医療政策機構の活動と「驚くべき」評価

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私は6年ほど前から、「医療政策機構」というNPOを立ち上げ、意識を共有する仲間たちと活動しています。

機構のサイトからもわかるように、国に頼らず、超党派で医療政策の検討、患者の声や社会の声を取り入れるプロセス形成の政策とリーダーシップ形成、また「グローバルヘルス」 主要な3つの柱にして活動しています。有能な意識の高い人たちが参加し、若い人たちにはキャリアの一部として参加してくれる方たちが増えているのもうれしいことです。つまりは、日本の市民社会への転換の促進と、グローバル世界の市民国家への転換を促進する活動ともいえます。

奇数月に朝食会を開催し、会員との対話の機会も作っています。恒例ですが、1月は私がご挨拶を兼ねてお話しました。みなさん、それぞれの立場で医療に関心のあ る方たちばかりです。ですから、今回はちょっと趣向を変えて、自分の立場をはなれて、より客観的に自分の立場を批判的に観察したうえで発言していただく「Q&A」 にしました。皆さんには突然だったのでちょっと難しかったかもしれません。でも、客観的に自分の立場を離れて全体像を俯瞰して自分と自分の属する業界を見る「クセ」をつけることは、政策などを考えるときには特に大事です。「外から見た日本」、「全体のなかの部分」を常に考えることです。ある書評(3段目)にもこのことを書いたことがあります。

2 月10,11日の2日にわたって、恒例の「医療政策サミット2010」を開催しました。これについてはまた報告しますが、民主党政権からは長妻 昭 厚生労働大臣、枝野幸男行政刷新担当大臣(10日任命されたばかりでした)、古川元久内閣府副大臣、津村啓介科学技術等の政務官、また民主党からは小宮山 洋子議員、桜井 充 議員、梅村さとし議員、自民党から川崎二郎議員、鴨下一郎議員、世耕弘成議員、公明党の福島元厚生政務次官など参加され、また医療界、患者会、学会、産業界、メデイア 等、多くの参加をえて多いに議論が沸きました。

ところでとても嬉しいことがひとつ。Pennsylvania大学が世界の「Think Tank」評価 をしています。大学の評価ランキングなども、なにかと話題になっていますが、これは「Think Tank」ランキングです。この2009年の評価で は、全体としては「Brookings Institution」でした。しかし、「Health Policy」のカテゴリーでは、1. Harvard University School of Public Health; 2. Bloomberg School of Public Health, Johns Hopkins Universityと順調なところですが、なんと10位に私たちの「医療政策機構」がRank-Inしているではないですか。これにはびっくりしました が、皆さんのおかげ、そして私たちの活動を広く見え、情報発信するよう、日常的に努力していることも評価されているのでしょう。何と言っても政府系の 「Think Tank」が多い中で大奮闘と思います。政府からまったく独立した、この若い、小さな「Think Tank」にとって大いに励みになることでした。

なんかヘンではないか、トヨタの対応

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トヨタの車は製品の品質による世界的知名度、市場規模からも、まさに日本を代表する大企業です。高品質、ハイブリッドの開発などで高い評価です。しかし、ここに来てヘンですね。

まず米国でトヨタの車にアクセル、さらにプリウスのブレーキなどの繰り返す事故、リコールへ発展しました。技術的な欠陥によるものらしいのですが、技術の日本、品質の日本だったのですし、この代表がトヨタということだったのですから、これは大変なことです。しかも、米国政府からのきつい言葉もありました。これも問題ですが、トヨタの対応がヘンだと思いませんか。

海外での報道の扱いは大きいようですが、それに比べると日本ではちょっと小さ過ぎるように思います。日本産業の信用の根幹を揺るがす問題ですから、新聞なども扱いにくいのでしょうか。日本の方たちにももっともっとこの問題について考えてほしいとこころです。

この問題は米国では2007年からのことですし欧州でも2年ほど前からこの問題は認識されていた、ということです。

最近、日本でも担当役員による記者会見がありました。テレビですから、前後の言葉は聞けませんが、ブレーキに関しては「お客様のブレーキに関する感覚が、、」と言ったので、私は「これはとてもまずい」、「言い訳」会見としか思えませんでした。まったくズレています。その後、2月5日には豊田章男社長が記者会見(社長の英語はよかったのですが、「本物のプロ」 -社内にはいないと思います- による原稿作成、指導が必要でした)をしました。どれもこれも後手、後手、しかもコメントが「受身、言い訳、お客様の感覚」等などなのです。これは、リスク対応では最悪と思います。

最近のことではないでしょうが、現場でも、社内でもあまりオープンにものが言えない雰囲気が醸成されてきていたのでしょうか。トヨタは「カイゼン」、「現場から」、「みんなが問題を洗い出し、解決策を見つける」、これが企業文化といううたい文句だったわけですから。

「事故」、「事件」のあったときの対応こそ、後になればなるほど、ダメージは大きくなります。「透明性、客観性、スピード、お客(被害者)志向」、これらはリスク対応の基本ですが、どうなっているのでしょう。

とてもとても心配です。

「東大までの人」と「東大からの人」

人材育成こそが国家の根幹 であることは、このカラムでも繰り返し書いているところでです。グローバル時代に大変化を始めている時代への人材育成には従来とはまた違った要素が必要です。

大学教育については小林久志Princeton大学名誉教授も憂慮されており、最近も小林さんのblog記事を紹介したばかりです。小林さんの意見は、今の日本、皆さんが感じている「衰えていく日本」の根本問題について正鵠をえていると思います。特に大学人、大学関係者、文部科学省関係者には小林さんの資料などにも、よく目を通してほしいものです。

2月6日号の「週刊現代」にも「「東大までの人」と「東大からの人」」PDF)という特集記事が「理系、文系」と分けて書かれています。私のコメントも引用されて(On-lineでは3ページ目、pdfでは4ページ目)いますが、皆さんのお考えはいかがでしょうか。「トップ」はどこでも、いつでも社会の目標、標的ですから。それだけ社会への責任が大きいということです。仕方ないですね。

理系ではUniversity of California at Berkeleyから東大で活躍する村山さんが取り上げられています。

すぐれた若者の才能をノビノビと伸ばす、世界に広く、物理的にも、精神的にも開かれた、闊達でオープンな大学、学会の環境づくりが大事です。

大学も、企業も、組織も、横に動けない「タテ」の社会構造は「フラット」な世界には基本的に適さなくなっているのです。

大きな可能性ある若者たちをどのような人材、人財に育てるか、これがグローバル時代の大きな課題 です。内向きの偏差値人間ばかりでは困るのです。どう育てるか、どのような人たちに育ってほしいのか、これこそが大事なのです。大学の教育への使命は重要です。研究も当然ですがこれも、将来の人材育成の大きな計画の一部です。

ダボスから-3

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ダボス3日目の29日は、午前は何人かのVIPと個別に面談、午後は2時間の長丁場「Prepared for a Pandemic?」、感染症などの専門家のほかに企業、保険会社などの方も参加したセッションの「Discussion Leader」 の1人として参加しました。去年の春からのH1V1に何が学べるか、政府の役割、企業の準備は、などなどリスク、保険、損失、社員と家族、経済へのインパクト等々、実に多面な議論になり、とても勉強になりました。企業も実に周到に考え、予防策を考えているものだ、と感心しました。この辺が、違う分野の一流の人たちとの議論がとても勉強になり、また楽しいところです。

Bill Gatesさんとばったり出会いましたので、2008年のJakartaの話などちょっと。夕方のメイン会場で「Business Leadership」  、Obama政権の経済諮問会議議長のLawrence Summersの「The US Economic Outlook」、司会のCharlie Roseの柔らかですが、タイミングのよい核心をつく質問はすばらしかったですし、またSummersの対応も見事なものでした。このあたりはウェブで見てください。

夜はまずHarvard大学のレセプションへちょっと顔を出し、Drew Gilpin Faust学長 (資料1)(女性の学長です、知っていますね?)と。今年3月に日本にもこられるとか。夜半すぎに仙石大臣ほか2人の大臣が到着される予定もあり、竹中平蔵さん、朝日新聞の船橋洋一さんたち数人で、久しぶりに中華料理レストランでわが国の政権について話す機会をもてました。となりました。ホテルに帰るとロビーでGrameen BankのYunusさんとばったり。去年と同じですね。去年、そしてすでに今年の1月初めにもバングラデッシュに出かけている日本の学生たち (資料) のことをお話しました。彼らも現地でYunusさんと何回かお会いしています。特に今年の新年の訪問では一橋大学の米倉誠一郎先生 (資料1) も学生と一緒に現地に行かれました。教育者はかくあるべしというようなすばらしい先生です。米倉さんのイノベーター(=Entrepreneur「出る杭」)若者支援、実行力には頭が下がります。

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写真1‐3; 「Toward an East Asia Community?」パネル。

翌朝30日、ホテルをチェックアウトして会場へ「Toward an East Asia Community?」、直嶋経済産業大臣登壇、司会はSingaporeのLee Kuan Yew Business School学部長、Kishore Mahbubaniさん (資料1)。私は前列で田坂広志さん、Lawsonの新浪社長さんたちと(写真)。

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写真4; 左から新浪さん、田坂さんと。

次いで、仙石大臣もでられる「Global Economic Outlook」 の前半だけ出席して会場を離れ、帰国の途へ、Zurich空港へ向かいました。このセッションもウェブでご覧ください。Financial Timesの名物カラムニストMartin Wolfの鋭い、しかも軽快な司会というところです。午後は、NHKがホストする道傳愛子さん司会のパネル「The Great Shift East in the Global Agenda」  があり、古川副大臣が登場、ウェブでも見れます。日本でも2月6日(土)、13日(土)にテレビで放映される予定です。

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写真5; 竹中さんと。

ZurichからParis経由で成田へ、機中であまり眠れず、ちょっと疲れました。なぜか日本の将来がちょっと心配になりました、私のこのサイトでも繰り返し出てくるテーマですが。30日午後のパネル「Japan in Transition」でもそんな総括だったようですね。

ダボス会議のウェブサイト はなかなか充実しています。皆さんもそれぞれの関心にしたがっていろいろ訪ねてください。ずっしりと、たくさんの情報、背景、解釈、思想などに触れることもできますし、世界へ目を開かせてくれるでしょう。

ダボスから-2

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雪の会場場前

28日は雪が少し、それなりに気持ちがいい朝です。朝は7;30から、ダボスの町のもう一方の端まで移動、日本からの参加者たち30名ほどで朝食をとりながら懇談をしました。今回は日本から70人ほどの参加があるようで、うれしいことです。

ところで、この「ダボスから」は、このサイトに「blogroll」で出している石倉洋子さんのサイトにもどんどん出てきますから、そちらもぜひ訪ねてくださいね。石倉さんはこのダボス会議でも司会moderatorとして高く評価されている極めて数少ない日本人です。彼女の努力と考え方は彼女のblogでも感じ取ることができ、とても参考になると思います。

9時からは再びダボスの町の反対へ戻り、「Asian Brainstorming」というセッション。アジア以外の方々が大勢参加され狭い部屋がいっぱいになりました。皆さん、アジアへの関心は高いのです。民族、国家、文化、経済、宗教をはじめとした多様性が特徴です。でも現在の世界の対立のひとつの要素である「一神教、しかも同じ神様を信仰するユダヤ、キリスト、イスラム」が衝突しあうのとは違った多様性のあるアジアの宗教です。このアジアが世界金融崩壊後の世界経済成長の中心ですから注目されるのは当然です。とても活気のある議論でした。

その後は主会場にむかい、いくつかのセッションへ。以前に紹介したFareed Zakariaさん(資料)(写真1)は特に政治問題では、特に出番の多い司会moderatorです。

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写真1;南アフリカのZuma大統領と対話するZakariaさん。

Clinton元米国大統領(写真2)は国連事務総長のHaiti問題担当特使です。今回のHaitiの地震被害で活動していますが、これについて特にアッピールされました。いろいろなHaitiの社会の背景、現状などが知れてとてもためになりました。Haitiは成長が期待されていて投資の対象としてもきわめて優れているのだそうですね。このような見方も特に民間援助の仕方を考える上で大事です。

Clinton IMG_2103写真: Haiti支援を講演するClinton氏。

午後は、世界の化学企業の「社長の方々」の非公開の「Brainstorming」に出席しました。これも、この4年ほどお招きを受けて、グローバル企業経営者の考え方など、とても参考になります。日本からは常連の住友化学米倉会長は経団連会長に決まったばかりなので昨日の1日で帰国されご不在でしたが、三菱化学の小林会長が毎年参加されていますし、2年前は東レの榊原社長も参加されていて、この業界でも日本企業の存在は大きいのです。長年の友人、英国のSir David King 、また中国の大物Siweiさんも私と同じ立場で参加しています。今年は米国下院議員のBrian Bairdさんが参加、政治的プロセスの発言もあり、とても参考になりました。会議のあとBairdさんと2人きりで20分ほど話をしたのですが、意気投合して、とてもよい方でした。

ここまで、ダボスの町の端から端へと、2回ほど往復。

後は主としてメインの会場でのセッションに出ました。これらはウェブサイトで見れるので、ぜひ訪ねてくだい。

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韓国のLee大統領(このサイトの1月にUAE原子力発電の件を中心に5報レポートとインド訪問の1報の計6報しています、国のリーダーとして大活躍しています)、今年のG20 のホストです。ハングルで話されましたが、明確なメッセージを伝えて好評だったと思います。

中国の副首相 Li Keqiangの演説、ことしのG8 ホストCanadaのHarper首相(もっぱらG20 を中心に話されましたが、、)、さらに6カ国の首脳のFareed Zakariaの司会によるパネルなど、とてもすばらしいものでした。この最後のセッションでは、会場からの質問はBill Gatesから始まるというものでした。

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写真; Japan Nightで(向かって右から)NHKの道傳さん、タケダの長谷川さん(パネルで大好評)、日経の岡部さん。

この後は、恒例の「Japan Night」(写真)。今年はJETROがホストで、たくさんのお客様がこられとても盛り上がりました。何しろ日本からの参加者が今年は70名をこえるとかで、今までも一番多かったようです。でも、韓国、中国の参加者の数よりは少なかったようですけどね、、。

ダボス会議-1

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サルコジ

例年のことなのですが、26日、World Economic Forum 出席でダボスに向けて出発しました。今回はFrankfurt経由でZurichへ。機内で、慶応大学の村井純さん(Internet) 、夏野剛さん(iMode) 、竹中平蔵さん(経済学)と一緒でした。ダボスのホテルには夜の10時半ごろに到着、ちょっと疲れました。

今年はアジア諸国のリーダーの参加が予定されていますが、日本からは政治については国会開催という例年の課題があり、特に今年は「政治とカネ」が注目されていますので心配でしたが、3人の大臣がこられることになったようです。よかったです。

会議のプログラム等についてはウェブサイトを見てください。

27日は、午前は「Germs and Globalization」、「Arts, Culture and the Digital Age」のセッションに参加。「Arts、、、」では、以前にも紹介したMITのメデイアラボからRhodes Island College of Designに学長として就任した日系2世のJohn Maedaさん(資料1)、(写真下)のプレゼンがとてもすばらしかったです。彼はいくつものセッションに出る人気者です。

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John Maedaさんのプレゼン

午後は「World Economic Forum Brainstorming; Redefining the Global Commons」。なかなか面白いテーマですが、多くの方の参加でちょっと散漫になってしまった感がありました。MITのIdeasLabはいっぱいで入れませんでした、残念。

夕方のプレナリーはフランスのNicolas Sarkozy大統領 (トップの写真、準備中)、なかなかの熱演でした。そのあとで、Lang Lang のピアノ演奏、すばらしかったです。

夜は、「The Rise of Asia」のパネルにアジア開発銀行の黒田総裁たちとパネルに出ました。こういうところで気の利いたことを、どのように手短かに、理解しやすく伝えるか、これが難しいところです。

今年も、また新しいいくつもの出会いがありました。

グローバル時代の日本; 教育の明確な弱さ

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日本の高等教育を含めた教育全体、つまり人材の育成には、グローバル時代を迎えた世界の動向、基本的にパラダイムシフトがきたという認識が欠けていると思います。このサイトでも、私は繰り返し主張しているところです。

先日、Princeton大学の教授を長く務めた小林久志先生 (資料1)、 をご紹介しました。そのときの先生の資料などを含め、何回も先生との意見の交換をメールで交わし、私たちの見解を広げて議論しています。

小林さんのサイトに、最近この論点が、わかりやすく、明確に示されています。私も先生の意見に100%賛成です。ぜひ読んでください。

何とか前進できないものでしょうか?日本の将来は教育にこそかかっているのです。そのあり方について、小林先生の意見には「外から見た日本への懸念」の解決へ、多くのヒントがあると思いますがいかがですか?

印韓両国の関係、一層密接に

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インドは10億の人口を抱え、今後何十年に渡る経済成長が見込まれる国ですがそのインドにおける日本企業のプレゼンスが低いことについては何度もこのサイトで強調してきました (資料1)。

アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電の受注に韓国が成功したことについて書いた5本の一連のカラムからもお分かりのように、韓国のビジネスセクター、サムソン、LG,ヒュンダイ等々、は「世界進出(Go Global)」を極めて積極的に推進しています。

ここ数日間に報道されたこの関係のもう1つの衝撃的なニュース (資料1)、にインド政府がイミョンバク韓国大統領を1月26日のRepublic Day(共和国記念日)に主賓として招待したことがあります。Republic Dayは8月15日のIndependence Day (英国植民地からの独立記念日)と並ぶインドの二大祝日で、イミョンバク大統領がアジアの首脳として初めてこの栄誉に預かりました。去年はフランスのサルコジ大統領がこの招待を受けました。もっとも、離婚後で新しいガールフレンドを同伴してインド人の顰蹙を買っていましたが、、。

韓国勝利「その2」の中で書きましたが、私が懸念しているのは、日本がグローバル時代の世界を相手にして戦略的な視点から積極的に行動する力が十分でないように感じられることです。

1月20日の報道ではインドが韓国との関係強化に積極的な理由が説明されていました。原子力技術がその理由の1つに挙げられていることは言うまでもありませんが。

イミョンバク大統領がこのように一連の積極的なキャンペーンを繰り広げている背景には今年後半に予定されている韓国でのG20に向けて、特にこの時期に自国をアピールしようという狙いがあります。日本でも今月のWorld Economic Forum(世界経済フォーラム)、6月のG8サミット、さらに11月のAPECでは主催国、といくつも大きな国際会議が開催されますが、政府は果たして日本のリーダーシップを世界に印象づけるような試みをしているでしょうか?

世界の動向をしっかりと見聞きし、そこから教訓を学び取り、「ビジョン」及びビジョン実現のための戦略をしっかりと立てることーこのことを皆さんに強く望みたいと思います。

UAE原子力発電は韓国の勝ち-その5; 積極的な大学交流も

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この1月、このサイトで4回にわたってAbu Dhabi での韓国原子力の競争力にフォーカスして伝えましたが、その理由はここから学ぶことが多く読み取れるからです。

ところで、ここには目標に向けた戦略的なアプローチの大事さ、相手のニーズを十分に汲み取ることの大事さがあります。そして、決断とスピードですね。

このシリーズ「その2」で書いてあるように、原子力関連の研究協力も、人材育成も、韓国の提案の大事な部分でした。その約束の研究協力については、すでに提携交渉が進んでいます。KAIST資料1)、とKUSTARが原子力をはじめとした科学技術の教育、研究で、包括的な協力関係を結びました

このKAISTは、40年の歴史がありますが、21世紀に入ってから、グローバル時代にふさわしい競争力を急速につけています。Nobel受賞の物理学者Laughlinさん (資料1)、をStanford大学から学長に招聘、2006年に、その後任をMITからSuh、Nam Pyo教授 (資料1)、を招聘、メキメキと変わってきています。もちろん授業は英語です。

急速に変化する世界の動きを見ていれば、大変革時代にはこのような思い切った人事も必要です。学長に女性を招聘する大学(Cambridge、Princeton、 Harvard、 MIT、 Univ Pennsylvania、Brown等々)も多く出ています。残念ながら、日本の大学では想像もつかないことですね。グローバル世界で競争する人材を育成しているのです。韓国からの海外へ出て行く留学生の数も、やる気も、なかなかのものです。

このようなことだけを見ても日本の内向き加減は際立っていますね、このサイトでも繰り返し指摘しているところですが。大学 (グレン フクシマさんの投稿です、、、)ばかりでなく、大学の先生たちも、しっかりしてください。学生は将来の人材ですよ、先生たちが内向きでは、どうしようもないのです。

Harvard大学のキャンパスから

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1月14にBostonに来ました。ここには久しぶりです。15,16日に開催されHarvard大学 School of Public Health (SPH)の「Harvard Center or Population and Development Studies」所長Lisa Berkman 企画の会議です。

健康の社会的要因について議論するもので、ある意味ではWHO Commission for Social Determinants of Health (CSDH) (資料1) の報告の実践へ、具体化へのプロセスとして、第1日目は主要な社会的要因について議論、第2日目には各国の事情とこれらの要因を勘案して、課題を探るというものです。

主催のDr Berkman、学部長のJulio Frenk氏、WHO-CSDH委員長のMichael Marmotの講演、みなすばらしかったです。

15日は、テーマとした社会的要因は「Aging」「Equity from the Start」「Gender Equity」「Health Equity in All Policies, Systems and Programs」「Health People, Health Places」「Political Empowerment」「Intergenerational Transfer and Social Protection」のテーマに分かれて議論。

16日は参加の8 カ国(Brazil, China, India, Japan, Mexico, Uganda, United Kingdom, USA)に分かれて議論。

私が日本代表の役割で、特に健康の社会的要因の研究で多くの業績のある近藤克則さん、もと厚生労働省副大臣、Harvard SPHを基点に、グローバルヘルス政策で活躍している武見敬三さん、岡山大学の高尾総司さん 、Harvard SPH Social EpidemiologyをリードするIchiro Kawachi教授 と日本の課題については議論し、「高齢社会」、「女性の社会進出」、「自殺」、「少子化」、「所得格差」に問題を整理しました。Rapporteurはポスドクのイケダさん、もともと海外が長いそうです。

今回は、8各国の参加でしたが、CSDHを推進するひとつの新しい試みともいえるものでしたが、さすがに英国ではしっかりしたデータに基づきながら、政策立案、遂行しようという政府の姿勢 が明確で、またそのプロセスがとてもうらやましく思いました。日本とは対照的なプロセスです。

今年は、近代科学発祥の場といううたい文句で、The Royal Society王立協会設立350年記念の行事がいろいろ行われますが、さすがに科学(「科学技術」ではありません、、)の歴史と伝統の強い国だな、と感じました。

15日の夕食はHarvard Yard (大学の中心で、1年生はここにある寮に全員が入る、またWidener Library などの主要図書館がある、卒業式も行われる)にある学長の館である(今はお住みになっていないようです) Loeb Houseで夕食。

Library tomoko 090 

 Harvard yard 1 tomoko 092Harvard Yard 088
 Quincy House tomoko 082Another building of Quincy House tomoko 085
         
写真:上から順にWidener Library, Harvard Yardの風景2枚, Harvard Yard の外にある学生寮の1つであるQuincy Houseの建物2枚

16日は私の知っている医学系ばかりでなく、工学、理学系の日本からの留学生、ポスドクや教授の方たちを含めて12人ほどで、私が宿泊しているCharles Hotelの裏にあるLegal Seafoodで食事(写真下)、大いに盛り上がりました。この何人かはこのサイトでも以前ご紹介(資料) した方達です。

Dinner with Students Harvard
写真 Legal Seafoodにて

物理の大学院生、ポスドク終えて帰国してからまた舞い戻った人などなど、皆さん、元気に活躍しています。いつものことですが、とても楽しかったです。5年以上いる人たちも日本とアメリカの間でどちらを拠点にするか、皆さん悩んでいますが、一方では、日本に何か貢献したいという気持ちは強いですね。いろいろ苦労はあるでしょうが、可能性はすばらしいです。このような若い人たちの応援をすることがとても大事なのです。

この時期、天候を心配したのですが、幸いなことに3日間とも快晴でした。