企業トップの人事、門外漢の素朴な疑問?

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日本経済新聞の「領空侵犯」というコラムの取材を受けました。インタビュー記事ですが、専門外のことについて素朴に疑問を呈してもらうという趣旨のものです。私なりのテーマがいくつかありましたが、企業統治の一面を取り上げてみました。2008年8月4日の朝刊5面に出た記事は“経営者に「任期」は不要-能力・実績に応じて決めよ-”というタイトルでした。記事は以下のように進みます。カッコの中が私の発言の要旨です。

■企業経営者の「任期」について疑問をお持ちとか。
「昔から、社長の在任期間は二期四年とか三期六年までといった慣例や、内規が存在する企業が多いようです。でも、それに何の意味があるのでしょうか。任期をあらかじめ決めておいたからといって、これまでの日本企業のガバナンス(統治)がしっかりしていたとも思えません」

■最近、大企業トップの在任期間は短くなる傾向があるようです。取締役の任期を従来の二年から一年に短縮する企業も相次いでいます。
「経営者の任期をあらかじめ短く設定してしまうと、目先のことしか考えず、長期的な視野に立った経営ができなくなるのではないでしょうか。それにもし自分の在任中に何か問題が起きたら、自分で解決しようとするより問題を後継者に先送りするようになります」「これは役所や、かつて私がいた大学の世界でも同じことです。役人は次々とポストが替わるから、問題については自分で何かするより先送りしようとする。大学の学部長や学長も任期が短いために、長期的な視野に立った人材育成ができません」

■逆に、経営者の在任期間が長期化することの弊害や「老害」批判もあります。
「『老害』を言うなら四十歳代の若いうちに社長にすればいいだけの話でしょう。そうすれば社長を十年やってもまだ六十歳前です。シャープやホテルオークラなど四十歳代の方が社長になった例もありますが、日本の大企業には若い経営者が少なすぎます。リーダーに必要なのはビジョンと、そのビジョンを人に伝える能力、知力と体力、それに揺るぎのない信念。年齢は関係ありません。もっと若い人材を抜てきすべきです」「それに『長期政権』はすべてダメなわけではありません。ソニーの盛田昭夫さんのように、長期間にわたって素晴らしい手腕を発揮した創業経営者は日本にもたくさんいます。サラリーマン経営者でも、長期政権で優れた業績を残せる人はいるはずです」

■問題なのは在任期間の長短ではないと。
「最初から任期を決めておくのではなく、その経営者の能力と実績を客観的に評価して、問題があればすぐに辞めさせる仕組みを作っておくことの方が重要です。でも実際にそういう仕組みが機能している日本企業がどれだけあるでしょうか。いったん就任したら慣例の在任期間を全うするまで辞めさせることができないのなら、ガバナンスが存在しないと言われても仕方がないでしょう」

■もう一言
大学教授は、いったんなれば定年まで身分安泰。これもおかしい。

■聞き手から
経営トップをどう選び、どう評価するのか。企業統治の根幹にかかわる重要な問題だ。帝人や花王など、社外の油脂記者や社外取締役が社長後継者の選出を審議する例もあるが、こうした先進的事例はまだ少数派。経営トップのあり方について黒川氏が抱いた素朴な疑問に、日本の経営者たちはどう答えるのだろうか。(編集委員 宮田佳幸)

この記事の内容についてはいろいろと意見、言い分はあるでしょう。もっと長くお話ししたのですが、少ないスペースでまとめていだきました。しかし、このグローバル経済の時代に自分たちの理屈だけでは通用しないと思います。特に世界第2の経済大国の企業なら、なおさらです。企業の信用、国家の信用でもあります。情報の時代、透明性を担保した企業統治は会社の価値の基本と思います。企業に限ったことではありませんが、隠そうと思っても世界から見えているのです。これが「フラットな時代」の怖さです。

さてそこで、この記事についての議論が日経ネットPLUSにいくつか出ています。これらは会員登録(無料)すれば見ることが出来ます。皆さんはどうお考えでしょうか。