2つのExecutive Session; リーダーシップ、イノベーション、女性のパワーについて考えたこと・感じたこと

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最近私は2つのExecutive Sessionに出席する機会がありました。その一つはロンドンで開催された業界トップクラスを誇るグローバルな会社の世界戦略に関する会議です。この会社は最近或る買収合併に成功したばかりです。

この会議のメンバーは全部で10カ国から10人(女性は1人)でしたが、その多くが自国の政治・行政において高い地位にある方々、即ち、大臣、最高裁裁判官、国や地域(EU)の議員であったという点において他の同様な会議とは一線を画していました。

例えば、会議の議長をされたPat Cox氏は欧州議会の議長(2002-04)であられましたし、Chuck Hagel氏は今年1月まで12年間共和党の議員でいらっしゃいました。Hagelさんとは少しお話をしましたが、それだけでも氏が大変思慮深い、人間としても立派な政治家であるということが良く分かりました。彼はブッシュ大統領の対イラン政策を最もはっきりと批判したことでも有名です。年の初めにもブログでご報告しましたが、彼はAtlantic Council というワシントンDCに拠点を置く有力な「シンクタンク」の会長に就任され、そのことは私も知っていました。そして今回彼から直接聞いたのですが、オバマ大統領から外交に関する委員会のメンバーにもなるように頼まれたそうです。大変良いニュースですね。

Pat Cox氏の議事進行は素晴らしかったです。流れるようで暖かく、会社の上層部によるプレゼンからその後の質疑応答、提案まで一切を取り仕切り、各委員や幹部の発言だけでなく席順までメモを取って記録されていました。いつも思うのですが、このように立派な経歴を持つ方々とディスカッションやプライベートな会話を通じて知り合うことができるというのは、大変光栄なことです。実に多くのことを教えられます。ところでついでに申し上げると、この会社の代表者の半分は議長を含め女性でした。

東京に戻ってもう一つのexecutive sessionに出ましたが、こちらは日本のグローバルブランドの会社で、国内での売り上げは年間総売り上げの25%です。CEOを中心とするチームは私たちが議論すべき当日の議題を一生懸命考えてくれました。普段はあまり経験しないような活気に溢れた質疑や討論があって、楽しく会議をすることができました。これは、なぜかというとメンバーがかなり「出る杭」的な人たちだからです。例えばiモードを発明した夏野さん資料1)とか。役員レベルに女性が居ないことはさておいても全15人の会社側出席者のうち、女性は1人だけというのは驚きでした。。

この会社の考えは私から見ると男性の発想であり、且つ男性の考えをターゲットにしています。そこで私からの質問は、日常の買い物をするときや大きな買い物をするときの意思決定は女性がしているという、ニューズウィークの‘The Real Emerging Market’と題する記事でも紹介されている事実に関するものでした。私もニューズウィークの表紙の写真入カラムでこの記事を取り上げていますし、その後の2009年10月26日発行のタイム(米国版)‘What Women Want Now’  (資料1) にも同様な趣旨の記事が出ています。言っておきますが、製品は男性向けであるかもしれませんが、それを買うかどうかの意思決定は想像以上に女性によって行われているのです。

男女共同参画の問題は日本の社会に広く存在する喫緊の課題です。このブログでも繰り返し書いていますし、最近ではジャパンタイムズのインタビューでも述べましたが、女性の活用は日本社会、経済にとって「変革の鍵」となり得るのです。

もう一つこれらの二つのセッションに出て思ったのは、このような大会社の要職におられる方々は、急速にフラット化している世界すなわち‘Open and Demand-driven Innovation’の時代に世の中で何が起きているのかを実感していらっしゃらないのではないかということでした。‘Open and Demand-driven Innovation’はグローバルな現代において、どのビジネス分野にとっても非常に重要な、基本的な考え方となっています。