サンディエゴからアブダビへ、Festival of Thinkersとブガッティ

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トロントから太陽の輝く美しいサンディエゴに飛び、一泊して2つの重要な会議に出席しました。1つはDOPPS という末期慢性腎臓病の臨床診療パターンを世界規模で評価、比較する大型プロジェクトの会議でこれが始まったのは10年前の丁度Googleが起業した頃です。この事実を世界の変化がいかに早かったかを示す例として参加者の皆様に指摘しました。もう1つは製薬会社で開催された、世界のリーダー幾人かとFDAのコンサルタントによる高度にイノベーティブな医薬品に関する諮問会議です。時が経つにつれてだんだんと医師、腎臓専門医であったころの自分に戻ったようなくつろいだ気分になりました。なかなか良い感覚でした。

翌日はアブダビへ。2009年Festival of Thinkers に参加するためです。前回も参加しましたが、これはブログ (資料)にも書きました。今回はグローバル化と文化と言語というパネルに出席しました。このテーマは私の大好きなテーマで、ディスカッションも良かったです。しかし、今年のFestivalでは日本のプレゼンスは(ご想像に難くないでしょうが)弱かったですね。どうも日本は私一人だったようです。2007年は違ったのですが。。。

写真1-7;Festival of Thinkers

写真8-12;ブガッティ1932年型

アブダビにはFIグランプリ最終日の翌日に到着しました。残念なことにイベントには間に合いませんでしたが、会議の会場となったEmirates Palace(資料)のロビーでは、新旧織り交ぜて12台のF1車が展示されていました。素晴らしい造形物です。美しい車体とメカニックを写真でご覧下さい。

写真13-18;ビンテージのメルセデスと最近のFI車

展示の1つがブガッティの1932年型です。ちなみに私はもう何年も前から白洲次郎に関心があり、或る機会には彼に関する本の2冊目が出たところで紹介していますが。白洲はケンブリッジ大学に留学し、ブガッティを所有していました。そのブガッティで生涯の友となるRobin Byng(英国の由緒正しい家柄の出身)と共にフランス、スペイン、その他の国を経由してジブラルタルー英国往復を2週間という当時の道路事情を考えれば信じられないようなスピードでドライブしたという武勇伝が伝わっています。その他にはビンテージもののメルセデス、マセラティ、フェラーリや、もっと最近のモデルなどがありました。写真もあわせてお楽しみ下さい。

ガードナー賞

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ガードナー賞の一日は2009年受賞者による業績についての講演で始まりました。講演は学術的に内容が優れているだけでなく、受賞者自身や、自分の研究を支えた周囲の人たちの科学への情熱を感じさせる、それぞれが美しい物語です。特にLucy Shapiroさんの講演は、彼女のライフワークであるバクテリアの3次元動的分子学の不思議の追及と、中には物理学者の夫君の協共同作業の話を交えて語られ、大変印象的でした。Shapiroさんとは個人的に親しいのですが、ご子息は沖縄のアメリカ海軍病院で3年間の勤務を最近終えられた泌尿器科の医師ですし、義理の娘さんの一人は海兵隊員で、アフガニスタンの勤務から戻ってきたばかりと伺いました。素晴らしいご家族ですね!

森先生の講演も感動的でした。先生は助教授だったそうですが、この自分の仕事は誤りで満足でないという理由で、日本でのテニュア地位を捨ててアメリカへ渡るという決意を実行され、多くの困難を経ながら現在の自分にとってやりがいのあるお仕事に辿り着いたそうです。先生のご両親は決して豊かではない生活の中から先生を支援し、励まし、またアメリカへの渡航をお許しになったということで、先生は深い感謝の念を表明されていました。授賞式にはご両親、ご家族、研究スタッフ数名をお連れになり、私たちも先生のご家族の皆様にお祝いを申し上げることができてとてもよかったと思います。

山中先生は自分の研究生活に焦点を絞って講演されました。2年間の臨床研修、日本の大学院での研究の後カリフォルニアで全く新しい研究に携われたそうです。カリフォルニアでは完全な失敗と思われる事態に遭遇、しかしそこで踏みとどまって何が起こっているのかを見極めようと研究を継続しました。予想もしなかった発見とそれに伴う多くの困難を経て、奈良先端研に助教授となり、3人の大学院生と共に苦労しながら、その後京都大学に。ここで数人の院生と実験助手とこの数年研究を重ね、今回の画期的な発見へとつながったわけです。

Dr Sackettは、一流の医師が観察者として犯した大きな誤りの歴史についてWilliam Oslerの例も含めながらお話をされました。Sackett先生はDr. Oslerの明白な失敗を見つけたときの驚きを個人的にも私に話してくれました。

各講演には受賞者の人格がにじみ出ていました。受賞講演最後は誰もが認める“thoughts-provoking scholar”、 Sydney Brenner博士で、演題は‘Humanity Gene’でした。彼独特のユーモア溢れる講演でしたが、込められたメッセージは重いものでした。

Photo_3 1:西田大使ご夫妻 
Gairdner 091029 0114写真2:左からDr. Pierre Chartrand, Vice-President, CIHR.、Dr Peter Singer (資料

夜にはRoyal Ontario Museum で授与式。西田カナダ大使が日本人受賞者お二人の栄えある付き添い役を勤められました。

ホテルに戻り、山中先生や先生のスタッフの方々とバーで寛いでいると偶然、森先生も立ち寄られて一緒に楽しいひと時を過ごしました。

トロントでのこの数日間は私だけでなく日本の科学界全体にとって良き数日間でした。今年は日加修好80周年記念の年にもあたります。天皇皇后両陛下のカナダご訪問 (資料1)も記憶に新しいことでしょう。

明日早朝、San Diegoに向かいます。

Torontoからー2、ガードナー財団Global Healthシンポジウム

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ガードナー賞50周年記念の今回、特筆すべき新企画はGlobal Health賞の創設です。グローバルな現代においてグローバルヘルスは重要かつ緊急な課題ですから、この賞は大変タイムリーであると言えるでしょう。初の受賞者はDr Nubia Munoz で、子宮頸がんの原因パピローマウィルスの同定とワクチンの効果に関する世界規模の疫学研究が評価されました。

10月28日の午後、Dr. Munozを主賓に迎えてトロント大学Dalla Lana School of Public Health でガードナー Global Health シンポジウムが開催されました。私は最初のセッション(セッションは2つ)でモデレーターを務めましたが、パネリストはEmory大学、Dr.Jeffrey Koplan 、 Gates 財団、Dr. Tachi Yamada、Wellcome Truse、Dr. Mark Walport、Toronto大学、Dr. Peter Singer  (資料1)というグローバルヘルスの頼もしい4人組でした。パワー溢れるこのセッションを司会するのはとても面白かったです。満席の会場からも熱気を感じました。

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写真1-4:レセプション。写真1;Dr Oliver Smithie (ユーモア溢れるスピーチはいかにも彼らしかったです);写真2;Gairdner Wightman 賞を受賞されたMcMaster大学Dr.David Sackett (左)-臨床疫学とEBMで知られています、とJohn Dirks (ガードナー財団の理事)、写真3;小川先生ご夫妻、山中先生と私;写真4;小川先生、森先生と私

夜のレセプションはトロント大学のMaRSで開かれました。多くの友人、過去のガードナー賞受賞者、今年の受賞者が来られて大変楽しいひと時でした。日本からは小川誠二先生森和俊先生山中伸弥先生の3名の受賞者が出席されました。

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写真:Dr. Blackburnと共に

沢山のゲストに混ざって今年度ノーベル医学生理学賞を受賞されたDr Elizabeth Blackburn(受賞理由はテロメラーゼの発見)と、彼女の元教え子で共同受賞者(三人)の一人Dr. Carol Greiderもお見かけしました。Dr. Blackburnもガードナー賞の受賞者であられますが、L’Oreal女性科学者賞を10周年記念の年に表彰されていて、私は当時、審査委員の一人に加わるという名誉に与かっています。

今日は実に素晴らしい、刺激に満ちた一日でした。本当に光栄で稀有な体験でした。

Torontoから-1、‘Wikinomics’の‘成功者’との出会い

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前回のカラムでご報告しましたように、私は今トロントに来ています。トロント大学とGRIPSが共同で今年の早い時期から進めているプログラム資料1)のことでトロント大学と打ち合わせをしています。

Munk Centerでの私のセッション終了後、Rob McEwen氏が主催するガードナー賞50周年記念ディナーレセプションにお招きを受けました。氏はカナダを代表するビジネスリーダー 、(資料1)で、Wiki時代のビジネス(以下にご説明します)においても広く知られた著名人です。

Rob McEwen氏は医学研究・医学教育の主要な支援者として知られており、彼の広大な邸宅は、ご想像の通り、トロントでも「超」がつく高級住宅地にあります。

McEwen氏はトロント大学附属病院であるToronto General HospitalにMcEwen再生医療センターという幹細胞研究専門の研究機関を創設しました。私は氏が医学研究の支援者であることを知っておりましたので、ガードナー賞の今年度受賞者の一人である京都大学の山中伸弥教授資料1)にお会いして大変喜んでいらっしゃることを存じていました。言うまでもありませんが、山中先生は胚性幹細胞の使用に伴う倫理的問題に抵触することなく皮膚やその他の細胞を幹細胞にプログラムしなおし、iPS細胞作製という画期的な業績を上げられました。

Img_1913 写真:Rob McEwen氏と

Robさんと彼のビジネスや共通の話題についていろいろとお話をしているうちに突然閃いたのが、彼は ‘Wikinomics’ という本の第一章にオープンイノベーションの代表的なイノベーター起業家として紹介されている人に違いないということでした。そこで「あれはあなたのことだったのですか?」と伺ったら答えは「Yes」でした。私は最近講演などで話をするときによく彼のことを「出る杭」的思考の典型として紹介し、彼によってGoldcorpという金採掘会社が救われ発展した話をします。業績を見ても明らかなようにこの会社は大成功を収めました。 Robさんがどのような考え、やり方でこのような偉業を実現したのかをめぐってお話を伺い、大変楽しい会話となりました。

予期せぬ出会いはどんな時でもとても楽しいものです。たびたびブログに書いていることですが、視野や考えを広く深くしてくれます。いつも言うように「グローバルに考え、グローバルに行動しよう。楽しいことが沢山あるから。」ですね。

2009年11月

慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所
第3回G-SEC年次コンファレンス 「グローバル・アジェンダと日本」
日程: 2009年11月24日(火)15:00-17:00
場所: 六本木アカデミーヒルズ40 (六本木ヒルズ森タワー40階)
セッション: 「地球社会とグローバルリテラシー」  *パネルディスカッションに参加
<連絡先>
グローバルセキュリティ研究所事務局
e-mail:  gsec@info.keio.ac.jp
*事前登録、参加料は不要

Global Entrepreneurship Week Japan (16-23 November 2009)
http://www.entrepreneurshipweek.jp/en/about/ (英語)
http://www.entrepreneurshipweek.jp/ (日本語)
 
2. Globally Successful Entrepreneurism
日程: 2009年11月20日(金)9:00-18:00
場所:  政策研究大学院大学(GRIPS)
       港区六本木7-22-1 (7-22-1, Roppongi, Minato-ku)  

 * 12:00-14:00  Lunch and Keynote  
    Title: "A Conversation About Entrepreneurship – A First Hand Experience"
(ランチ会および基調講演 起業家精神に関する話題―直接得られる経験)については英語のみ
連絡先: Global Innovation and Entrepreneurship Institute (GIEI)
      (グローバル・イノベーション・アントレプレナーシップ・インスティテュート)
           Tel: 03-3242-6755     Fax: 03-3242-6255
尚、11/20のイベントは抽選となっております。お申し込みはこちらからお願いします。
          *登録コード(Registration Code)はKUROKAWA-BLOG とご記入ください。

1. The Entrepreneurial Spirit to Change Society and the World
(日本の企業家精神の展望 アントレプレナー=チェンジ・エージェント~進取の気性が世界を変える)

Keynote/Opening
日程: 2009年11月16日(月)10:00-10:30
場所: 政策研究大学院大学 想海楼ホール(港区六本木7-22-1) 

上海・東京グローバルコンファレンス 第二回東京大会
「世界経済を支える東アジア経済圏の成長~上海・東京2大都市の役割~」
日程: 2009年11月18日(水)10:00-17:00
場所: 六本木ヒルズ森タワー49階 アカデミーヒルズ タワーホール
パネルディスカッション(15:30-16:50): 「上海と東京の交流が生み出す東アジア経済圏の発展」 *パネルディスカッションに参加
<連絡先>
上海東京グローバルコンファレンス事務局(株式会社コングレ内)
Tel: 03-5216-5303 Fax: 03-5216-5552 
E-mail: global-c@congre.co.jp
URL: https://cos.congre.co.jp/global2009/j/reg.php

カナダ大使館・政策研究大学院大学(GRIPS)・トロント大学共催シンポジウム
“The Imperative for Strengthening Innovation”

「イノベーション推進のために - 今、何をすべきか」
日程: 2009年11月16日(月)09:30~17:00
          11月17日(火)09:30~12:30
場所: 在日カナダ大使館 B2 Oscar Peterson Theatre(東京都港区赤坂7-3-8)
*11/16 15:30-17:30 パネルディスカッション “Theme 3: Global Challenges for innovation”にパネリストとして参加
<連絡先>
政策研究大学院大学(GRIPS) 国際交流・広報課
TEL: 03-6439-6036
*このイベントは招待者のみご参加いただくことが可能です。

新渡戸国際塾公開シンポジウム
「今、どう動くか:現代日本の突破口を探る」
日程: 2009年11月7日(土)13:30-17:00
場所: 財団法人国際文化会館(港区六本木5-11-16) 2階 講堂
<連絡先>
国際文化会館 企画部
TEL:03-3470-3211   FAX:03-3470-3170
URL:http://www.i-house.or.jp/jp/events/appli_nitobesympo.html
*先着順で120名限定の為、お申し込みはお早めにシンポジウムHPよりお願いいたします。

オタワでグローバルヘルス、トロントでイノベーション

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カナダは来年G8サミット(おそらく最後のG8で最初のG20となるでしょう)の主催国となります。当然のことながら、グローバルヘルスをサミットでの主要な議題とするために、カナダの様々な分野でいろいろな努力が重ねられ、交渉や準備がなされてきたことでしょう。

CCGHRもその一環としてある会議を開催しました(10月25日)。この会議はどちらかといえばリサーチに重点を置いていて、出席した会員約150名のうち25%は海外の方々でしたが、私はここで基調講演に招待されました。大変な熱気で、私もいくつかのワークショップに参加、役員会にはゲストとして出席、G8の議題についてカナダの視点から協議する内輪のセッションにも出席しました。大変有意義で学ぶことも多く、沢山の新しい友人や仲間との出会いにも恵まれた一日でした。

10月の終わり頃のオタワはそれなりに寒いですが、天気は良かったです。ここで、1人の女性の日本人研究者にお会いしました。McMaster大学で学部教育を受け、McGill大学で疫学、生物統計学、産業衛生学の修士号、博士号を取得された方です。彼女は小さいときにほんの数年を日本で過ごし、現在は南アフリカで、アフリカにおけるメンタルヘルスと貧困に関するイギリスとの共同プロジェクトにポスドク・フェローとして参加し、勉強しています。やりがいのあるミッションですね!

次の日はトロントを再訪し資料1)、いくつかの仕事をしました。トロント大学のMunk Center では私のための夕食会をMassey College で開催して下さいました。

その翌日はMunk Centerで「イノベーション、グローバリゼーションと大学」と題するパネルがあり、私の手短な基調講演の後、活発で建設的なパネルセッションが行われました。今後ますます相互依存を強める世界において、一流大学は将来のリーダー達を育成し、彼らをコネクトし、将来の課題に備えさせるための開かれた場にならなければいけないという点では皆さんの意見が一致しているように思いました。現在のグローバルな国際社会では途上国及び低開発国が抱える諸問題やその地域は彼らだけのものではなく私たちのものでもあるのだということを認識しなければなりません。ここでも、日本の女性放射線医師に出会いました。彼女は東京女子医大の出身で、Massey Collegeのresident junior fellowとして医学教育研究の勉強を始めたばかりだそうです。このような経験は彼女のキャリアにおいて広い視野や考え方を身につける貴重な機会ですね。トロント大学は多民族性、多様性、カリキュラムや講義の幅広さで知られる素晴らしい大学ですから。

「岡目八目」、宋 文洲さんの辛口カラム

宋 文洲さん は大変な苦労の後、「ソフトブレーン」で成功した起業家です。時々テレビでも見かけます。北海道大学大学院に留学、その後は苦労しながら日本で成功した起業家の一人です。このような実体験の背景から、日本の「常識」の「非常識」を、素晴らしい筆力で鋭く指摘しています。彼の著書、例えば「やっぱり変だよ日本の営業」でも明確です。何かの機会に2,3度お会いしたことがあります。

ありがたいことに、宋さんはメルマガも書いていますが、彼の意見はその時々に大いに参考になります。お勧めします。

最近では、「官僚よりも民間に問題がある」、「負けたほうがいい」、「社員のモチベーションは上げるな」、「マスコミは国民のレベルを代表する」などなど、素晴らしいです。

ドッキリすることもあるかもしれませんが、気にしないこと。よく読んでみれば、殆どは本質をついたいい意見ですから。大いに考えて見ましょう。ありがたいことです。

昔の人はいいことを言うものですね、「岡目八目」とか。当事者にはなかなか見えないことが多いのです。「日本の常識は世界の非常識」ということはいくらでもあります。これを認識することは、グローバル時代にはとても大事なことです。「内」の人たちにはなかなか見えないものが、「外」からははっきり見えるものです。

「辛口」の宋さんは、お世話になった日本を応援している、と私には思えます。企業、政府、政治、大学等々、大事なポストについている人たち、皆さん、しっかりしてくださいね。

それにしても、感じたことを、読む人に分かるように書くのは難しいことです。宋さんの感性にも感心しますが、表現の能力、書く能力に感心します。

2つのExecutive Session; リーダーシップ、イノベーション、女性のパワーについて考えたこと・感じたこと

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最近私は2つのExecutive Sessionに出席する機会がありました。その一つはロンドンで開催された業界トップクラスを誇るグローバルな会社の世界戦略に関する会議です。この会社は最近或る買収合併に成功したばかりです。

この会議のメンバーは全部で10カ国から10人(女性は1人)でしたが、その多くが自国の政治・行政において高い地位にある方々、即ち、大臣、最高裁裁判官、国や地域(EU)の議員であったという点において他の同様な会議とは一線を画していました。

例えば、会議の議長をされたPat Cox氏は欧州議会の議長(2002-04)であられましたし、Chuck Hagel氏は今年1月まで12年間共和党の議員でいらっしゃいました。Hagelさんとは少しお話をしましたが、それだけでも氏が大変思慮深い、人間としても立派な政治家であるということが良く分かりました。彼はブッシュ大統領の対イラン政策を最もはっきりと批判したことでも有名です。年の初めにもブログでご報告しましたが、彼はAtlantic Council というワシントンDCに拠点を置く有力な「シンクタンク」の会長に就任され、そのことは私も知っていました。そして今回彼から直接聞いたのですが、オバマ大統領から外交に関する委員会のメンバーにもなるように頼まれたそうです。大変良いニュースですね。

Pat Cox氏の議事進行は素晴らしかったです。流れるようで暖かく、会社の上層部によるプレゼンからその後の質疑応答、提案まで一切を取り仕切り、各委員や幹部の発言だけでなく席順までメモを取って記録されていました。いつも思うのですが、このように立派な経歴を持つ方々とディスカッションやプライベートな会話を通じて知り合うことができるというのは、大変光栄なことです。実に多くのことを教えられます。ところでついでに申し上げると、この会社の代表者の半分は議長を含め女性でした。

東京に戻ってもう一つのexecutive sessionに出ましたが、こちらは日本のグローバルブランドの会社で、国内での売り上げは年間総売り上げの25%です。CEOを中心とするチームは私たちが議論すべき当日の議題を一生懸命考えてくれました。普段はあまり経験しないような活気に溢れた質疑や討論があって、楽しく会議をすることができました。これは、なぜかというとメンバーがかなり「出る杭」的な人たちだからです。例えばiモードを発明した夏野さん資料1)とか。役員レベルに女性が居ないことはさておいても全15人の会社側出席者のうち、女性は1人だけというのは驚きでした。。

この会社の考えは私から見ると男性の発想であり、且つ男性の考えをターゲットにしています。そこで私からの質問は、日常の買い物をするときや大きな買い物をするときの意思決定は女性がしているという、ニューズウィークの‘The Real Emerging Market’と題する記事でも紹介されている事実に関するものでした。私もニューズウィークの表紙の写真入カラムでこの記事を取り上げていますし、その後の2009年10月26日発行のタイム(米国版)‘What Women Want Now’  (資料1) にも同様な趣旨の記事が出ています。言っておきますが、製品は男性向けであるかもしれませんが、それを買うかどうかの意思決定は想像以上に女性によって行われているのです。

男女共同参画の問題は日本の社会に広く存在する喫緊の課題です。このブログでも繰り返し書いていますし、最近ではジャパンタイムズのインタビューでも述べましたが、女性の活用は日本社会、経済にとって「変革の鍵」となり得るのです。

もう一つこれらの二つのセッションに出て思ったのは、このような大会社の要職におられる方々は、急速にフラット化している世界すなわち‘Open and Demand-driven Innovation’の時代に世の中で何が起きているのかを実感していらっしゃらないのではないかということでした。‘Open and Demand-driven Innovation’はグローバルな現代において、どのビジネス分野にとっても非常に重要な、基本的な考え方となっています。

日本がまた元気になるには

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ジャパンタイムズの2009年10月18日版に私のインタビュー記事(URLPDF )’How Japan can regain its vitality (日本がまたげんきになるには)’が掲載されました。基本的なメッセージは私が日頃からブログで言っていることと同じ、すなわち政権交代、グローバリゼーション、日本の強みと弱み、イノベーション、大学改革、進まない女性の活用などです。

ジャパンタイムズのような新聞は日本に関心を持ってくださる外国の方々に接触し、意見を聞いていただくための重要な手段の一つです。結局、日本という国は変化を要求する「外圧」、かつてペリー提督が率いた「黒船」をまだまだ必要としているのかもしれません.

この記事をお読みになって、ご興味を持っていただけたらと思います。

「外から見る日本」を理解する努力

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このところ、「外から見る日本」のことを2度ほど(資料)かなり直接的な表現で書きました。この意見については評価してくれている方たちが結構おられる様子がネットでも伺えます。

ではどうしたらいいのか?ちょっとした例についてもコメントしました。GOETHEという月刊誌のインタビュー記事 です。

テレビもCNN, BBCばかりではないし、また新聞ではThe Economist(発行部数44万程度ですね)」を読まれる方は多いと思いますが、ネット時代をもっともっと利用すべきでしょう。

同じページに渡辺健介さんが出ていたので、見開きの両方のページを提示します。ちょっと考えみてもすごい経歴なのに、なのですが、かれの活動もすごいです。子供たちに素敵な本 「世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく」 (多くの言語にも訳されている)も出版し、またこれを自分で実践もしているのでいす。渡辺くんも、時にお会いして、応援している素晴らしい若者です。感動的な話が、Global Healthで大活躍している笹川陽平さんのblog  にも出ています。

日本の将来を担う若者には、本当にとても素晴らしい方たちがいるのです。