ロンドンにて

ご無沙汰しました。しかし国内外でいろいろなことが起こっており、忙しくしています。特に学術や科学政策では国際的な動きがどんどん進んでいるのですが、日本ではこのような動きがあまり認識されていないのも気がかりです。

前回からもいろいろなことが起こっていますが、それらにも時には触れながらもっと頻繁に更新していきます。

去年の9月、ヨハネスブルグで開催された世界環境サミット(WSSD)は、前回のリオデジャネイロから10年ぶりとなる開催でした。南北問題等の根本的な問題は、政治的な解決は何もできませんでした。しかし、科学者社会を代表する、ICSU等が、いろいろなパネルに招かれ、意見、提言を求められたことは画期的なことです(Science, Sept. 13th, 2002, issue に報告されています)。

小泉首相が途上国の教育への経済的援助を約束し、国連では昨年12月の総会で2005年からの10年を「教育の10年」とするスローガンを承認しました。UNESCOが中心となってプログラムを推進していくことになるでしょう。しかし、教育にはどんな問題があり、どうすればよいのかについては各国とも夫々の問題を抱えており、なかなか解決策を見出せないでいるようです。これが学術に関わる我々の責任です。

そこで、学術会議の主催で1月に沖縄で国際会議を開催し、UNESCOほか多くの参加を得て、情報交換等で大変参考になる結果が得られました。さらに、WSSDでは“Ubuntu宣言”という教育への提言がされ、日本学術会議が中心になって2年前に結成したアジア学術会議が、この宣言にサインした世界11の組織の1つになりました。これは大変なことです。これにともなって次のステップへの戦略会議を、この宣言にサインした11の組織が集まって、2日間に渡り東京の国連大学でブレーンストーミングをしました。その結果、5月始めに開催された国連の委員会で「科学者と教育者」の重要性が新たな“Stakeholders”として認められる文章になるまでにこぎつけました。大変なプロセスでしたが、国際政治の複雑なプロセスにどのように働きかけるかなど、だいぶ勉強になりました。

医学部の学生さん、特に6年生には来年の卒後研修義務化に心配が集中しているのではないでしょうか。たしかに、このような大きな問題を扱っているにしては、厚生労働省の情報提供が少なすぎます。思い切ってマッチングは3年程度延期するとか、今なら実行できるのに。とにかく、全研修病院、施設が参加しなければ「マッチング」はうまくいきません。新しいことは、時間をかけて、情報を充分に公開しながら進めるのが肝要です。従来は考えられなかったようなことですが、政府の政策形成には国民、関係者とのオープンな会話と、開かれた情報が必須です。良いシステムは関連者皆で作り上げていくものです。