2007年5月

社団法人関西経済連合会 産業・科学技術委員会
日程: 2007年5月14日(月)
会場: 関西経済連合会会議室
演題: 「『イノベーション』で日本を変える」

国際エグゼクティブフォーラム朝食会
日程: 2007年5月22日(火)
会場: パレスホテル
演題: 「イノベーションの課題」

社団法人科学技術と経済の会
日程: 2007年5月23日(水)
会場: ホテルグランドパレス
演題: 「日本のイノベーションを担う若手技術者教育」

第50回 日本腎臓学会学術総会
日程: 2007年5月26日(土)
会場: アクトシティ浜松
演題: 「日本腎臓学会の課題」

南フランス プロヴァンス、カマルグから

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Singaporeから帰国したのは22日の日曜日の朝でしたが、午後には私達のNPO、Health Policy Instituteが主催する心臓病についての会議が国連大学講堂で開催され、私も参加しました。このNPOの活動もどんどん広がっているようで嬉しいです。これからの日本の社会のあり方を示す、一つの活動だと思います。

23日は朝早くから官邸で「大学改革」についての「教育再生会議」に参加。それからすぐにイノベーション25会議と盛りだくさんの一日でした。夕方には、科学技術振興機構主催の各国大使館科学アタッシェもお招きした会議でイノベーションについて講演し(沖村理事長も来ておられました)、その後すぐに成田に向かいました。私がよく利用するAir France成田21:55発のパリ行便です。この便はヨーロッパのどこに行くにもとても便利で、朝4:30にパリCDG着なので、午前中にはヨーロッパの主要都市に着くことができるのです。東京で一日仕事をしてからの出発ですし、12~13時間のゆっくりしたフライトがとても楽なのです。

フライト中に2本映画を見ました。新007の「Casino Royale」、そして「Dreamgirls」(Diana RossとSupremesがモデルですね。70年代に青春を過ごされた方たちには懐かしい名前と思います)です。それから、機内で元SONY社長の出井伸之さんや日産のゴーン社長の奥様にお会いしました。

出井さんは面白いことを始めましたね。「Quantum Leap」というコンサルティング会社です。 2006年12月に発売された出井さんの本、「迷いと決断:ソニーと格闘した10年の記録」(新潮新書2006)を読むとわかりますが、グローバル企業のトップは特に大変な仕事です。

今回の目的はSONYのComputer Science Laboratory(CSL)が主催する会議に参加することで、会議は南フランスのプロヴァンス、ローヌ川河口の湿地帯にあるCamargueで開催されます。CSLの所眞理雄所長も同じフライトで、現地パリのCSL所長Steelsさん、東京の吉田さんと北森さんたちと合流し、TGVで快適な旅をし、3時間ほどの車中ではワインでランチをしました。フランスは平らで広々と一面の緑と菜の花の黄色が広がり、天気は快晴でとてもいい気分です。

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写真1: シャルルドゴール空港のTGV駅で、左から所さん、北森さん、私

Camargueはローヌ川河口の湿原にあり、塩の産地でも有名です(写真2)。さらに、ダヴィンチコードのマグダラのアリアの従者であったとされる「黒サラ(サラ・カリ)」を祭る教会のある、Saintes-Maries de la Merが海辺にあります(写真3)。50年ほど前に「Crin Blanc」(「白いたてがみ」という意味ですが、邦題は「白い馬」でしたでしょうか・・・)というフランス映画があったのを思い出しました。Camargueの名物の白いたてがみの白馬と少年の物語で、白いたてがみの白馬が海を走る美しい最後のシーンが目に浮かびます。ここかしこに白馬がいて、乗馬なども楽しめるようになっています。

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写真2: 積み上げられた大量の塩の丘

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写真3: 教会の屋根で

今回は小さな会議(全員で15人程度)で、テーマは「持続可能な社会」でした。場所はHotel Mas de la Fouque (写真4)で開催され、なかなか魅力的なところでした。会議の内容もなかなか面白いもので、特にコンゴに3年も滞在して(すごいことに奥さんと3歳の息子も連れて)、未開の現地人と生活をしたLondon School of Economicsの話は、想像を超えていてとても面白かったです。自然の中に住む人間の知恵の深さを感じさせるような話でした。こんな研究をするなんてすごいですね。なぜ、コンゴなのか。ちゃんと理由があるのです。とにかく人がしない、したことのないテーマを追求することを求められるのだそうです。さすが、英国の強さだと感じました。

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写真4: ホテルの周りの風景

夜からはいつも仲良くしている北野さんも参加し、大いに盛り上がりました。

2日目の会議でも議論は尽きず、ヨーロッパの省エネ住宅(例えば、Passive-On Project)など、大変参考になるものばかりでした。

国際患者会シンポジウム「心疾患医療政策への患者参画」を開催いたします。

代表理事を務めるNPO日本医療政策機構と株式会社富士通総研の主催で、国際患者会シンポジウム「心疾患医療政策への患者参画」を4月22日(日)14時30分~ 国連大学にて開催いたします。

プログラム : http://www.healthpolicy-institute.org/ja/doc/eventDoc/200704symposiumProgram.pdf

お申し込みはこちら : http://www.healthpolicy-institute.org/ja/event/index.php?etm_id=2

または、日本医療政策機構事務局(担当:乗竹)まで
Tel: 03-5511-8521 Fax: 03-5511-8523

 

Singaporeから

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4月17日は久しぶりに外国人記者クラブ(FCCJ)に招かれ、イノベーション25の話をしました。この会見の内容は外国人記者クラブのサイトで見ることができます(いずれビデオでもご覧になれるようになると思います)。会見に先立ち、ちょうどScience誌(April 13th issue)に私のインタビューが掲載されたばかりだったので、イノベーション25の英文報告書と一緒にお配りしてお話しました。やはり英語でのインタビューは、言語の成り立ちの背景からも人間関係がフラットなので、話しやすいです。以前から言っていることですが、日本語で話すと、どうしても聞いている方たちの顔ぶれを見て社会的地位などを考えて遠慮したり、言葉を選んでしまい、それだけで結構気を使ってしまって本音の話がしにくいのです。

19日にはSingaporeに行きました。ここはアジアでもっとも急速に、また、ダイナミックに成長し、変革している場所ですね。20日に行われるバイオテク政策企画立案の中心である「A*STAR」の理事会、Member of the Boardに就任して初めての会議に出席することが目的です。たった18ヶ月という短い時間で設立されたBiopolisで開催されました。これまではPhilip Yeo大臣が科学政策を牽引してこられ、彼の貢献は世界中で注目されていました。とにかく自分でよく動lき、人脈が実に広い。また決断と実行力も抜群で政府中枢からの信頼も厚いことが感じられます。これからは文部次官等を歴任してこられたLim氏が担当されるようで、Yeo氏は新規起業などに関わっていくようです。よく考えよく勉強し、決定も決断も早いのが、この小さな政府の小さな国(人口約400万)の活力の源です。とにかく若者の教育、国際化を中心とした人材育成を長期戦略の中心として国家政策をすすめています。一方で効率よい政府と社会システムが、この国を最も知力に満ちた国に挙げている大きな要因でしょう。写真1は、同じ理事会メンバーのTachi Yamada氏(UCLA時代からの友人です。現在Gates FoundationのGlobal Health Initiative Directorとして世界中を駆け回っています)、久しぶりにお会いした元京都大学教授、ウイルス研究所所長で、ここのBiopolisで活躍されている伊藤嘉明教授と撮った一枚です。伊藤先生のような方がもっと出てくるといいのですけどね。

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写真1: 左から伊藤教授、わたし、Dr Yamada

また、今回は国立シンガポール大学病院の中にSyndey Brenner先生を記念した、分子生物学臨床研究所の開設式もありました(写真2)。沖縄大学院大学の設計にも関わっている建築家、Ken Kornberg氏による改築がされていて、なかなかいい印象です(写真3)。彼は、Nobel賞受賞のArthur Kornberg氏の息子さんで、去年お兄さんがNobel化学賞受賞しています。親子2代での受賞は3組目だと思いますが、その一組が、誰もが知っているCurie婦人とその娘Joliot Curie氏です。この母娘のすごさがご理解いただけるのではないでしょうか。

Singaporeはいま活力に満ち溢れています。

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写真2: Brenner研究所会所式典で、左からYeo大臣、Brenner先生、Lim議長

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写真3: Brenner研究所で、建築家Ken Kornberg氏と

沖縄へ、そして「メールの達人」とは? そしてイノベーション25の中国語版

今日(6日)は、日帰りで沖縄へ行き、そして大阪に戻ってきました。

沖縄では、沖縄科学技術大学院の建物の建設が開始されるにあたり、「鍬入れ」というのでしょうか、その儀式に参加しました。理事長のSydney Brenner先生、仲井真知事をはじめ、多くの方が出席された素晴らしい式典でした。これでいよいよ出発ですね。これまでも、そしてこれからも色々あると思いますが、応援お願いします。

西岡郁夫さんは、ベンチャーの旗頭の一人です。日経ビジネスオンラインの「経営新世紀」というサイトで、“西岡郁夫のIT道具箱”というコラムを掲載されています。第2回の「幹部だからこそメールを」では、“トップの方たち”のメールの使い方が紹介されており、私まで紹介していただいています。嬉しいですね。是非ご覧下さい。

また、「イノベーション25」の英語の要約がサイトに掲載されていますが、今度はなんと出口さんのDNDで中国語の要約が掲載がされました。嬉しいですね。フラットな世界では発信力が勝負です。評価するのは、自分達ではなくて、不特定多数の世界の人々です。フラットな世界とは、そういうものです、それにしても世界に向けた日本の発信力は実に弱いですね。発想のせいでしょうか?誰のせいかといえば、鎖国マインドのリーダーたちでしょうね。

2007年4月

第27回日本医学会総会 「生命と医療の原点-いのち・ひと・夢-」
日程: 2007年4月7日(土)
会場: 大阪国際会議場
セッション: 「医療と医学の倫理観-医療倫理について第一線の研究者が語る-」

第207回 NISの会
日程: 2007年4月11日(水)
会場: ANAインターコンチネンタルホテル東京
演題: 「イノベーション25」

第18回製薬協政策セミナー
日程: 2007年4月14日(土)
会場: パレスホテル
演題: 「イノベーション25と医療」

国際パーソナル・テレヘルス・シンポジウム
日程: 2007年4月17日(火)
会場: TEPIA 4階ホール

国際患者会シンポジウム「心疾患医療政策への患者参画」
日程: 2007年4月22日(日)
会場: 国連大学
演題: 閉会の辞

第2回 CST International Salon(科学技術・文化交流サロン)
日程: 2007年4月23日(月)
会場: 独立行政法人科学技術振興機構東京本部
演題: 「イノベーション25」

憂国の歴史学者、エール大でシンポジウム 朝河貫一再び脚光

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週末、東京は桜が満開です。しかし、残念ながら天気は下り坂ということです。

さて、今回のタイトル「憂国の歴史学者、エール大でシンポジウム 朝河貫一再び脚光」は、3月29日の産経新聞に掲載されていた記事のものです。このブログを読んでいただいている方は、朝河先生の名前を既にご存知の方も多いでしょう。サイト内を検索しても、10件程度が検索結果に出てきます。

この産経新聞の記事の中見出しは、“先見性、日本の針路示唆”そして“朝河貫一の言葉 「日本は世界の信を失ふ」「米国は輿論の国」”とあります。私がこのブログで何度も発信している意見と同じ趣旨です。この100~150年を見ても、日本という国は基本的思考が内向きであり、俯瞰的にモノを見て、思考することが得意でない「鎖国マインド」です。これはなぜなのか?面白いテーマだと思います。

日本が世界の中で小さな存在であるならば、日本一国だけの問題で済んでしまうかもしれないし(それも困ったものですが!)、国際的にはあまりたいした問題にはならないでしょう。しかし、日本は世界第2位の経済大国です。グローバル時代に独りよがりでは済まないのではないでしょうか。今の世界情勢、急速に変化しているアジアの情勢や日本の動向を見ていると、ちょと心配です。

同じような“懸念”を感じたから、このタイミングで、このタイトルのシンポジウムが開催されたのしょうか?そうではありません。朝河先生がYale大学の教員になってちょうど100年ということで、この3月に開催されたのです。「Japan and the World: Domestic Politics and How the World Looks to Japan」というテーマの会議で、日本からも皆さんがご存知の方が何人か参加されています。今の世界の状況を考えてみると、日本にとっても、歴史的な100年ということも、みな偶然ですね。

朝河先生は、日本人で初めて米国の大学教授になった方です。それもYale大学でした。Yale大学に初めて正式に入学し、卒業したのは、これも何度か紹介している第6代東京大学総長で、会津藩白虎隊の生き残り、山川健次郎先生です。2005年、現Yale大学学長のRichard Levin氏が来日した時にも、東京大学の講演でこの二人を紹介しています。

日本の国際人50人ほどを連載で紹介している、在日留学生向けのサイト「月刊 向学新聞」というのがあります。大変意味深いサイトで、朝河先生や山川先生をはじめ、このブログで紹介している方々がここでも紹介されています。

“科学という「国境なきツール」を生かした国のビジョンを”(岩波書店 「世界」)という対談形式の記事でも「生命科学と倫理」を巡って書かれていますが、この記事の中でも朝河先生について触れていますので、一度読んでみてください。

"歴史は繰り返す"のでは困ったものです。ジュネーヴで行われた「World Knowledge Dialogue」のランチセッションでは、私の結論、「Have we become wiser?」がセッション報告の見出しになっていました。

「イノベーション25」中間報告の発信

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2月28日に書いた「イノベーション25」中間報告に関するご意見を、報道やblogなどで色々と拝見させていただいてます。また、3月12日に書いたblogと同じような考えが財政諮問会議でもあり、いよいよ大学改革の流れは同じ方向を目指し始めている様相です。大学が自発的に改革するのは難しいですね。今までの日本の大学成立のいきさつを考えれば、無理もありませんが。ここでも、出口さんDNDでは議論が盛り上がっています。ありがたいことです。

私の発信も増えています。皆さんの考えや意見を伺えるので発信は大事ですね。「JST News」2007年3月号に、「異能、異質、出る杭を育てる社会を」というタイトルでイノベーションの「キーワード」を発信しています。有線テレビでも政府広報の一環として発信されたようです。「見ましたよ」とお電話をいただいたのですが、残念ながら私は有線放送に加入していないので見れませんでした。

また、3月27日の日経新聞の「経済教室」では、「本質は社会制度の変革」と言うタイトルで、イノベーションの本質について触れています。見出しが「環境、格差を克服;政策競争で遅れをとるな」、中見出しは「後戻りできないフラットな世界」、「供給側の論理打破して連携」、そして「重要になる社会起業家」、といったものです。

また、「イノベーション25」の英語要約版が掲載されました。ちょっと遅くなりましたが、日本の政策としては珍しいのではないでしょうか?早速、ある会でお会いした在京英国フライ大使から「報告を見ましたよ」、とコメントをいただきました。このような発信と反応を知ることは大事だと思います。

とにかく、日本は外からは見えにくいのです。発信するという意識が、官も、民も、学も初めからないのです。このような状態で、このフラットなグローバル時代の世界でどうしようというのでしょうか。時々書くのですが、「目を開け、心を開け、そして考えよ」です。世界は広いのです。