日本の決断-国民が真に求める医療政策とは

前にも紹介していますが、今、医療政策を考え提供するシンクタンク「日本医療政策機構」を設立し、活動しています。定期的に青山で朝食を囲みながら政策談議をしたり、「医療政策人材講座」というものを東京大学と始めて2年が経ちました。2月18日(土)には、国連大学で「日本の決断-国民が真に求める医療政策とは」というシンポジウムを開催しました。

安倍晋三官房長官もご挨拶に来て下さり、今このプロセスで重要な役割を担っているキーパーソンの参加を得て、有意義な盛会となりました。参加した皆さんも、どのように政策が作られ、選択され、導入されるべきなのか、理解を深められたのではないかと思います。こういったことがもっともっと広がることが、市民社会への第一歩なのです。

このブログの他にも、日本医療政策機構のサイトや、22日のブログでも紹介した言論NPOのサイトも時々尋ねてみて下さい。

 

日本人に特徴的行動

突然ですが、皆さんはグローバル時代の動向、行動原理はどこにあると思いますか?そして、日本人の行動原理はどこにあるのでしょう?

2月のはじめに行った言論NPOでの講演で、日本人に特徴的な、つまり、日本人以外にはほとんど理解できない「4つの常識」というものについてお話しました。皆さんも「なぜか?」をよく考えてみてください。

言論NPOは工藤泰志氏が主催している「シンクタンク」で、アジアとの連携等について重点的に活動をしています。支援している方も多くさんいらっしゃいますが、このよう活動をもっと広げていくために、まわりの知人にも紹介してください。

Inter Academy Council(IAC)会議 in Amsterdam

31日からアムステルダムに移動しました。空港で日本学術会議の西ヶ廣局長と合流し、小町大使公邸にこの一年のご支援に感謝を申し上げに行きました。

私も参加しているIAC(Inter Academy Council)については、ブログでも何回か触れていますが、今回3つ目の報告書「Gender in Science」がほぼ出来上がり、更に、エネルギーStudy Groupを立ち上げたりと、気候変動等の分析、政策提言へ向けて活動しています。日本からは東京大学の山地賢治教授が参加しており、後1年余で完成するとの報告です。座長の一人は、1997年Nobel物理賞を受賞したSteven Chu教授で、彼はCO2の出ないエネルギーの研究を始めようと、2年前にStanford大学からLawrence Berkeley Research Laboratoryの所長へと移りました。このNobelのサイトで彼が書いている自伝(autobiography)から、何か感じ取ることがあると思います。素晴らしい人物で、かつ大変頭の切れるすごい方です。生物学対象の遺伝子情報の読み取り転写等の研究を進めていますが、エネルギー問題に関するお話を聞いていると、その造詣の深さに驚かされます。Chu氏は私も関わっている沖縄の大学院計画の運営委員でもあります。

一方で、このような科学者からの地球規模の問題についての提言は大変期待されてはいるものの、ここでも資金が問題となっています。これまでに2つのIAC報告が2004年に国連のAnnan事務総長に提出され、昨年のMillennium Summit報告にも掲載されましたが、これらは資金があって初めて出来ることです。事実、第1報はSloan財団からの支援、第2報は国連からの支援で実現されたのです。

去年12月に就任した英国のRoyal Societyの新会長、天文学者のMartin Rees氏にお会いしました。Cambridge大学のTrinity CollegeのMasterでもありますが、本当に素晴らしい方です。今年のG8についても少し議論しました。

「地球環境 危機からの脱出―科学技術が人類を救う」 (ウェッジ選書)

2004年の11月に帝国ホテル(東京)で行われたJR東海の「高速鉄道国際会議2004 ~東海道新幹線開業40周年記念~『地球の未来のために』-高速鉄道 は何ができるのか-」での会議内容が、ウェッジ選書より出版されました。私は第2部の「閾値を超える日が来る前に」にパネリストとして参加しています。環境問題を身近な問題として捉え、現時点での取り組みと問題点をわかりやすく討論しています。日本からの参加だけではなく、英国上院議員のデヴィッド ・ハウエル卿やアースポリシー研究所長のレスター・ブラウン氏も参加されました。

科学技術の急速な進歩によって引き起こされた現代社会の問題は、従来の政治・産業・経済・学問等、それぞれの世界だけで解決するにはあまりにも問題が大きいのです。今、環境問題は科学者や有識者だけでなく、皆さんも真剣に取 り組まなければならない問題です。「持続可能な社会をいかに作るか」、是非 この本を手にとっていただき、身近なところから環境問題を考えてみませんか。

「地球環境 危機からの脱出―科学技術が人類を救う」
レスター・ブラウン (著), 黒川 清 (著), 十市 勉 (著), デヴィッド ハウエル (著), 薬師寺 泰蔵 (著), Lester Brown (原著), David Arthur Russell Howell (原著)

2006年2月

言論NPOメンバーフォーラム朝食会
日程: 2006年2月7日(火)
会場: パレスホテル

成蹊医会
日程: 2006年2月11日(土)
会場: ニュートーキョービル9階 「ラ・ステラ」
演題: 「医療政策のゆくえ」

特定非営利活動法人 日本医療政策機構 第2回シンポジウム
「日本の決断-国民が真に求める医療政策とは」

日程: 2006年2月18日(土)
会場: 国連大学ウ・タント国際会議場
演題: 「日本の選択肢」(パネルディスカッション)

「フォーラム "社会の中の科学技術"」勉強会 (closed meeting)
日程: 2006年2月21日(火)
会場: 日本工業倶楽部
演題: 「これからの日本学術会議の役割」

BTJジャーナル創刊記念セミナー
「科学者の論文捏造事件の背景とその防止策」

日程: 2006年2月24日(金)
会場: 青山TEPIA
演題: 「論文捏造事件と科学の危機」

Millennium Development Goals (MDG) in Stockholm

Jeffrey Sachs氏というColumbia大学の教授を知っていますか?2000年から2005年まで、5年の歳月をかけて国連の「Millennium Development Goals(MDG)」という報告書(世界の国が2015年までに諸問題に対しどこまで達成するかをプッシュしようという極めて大きなビジョンを持ち、しかも具体的な提言。日本学術会議の「日本の科学技術政策の要諦」でも、「MDG」について述べてあります。)を作成し、昨年の1月に発表されました。「The End of Poverty」という本でも出版されています。途上国開発の顧問等として、いつも忙しくされています。とても立派な方ですが、少しも威張らない、ニコニコした素晴らしい方です。

29日の夜にDavosからStockholmに入り、このSachs氏たちがKarolinska InstituteのNobel Forumで開催した、「Malaria and Forgotten Infectious Diseases」という会議に参加してきました。MDGのゴールに向け一歩でも前進させるための具体的な知恵、戦略について議論するものでした。(この会議については、http://www.unmillenniumproject.org/stockholm/index.htmで見ることができます。)

Sachs氏の企画にMillennium Villege(MV)というプログラムがあり、AfricaのKenyaとEthiopiaで1箇所ずつ活動が始まっています。子どもの教育、栄養、食料、病気と健康等について、約5,000人の村の地元の人たちを主体としてアフリカの生活を少しずつ向上させようというものです。MVについてはNY Academy of SciencesのPresident Ellis Rubinstein氏のコラムにわかりやすく書かれています。

去年9月の国連Millennium Summitで日本がこの8つのMVを支援すると宣言し、国連関係者の中では高く評価されました。この運動をもっと広めて行きたいのですが、日本ではほとんど報道がされておらず、知られていないのが現状です。そこに役所主導の政策の弱点があるのです。私企業では考えられないことですね。日本のODAも、もっともっとよく考えないといけません。

会議は100人程度の規模でしたが、勿論Africaからの参加者が多く、パネルでは「ODAなどの支援は、MV のような地元密着型、住民参加型でなければ上手くいかない」ということと、日本のMV支援について紹介しました。実際の成果を、Kenyaの厚生大臣Ngilu女史(私と共にWHOのCommissinerをしています)に聞いてみたところ、彼女もMVモデルを高く評価しており、もっと増やして行きたいといっていました。子供たちは勉強し、健康になり、畑や水も、日常生活が明るくなっているということです。やはり、ODAは地元にあったプログラムでないといけませんね。教育、健康、栄養、農業等々、地元優先が基本です。そして一人一人にプライドを与えなければいけません。Sachs氏も一歩でも前進する具体的な提案が必要だと繰り返し言っていました。ここでは先進国の大学生などの参加も大変期待されています。

ご存知の通り、このKarolinska InstituteはNobel医学生理学賞の選考・発表が行われるところです。Karolinskaには、5年前から日本の学術振興会の事務所が置かれており、パネルには、現在所長をしておられる遺伝学で有名な岡崎恒子先生も参加してくれました。

滞在中にはKarolinska所長のHarriet Wallberg-Henriksson氏、在Sweden大使、また、Nobel MuseumのLindqvist所長、Royal Society(Nobel物理、化学受賞者の発表のあるところ)の事務局長OEquist博士等に会食等にお招きいただきました。来年はこのRoyal Societyを創設したLinne生誕300年です。そういえば今年はMozart生誕250年ですね。