知事

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写真3 左から鴨下環境大臣、Blair氏、石原都知事

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写真4 Fry在日英国大使と、講演会の開始前に

UNESCO-L’Oreal女性科学者賞10周年、Parisから

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5日の夜、成田からパリへ。UNESCO-L’Oreal For Women in Science賞が始まって10周年の記念行事です。今年、10年目の2008年受賞式もあります。Laureates(受賞者)は50人を越え、そのほかにもInternational Fellowship、National Fellowshipを入れると500人近い女性科学者がこの10年で表彰を受けています。素晴らしい社会貢献です。今年はその中の40人弱のLaureatesが参加しました。

6日の朝に到着して一休み。午後からUNESCO本部で行事が始まります。まず、LaureatesによるCharter(宣言書)として10のCommitments(約束)の紹介とサインの儀式がありました。10の約束についてはサイトを見てください。なかなかいいですよ、皆さんも実践してください。私は今年の選考委員の一人として参加しました。記念行事は1週間続くのですが、私は授賞式だけの参加になりました。

この後に今年の受賞者の表彰式が行われました。松浦UNESCO事務局長、L’Oreal社長Sir. Linsey Owen-Jonesが流暢なフランス語でご挨拶。受賞者の紹介は選考委員長で1999年Nobel医学生理学賞を受賞したRockefeller大学のBlobelさんです。受賞者お一人ずつ、まず受賞者を訪問して作成された数分の映画から始まり、受賞者の業績をBlobelさんがわかりやすく紹介。そして受賞者登壇と挨拶があり、これが5人について順々に行われました。その後で、受賞者一人ひとりに松浦さんとSir. Linseyによる賞状の授与。なかなか素晴らしい演出でした。

アジア太平洋を代表した受賞者では、日本の岡崎恒子さん(2000年)と米沢富美子さん(2005年、今回は欠席)、中国のFang-Hua Liさん(2003年)、前からよく知っているHong KongのNancy Ip さん(2004年)、そして今年は韓国のNarry Kimさんが受賞されました。

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写真1 岡崎さん

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写真2 Nancy Ipさん

選考委員の注目するところは独創性などの業績の質ですが、一番大事なことは「独立した研究者としての成果か?」という点です。今年のKimさんはsmall RNAの研究ですが、37歳でソウル大学のAssistant Professor(助教授)です。素晴らしい業績で、全員一致で推薦し、問題なく決まりました。私は、なぜ独立して研究業績を挙げることができたのかを知りたくて、選考委員会の翌週にソウルに行き、Kimさんにお会いして話を聴きました

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写真3 Blobelさん、松浦さんと

ソウル大学で修士、Oxford大学でPhD、Pensylvania大学でPost-doctoral fellow、帰国して助教授。教授は帰国して何年かは研究費を支援し、機器も自由に使わせてくれ、大学院生も2~3人をつけてくれたそうです。論文は全てKimさんの仕事だからと、共著者になることは辞退されていたということでした。そして独立することができ、教授のサポートに本当に感謝していると言っていました。この教授は彼女を独立した研究者に育てていたのですね。なぜでしょう?いつか聞いて見たいと思っています。日本では若い人たちが独立せず、競争の中で育って来ないので、外からは誰が伸びてくるのか、そして誰が次世代を担えるのかが見えないのです。基本的に教授になるまで、外から将来を担う人材の比較が見えないのです。これでは独創性はなかなか育ちませんね。かわいい子には旅をさせろ、です。

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写真4 Narry Kimさん

Kimさんの受賞の言葉では、子供が二人いるので一時は研究をやめようと思った、託児所などの社会のサポートが大事だと訴えていました。当然ですよね。彼女のお子さんにも会いました。日本も若い才能ある人たちに素晴らしい機会を、そして独立して才能を伸ばす機会を広げたいものです。独立した研究者とは教授である必要はないのです。教授であることは結果です。教授は若い人を育て、才能を伸ばす機会を提供することが大事だと思います。若者が将来を切り開くのですから。

ホテルはConcorde広場とSt. Honore、日本大使館に隣接したSofitel。場所は最高でしたが、あまり時間に余裕がなく、翌日午前に出発。帰国の途へ。残念。

空港には映画のスクリーンほどもあるLaureates一人ひとりの写真が、ここかしこに展示されていました。

「国際保健で主導権発揮を」・「イノベーションの課題」

日本経済新聞(2008年3月11日)に掲載された記事「経済教室 国際保健で主導権発揮を」を、記事講演録一覧に追加しました。

 「経済教室 国際保健で主導権発揮を」

2007年10月18日に開催されたエンジニアリングシンポジウム2007での講演録を、記事・講演録一覧に追加しました。

 「イノベーションの課題」
 

その他の記事・講演録等はこちら ≫≫≫

The Economistの会議: 日本の強み、弱み。

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3月5日、朝8時から総理官邸で「地球温暖化に関する懇談会」の第1回に参加。ちょっとスタートが遅すぎる感じもありますが、ダボス会議の講演をはじめ、総理の考えがだんだん前進しているのです。結構なことです。でも国会は予算委員会、道路財源、ガソリン税、日銀総裁人事等々、課題が山積です。

世界で最も読まれている経済紙の「The Economist」は、最近の号で「JAPAIN」(「JAPAN」ではない)という見出しの特集で、世界第2位の経済大国にもかかわらず、この危機的な状況になっても日本は政治的リーダーシップがないと報告をしていました。その「The Economist」主催の会議があり、午後のパネルに出席しました。昼前のセッションにも少し顔を出しましたが、渡辺喜美大臣、松井証券の松井さん等の論客が「社会主義国日本の苦悩」について話していました。また午後には政務官の方(勿論、政治家です)も出ていましたが、政務官は大臣の補佐をする役目なのに、役人の書いたものをそのまま読んでいるなんて変ですね。世界とは逆です。「ギャグ」か?だから“leader”ではなくて“reader”と言われるのです。参加者の半分は外国人なのにこれではね。日本人に「R」と「L」の発音が区別しにくいのはわかりますが、こうまで言われるようでは・・・。日本の役所と大臣の関係は世界からまったく理解できない変な政府なのです。

昼食時には民主との岩国哲人議員の講演がありました。午後の最初のパネルに参加したのですが、この内容は石倉さんのblogを見てください。Panelistsは4人でそれぞれ10分ほどプレゼンしました。私は最後の締めくくりとして、4つのことについて話をしました。(1)まず「We ‘eated’ lunch next room and enjoyed a lecture by Iwakuni-san」という言葉からはじめました。「We eated lunch」は間違った言い方ですが、誰も私をとがめもしないし、笑いもしませんでした。英語としてちゃんと通じているのです。ここで「We eated」じゃなくて「We ate」だというのは正論ですが、「eated」で十分に通じるのです。正しい文法を気にするのもいいですが、「まず英語を喋ることからはじめましょう」という一例です。これがグローバル時代の共通語としての「ブロークン英語」なのです。

Panelistの一人、Nokiaの役員はいい話をしました。世界で毎日100万台の携帯電話が売れていると。そこで、私の(2)は世界の携帯シェアは38%がNokia、14%がMotorola、12%がSamsung、9%がSONY-Ericksonで、日本の携帯電話は10数社を合わせても世界の5%程度のシェアですと話しました。DoCoMoなどのキャリアが縛っているからだということを言う人もいますが、その通りでしょう。でも部品では日本製の性能は良く、世界中の携帯電話の部品の65%程度が“made in Japan”なのです。日本の強さと弱さをしっかり認識して、グローバルにビジネスをしなくてはいけないということです。

次に(3)として、AppleがiPhoneを出したら日本の各キャリアが、是非うちに取扱わせて欲しいとAppleに陳情に行くのですから、日本の携帯電話産業にかかわる人たち、技術者、経営者とその組織の全体に問題ありと指摘しました。“世界”のお客さんのほうを見くことが大事です。大体、Appleは1997年には、資金が5週間分しかなくて、もう破産かどこかに吸収されると言われていたのですよ。日本の企業もここまで追い込まれないとダメなのですかね。すぐに役所に陳情という企業体質も問題ですね。

大企業、役所、老舗で次々と起こる、信じられないほど幼稚なトップの不祥事。これはなぜ起こるのか良く考えてください。しかも、経営者は自ら辞めもしない、社長を辞めるといっても取締役として残っているとか、本当にみっともない。こんな社会の「上の方たち」が“品格”などとよく言うよ!と覚めた感じが社会、そして若者に蔓延しているのも当然です。社会のどこもかしこもトップは腐っています。自分から、きちんと社会的責任を取ってもらいたいものです。これでは経済成長もどんなものでしょうか。

最後に(4)として、ポケットからiPodを取り出して、このピカピカした裏のデザインと試作品は日本、生産は台湾企業、その生産工場は中国、内部部品もいくつか日本製品が入っている。でもこれはすべて部品メーカー。Appleは何も作らず、全体のシステムとコンセプトを作り出したこと、そして一つの製品の利益率が50%などという話しをし、「ものつくり」は大事だが、何を目的に、何を作るのか、そしてどう顧客を掴むかが大事だという話をしました。iPodの使用説明書は至極簡単ですね。全部ネットでみれます。日本の携帯電話をはじめとする電気製品の説明書の判り難さ、想像を絶しっていますね。技術者が書いているのでしょうが、根本的にユーザーを向いていないのです(「理科系の作文技術」-1981年、中公新書など、木下是雄先生の著書が面白いですよ)。この辺については林信行さんが書かれた「iPhoneショック」(日経BP社、2007年)が参考になるでしょう。

日本の強さと弱さ。技術は素晴らしいですが、構想力と世界への行動力の欠如。所詮は経営ですね、弱いのは。社長も「2年2期」など、勝手な内向き規則で平気な顔をしているなんていうのは、この世界の情報化時代に信じられないことなのです。これは市場経済の基本的事項。日産がゴーンさんを招いた時に「2年2期」などという内規を伝達したとは思えませんが、どうでしょう。日本の常識ばかりに囚われるのもいい加減にしてください。

今の日本に必要なのは1960年代の「SONYの盛田さん」のような経営者でしょうか、と言うとすぐに時代が違うとか、あの人は特別、誰それがいたからなどとまずできない理由を考える人は経営者として失格ですね。

 

ニューデリーから-2

ニューデリーでの2日目、3日目はもっぱらホンダと現地のビジネス関係の訪問が中心。

まずは、ホンダ(Honda Siel Cars India)へ。武田川社長はじめ、松崎副社長兼工場長とお会いしました。社長から苦労されたお話や、会社の現状と今後のPlanについてお話を伺いました。松崎さんは1982年にアメリカで工場を立ち上げ、都合15年間滞米。その後もアジア各地でご活躍され、ここの工場を立ち上げています。工場はとてもきれいで、従業員の皆さんも礼儀正しい。これはずいぶん苦労されましたね。

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写真1 Honda Siel Carsを訪問

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写真2 同じく玄関で

その後、電通の現地事務所、IITのNew Delhiキャンパスを訪問。夜は大使館でイランから着任された堂道大使と瀬戸一等書記官、角南さん等と歓談。瀬戸さんには2年前にここで開催されたアジア学術会議の時に大変お世話になった方です。

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写真3 IITのNew Delhiキャンパスで

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写真4 日本大使館で、左から角南さん、堂道大使、私、瀬戸一等書記官

翌日は現地の三井物産、Hero GroupのMunjalさん、インドビジネスの大物の一人National Manufacturing Competitiveness CouncilのChairman、V. Krishnamurthyさん(写真5)、 Confederation of Indian Industry(経団連に相当するものでしょうね)を尋ね、ビジネス中心の話になりました。インドは特に日本の会社、技術と組みたいと思っているのですが、日本のビジネス慣行は決めることも話の進み方も遅く、合弁会社は日本側が半分以上の株を持つことに執着する。これでは韓国や中国の企業にどんどん取られてしまいます。また、ヨーロッパやアメリカとのビジネスがどんどん出てきているといった話をいろいろと聴きました。

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写真5 角南さん、Krishnamurthyさんと

Hero GroupのMunjalさんのところではDymlerとの合弁の話が進み、昨日はFranceのSarkozy大統領から手紙が来たところだといっていました。

以前、インドの科学技術大臣、大蔵大臣、産業大臣、また首相等ともお会いしたことがありますが、皆さんビジネスも科学も独特で素晴らしい方が多いです。インド特有の「難しさ」はいろいろありますが、みすみす指をくわえてみていることはないでしょうね。いろいろとビジネスのやり方はあると思います。

その点ではスズキ自動車の鈴木会長は立派ですね。ご当地の車といえばスズキというぐらいになっているのですから。何でも先に出かけて汗をかかなければなければ、いい果実は取れません。また現地の慣行と、現地の人たちのインセンテイブも大事でしょう。

ビジネスの皆さん、がんばってください。インド、そしてアジアの成長に乗って、一緒に経済成長の展開をしたいですね。とにかく、日本はこの10年間、GDPが増えていない唯一のOECD国なのですから

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グローバルな世界では、超大金持ちが出る一方で、貧しい人たちは、極めて貧しくなります。今、世界の66億人の約20%が超貧困“extreme poverty”で、これらの環境にある人たちは、出産時の母親の死亡率も高く、乳幼児死亡率、そして5歳までの死亡も高いのです。

毎年数百万の人たちが飢餓、そして栄養失調とそれにかかわるいろいろな病気で命を落としています。特にアフリカと南アジアの貧困は悲惨なものです。気地球温暖化の意識の変化とともに、バイオフュエルの生産が増え、とうもろこしや小麦の値段が上昇し始めています。世界はとんでもない危機的な方向へ進みつつあります。「2C」=「Climate Change」と「3F」=「Fuel, Food, and Feed」は、貧困に窮する人たちへの影響が極めて大きいのです。これらがグローバルな人間社会に大変化をもたらしつつあります。

2月15日には「Global Health: Under-Nutrition」をテーマにして世界銀行、Gates財団、厚生労働省、財務省、外務省等の後援をお願いして会議を開催しました。Gates財団のGlobal Health InitiativeのPresident、Dr. Tachi Yamadaと私が、それぞれclosing remarkとwelcome remark を行いました。昼食時にはGhanaの厚生大臣の素晴らしい講演がありました。

また、医学界の超一流雑誌であるLancetが、今年1月から世界のNutritionの特集を始めました。できるだけ多くのEvidenceに基づいたデータから、問題を見つけ、何を、どうしたらいいのか、ある種のデータ作りでもありますが、どのような行動を起こせるかが課題ですね。

日本はモンゴルにヨード入り食塩を配布するなど、日本らしい、草の根ODA運動をしています。

学校給食はいいのですが、生またれての1~2年間の栄養、必須要素の補給(ヨード、鉄等々)が大事なのです。特に生まれて6ヶ月は母乳を基本とするべきで、1~2歳のころに摂取する栄養が少ないとその後で、学校の成績はどうしても悪いとか、社会人になっても仕事がない、あまり稼げない、収入は低いといった社会的地位が固定することになるのです。いろいろと子供たちにはかわいそうな結果が多く、国民の生産性に大きな影響を与えることからも、これらの栄養に対する対策は大きな問題なのです。

この一日の会議では啓発されるところも多く、なかなかよかったと思います。

明日は2日目です。