「大学病院革命」応援団

ようやく、医療制度や医師養成制度などが国民的話題になってきました。結構なことです。このように国民的な問題にならないと政治は動かないのです。密室的に役所と協議などしていると間違えますよ。これがグローバル情報の時代の怖さなのです。

しかし、これらの議論の背景を見ていると、いかにも最近導入された卒後研修制度が悪かったという論調が結構多いのですね。これはまったく見当違いで、医師不足とか、教育や臨床研修制度の欠陥などの根底の問題を浮き彫りにするのに少々役立っただけです。この研修制度の導入で誰が利権を失い、損したかを考えれば、批判の出所はすぐに理解できますし、どうもそのとおりらしいですね。旧社会のエスタブリッシュメントでしょう。

医師定員増についての厚生労働省の中間まとめを見ると、医師育成に関わっていた人たちからの反省の意識もなく、こんな基本スタンスでは本当に困ったものです。

私が書いた「大学病院革命」という本ですが、そこに書いてあるメッセージの本質を見て応援してくれる人がいることはうれしいことです。

参考: 「私の1冊-何を情報源にするのか?」 大学病院革命書評 (看護教育 2008年9月号)

どの制度にも過去から来る理由があり、今の社会の変化に不適応を起こしているものがいくらでもあるのです。それを小手先でやりくりするようでは、いつまでたっても対応できないのです。

これが今の日本の現状の根幹にあるのです。また考えてください。このブログでも、その本質を手を変え品を変え発信しているのですけどね。

日本女性の意欲とパワー、再び「アジア青年の家」プログラムから

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つい最近ですが、「L’Orealと女性研究者」、そして沖縄で始まった「アジア青年の家」についてブログに書きました。

「L’Orealと女性研究者」のブログでは、北京オリンピックのソフトボール、野球、サッカー、柔道、レスリングなどの活躍に、日本の男女の違いが明示的に出ているのではないか?と書きました。

「アジア青年の家」は、私も関わった「イノベーション25」の政策を一部実現した安倍総理、高市大臣の企画で、新らしく始まった素晴らしい政策だと思います。全国的に広がり、継続されるといいですね。プログラムへの資金は必ずしも公的なものだけを考えないでも、税制とかいろいろ工夫できるし、学校も、地域社会も、企業もどんどん自発的に貢献し、参加して欲しいものです。これこそが「社会イノベーション」であり、「人材イノベーション」なのです。

その「アジア青年の家」に参加したアジア太平洋大学のインドネシア留学生、Ivannantoさんが、Flickrのページで沢山の写真を載せてくれています。皆さん楽しそうですね。ありがとう。

この「アジア青年の家」の資料を調べていて気がついたのですが、海外から参加した30名は男女それぞれ15名ずつでした。日本からの参加は45名でしたが、女性が30名に男性が15名。「おや?」と思って、事務方に、国内ではどれだけ応募があったのか聞いたところ、女性の応募者数が圧倒的に多く、しかも女性のほうが結果として競争率が高かったということでした。応募要項にはある程度の適性を考えた資格に関することが書いてあるのですが、それにしても参加への積極性がずいぶん違いますね。なぜでしょう。

皆さんも考えてください。私の意見は、このブログでしばしば述べていますけど。

創造的資本主義 - Creative Capitalism-

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お気づきかもしれませんが、今年は“一つの包括的な社会”(参照:)に向けた社会的な動きの裏にあるグローバルな課題や根本的な変化について話す特別な機会に何回かお招きいただきました。

それらのスピーチにおける重要な主題の一つは資本主義の変わりゆく側面、すなわちCSR、“corporate social responsibility (企業の社会的責任)”についてです。そこでビル・ゲイツ氏が使う“Creative Capitalism(創造的資本主義)”という言葉を引用しました。みなさんはゲイツ氏がこの言葉で何を言わんとしているのかと思われることでしょう。

最近のTIME誌では“資本主義の解決策”と題したビル・ゲイツ氏との特別インタビューが特集されていますが、そこでは創造的資本主義のコンセプトについて議論され、現在の世の中の状況は既に古くなった20世紀の反映であると彼は見ています。記事は大変面白い個人的見解ですが、ビジネスのリーダー達には強いメッセージを発信し、私のスピーチで伝えたいメッセージとも一致しています。

皆さんがビジネスその他でやっていること、やろうとしていることを考える際に、このコンセプトや活動についてちょっと考慮していただけると嬉しく思います。

ビル・ゲイツ氏は今度11月に東京に来ます。

シンガポール、沖縄、そして若者のエネルギー

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お盆明けの20~22日はA*STARの理事会のため、Singaporeへ。場所は新しく開設されたFusionopolis(10月に開所の式典があります)、いよいよバイオを理工学分野と融合させようという意欲的な試みが始まります。理事会の開催された21日の夜は貢献者たちの表彰式が威勢よく開催され、Guest of Honorで産業担当大臣も出席されました。とにかく意欲と元気があり、研究者も事務方も、多くの若者がバリバリ活躍しています。

24日は沖縄へ。「アジア青年の家」プログラムに参加しました。私たちの提案から始まった、アジア諸国と日本(沖縄と本土)の若者(14~17歳)が80人ほどで、沖縄で3週間を一緒に過ごし、交流しようというものです。「ハイサイ日記」に楽しそうな写真と日記が満載。このプログラムの基本精神は私のメッセージにも読み取れると思います。

この日は「科学者シンポジウム」に参加しました。東北大学で脳研究をしている大隅典子さん、琉球大学理学部長でサンゴ研究で知られる土屋さん(去年は太平洋科学会議で大変にお世話になりました。いまはこの学会の事務局長もされています。)、住友化学でこのブログで何回も紹介しているOlycetNetというマラリアに有効な画期的な蚊帳の開発にかかわった石渡さん、司会は御茶ノ水大学の塩満さんで行われました。参加した学生さんたちは、皆さん元気いっぱいとても楽しそうで、うれしかったです。共通の言語は勿論、“Broken English”。

大学生も何人かお手伝いをしてくれました。大分にある立命館アジア太平洋大学の留学生たちです。若いときのこのような交流は何にも増して視野を広げ、違いを認め、広い視野と友情を育てることでしょう。参加した若者たちの10年、20年先の将来に何が出てくるのか楽しみです。わくわくします。もっともっと、各地の学校でこのような活動、夏休みの交換ホームステイなどを自発的にはじめて欲しいものです。

パネルの終了後すぐに飛行場へ向かった大隅さん、当日の夜に早速blogで発信しています。写真も、お話もうまいものです。

私は内閣府の主管する沖縄総合事務局長の福井さんと、沖縄全島「エイサーまつり」を見に行きました。特に「琉球国祭り太鼓」は素晴らしかったです(写真)。その後は夕食へお招き受けました。

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皆さんありがとう、お世話になりました。

アジアの医学生たちへ: 若者へのエールと3つのスピーチ

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AMSC(Asian Medical Students Conference)というアジアの医学生たちの集まりがあります。毎年、会議を開催し活動を展開していますが、私も過去3回ほどお招きを受け参加しました。毎回とても楽しいです。私はこういう若者主催の会が大好きです。みな将来を担う人材、人財ですから。今年は第29回で、東京で開催され、閉会式でお話をさせてもらいました。400人ほどの参加だったそうです。私の話の要旨は、この29年間に起こったものすごい変化とグローバル化時代について、そして「3つのスピーチ」の話をしました。

3つのスピーチの話とは、webでも観ることのできる3つの講演、Steve Jobsが2005年にStanford大学の卒業式で行ったスピーチ(この機会に集まった皆さんにとって、この会での1週間がキャリアの「dot」のひとつになるだろうことを楽しみにしていると伝えました。)、Bill Gatesが2007年にHarvard大学の卒業式で行ったスピーチ(世界の、そして社会の不平等“Inequity” への認識、意識について。)、そしてRandy PauschのCarnegie Mellon大学での「Last Lecture」(子供のときからの「夢」、多くの問題を抱えてもみんなが医師になることへの「夢」を持っていたことを忘れないようにということ。参考 1 , 2 )です。

皆さんもwebでこれらのスピーチに触れてみてください。それぞれがすばらしいスピーチです。Pausch教授の「Last Lecture」は本にもなり、つい数日前に日本語訳本も出たそうです。

この会を組織した学生の皆さん、ご苦労様でした。本当にすばらしい会議でしたね。

インドからの学生たち

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今年2月に本田財団YESプログラムの関係でニューデリーに行ったことをお伝えしました。

そのYESプログラムを受賞した5人の学生(皆さんインドの名門大学“IIT”の学生)のうち4人が、5月末から6~8週間、日本で勉強をしました。ジャイン君はホンダのロボット研究へ参加、ゴヤルさんは東京工業大学で研究を、トマルさんは岡崎研究所と筑波大学でそれぞれ4週間の研究を、アガルヴァル君はJVCで研究に参加。明日の帰国を前に政策大学院に集まり、座談会を開催しました。日本のビザ取得でちょっと手間取ることがあり、1人はGoogleに研修にいったそうです。つまらないことで残念なことです。

皆さんに本田YES賞の授賞式、Pachauriさんと面談したこと、そしてこの数週間の日本での体験について話をしてもらいました。4人とも日本での研究、研修を存分に楽しんだこと、皆さんに親切にしてもらったこと、多くの若者と交流できたこと、そして指導の先生たちもすばらし方ばかりだったと話されていました。アガルヴァル君はホストファミリーと過ごし、とても良くしてもらったそうです。みなさんすばらしい経験をしたようですね。話の中ではインドと日本の違いに何度も触れられていました。このような若いときの実体験こそが大事なのです。皆さん素敵な思い出とともに、日本の大事な「大使」になるでしょう。このことを学生の皆さんにも話しました。

夜は皆さんと夕食。本田財団の方たちをはじめ、多くの方々にお世話になりました。地道な活動ですが、このような若者の国際交流はとても大事な活動であり、インドの、そして世界のホンダファンをさらに増やすことでしょう。うれしいことです。もっともっとこのような活動を広げたいものです。民間からもっと多くの取り組みが出てくるとうれしいですね。若いときからのヒトのつながりを広げることこそが、グローバル時代の多様性ある人材(財)育成と、世界に友人を作る基本です。これからの日本にとって一番大事なことです。

日本の若者を海外で実体験をさせることはさらに重要なことです。知識ばかりでは役に立たないのです。双方向の交流を増やすということも大事な政策であり、グロ-バル時代の日本の将来へ向けて大きな効果があるでしょう。今の時代にとても内向き日本人がやたらと多いですから。

フィラデルフィアから、医薬品業界のMBAの学生達

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フィラデルフィアはアメリカにおける私の故郷です。まさにこの地、ペンシルバニア大学でアメリカにおける私のキャリアはスタートしました。

The University of Science in Philadelphiaはユニークな大学で、医薬に関するサイエンス、ビジネスに焦点をあてた様々なプログラムを提供していて、この分野でのMBAプログラムも提供しています。このMBAプログラムは日本での夏季研修を提供しており、今年は私が教授を勤める政策研究大学院大学(GRIPS)への訪問が組まれていました。そこで、ヘルスケアやグローバルヘルス分野の将来のプロフェッショナルを相手に、彼らに関わりがあると思われるテーマに沿って幅広く議論する、対話形式のセミナーを主催しました。

写真 集合写真とGRIPSでのセミナーの様子

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この4月にハーバード大学公衆衛生学の学生達を迎え入れた時と同じように、今回も2006年のハーバード大学卒業式でビル・ゲイツが行ったスピーチや2005年のスタンフォード大学卒業式でのスティーブ・ジョブズのスピーチについて知っているか、まず聞くことから始めました。参加した10名ほどの学生達のバックグラウンドは多岐に渡っていて、セミナーはとても面白く、内容が濃いものになりました。このような交流はとても楽しいものですね。

沖縄、G8科学担当大臣会議

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6月15日、G8サミットでは初めてのことですが科学技術担当大臣会議が沖縄で開催されました。岸田大臣がホストです。

その前の13・14日の2日間に渡って、非公式のG8+5科学顧問会議が開催され、“Brain Circulation”が話題になりました。EUのErasmusプログラムの拡張版ですね。これからのグローバル時代の課題に対して、将来を担う若い人たちがお互いを知り合うことが大事という認識なのです。

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写真1 米国国務省科学顧問のNina Fedoroffさん

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写真2 中国科学技術担当のWan大臣

大学、大学院、またもっと若いときに、短期で1年程度の相互乗り入れのプログラムが大事だと認識を共有しましたが、特に日本にとっては重要な課題です。ブログで繰り返し述べていますが、今の時代になっても日本の大学は閉鎖的ですし、若者の眼が海外へ向かないことは大きな問題と思います。日本からの海外留学も減ってきているのです。

14日の夕方には沖縄科学技術大学院(OIST)からSteven Chuさんのクリーンエネルギーに関するプレゼンがあり、続いて仲井真知事のレセプション、そして岸田大臣が到着と続きました。

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写真3 岸田大臣、Baughmanさん(OIST)

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写真4 レセプションのショー

TICAD4横浜と朝日新聞Bono編集長

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横浜で行われたTICAD4では、日本から多くの成果が発信が出きたと思います。アフリカ40ヵ国の首脳を迎え、福田総理は毎日のように首脳と面談、さらにBono、国連事務総長顧問のJeffrey Sachsとも個別に面談され、日本政府もがんばりました。総理もNGOの活動が大事との強い認識を深めたようです。

Wefcapetownjune2008001写真1 TICAD会場で、左から私のスタッフの原君、杉山さん、Dr. Pablos-Mendes

私もHideyo Noguchi Africa Prizeの贈呈式や翌日行われた国連大学での受賞者講演会への出席、尾身幸次議員主催のパネルに、Rwanda大統領、Harvar d大学のJuma教授等と参加したりと、いろいろとありました。ちょうどRwandaに行っている東京大学の伊東 乾さんから、講義をしているところの写真が送られてきたばかりでしたので、そのことをきっかけにパネルは話しました。ここでも多くの日本の若者ががんばっています。

Rwanda02写真2 Rwandaで教える伊東さん

先日ご報告したBonoさん朝日新聞 5月31日号の1日編集長というすばらしい企画で、アフリカやTICADといったことを取り上げていて、いつもの紙上とは違って光っていましたね。今回発表された、日本のアフリカ支援プログラム予算のことも書かれていました。

アフリカ週間:Jeffrey Sachs、Bono、Tony Blairとの一日

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私も手伝っている「Table For Two」の活動広報の集まりが、Jeffrey Sachsをお迎えして議員会館で開催されました

このような社会起業家の活動が日本発で世界に広がって、世界の一方で起こっている食糧不足と、他方で起こっている過食の問題に対する一つの運動になることはすばらしいことです。皆さんも参加しましょう。

午後は慶応大学へ。今年は150周年でいろいろな行事が開催されています。ロックバンドU2のBonoさんの法学博士号の授与式(写真1~3)、そして授与記念講演がありました。授賞式会場は福沢諭吉が推進した演説の講堂で、慶応でも由緒あるところです。今回、Bonoさんから招待を受けたのですが、彼とは今年のダボス会議で会って から、緒方貞子さんたちのお手伝いをとおして協力しているのです。

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写真1 法学博士授与式のBonoさんと安西慶応義塾長

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写真2 Bonoさんと

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写真3 Jeffrey Sachsも参加

この講演は慶応大学の渋沢栄一記念寄付講座の講演シリーズで、「Civil Society」の動きを推進するものです。

その後、先日ご報告した前英国首相Tony Blairのスタッフと会って打ち合わせ

全てが今週から横浜で始まるアフリカ開発会議(TICAD)と、7月の洞爺湖G8サミットに関するものです(参考)。日本に対する注目度、期待度は非常に高いのですがね。