ダボスから(3)

会議3日目は雲ひとつない、-4℃から0℃前後という無風快晴の絶好のスキー日和でしたが、そんな時間はまったくありません。午前は「Why Victory against Terrorism Demands Shared Values」に出ました。石原都知事が出るからです。4年前、ダボス会議に出席したときには、「Xanophobia」と評価されたようですが、今回はいかに。パネルにはUS Attorney-GeneralのAshcroftも出ていました。都知事は日本語でしゃべり(このレベルの人ではOKですが)、9.11の前日にPentagonに、翌日White Houseに訪問の予定であったことから始まり、出だしは上々でした。途中で話題が「Human Rights」になってきているのに、ついうっかり「女性差別的」発言をしてしまい(軽く笑いを取るつもりだったのでしょうけど、場はしらけていました)、さらに北朝鮮問題でも本音なのでしょうが「ちょっとねー」という発言になり、やっぱり「自己中心的」かなと。ご本人が伝えたかったこととは違ったメッセージになってしまったようです。夜に開かれたJapan Dinnerにもこられましたが、一言挨拶でもさせてあげるべきなのに(と、私は思いますが)、これもなく、さっさと帰られました。今年のJapan Dinnerは去年と同じ会場でしたが、席を増やした分だけ空席が目立ってしまいました。着席のディナーは難しいですね。去年に比べて盛り上がらなかったです。元財務官の黒田氏(なぜ?)とリチャード・クー氏が10分ほどずつ「基調講演」しましたが。存在感のあったのは、またまた閉会の挨拶をされたゴーンさん(主催者の一人ですから)だけでした。何で?と思うでしょう?そうなんですよね。司会の千野さん(前回紹介しました)が気の毒でした。

さて、午後は例年の日本経済についての「Making the Japanese Recovery Last」に出たかったのですが、私は午後の2つのパネル「Who Is Responsible for Your Health?」、「Personalizing Medicine」にパネリストとして参加するので出られませんでした。この「日本の経済と産業」については何人かの日本人に印象を聞きましたが、会場はほとんど日本人ばかりで、評価は人によって違いました。日本の経済は上を向き、日本には元気が出て来たとの印象は与えた等の意見がいくつか聞かれました。

私がパネリストとして参加した2つは、両方とも盛り上がり、大変面白かったです。色々な人たちにも知り合うことができ、このような場所での出会いのすばらしさを感じました。個人と個人が評価しあった上で、付き合いが始まるというスタイルです。Dean Ornish(CEO and Founder, Preventive Medicine Research Institute, US)、Richard Smith(Editor, BMJ)、Francis Collins(Human Genome ProjectのUSのリーダー)、Ellis Rubinstein(CEO, NY Academy of Sciences)、Ruth Faden(Executive Director, Bioethics Institute, Johns Hopkins)、Geoffrey Moore(The Chasm Group)等をはじめとして、宗教家、ビジネス等の人たちが参加し、すばらしいメンバーで行われました。私のプレゼンは5分間でしたが、「clear, provocative」であると多くの人からお褒めの言葉をもらいました。私の問題提起をめぐっても議論が進められましたが、このような世界会議で行うプレゼンは、違う背景の人たちに、どのようにわかりやすく問題点を具体例を示しながら提示するかがポイントです。プレゼンの詳細はまたの時にでも話しましょう。

夕方に行われた「The Imperative of Partnering against Poverty」というセッションでは、緒方貞子さんのHuman Securityについての話が、過不足なく、大変すばらしかったです。Human Securityとは結局のところ、「明日がどんな日になるかわからないこと、そして明日がわかるようであれば一歩前進、しかし明日のもう一日先が見えるようになると、何か考えることができるようになる、と」。まず、このような状態を作ることがHuman Securityでは大事と言われました。この後、インドのNGOで女性Empowerment活動で活躍し、注目されているMs. Mirai Chatterjee(まだ若い女性です)が彼女の経験、考え方等を話しました。底辺の人たちから動いていく、そして政策等にコミットし、発言していく、上からの施策では何も変わらないという趣旨です。このNGOには予算もつくようになったということです。どう予算を使うかも自分たちで、自律的に、透明度高く運営している(あたりまえですが、それが実行されにくいところに多くの問題があることはどこでも同じ)とのことです。この2人の話を聞いても感じることですが、結局、人は何をし、どんな考えかを、いろいろな人の前で数分で話すので、本人の人柄を含むすべてがさらされ、評価されるという場所なのです。肩書きはまったく関係がありません。その肩書きに期待されるだけの内容、哲学が聞き取れなければ、みっともないだけのことなのです。そのような人たち一人一人が、国を理解し、理解され、人の交流へとつながるのでしょう。緒方さんは本当に日本の誇りです。

Japan Dinnerの後は、司会をした千野さんを元気づけようと、ユニクロのCIOの堂前さん(若くてきれる、いい人です。この人も「ダボス会議」の“Global Leaders for Tomorrow“の一人です)と午前ちょっとすぎまでいろいろ話し込みました。