熱い夏、街の行事、「おとなしい」日本人

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暑い夏が来ました。岩手、宮城の方たちは大変だと思います。住むところの確保、夏の衛生状態、食料の保存など、大きな問題があります。津波が来た3月には雪が降ったりしていましたが、時間の経つのは早いものです。

今回で見えたのはわたしたち日本の「強さ」と「弱さ」が、情報伝達の手法の発達で世界に広く知れ渡ったということでしょう。このサイトでも繰り返し指摘 (資料1)しているところです。

ところで七夕の時期を迎え熱い日々が続きます。私の住んでいる町でも、例年のコトですが七夕の時期に合わせて「リオ・カーニバル」、暑い夏にふさわしいパレードが開催されました。

とても暑い日曜日、出てみると道路の両側は一杯の人。多くの露店も出て狭いところがさらに暑い感じがします。

パレードが始まります。リオと同じような(規模ははるかに小さいですが、、)騒々しいぐらいの音楽、打楽器の音、着飾った男女が踊りながらのパレード、なかなかのものです。皆さん沿道から携帯のカメラでパチパチ。リオのように着飾った(といっても、身に着けるものは少ないですが、、)踊り子さんたちも沿道の子供達に手を振りながら、また一緒に写真を撮る人たちも大勢います。

私の友人の韓国の新聞記者もお子さんを連れてきていて、ばったり会いました。

夕方電話で話をしましたが、こう言われました。「日本の人たちはこんな明るいお祭りでも静かですね、声を出さないし。私はずいぶん「bonita」とか、掛け声をかけたのですけど。皆さん写真はとっているのですけど、、」と。

じつは、私もあまり感じなかったのですが、よその国の人たちからは奇妙に見えるでしょうね。パレードの人たちは、周りの人たちと一緒になって、お祭り気分を盛り立てようとしているのでしょうが、ここにも日本人の「周りに合わせようとしすぎる、目立ちたくない、、」という行動様式が出ているのでしょうね。

災害に遭われている岩手、宮城、福島の方達の「強さ」、「忍耐強さ」は、普段からの日本人の行動様式の一部に組み込まれている、それが今回の災害で海外の方達からは「stoic」として賞賛はされていますが、リーダーにとっては時には都合がいいように働いているともいえるでしょう。

「感情を出すより、押さえてしまう、周囲と合わせてしまう」傾向は確かに日本人には他の国の方達より大きいとも思います。でも、行き過ぎるのはよくないですね。

特にうれしい、楽しい感情はもっともっと出してもいいと思います。

今回のような大災害には、ストイックだけでは不十分なのです。しっかりしたリーダーシップが必要なのです。 

本庄くんからのうれしいメール

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去年4月から、主体的にあまり変われない大学に業を煮やして、学生の主体的な選択として「休学のすすめ」 を説き始めました。このサイトで「休学のすすめ」をサーチすると、4月8日の「慶応義塾大学SFCキャンパス」での講演  以来、機会を捉えては学生さんたちを励まし (資料1)そのような主張を何回かポストしていることをご覧になれるでしょう。

休学している間も結構な金額を徴収する私立大学があることに対しても、学生さんたちを色々な機会に励まし、活動を勧め、一方でしばらく時間がたった今年の1月には、「休学のすすめ:海外出る若者 応援しよう 」という私の意見を出しました。

いくつかの私立大学ではこの休学の学生さんの負担を大幅に減額してくれました。大学当局に感謝です。ありがとう、もっとも、教育機関として当然のことですけど。

ところで、私の話を聞いて、4年生にもかかわらず「就活」を止めて、早速休学してガーナへ行った本庄くん資料1) から、以下のような嬉しいメールが来ました。

「黒川先生

ご無沙汰しております。休学してガーナへ行っていた慶應SFCの本庄です。

ガーナでしてきた様々な体験をもとに考え抜いた結果、就職することにしました。来年から、日産自動車で働きます。

日産は非常に多様性溢れる人材登用をしていて、女性や外国人の社員が中途で多く働いています。

グローバル社会で、自分の価値観にあった生き方をしていく上で大事な考え方を多く学べる環境だと思っています。

外に出て、日本にはない価値観とふれあう事で、自分の物差しを基準にして生きていく重要性を体で理解できました。

これも、「休学のすすめ」を聞いたおかげだと思います。

ちなみに今年の9月に卒業予定なので、来年の4月から働き出すまでの半年間を、ギャップイヤーとして有意義に使いたいと思います。」

このメールからも新しい自信が感じられます。ご両親もご心配をかけましたが、心から「おめでとう」を申し上げます。もっとも、私は怒られているのかもしれませんが。

こういう目覚めた若者を採用する「見る目」のある企業はいくつもあるのです。学生さんたちもあわてて就職活動しているばかりでなく、休学の可能性も考えて見ましょう、AIESECなどもあるし。

このように「当たり前の採用をしている企業」もあることを知りましょう。こういう企業が価値を持っていくでしょう、グローバル世界ではこれが普通のことなのですから。

企業の方々も、大学部3,4年生で「一括採用、内定」などはしない工夫をしましょう。まして「内定取り消し」 など、企業の評判を社会のみんなが見ていますよ。これは「CSR」の大事なポイントの一つです、ジワジワと評判に効いてきます。

若い人たち、自分の仕事の場所は日本に限っているのではないよ。まずは短くてもいいから、「外」へ出てみよう、「休学」を考えよう。

 

東大が変わる?東大の社会的責任

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最近のことですが、東京大学が秋卒を検討するというニュースがありました。

これは何を意味するのでしょうか?勿論、世界の多くの国の主流大学での入学・卒業に合わせるという意義があるでしょう。特に大学間の国際交流を推進する、国境を越えた大学途中での転校Transferを可能にする、とか、いろいろな意味合いがあります。

実はこのような試みは行政当局も全面的に容認したわけではないですが、セメスター制度の導入を可能にし、したがって秋卒(秋入学も)を可能にしていたのです。一部の大学では、一部の学生に秋卒(卒業式も、、)、秋入学を導入していましたが、これらの大学は日本社会に所詮は大きな影響を与えません。しかも、そのような大学での秋卒の学生はどのような就職状況になるでしょうか?

新卒の一括採用などという旧態依然とした大企業のドグマに対して、大学は大して抵抗できませんでした。せめて、内定の決まらない学生を1年間卒業延期して「新卒」というタイトルにするとかくらいです。このところ大学生でも(高卒は言わずもがな、、)就職難(中身は「就社」ですが、、)なのです。大学が大々的に秋卒検討など出来るわけがありません。

社会制度が「4月入学、3月卒業」で出来てきているので、国際化などと言っていても、所詮は出来ない相談なのです。大学と国際社会のミスマッチです。

その意味で、東大が秋卒の検討を始めることは、このグローバル化、日本社会と秋卒ミスマッチへのチャレンジともいえるのです。本当の理由は違うところから始まったのかも知れません。でも、結果としてはそのようなインパクトがあるのです。

この点を指摘している考察が、その「反骨精神」「若者への本物の気持ち」に私も感心して私もこの何年か影で応援 している城 繁幸さんから出ています。さすが城さんですね。鋭い考察です。

つまり、日本の大学とその制度、社会への変革の圧力を与えるには東大が始めることが大事なのです。同じことを他の大学が検討を始めてもニュースにもならない、だからメデイアも取り上げない、だから社会へのインパクトもほとんどないのです。

つまりは、グローバル世界への日本社会制度の適応は、それぞれが出来ることをする、しかもそれが従来の日本社会での「一番の権威」、大学であれは東大、が動かなければ、何も起こらないのです。これが「リーダー」と思われている機関の責任なのです。私が「東大総長機関説」などという言葉を講演などでも使っているのも、これが理由です。

医療制度改革(「健康制度改革」というべきですが、、)での大学病院の役割についても、同じ理屈で、拙著「大学病院革命」で提言しているところです。ほとんど話題になりませんが、、、。

さてどうなるか。日本改造の旗手になれるか、学の頂点、東京大学。

沖縄の新しい研究大学院の芽、OIST

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このカラムで何回か資料1)沖縄に出来つつあるまったく新しいグロ-バル世界に開かれた研究機構OIST を紹介しています。

これを大学院大学へと移行する計画を進めています。私もその責任者、また応援団の一人です。先日のカラムで、私がKuala Lumpurから理事会に電話会議で参加したのですが、うまくつながらなかったことをお伝えしました。

そのときの理事会でさらに一歩前進の様子になりました。

この画期的な大学院への移行の可能性は、「そんなことが本当に日本でも起こるのかな、、」と、世界でも注目を受けており、今回の理事会については、Natureに2つの記事が掲載されました。

1.‘Okinawa goes recruiting’

2. ‘Made in Japan’

このような記事がさらに増えていくと期待しています。

ここまで来るだけでも本当に大変でした。 Drs Sydney Brenner, Jonathan Dorfan, Torsten Wiesel 以下の錚々たる世界を代表する支持者、応援団としての関係者、そして国内関係者に、心から感謝です。

でも本当のチャレンジはこれからです。「開国日本」の研究大学院として世界の科学者に認められるよう、皆さんと一層の努力ですね。ある意味で、日本国の意思と科学者たちの信用がかかっている、と思います。

皆さんの応援をお願いします。

とても嬉しいです。

 

野中郁次郎さんとの対話: UCB-UCLA同窓会のイヴェント

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日本のイノベーションの大御所ともいえる野中郁次郎さん。世界的にも高く評価され、私も尊敬している学者です。多くの素晴らしい著書があり、私もいくつも好きな本があります。「失敗の本質」、「イノベーションの本質」、「イノベーションの作法」、「美徳の経営」などなど、調査分析と聞き取り、そこから「ことの本質」を見つけていくところがすばらしいのです。

つまり、先生の本や講義では、通常のビジネススクール的な分析と「ノウハウ」だけではなくて、むしろ本質を追及する人間らしさに裏打ちされた「リーダーシップ」と「共通の哲学」の追及があるからだと思います。いわゆるアリストテレスの言っている「フロネシス」の大切さです。言って見れば、日本のPeter Drucker的な方です。事実、野中さんは「First Distinguished Drucker Scholar in Residence at the Drucker School and Institute, Claremont Graduate University」 なのです。

以前からちょっとご相談していたことですが、野中さんがUniversity of California at Berkeley (UCB)の日本同窓会長になられ、私がUCLAの日本同窓会長ですので、色々な企画をご一緒に、とお話していたのです。

7月1日、それが実現しました。「3.11震災後のイノベーション」をテーマに「野中さんと私」の対談を企画しました。大勢の方の参加を頂き、とてもExcitingで盛り上がった会になりました。夕方6時半から開始で、レセプションが10時まで続きました。野中さんは明日から大連、ということで早めにお帰りになりました。

一橋ビジネスレヴュー、最近出た「夏号Summer Issue」 は「野中郁次郎大いに語る: 知識経営の最前線」が特集です。

私がまず30分、「Setting the tone」的に、私がこのサイトでも繰り返し述べている「3.11で世界に丸見えになった日本の強さと弱さ、その原因の本質」資料1)について話しました。

野中さんは、一橋大学「ビジネススクール」を立ち上げて10年、去年Harvard大学へ戻った竹内弘高さんとの共著論文「The Wise Leader」がHarvard Business Review、May issueに出たばかり。これで30分の話を始め、その後は参加者とも60分ほど質疑応答があり、とても知的興奮に満ちた時間が経っていったと思います。

野中さんも私も、知識ではなく、「リベラルアーツの大事」から感じ取っている志(こころざし)、思想と共通善といった価値観、そして実践、行動、判断から学ぶ英知、経験知といった点を強調していたように思います。

ちょうど「Voice」7月号が「菅政権、失敗の本質」という特集であり、その筆頭に野中さんが「リアリズムなき政治家が国を壊す」という論文を書かれています。野中さんは話の途中で、「3.11」以後、何故か「失敗の本質」の議論が盛り上がったんですよ、といわれました。「今回3.11 後の日本の対応は「失敗の本質」と同じことを繰り返している、「リーダー」たちは何も学んでいない」と私を含め何人かが指摘し、twitterなどで発信していましたよ、とお答えしました。

いずれビデオなどの形でこの対談をお見せできると思いますのでそのときにまたお知らせします。

参加者からもいくつものtwitterやメールをいただきましたし、またBlogにも書いていただいています。

DSCN1825 

「This is Liberal Arts: Summer Course 2011」の発案者で去年この構想をBostonで始めた小林くんとその仲間の鹿野くん、さらに安居くん、UCLA OBの横山さんたちと、その後一杯(写真)。

皆さんと充実した数時間で一日が終わりました。

 

女子大生への応援メッセージ

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私が常日頃から、女性応援団の一人であることは、このサイトを訪ねてくださる方は良くご存知と思います。このテーマでの講演会 (資料1)などの話もよくでてきます。

「女性の品格」などで知られている坂東真理子さん が学長をしている昭和女子大学で講演をしました。会場の人見記念講堂 が一杯になるほどで、約2,000人の方が、ほとんどが学生さんですが、来てくれました。

若い人たちにお話しするのはいいですね。皆さん元気があって。

このサイトでも何回も出てくるコメント (資料1, , )ですが、「3.11」の大災害が起こって、男性中心の日本のタテ社会構造の弱点が世界に丸見えになった話から始めました。情報時代の怖さです。そして女性に期待するところが大きいという話です。

「休学のすすめ」や、グローバル世界での女性の活躍の動向や実例などを紹介しながら、話を進めました。皆さんが、それぞれに素晴らしい人生のキャリアを見つけて欲しいと心から思っています。

学長、理事長に、学生の休学時の学費などを徴収しないようにも、お願いもしてきました。

いくつかtwitterでもメッセージをもらいましたが、こんなメールが来ました。

「昭和女子大学人間社会学部心理学科4年のMと申します。

本日、昭和女子大の女性教養講座を拝聴しました。貴重なお話をありがとうございました。どうしても、本日の講演の感想をお伝えしたく、メールさせていただきました。

お話を伺い、今の私たちに必要なことは、まず自分自身に挑戦の許可を与え、それに対する情熱を持ち続けることだと感じました。

そして、今まで私たちが生きてきた日本という国を外側から見て、今までとは違う新しい視点を持つべきだと思いました。

3.11が起きてから、漠然と、今まで当たり前と思っていたさまざまなことが、信じられなくなった様な感覚を覚えています。

しかし、こんな風になってしまった日本を変えて行くのは私たちの仕事だと、今日強く感じました。

自分から動かなければ、何も始まらない、変えられないという、先生の力強いお言葉を胸に、自分のやるべきことに尽力したいと思います。

拙文、どうかお許しください。

本日は本当にありがとうございました。」

学生さんからのこういう反応と「つながり」の始まりが一番うれしいのです。