新しい国家ビジョンを

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元旦に、「新年を迎えて、日本の国家ビジョンを」というコラムを書きました。そして、12月8日と11日に、私なりに提案する国家ビジョン、「2030年までに、食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる!」について触れた2つの講演も紹介しました。

その11日の講演要旨が「日本物流新聞」(1月1日版)に掲載されました。「食糧とエネルギーの純輸出国になろう」という見出しで、以下のような内容です(数箇所、テニオハや言葉など少し加筆しています)。

●「イントロ」
東京で開かれた環境展示会「エコプロダクツ2008」(産業環境管理協会、日本経済新聞社主催)で政策研究大学院大学の黒川清教授が12月11日、基調講演(抄録はこちら)をした。歯に衣着せぬ物言いで、グローバル時代に日本が生き残るための課題やエネルギー問題を指摘した。

■日本のモノづくりは垂直型に終始している。世界で1日に携帯電話は300万個売れているが、そのうち40%はノキア製。モトローラ、サムスン(各15%)と続き、4位にようやく日本のソニーエリクソン(9%)が入る。が最近、韓国LG に抜かれ、モノづくり立国といってもぜんぜん売れないのが実情。とはいえ部品の65%はメイド・イン・ジャパン。質がいいから。部品で生きていこうとするならインテルみたいにならないとだめだろう。日本は2次、3次、4次の下請けをせっせとやっているが、物語のつくり方、想像力、世界観が欠如しているのではないか。

●「使える技術はいくらでも」
■エネルギー問題でも日本の強さをどう生かすかが重要。与えられた自然の条件としては水、森、温泉、、、がある。もちろん地震という弱さもあるが。それらをどうしてエネルギーとして使わないのか。電力を例に挙げると、火力65%、水力10%、原子力25%のままでいいのか。やはり日本はやるな、と世界に思わせる国にしたいと思いませんか?

■原子力はこれからも一時的にはいいと思うが、アメリカのような大きな国でもその廃棄物を捨てるための法案がなかなか通らない。そのくらい廃棄物についてはみんな神経質になる。事故は今の技術では起こらないといわれるが、絶対にないとは言い切れない。テロはどうか(加筆した)。他国に対し技術導入することはあっても、日本には原子力を使わなくてすむ技術がまだいくらでもあることを訴えたい。たとえば地球にふりそそぐ太陽エネルギーの2%だけで、世界中のエネルギーがまかなえることがわかっている。

■既存の照明から消費電力の少ないLEDなどに代わるのに反対する企業もあるが、反対するのはそれをつくってないメーカーだろう。こうした問題はアルミサッシにもあり、先進国で一番多く使っているのは日本だろう。断熱を進めるうえでは熱を通しやすいアルミを窓に用いるのはばかげている。使うなら塩ビや木だろう。これもアルミ業界が反対しているだけか。世界は変わっているんだから、遅れをとるようなことはやめた方がいい。

●「将来の絵、描くのは若手に」
■食糧とクリーンエネルギーの純輸出国になろうという目標を私は提案するが、その気になれば2030年までに達成できるのではないか。そのためには10年計画を立て各5年ごとのミッションをあげてロードマップをつくる。それを常に皆で評価する。計画を立てるのは役所でもシンクタンクでもいいが、将来の絵を描くのだから45歳以上の人は参加しないでほしい(笑)。

■ 節目の年を迎えた。ダーウィンの『種の起源』出版からちょうど150年。その一番のメッセージは、長い歴史でサバイブしてきたのはその時代の一番強い者ではない。一番賢い者でもない。環境の変化に適応した者だと。いま環境はものすごく変わった。日本は相変わらず人の後ろに続くのか。

こんな趣旨なのですが、いかがでしょうか?

ばかげてる?そういう方は、元旦のコラムの最後の5行を読んでください。

講演の全体の概略はこちらで読むことができます。

独自の特徴を伸ばす

私は成蹊学園で中高6年間を過ごしました。このブログでも何度か触れていますが、この時期は人間形成にとってとても大事な時期だと思います。

去年の6月、同窓会総会にお招きを受け、成蹊学園の課題について話をいたしました。少し長いのですが、ご興味があればと思い、講演のPDF を掲載します。以前紹介しましたが、少し短いインタビュー記事もあるのでこちらも見てください。

グローバル時代に、学校もいかに独自の特徴、価値を伸ばすか、他と差別できるか、これが要、といういつもながらの話です。

しかし、そうは言っても伝統というものはそんなに簡単に構築できるものではありません。しかし、私立学校には、その建学の精神にきわめて普遍性の高いものが多いのです。そこに立ち返るということです。特にグローバルなフラットな世界でも認められる特徴、これが大事です。生徒の人間形成に決定的な役割を果たすと思います。

それにしても、昭和24年の発行、いまや95版を数える名著、慶應義塾池田潔教授の「自由と規律」、これはぜひ皆さん、特に教育に関心のある方に読んで欲しい本です。

人づくりこそが、国の根幹です。

新年を迎えて、日本の国家ビジョンを

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去年は本当にひどい年でした。アメリカは新大統領を迎えて、経済危機にさしあたりどう対処するでしょうか。

地球温暖化の問題に対しエネルギー政策はどうあるべきか?これはどこの国でも大きな課題です。福田前総理のときにこの課題についての特別懇談会が設置され、トヨタの奥田さんを座長に、洞爺湖サミットに向けてまとめを準備することになりました。今の政権ではそれどころか、京都議定書の動き自体止まってしまっているようです。“それどころでない”ということもあるでしょうが、ここで誤ってはいけません。これはある意味で日本のチャンスなのです。

私の低炭素社会へのエネルギー政策の考えの一部をまとめた資料があります。皆さんはどうお考えでしょうか?

 ・総理懇談会第2回(4月5日)資料
 ・総理懇談会第3回(4月22日)資料
 ・自民党の農業委員会(加藤紘一座長)資料

私なりに考える日本の国家ヴィジョンは「2030年までに、食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる!」というものです。

そのために、10年、20年後の目標を立て、まず第1次、そして第2次5ヵ年計画を書き上げるのです。学者、官僚、企業など多くの参加を得ながら、「ミッション、戦略的ロードマップ、1年ごとの目標」を、省庁横断的に従来の構造を無視して書き上げるのです。

大蔵省も、より革新的な予算を作れ、構造改革への政策推進できるでしょう。もちろん、定期的国民への報告、プロセスの透明性は重要です。

また、これは長期将来計画ですので45歳以下の人で作成していくのです。もちろん、外国人も入れましょう、ヒアリングもいろいろ入れましょう。

以上のような趣旨で、去年の12月8日(月)に資源エネルギー庁主催のエネルギー政策で基調講演を50分、また、12月11日(木)には日本経済新聞主催のエコプロダクトの会議で、両方とも1,000人近い多くの熱心なかたがたがにお話しする機会があり、私の考えを聞いていただきました。講演の全体の概要はこちらで読むことができます。

2030年までにそんなことは不可能だというかもしれませんが、それでは1年前にオバマさんが米国大統領になると予想した人がいますか?

この国家ビジョンは政治と国民の意志の問題なのです。

「Yes, We Can」です。

2009年、日本は、世界はどのような年になるでしょうか。