「休学して学ぶ」、Ghanaからのメール

→ English

休学してGhanaに行った学生さん資料1)は、100カ国を超える学生たちの国際交流ネットワークAIESEC資料1)を通じて紹介されたGhanaでのプログラムに参加する目的で現地に行ったようです。Ghanaの首都Accraに10日ほど滞在しましたが、この間に感じたこと、得たことは想像を超えるほど大きかった、とメールで教えてくれました。このあと、3週間ほどGhanaの北部へむかい、またAccraに帰ってメールをくれました。私の経験資料1)でもAccraで一流のhotelでもネットのつながりは不十分なのです。

彼からのメールは以下のような内容でした。
●ガーナ北部の農村に滞在して、現在はアクラにいます。もっとガーナを知りたいと思い、恐らく最も所得が低いであろう農村で生活してみると、行ってみないとわからない途上国、援助の姿が見えました。

●ガーナで貧困地帯というくらいだから、NGOの援助を頼りにしているのだろうと思っていました。しかし彼らは自給自足で生きています。村中を歩いているにわとりを捕まえ、とうもろこし、ヤム、野菜、豆などを栽培して食べ物には全く困っていません。お金はどこから調達するのかといえば、たまに通りかかるバスの乗客に売ったりして得ています。男性は働かずに、ボードゲームに熱中したり、ボーとして1日を過ごします。女性は畑仕事や食事作り、洗濯で忙しそうなのですが、、。

●小学校は村の中にあるのですが、2人の先生で6学年分を教えているので大変そうです。学校に通う為の経費は微々たるものらしいのですが、学校に行かない子供たちも中にはいます。本当にお金がなくて学校に行けない子供は少数で、家の手伝い(ほとんどが洗濯) が忙しくて行かない子が多いようです。外からきたよそ者の私には、「学校で公用語の英語を学ばないと村の外に出れず将来の可能性がなくなってしまうのでは」と思えたのですが、昔から自給自足で村で一生を、という暮らしをしている彼らにとっては、村の言葉さえわかれば問題ないだろうと思っているようです。

●この現場体験を通して最も衝撃だったことは、僕がお世話になったNGOが村人からあまり感謝されていないと感じた事でした。このNGOの資金源は、全て創設者のポケットマネーから出ています。ローカルスタッフもポケットマネーで雇用しています。

●活動としては、農業を通じて自立を図るというもので、今は稲作に力を入れています。今後は村人を巻き込んで稲作をしようとしています。中古の農業機材を寄付したり、学校に教科書や制服の支給もしています。

●これだけ多くの援助をしているのに、どの村人も心の底からNGOに感謝しているとは思えませんでした。「特に生活に困っているわけではないが、何かくれるならもらおう」といった状況です。というのも、オーナーがポケットマネーで経営している為、オーナーが外から見て必要だと思う事を自由に援助しているからだと思います。本当に村人に必要で、外国人がすべきことは何か、という視点が欠けているような気がしてなりませんでした。実際に、現地NGOスタッフや村人に「NGOはとってもいいことをしているね!」、と話しかけても笑うだけでほとんどの人が同意してくれませんでした。

●先進国の人間が途上国に足りないものを見出すのは簡単だが、彼らの価値観に照らし合わせてすべきことをするということの難しさを痛烈に感じました。先進国の人間が途上国と関わる以上、「宣教師的態度」になっていないか、いつでも顧みる必要があると学びました。

●あと1つ、現場体験をして気づいた事があります。アフリカ人は「違い」を否定的にとらえないということです。日本にいると「そんなこともできないのか、情けない」だとか、自分が出来る事は他人にも出来るものだとおもいこみ、出来ないと否定的にとらえる風潮があると思います。「自分達と違う」=「マイナス」というイメージが付きまといます。しかし、アフリカ人はいつでも涼しい木陰を探して僕に教えてくれたり、食べ物のこともよく気にかけてくれます。「君は日本人で、アフリカとは食べ物も気候も全然違う。」と口にし、違いを認めたうえで、外国人と付き合ってくれます。決してその違いを否定的にはとりませんでした。

●多様な価値観を理解し、人と付き合うという点では、日本人はまだまだアフリカ人にはかなわないと感じました。

この学生さんは、こんなことを感じてくれて、メールをくれたのです。多くのODAでは、この様なことを検討した上で活動を推進していることも多いと思いますが、現場の感覚が最終的にどこまで理解されて実施されるのか、いろいろ課題があるのが現実です。

ODAについては山本敏晴さんがたくさんのとても貴重な情報、現場の課題等々を発信しています。この学生さんが感じたようなこともいくつも記載されています。しかし、最後は、現地を知っているかどうか、現場感があるのかどうか、実行するのか、これがいずれ自分の勝負を決める時がくると思います。

若いときにこのような現場感を体得することは、この学生さんの将来のキャリアに大いに役に立つことでしょう。勿論もっともっと調べてから現地に行くことも可能でしょう。なんでも「詳細に検討してから動く」ということも大事ですが、これは慎重になりすぎて結局は何もしないことになることが多いのです。この学生さんの行動力、これが今の日本には決定的にかけているのだと思います。

自分で行動してみて感じ取れることの価値の大きさ、特に若い人たちにはこのような行
動を起こすことが大事だと思います。このような現場感、現地感はなかなか身につくものではありません。いつの間にか、この若者も、自分の世界観が変わり、違った視点で自分の目標を探りつつ、大きく成長していくでしょう。

Ghanaに到着して1週間して、この学生さんからメールをもらいました。「たった1週間で、自分が多くの人と知り合いになり、繋がり、世界が違ってくるような感じがする、本当に不思議です」と。

このようなウェブの時代だからこそ感じられるメールや携帯電話の便利さ、すばらしいです。まさに世界は1つにつながっています。