「生物資源の保存」シンポジウム、天皇陛下のリンネの記念講演

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12月9日、神戸での学会で「生物資源保存」についてのシンポジウムがあり、基調講演(プログラムフルテキストPDF )にお招きいただきました。講演の前に、生物資源保存の展示 に伺いました。たくさんの資源が集められ、研究されていて、すばらしかったです。皆さん、とてもがんばっています。若い方たちに、「これだけ多いサンプルなのに、すべてに名前がついているのは不思議だと思わない?」と聞きました。

今回私は用意しておいた資料に沿ってお話しましたが(最近は、原則としてpowerpointを使わないことにしているのです)、講演の内容については、このブログを時々読んでくれている方には、見当がつくものだと思います。

資料の順序に沿って話しましたが、講演で特に伝えたかったのは後半部分です。

まず、去年(2007年)リンネの生誕300年にあたって、天皇皇后両陛下がSwedenをご訪問され(参照 1 2 3 )、Uppsala大学(1477年設立)の名誉会員になられました。これはSweden国王を含めて4人しかいないと聞きました。(こちらのサイトでも様々な写真が閲覧できます。

その後、Londonのリンネ学会にも訪問され(参照 1 2 )、陛下の格調高記念講演がありました。それを読んでみるととても感動します。この背景には国民が皇室を尊敬し、誇りに思う基本があると私は考えるのです。格調高い本当にすばらしい内容と構成です。多くの動植物種に学名がついていることのリンネの貢献についても触れられています。ぜひ読んでみてください。

Uppsala02写真: Uppsala大学長Hallbergさん一行が訪日のときにSweden大使館で。陛下の訪問が話題になりました。

この原稿は誰が書いたと思いますか?ほとんどが天皇陛下ご自身としか考えられません。本当にすごいことです。ご公務を考えれば、そのご努力がどれほど大変なものか、想像してみればすぐ理解できると思います。

この陛下のご講演をいつか皆さんにも読んでもらいたい、と思っていたのですが、今回は本当にいい機会でした。

もう一つは、「アメリカ大陸に最初に来たヒトはアイヌ?」という最近の話題です。資料はとにかく集めて整理しておくことが大事なのです。サンプルがなければいくら解析技術が進歩したところで何もできません。

科学でも何でもそうですが、私たちの現在は多くの先人の努力の積み重ねの上に成り立っているのです。小手先の「なんの役に立つのか?」などというばかりの学術政策、研究費配分、役所への陳情など、みな発想からして貧困です。

Bellagioから、「G8 Summit and Global Health」日本からイタリアへ

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イタリア北部のComo湖のほとりBellagioにあるRockfeller財団のセンターにきました。10月29日です。つい最近に雪が降ったばかりです。残念なことに天気はあまりよくありません。

写真1~4: センターの会議室から見たComo湖とまわりの俯瞰

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今年の初めに私たちが主宰する“Think Tank”、Health Policy Institute世界銀行と開催した「Global Health Summit」 で、政府から独立したプロセスで洞爺湖G8サミットのアジェンダ作りの手伝いをしたわけです。今回は同じようなメカニズムがイタリアで可能なのか、現地のいくつかの関係者をお招きして討議し、どう可能にできるのかを模索するため行われました。日本とイタリア政府の公式なサミット議長国の移行とは別に、私たちのThink Tankが取り持つ独立したアジェンダ継続の働きかけです。このようなMultistakeholdersを巻き込んだ政策プロセスは“フラット”になっていく世界の動きであり、それを政府がどう受け止めるか、これも“Transparency”等として政府の評価の一部になってきているのです。

Bellagioetable01写真5: 会議での私とRockefelloer財団を代表して参加のLinda Dormentさん、そしてHealth Policy Instituteの近藤さんと坂野さん

JCIEが中心になって外務省等関係省庁とまとめた報告(参考 1 )を山本理事長(参考 2 )が紹介し、議論にも参加していただきました。

グローバル時代には一国の政治は、グローバルネットワークを持つMutlistakeholders(多様な利害関係者)や、関係するNGOなどを無視しては動きにくくなっているのです。これについては今年のG8環境大臣会議で行った基調講演  でも指摘しているところです。

イタリアの政治プロセスにどのように関われるのか、いろいろ意見を聞き、イタリアでの可能性を探ろうと思います。明日は、ローマへ向かいます。

G8サミット・グローバルヘルスフォローアップ東京会議

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今年の洞爺湖サミットでは、エネルギー、気候変動、食料高騰、さらに金融危機など、急激に出現した大きな問題がありました。しかし、この難しい時に、日本が結構がんばったのです。特にグローバルヘルスにおける、医療提供制度システムとG8とのフォローアップは世界でも特に評価の高い成果でした。

そのフォローアップ会議が11月3、4日に、東京で、外務省などの協力を得てJCIEの主催で開催されました。WHOのMargaret Chan事務総長(写真1。6月のシアトル以来です)、Gates財団グローバルヘルスのトップ、Dr. Tachi Yamada(3週間前のFusionopolisでも一緒でした)、メキシコの前厚生大臣で今度Harvard University School of Public Healthの学部長に決まったDr. Julio Frenk(こんなこと日本の大学で想像できますか?)、そして、The Lancet編集長のRichard Hortonなど、この分野の世界のトップが集まり、議論しました。5月のTICAD4で発表された「野口英世アフリカ賞受賞」のMiriam Wereさんも来られて、再会をお互いに喜びました。本当に多くの日本そして国際社会の関係者が集結した会議でした。皆さんご苦労様でした。

Rimg00192whodg2008113写真1: 左端からUNFPA Tokyo OfficeのMs. Ikegami、UNFPA事務局次長Dr. Mari Simonen、 私、WHO Director General、Dr. Margaret Chan、Academy for Nursing Studies and Women’s empowerment Research Studies 事務局長 Dr. M Prakasamma。

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写真2・3: パネルタイトルと司会の私。左に外務省の山本さん、イタリアの外務省次年度G8担当官のお二人。

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この会議で、日本の意見、そしてプランを固め、次のG8サミットのホスト国Italyへ引き継ごうという日本政府の意思があるのです。これは前厚生労働副大臣だった武見敬三さん(現在Harvard University School of Public Health のSenior Fellow)が動いてくれています。すばらしいことです。このような役所ばかりでなく、多くのグローバルNGOや市民社会運動団体などが関与しながら進める政治的活動は、日本そしてグローバル世界の大きな社会変化といえます(G8環境大臣会合で行なったスピーチなども見てください)。関係者一同におおいに感謝します。私もパネルに参加(写真2、3)しました。レセプションには中曽根外務大臣がご挨拶にみえました。

夜にもいくつかの予定が入っていて、UCLAのManagement SchoolのOlian学部長と、副学長、卒業生の一人で私の友人、渋沢さん(参考: 1 ) とご一緒(写真4)しました。

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写真4: UCLA Management SchoolのOlian学部長、渋沢さん、後ろは同じくAssistant Dean、Dr. Schakelfordさん。

忙しい一日でした。

リーダーの言葉、「ちから」と思想

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オバマさんが、とうとうアメリカ大統領になります。すごいことですね。

このような背景の人が大統領になるアメリカ社会の内的な強さ、変化するグローバル世界、そして世界の期待を一気に受け止める強さと責任感を感じさせる、一種の羨望が感じられた時間だったのではないでしょうか。どこでもこの話題が、感動を持って語られ、話題になっています。私もこの選挙はアメリカの内的な強さの存在を示した、歴史的な出来事だと思います。あまりにも変われない世界第2位の経済国家。日本の状況とすぐに比較できるのではないでしょうか?

彼は、米国でも「orator」(大変優れたpublic speaker)と評され、大統領候補ではJFK以来とも言われます。勿論、それだけではありません。優れた人たち、支援者に囲まれ、市民活動からスタートし、そして逆境をはねのけてきた、芯の強さを感じます。ナミの人ではありませんね。この「逆境」を実体験したことのない人には、いざという時に「修羅場」はこなせないような気がします。冨山和彦さんの著書「指一本の執念が勝負を決める」に示してあるとおりです。歴史的にみて、ほぼ例外はありません。

リーダーのメッセージの意義、プロセスについては、JFKそしてWinston Churchillの演説のコレクションが大いに参考になるでしょう。

前者「Let the Word Go Forth」の著者は、31歳という若さでJFKのスピーチライターだったTed Sorensen去年、偶然お会いすることができました)。彼の書いている「序」はすばらしいです。JFKのような類まれな政治家のスピーチの思想、意義、背景などについて、教えられるところが多く、参考になると思います。

後者は「Never Give In」というタイトルで、Churchillのお孫さん(名前は同じくWinston Churchillですが、middle nameが違うのですね)が編纂したものです。政治家の言葉について、その思想、草稿、国民への伝え方など、これも大いに参考になるはずです。

これらの本を見てみると、日本のような閉ざされた国では政治のトップものんきなものだなと考えてしまいます。いまや、日本も日本だけではすまない世界なのですから。力量のある、国民を鼓舞するような力のある「リーダー」の言葉がないのです。大体、役所の書いたものを読むようでは、政治家として信用されるはずがありません。しかも、このグローバル時代、日本語でしゃべってもすぐに世界中に知られているのです。こうしたことが積み重なって政治家の、そして国家の信用になっているのです。

もっとも、これはビジネスのリーダーにも、学者にも、官僚にも、すべてに言えることです。それらが集まって国家の「品格」というものになっているのでしょう。

「リスクをとる」-これからの時代へ若者は何をしたいのか

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東京工業大学で、MOT藤村先生の主催で、かなり過激なシンポジウム「リスクをとる」が開催されました。平日の昼間というのは若者にとってはちょっと違う時間帯ではないか、という気もしましたが、大学院学生さんも多く参加してくれてうれしかったです。

演者は私の他に、ベンチャーキャピタルの村口さん、元産業再生機構、「会社は頭から腐る」などの冨山さんエルピーダを率いる坂本さん等。皆さんそれぞれの業界で“外れた”と認識されている人たちで、過激でしたね。この時の様子はいくつかのblogで紹介されています。(参考: 1 2 )。これらも過激ですねが、これぐらいでいいのです。

東工大でも大学院生の70%が「大企業志向」だとか、演者の皆さんにハッパをかけられていました。若いときには世界へ出てみよう、なんてものは感じられず、ちょっとさびしく感じました。内向きの男の子、元気のある外へ出て行く女の子、という構図ですかね?

アメリカの若者には、若いときに「Peace Corps」とか「Teach for America」Wikipedia)などの国際貢献とか、社会貢献などを経験してみようという意識が高いようで、社会人としてはじめにつきたい仕事、企業「トップ10」あたりに、このような「選択肢」が入っているのです。これらは「リーダーシップ育成」(資料)の社会人コースと認識されているのです。こんなことは日本でも考えるといいと思います。

また、日本から例えば米国に留学する学生の数も減っていますよね。

 

Government Leaders Forum Asia 2008

Microsoftが発行する雑誌「The EDGE」(7月号)に、5月に開催された「Government Leaders Forum Asia 2008」の記事が掲載されていたので紹介します。

  Bill Gates 来日 & Government Leaders Forum Asia 2008(PDF)
  (Microsoft 「The EDGE」 Vol.17 2008年7月号PP12-15)

アジアの医学生たちへ: 若者へのエールと3つのスピーチ

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AMSC(Asian Medical Students Conference)というアジアの医学生たちの集まりがあります。毎年、会議を開催し活動を展開していますが、私も過去3回ほどお招きを受け参加しました。毎回とても楽しいです。私はこういう若者主催の会が大好きです。みな将来を担う人材、人財ですから。今年は第29回で、東京で開催され、閉会式でお話をさせてもらいました。400人ほどの参加だったそうです。私の話の要旨は、この29年間に起こったものすごい変化とグローバル化時代について、そして「3つのスピーチ」の話をしました。

3つのスピーチの話とは、webでも観ることのできる3つの講演、Steve Jobsが2005年にStanford大学の卒業式で行ったスピーチ(この機会に集まった皆さんにとって、この会での1週間がキャリアの「dot」のひとつになるだろうことを楽しみにしていると伝えました。)、Bill Gatesが2007年にHarvard大学の卒業式で行ったスピーチ(世界の、そして社会の不平等“Inequity” への認識、意識について。)、そしてRandy PauschのCarnegie Mellon大学での「Last Lecture」(子供のときからの「夢」、多くの問題を抱えてもみんなが医師になることへの「夢」を持っていたことを忘れないようにということ。参考 1 , 2 )です。

皆さんもwebでこれらのスピーチに触れてみてください。それぞれがすばらしいスピーチです。Pausch教授の「Last Lecture」は本にもなり、つい数日前に日本語訳本も出たそうです。

この会を組織した学生の皆さん、ご苦労様でした。本当にすばらしい会議でしたね。

世界の政治家の活動“GLOBE Tokyo G8+5 Legislators Forum”

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6月28・29日に、G8+5の政治家達の活動“GLOBE Tokyo G8+5 Legislators Forum”が東京で開催されました。日本側の会長は谷津前農林水産大臣です。1日目の第1セッションは英国ブレア政権で環境大臣を担当したMorleyさんの司会で(先日のG8環境大臣会合もお会いしました)、福田総理の挨拶に始まり、ブレア前英国首相と安倍前総理の基調講演がありました。みなさん、なかなかよかったです。

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写真1 福田総理の挨拶とブレア氏、安倍氏の二人の前首相

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写真2 ブレア氏の挨拶

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写真3 安倍氏の挨拶

この会議は1989年に発足、さらに1992年にRioで行われた地球サミットを機会に、各国超党派の議員を主体に形成されたものです。2005年のGleneaglesサミットの時には“G8 Gleneagles Climate Change Dialogue”の枠組みも立ち上げています。

米国のMcCainObamaKerrySnoweといった各上院議員からのビデオメッセージもありました。“米国では、新しくなる大統領も、議会も、多くの大企業、500を超える市長、さらに多くの州知事が参加して、明確に「低炭素社会」、「Cap and Trade」への大転換が始まるでしょう”とのメッセージがありました。日本だけが様子見という雰囲気なのでしょうかね。政治も、政府も、企業も、「市民」ももっと明確な覚悟が必要ですね。

GLOBEでの議論は大変に活発でした。

私も2日目に講演をしましたが(写真4)、森林、生物多様性のセッションでしたので、ちょっと困りました。依頼されたのが1週間前、しかも9ヶ国語の同時通訳なので、神戸で行った講演をベースにして、さらにこの2つのテーマを入れながら原稿を作成 、通訳、参加の皆さんにコピーを配布した上で話をしました(十分にプルーフできなかったので間違いが結構ありましたが)。

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写真4 2日目の講演

健康と医療フォーラム2008

日本経済新聞の主催で4回にわたって「健康と医療フォーラム2008」が開催され、その第1回目(3月12日)に基調講演として「日本の医療: 20年後への展望」というタイトルでお話をさせていただきました。その記事は日本経済新聞にも大きく掲載されましたが、NIKKEI NETでも読むことができるようになりました

過激な発言もありますが、いかがでしょう?

G8環境大臣会合で開会の基調講演

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5月24日に神戸で行われたG8環境大臣会合で開会の基調講演 を依頼されました。大変名誉なことです!しかしそのあと、頭の痛いことに日本語、英語、仏語、中国語、スペイン語の同時通訳が付くと言われてしまいました。そこで、英語で原稿を作り、英語で話すことに決めました。

同時通訳でスピーチを聞くといつも思うのですが、翻訳という作業の性格上、実際のスピーチよりもやや遅れがちだったり明らかにいくつかの言葉が省略されているために翻訳の精度に疑問を感じたりして、聞き取りにくくフラストレーションが溜まります。とはいっても、当然のことながら、数ヶ国語に精通でもしていない限りこのプロセスは国際会議では避けて通ることはできません。

そこで考えた末、スピーチの作成・校閲・読み直しを自分でしてから、原稿を通訳の方々に送る際に「私はこの原稿をそのまま読むので、あなた方はそれぞれの言語に翻訳して読んでください。勿論、パワーポイントは使用しません。」というメモをつけました。

写真 1 ・ 2  会場の雰囲気 Dsc_0247g8kobe05240801_2

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話し終えた後にUKのHilary Benn環境大臣が演台に近寄っていらして、私の講演が大変よく練られ、構築され、話されていて感心したとお褒め下さり、とても嬉しく思いました。イギリスの要職にある政治家であり正真正銘の英語のネイティブスピーカーからそのようなコメントを頂くとは!感激です。Benn大臣とはしばし演台で会話がはずみました。

このような光栄な場を与えてくださった鴨下環境大臣に感謝します。それにしても3日間という長い会期は参加者の方々にとって大変だったことでしょう。私は講演の後すぐに東京に戻りました。皆様も良くご存知のIPCC議長Dr. Pachauriにお会いするためです。私たちはこの2月にもNew Delhiでお会いしました。