毎日新聞社の元村有希子(科学環境部)さんは、毎日新聞の人気シリーズ「理系白書」を執筆している記者で、ご自身のblogでもたくさんの情報発信をしています。その中で、私のことを何回か引用してくれていて、また最近「大学の大相撲化」という私の主張を伝えてくれました。
●「黄金の3割」をご存知であろうか。多民族国家の米国でよく見る経験則だ。集団の活性化には多様性が重要だが、少数派が3割まで増えれば安定した勢力となり、多様化が進んでいくという。
●ためしに大相撲で活躍目覚しい外国人力士を数えてみたら、幕内力士40人(休場除く)のうち12人と、3割を占めていた。
●日本学術会議の黒川清・前会長は「大学も大相撲を見習え」と呼びかけている。日本の大学は均質すぎる。日本人、男性、しかも履歴が「A大大学院修了、A大助手、A大助教授、A大教授」の四つしかない「4行教授」が威張っている。これでは知の鎖国だ、という。
●加えて大学には「文系・理系」という枠がある。環境、知的財産、ロボットなど、先端分野は文理の協力なしには成り立たないのに、なぜか両者は仲良くできない。
●学部構成や受験も文理の枠が根強いから、高校では文理分けが常態化している。歴史を知らない科学者、技術が分からない経営者を育てても、世界では戦えまい。
●救いは、若者の目が外に向き始めていることだ。発展途上国で働く医師になりたいとカナダの高校に進んだ女子高校生は「久しぶりに帰国したら、似たような顔の人だらけで驚いた」と話していた。この夏、科学の五輪(世界大会)に出場した選手の中には、志望大学を外国に変える生徒が出始めている。
●枠の中にいる限り、その本当の窮屈さは実感できない。日本人のパスポート所持率は約25%(05年、外務省)。若年・壮年に限れば3割を超えるだろう。あとは、飛び出す勇気か。
(毎日新聞 2006年9月20日(水) 朝刊2面「発信箱」)
この趣旨については、2006/4/15、4/16、6/28のブログや、「学術月報」(“Science As A Foreign Policy 国の根幹は人つくり”)や「IDE 現代の高等教育」(“新科学技術基本計画と大学”) 等の記事でも述べているところです。
また、「4行教授」は石倉洋子さんとの本「世界級キャリアーの作り方」にも出てきます。読んでください。