GHIT設立一周年

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GHITとは「Global Health Innovation Technology」というファンドで、世界でも初めてという、産官が共同して日本のグローバルヘルスへの新たな貢献の仕方の試みです。ちょうど一年前の6月1日に発足しました。

何が特徴か。それは日本の「強み」と「弱さ」を補完するような「仕組み」になっているのです。日本の製薬企業にはグローバルヘルスの課題に貢献できる多くの「種」、つまり化合物や、技術があるのです。これは「強さ」です。

一方で、それらの「強さ」を生かしてグローバル世界へ展開する競争には、いくつもの内的障害があるのです。それは新卒一括採用、年功序列を基本とした組織、したがってそこには「異論」を歓迎するような企業文化、国際化への対応などのスピードが遅れているのです。これが「弱さ」です。言うなれば日本の大企業に共通するともいえる企業人の「マインドセット」の問題ともいえます。

では、GHITがなぜユニークなのか。それは日本の製薬界の大企業5社が5年間の「出資」をし、これにマッチしてゲイツ財団が「出資」。この両者の額にマッチして日本政府が、厚生労働省と外務省から資金(国民からの税金)を拠出するという仕組みです。

私は、この仕組みつくりには全く関与していなかったのですが、出来上がる最終段階で代表理事就任を依頼され、引き受けたのです。その理由は、このサイトを訪ねる方にはお分かりかと思いますが、このユニークな「国際性」です。理事と監事は国内と国外が半々ですが、評議員は出資しているゲイツ財団を含めたグループという構造です。

いろいろな集会などで、キャンペーンをしていますが、従来の「日本型産学共同」と違って、「ゲイツ財団」がパートナーですから、皆さんなんとなく「世界へ」という気分になって下さるようです。

チームのみんなの努力で、この1年間で相当な進み方といえるでしょう。海外でもThe Economist、The Lancet、Financial Timesなどでも取り上げられています。1年目の6月6日、東京で開催された理事会。評議員会でもよい評価を受けることができました。

夜の会食の後、私は羽田空港へ。San Franciscoへ向かいました。

元気な若者たち

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先週は、異人・変人の集まるSONY CSL遠藤 謙くんが、為末 大さん、RDSの杉原さんの3人が訪れてくれました。彼がMIT時代から進めていた義足などの研究をさらに進めるために起業したことを伝えに来たのです。

彼はMITでPhDを取得、その時代からのお付き合いです。See-D1)などでも協力してきました。

地雷や交通事故などで義足を使っているインドなどの貧しい人たちの支援を進める一方で、パラリンピックの選手の支援など、人間の可能性をさらに高める試みを始めています。彼のMITの先生の一人が、ことしのTEDで驚異的な義足の機能を見せてくれているHugh Herrさんです。こんなことが可能になると、パラリンピックの選手のほうが五体満足のオリンピック選手を超える記録を出すことも可能になるでしょうね。最近話題のコンピューターとプロ棋士の将棋の試合のように。

そこへWHILLの杉江くんも、本拠地をシリコンバレーに移して以来ですが、遊びに来てくれました。これは日本を代表する4つの企業の若いエンジ二アたちが立ち上げたベンチャーです。そして彼から、特異な才能を秘めている、また普通の勉強になじまない子供たちの教育支援の活動をしているWINGLE1)の長谷川さんを紹介されました。

先日も紹介したばかりのTeach For Japanの松田くんも、朝日新聞Globeで紹介されていましたね。

いろいろなところに、行動する、素晴らしい人たちがいます。

Safecast、新しい時代の放射能調査のあり方

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福島原発の事故以来、放射能のモニター、日本政府の公式発表などについては、“予測していなかった”事故とはいえ、世界からもその信頼性についていろいろ批判され、懸念されているところです。

事故の1週間後には放射能の測定を開始し、「勝手連的」に広く地元の人たちと情報共有しながら活動してきた一つに「Safecast」があります。先日、このblogでも触れたところです。

はじめは自分たちで測定器も作り上げ、測定値の正確性をチェックし、データをすぐにオープンにするという、素晴らしい発想と技術。透明性と公開性こそが信頼の基本と、すぐに活動を始めているのです。

世界の状況を反映するかのように、この測定器の作り方やWebへ掲載するところまで、どんどん自動化され、誰にでもできるので、世界に広く広がり始めているのです。

さらに素晴らしいことに、最近IAEAにも招かれ、この時代の流れを表すようにSafecastが高く評価されたのです。

その経過や様子などの報告については、以下の2つのサイトに目を通してください。
→ http://atomicreporters.com/2014/02/22/hans-brinker-the-iaea/
→ http://blog.safecast.org/2014/02/safecasting-the-iaea/

“No wonder Safecast has a following at the IAEA. Two random guys in Japan became more widely trusted by many than 60-years of UN-agency authority.”と、この“Atomic Reporter”レポートにあります。

ちょっと長いかもしれませんが、その時のIAEAの様子などがわかりやすいので、読んでみ
ることをお勧めします。IAEAの内部でも、多くのSafecastファンができたようです。

今のようなネットとハイテクの広がる時代の世界では、私が繰り返して主張している、「独立性、透明性、科学性、国際性」こそが信頼の根幹であることの証拠です。国会事故調も、その精神が基本でした。

では、日本政府や東京電力、行政、企業、メディア、大学等々、既存の組織の在り方、公開性、透明性、国際性などは、どんなものでしょうか?

このSafecastには、いろいろな形で参加も、応援もできます。自分たちで放射能測定器を組み立てる、それを使って測定に参加するとか。

Safecastの活動は、日本中に、そして世界にも広がっているのです。

3月11日前後

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3月11日のブログでも報告しましたが、この2週間ほどは東日本大震災と福島原発事故の「憲政史上初」の国会事故調の委員長といったことで、このテーマに関するといろいろな活動にお招きを受け、参加しています。

東大では伊東乾さんたちの企画1)がありましたが、残念ながら私は初めの20分で国会事故調のことなどをお話しして退出。その後、上野駅から東北新幹線で仙台へ。Impact Japanと仙台市の企画「Sendai for Startups! 2014」 に参加。ご当地の起業家たちのプレゼン、おいかわデニムの及川さん、私はというと、最後に私たちのImpact Japanが仙台と一緒に始めている「IntilaQ」を紹介しました。

その後もクラブ関東での講演、スイス大使館では2日続けて会合があり、週末には「わかりやすい事故調」「日本赤十字社」とのコラボで、多くの高校生、大学生などと、3重の大災害の避難者の生活、現状などのセッションに参加。その後、東京文京区、さらに震災後には石巻で新しい医療制度構築に素晴らしい成果を上げている武藤さんの主催する「研修」、日米医学医療交流財団で、ますます変化する世界と日本と視点で考える「日本のこれから」といった視点からの話をしました。

なかなか変われない日本ですが、若い人たちの間の変化は、注目できるものがいくつも出てきていると思います。

がんばれ、日本の若者たち。

Innovation City Forumのパネルに参加

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六本木ヒルズも早いもので10周年を迎えたとか。それを機会にいろいろなイベントがありますが、10月半ばにはInnovation City Forumが3日間にわたって開催されました。

私も最終日のクロージングセッションにお招きを受けて、ちょっと感激。なにしろこういう「異業種バトル」みたいなのは嫌いではないので。司会は森美術館を動かしている南條さん。パネルがNew Yorkの近代美術館(MoMA)館長のGlenn Lowryさん、LondonのTate Gallery1)の館長のNicholas Serotaさん、MIT Media Labのジョイ伊藤さん、そして私なのですから。

ジョイはこの全体の企画に関わっていますし、LowryさんもSerotaさんもSuperstarです。しかも、この順番で10分ずつプレゼンしてからパネル。

皆さんのプレゼンもコメントも、さすがになかなか素晴らしいものでした。それは承知していたので、みなさんとはダブらないように何でも言えるようなスライド(PDF)を用意して、未来の都市と美術の、ちょっとした話をしました。

※日本語はこちら

しかし、このAcademy Hillsも10年なのですな、もっと以前からあるようにも感じていましたが。多くの困難を超えて、長い時間をかけてこのような都市計画の理想を追求した森さんに感謝です。

このような機会を与えてくれた南條さんほかの皆さんに感謝しています。

Philadelphia-2: Fireside Chat With Dr. Kiyoshi Kurokawa

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今回の主目的は、何年もお誘いを受けていながら、参加できなかったJapan America Society of Philadelphiaが企画する”Health Sciences Dialogue”、2日間の集まりです。いろいろ聞いてみましたが、日米の製薬企業、バイオべンチャーをつなぐ会としてよい評価を受けています。

朝7時から、日本からの参加者との朝食がセットされ、10人ほどですがいろいろな話題に花が咲きました。

9時からセッションが始まり。New York から日本総領事館から相(あい)広報センター長も参加し、ご挨拶。

バイオテクべンチャー、べンチャーキャピタル等々の良いテーマとパネリストで、製薬、米国と日本の動きなどを中心に話が進みます。昼食の終わりを見計らって、私の登場、”Fireside Chat with Dr Kiyoshi Kurokawa: How Can Japan Better Foster Innovation?” というセッティングで80分ほど、David Flores(Co-Founder of BioCentury Publications)とHoward Brooks(Partner, Americas Life Sciences Sector Leader, Earnst and Young; この会議中に同じ部門のGlen Giovannettiともいろいろ話ができましたが、、)の2人からの質問に答え、あとは会場との質疑応答という趣向です。

Philadelphiaは私といろいろ関係というか、ご縁があります。University of Pennsvlaniaは私にとって初めての外国ですし、ここでの2年間が私のキャリア1)を日本から世界へと変えたところですし、私のとても尊敬している津田梅子(このサイトの中で「検索」してください)が学んだところですし、私の関係しているNoguchi Hideyo Africa賞1)の野口英世の世界的キャリアの始まったところでもあります。ほかにもいろいろなつかしい思い出のあるところです。

この会議では、充実した1日を過ごせました。

翌朝は朝7時に出発、3時間弱、車でJFKへ向かい、帰国の途に就きました。

あっという間でしたが、Philadelphiaは、なにか懐かしかったです。

Nature Café 「変われるか、ニッポン?」

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このブログでも案内していましたが、科学誌としてよく知られたNatureで、「Nature Café」という企画をしています。

今回は第12回で、沖縄科学技術大学院大学(OIST)との企画。日本ではどちらかといえば「Crazy Ones、変人」らしい科学者のパネルを企画しました。タイトルが「変われるか、ニッポン?~変化を迫られる大学、研究機関~」というタイトルです。

場所はSONY CSL「天才、異人」1)を生み出してきた小さな研究所です。

パネルは、この研究所の所長の北野宏明さん1)、東大で天文学と数学のコラボを試みる機構のリーダーをしている村山斉さん(たくさんのビデオがあります)、OIST の杉山(矢崎)陽子さん、そして私です。司会は毎日新聞の元村有希子さん

大部分が学生さん、いいね。パネルの皆さんが10分ずつ、元気のよい「変な話」をして、そこからパネル。そこへ、MIT Media Lab 所長のJoi Itoさん(1)が参入してくるサプライズ。

参加の若者たちと、大いに、大いに盛り上がった夕べでした。

刺激的で、よかった。

Kavli Prize Symposium

Norwayと日本の科学技術協定10周年を記念して、「Kavli Prize Symposium」12)とういう講演会が5月27日、本郷の東京大学で開催されました。

午前のセッションは2008年のKavli賞Nanoscience分野受賞の飯島澄男先生、さらにKavli Institute for Systems Neuroscience of Norwegian University of Science and TechnologyのProf Menno Witter、そしてKalvi Institute for the Physics and Mathematics of the Universe, The University of TokyoのProf Hitoshi Murayamaです。

私は遅れて参加し、最後の村山さんの相変わらずexcitingな話の途中でした。彼は本当に話がうまいですし、科学に対する愛情にあふれた講演です。

午後は、Norwayの科学技術担当副大臣のEagnhild Setsaasさん、吉川弘之先生の’Sustainability in Science’ (ちょっと難しいタイトルでした)、私の’Global Health’、Prof Ole Petter Ottersen(Rector of University of Oslo)のプレゼンがあり、その後、私たち3人の他に、Univ Bergen、Univ Tromso、Univ Tokyoから3人がさらに参加し、6人でのパネルをしました。

活発な議論がたくさん出て楽しい時間となりました。夕方からNorway大使館でのレセプション、参加の皆さんご機嫌でした。

私は、前夜のNorway大使館での歓迎ディナーにもお招きをいただきました。「Science、Philosophy、Politics」というテーマで、皆さんを刺激するスピーチをするようにと、大使のご命令がありました。

去年からのNorwayとKavliと日本との関係12)でお役にたてるのはうれしいです。

SONY CSL

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日本でも最も“奇人”、“変人”を生み出すSONY CSLが開設25周年を迎えた今年。例年のOpen Houseと特別企画が本社で開催されました。所マリオさんが始めたこの研究所、素晴らしい存在です。

まずは所長の北野宏明さんの挨拶。きちんと背広にネクタイなんて、めったにないことなのに結構気を使っているのでしょう。“Act Beyond Borders”のもと、一人一人が最も先端なことを勝手にする、誰にも負けない面白いことを、存分に創造性を発揮してくれ、ということですね。

さすがに皆さんのプレゼン、お客さんたちが興味津々に楽しんでいます。今年のプレゼンは暦本純一さん、Alexis Andreさん、大和田茂さん、遠藤謙さんによる第1部。

北野宏明さん、船橋真聡さん、Natalia Polouliakhさん、山本雄士さん、佐々木貴宏さんの第2部。

皆さんそれぞれがとても面白いというか、すごいというか、誰にも命令されているわけではないのでそれなりにしんどいでしょうけど、すごいことをしている、という感じ。

そこから所マリオ、北野、暦本さんの3人での「Toward Next 25 Years」のオープントーク。そしてパリの研究所のLuc Steelsの作になる「AI-Artificial Intelligence-Opera, Casparo」。途中で失礼せざるを得ず、全部は見れませんでしたが、Lucの才能と洗練された欧州の伝統の深さを感じることのできる作品です。

北野さんは、やたらと多彩な分野で、かなり先を見据えたとんでもないことを考え、世界を股にかけて行動し、ぐいぐいと同時にいくつもの結果を出していく稀有な人。「Crazy Ones」の一人です。

この数日前も、一緒に夕食をする機会がありましたが、すごいよ、ほんとに。

こういう人たちと一緒にいると、いつもワクワクしてしますね。

 

私の受賞お祝いの会と吉川先生の「3つの層」の言葉

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去年、私が委員長を務めた”憲政史上初”という福島原発の「国会事故調」に対して2つの受賞、AAASのScientific Freedom and ResponsibilityとForeign Policyによる「100 Top Global Thinkers 2012」がありました。

このことを祝ってあげようと主として科学者サークルの友人たちが企画したとても楽しい会がありました。国会事故調にもいくつかの大事な指摘を頂いた元東京農工大学学長の宮田清藏さんが音頭取りで企画してくれたのです。私の国会事故調についての講演との組み合わせです。

私にとって、国会事故調に対するこのような世界の高い評価はとてもうれしいことですし、これだけの仕事を6か月という短期で達成できたのは、特に事故調のチームを中心とした多くの人たちのおかげです。

この会は東大総長、日本学術会議会長等をされた私の尊敬する吉川弘之先生の国会事故調と私の紹介で始まりました。吉川先生は21世紀に入ってすぐに、特に日本学術会議と世界の科学者アカデミーの大転換にあった時に、両方で責任ある立場でとても苦労され、日本学術会議では会長、私が副会長として、そのあとを私が会長と、何年もご一緒に仕事をさせていただいたこともあり、私のことはよく理解されているといつも思っていました。

しかし、予測もしなかったことですが、先生はこの成果について「3つの層で喜んでいる」と始められ、私の行動についての考察をされました。こんな話の展開になるとは、私も思いもしないことでしたが、多くの皆さんもと思いますが、私も感動しました。この吉川先生の「3つの層」については、出口さんのメルマガ
(英訳はこちら)がかなり正確なので、ぜひ目を通してください。当日の写真もいくつか掲載されています。

石倉洋子さんのblogにもこの集まりについて書いてくれています。

米英豪、ノルウェー、スイス、藤崎駐米大使などの参加とご挨拶ほか、根本大臣ほか何人かの参加の国会議員の方々にもご挨拶いただき、ドンペリ、KENZOワインなど、とてもとても楽しい会でした。

皆さん温かいお気持ちを感じる集まりでした。ありがとうございました。