2004年8月

高血圧と糖尿病フォーラム(大阪)
日程: 2004年8月7日(土)
会場: 帝国ホテル大阪 本館3階「孔雀の間」
演題: 「糖尿病合併高血圧の治療が変わる」

横浜倉庫講演
日程: 2004年8月23日(月)
会場: 横浜倉庫(株)ヨコソーレインボータワー13階
演題: 「21世紀の日本の課題」

朝日新聞に掲載されました。

朝日新聞(7月30日(金)、26面)に掲載されました。

 私の視点 「私の視点:治験と株保有 強制力ある規制が必要」

注)この記事は朝日新聞社の許諾を得て転載しています。
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『東大講義録:文明を解く』、『なぜ日本は行き詰まったか?』、『世界の歴史』

JR東海新幹線グリーン車の車内誌(Kioskでも販売)「Wedge」9月号(8月20日発行)の「読書漫遊」に、2月号に続き3冊の本を紹介します。歴史的・文明史的な日本の現状認識と考察です。内容を以下に紹介します(最終的にはこれを15%ほど減らしたものが掲載されます)。ここで紹介した本を時間のあるときに読んでみてください。

『バブルがはじけて15年。日本の景気は中国への輸出増もあって持ち直しているようにも見える。しかし、本当に元気になっているとは感じられない。15年前までは「ジャパン アズ ナンバーワン」、その秘密は「政産官の鉄のトライアングル」と言われ、誰も疑問すら抱いていなかったようであるのに、21世紀に入って世界をめぐる様相は一変した。2001年の9.11事件から3年、アフガン、イラクをへて世界とアメリカの様相は、21世紀の初めには予想もしない方向へと変わりつつある。人間の文明史から見れば、この100~200年の変化はすっかり世界の有様を変えたとはいえ、これからの世界はどのように動くのか。日本はどうか。S.ハンチントンによれば日本は独自の文明を築いてきたという。中西輝政氏の『国民の文明史』(産経新聞社 2003年)でも述べられているが、文明は大きな波と、小さな60~70年の波の変化があるとする説に私も賛同する。歴史の大きなうねりを見られないリーダー達に率いられている日本は漂流している。

今年はライト兄弟が初めて動力飛行を成功させてから101年目、日露戦争突入から100年目にあたる。日露戦争に勝利して初めてヨーロッパ文明の帝国主義から独立できた日本は、傲慢で自信過剰になり、満州への進出、太平洋戦争敗戦を経て、冷戦と日米安保の枠組みと規格大量生産型の近代工業社会時代の要請に応え、経済的に大成功して、またここでも傲慢で自信過剰になった。日本に何が起こったのか。文明史的に俯瞰して初めて見えるものがある。

堺屋太一氏は通産省退官後、多くの書物を著しているが、氏の『東大講義録:文明を解く』(講談社 2003年)は日本と世界の歴史、文明史を解きつつ、近代と20世紀の日本を描いている。戦後の日本の近代工業社会は1980年頃から終焉しており、次の社会は「知価社会」と予測している。工業社会の成功体験から、この変化に対応できない日本の「鉄のトライアングル」の利権構造と無能な官僚支配社会を解き明かす。豊富な知識に裏打ちされる論理の展開の説得力は強い。ヒエラルキー秩序の「個」のない社会から、「個」のネットワーク社会へとなかなか転換できない。それでも、少しずつ変化が見え始めているようであるが、動きは遅い。

在英の経済学者の森嶋通夫氏は(2週間程前の7月13日にご逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。)、20年前に書かれた『なぜ日本は「成功」したか?』の中で、冷戦構造と日米安保の枠組みにおいて、政治家と官僚が卑屈なまでに忠実な敗戦国であったことが、世界で羨ましがられるほどの成功の一因であると喝破している。この20年後の『なぜ日本は行き詰まったか?』(岩波書店 2004年)でも、近代日本の歴史を振り返りつつ、20世紀後半の成長の間に経済を世界に開放し、国際市場システムの構築の貢献に失敗し、政府と民間企業の結託、不良投資へのずさんな金融、政府と一流企業にまつわる無数の経済犯罪等が今になって発覚する「成功の一因」の背景を示す。そこから、現在すでに現れている症状を分析し、戦後のリーダーの 「エートス」欠如を指摘する。「ノブレス・オブリージ」の精神は今の日本社会のどこにもない。日本は、知識人が指導的役割を演ずるように形づくられる儒教社会であるとすれば、リーダーの道徳観の欠如は日本にとって決定的な打撃であり、日本は底辺からではなく、トップから崩壊する危険が大きいと指摘する。道徳水準の崩壊を短期間に取り戻す事は非常に難しいし、勇気や公明正大さや正直という資質を備えている、有能なやる気のある人物に乏しいことを指摘する。 2050年の60歳は既に14歳、2050年の50歳は既に4歳であり、今の社会に子供のお手本になる大人がいない日本はどうなるのか。子供は社会を映す鏡なのである。このような時には、国民の国に対する自信を高めるため「心ある」人たちによる右傾化が生じてくるのは歴史的にも極めてありうる事で、政界でも、学界でも、ジャーナリズムでもすでに聞こえ始めている。日本に必要なのは個人主義と自由主義の真の本質を教える、意味のある教育改革であろうが、果たしてできるだろうか。できたとしても、これらの人たちの社会までには40~50年かかるので、21世紀半ばの日本は、生活水準はまあ高いが国際的には重要でない国であろうと予測する、「悲愴」と名付けられる日本社会分析のシンフォニーの書なのである。

大きな世界の文明の流れを俯瞰的に知るには、最近逝去した英国の歴史学者JMロバーツの『世界の歴史』(1~10巻、創元社 2003年)が非常に読みやすく楽しめる。日本は第5、8、9巻に出てくる。日本を、西洋文明が世界を制覇した19世紀に上手く「西洋化」し、日露戦争を経て始めて西洋文明に対抗して独立できた国、と評価するが、第9巻監修の五百旗頭氏が指摘するように、日本の帝国主義は日本の目論見とは違って、皮肉にも東アジアの植民地解放と第3世界を出現させ、中国革命を成功させ、結果として中国が東アジアの大国への道を開いた。では、21世紀の動きは何であろうか。科学と科学技術の驚異的進歩によって、20世紀の100年で世界はすっかり変貌した。文明は物質的豊かさをもたらした一方で、1900年に16億だった人口は、1970年には30億、その30年後には60億に達して現在も増え続けている。そして人口の80%が恵まれない生活を強いられている。予測もできなかった人口増加はエネルギー、食料、水等の地球規模の環境劣化を引き起こす。さらに交通と情報の発達によって南北格差は広がる一方で、不安と不満が鬱積する。これが21世紀の底流であろう。』

どう思われますか?

このような背景で、日本はどこへ向かうのか。20世紀の日本のアジア諸国との関係、アメリカとの関係、ヨーロッパとの関係を文明史的に俯瞰すれば、21世紀の日本の方向も、何をするのかも見えているように思う。これができるのか?歴史のうねりを見てとれるリーダーは出るのか?

『私が見た南原、矢内原時代』

私が時々お話する、若い時に啓発されて大きな足跡を残した人の中に、戦後の東京大学総長を勤めた南原繁、矢内原忠雄両先生がいらっしゃいます。今の若い人達はあまり知らないかもしれませんが、戦前、戦後という混乱期の「学」のトップとして、多くの「おもねらない」正論を社会へ向けて発していた立派な方達です。

偉大な「学」を代表したこの立派なお二方について、そして、そのような「リーダー」の「エートス」に触れられるエッセイを紹介します。

こちらも私が尊敬する元国立医療センター総長の鴨下重彦先生が書かれたもので、このエッセイは、明治時代のクラーク先生の薫陶を受けた、今「武士道」が再び人気の新渡戸稲造先生と内村鑑三先生(クラーク先生の教えを受けたのは14~15歳の頃だそうです)、その精神を受け継いだ矢内原先生、南原先生のお話です。是非、読んでください。

 『私が見た南原、矢内原時代』

クラーク先生の精神は脈々と引き続がれているのだと思います。これが教育なのです。

2004年7月

NJC Solution Conference 2004 in Tokyo
日程: 2004年7月7日(水)
会場: 京王プラザホテル
演題: 「日本の課題」

第1回糖尿病関連疾患研究会
日程: 2004年7月8日(木)
会場: パレスホテル大宮
演題: 「糖尿病合併高血圧の治療が変わる」

宮崎高血圧講演会
日程: 2004年7月9日(金)
会場: 宮崎/ワールドコンベンションセンター
演題: 「糖尿病合併高血圧の治療が変わる」

宮崎県医師会講演会
日程: 2004年7月10日(土)
会場: 宮崎県医師会館
演題: 「日本の挑戦:21世紀の課題」

日本学術会議夏季公開後援会
日程: 2004年7月12日(月)
会場: 青森公立大学
演題: 「雪国の人たちの健康と医療」

第25回日本炎症・再生医学総会特別講演
日程: 2004年7月13日(火)
会場: 京王プラザホテル
演題: 「我が国の生命科学の現状と未来」

NJC Solution Conference 2004 in Osaka
日程: 2004年7月14日(水)
会場: ホテル日航大阪
演題: 「日本の課題」

第41回日本臨床分子医学会特別講演
日程: 2004年7月16日(金)
会場: 九州大学医学部100周年記念講堂
演題: 「Challenges and Opportunities in Life Science Research」

第14回実地医家の為の臨床内科懇話会
日程: 2004年7月17日(土)
会場: 宇都宮グランドホテル
演題: 「Healthcare Policy in Japan : Challenges and Opportunities」

財団法人化学物質評価研究機構研究発表会後援
日程: 2004年7月23日(金)
会場: 経団連会館14階 経団連ホール
演題: 「科学と社会:21世紀の日本の課題」

高血圧と糖尿病フォーラム(金沢)
日程: 2004年7月24日(土)
会場: ホテル日航金沢
演題: 「糖尿病合併高血圧の治療が変わる」

平成16年度総合薬科学諮問会議
日程: 2004年7月30日(金)
会場: 東京大学山上会館
演題: 「日本の大学、米国の大学」

腎研創立30周年記念式典及び新潟腎シンポジウム合同懇親会
日程: 2004年7月31日(土)
会場: 新潟大医学部有壬記念館2階大会議室にて
演題: 「日本の挑戦:21世紀の課題」

科学新聞で紹介されました。

科学者と社会の連携―地域活動に本腰を
-「科学・技術への理解と共感」テーマに学術会議が公開講演会-

社会との対話を進めていくことは、科学者の重要な責務-日本学術会議はこのほど、産学官の各界から講演者を招き、『科学・技術への理解と共感を醸成するために』をテーマに公開講演会を開催した。同会議は今春、『社会との対話に向けて』と題する声明(別掲)を発表、すべての科学者に子どもたちをはじめとするあらゆる人々を科学について語り合うこと呼び掛けているが、今回の講演会はその具体化に向けての第一歩を記すもの。文部科学省科学技術・学術政策局の有本健男・局長は「将来において記念すべき日となるだろう」と述べている。

主催者である学術会議からは黒川清・会長が講演し、「サイエンスに携わる人間は、社会の人達と"エンゲージ"しなくてはいけない。我々は、地域の人々と対話し、自分たちに何ができるのか、社会にサポートされている科学者が社会に対して何を還元できるのかを真剣に考えていく必要がある。研究室や大学などの外における社会への責任、とりわけ将来を担う子どもに責任を負うべきである。こうした活動の第一歩が、周りに伝播することによって、数年後には当たり前のことになっていれば素晴らしい」と述べた。

続いて講演した阿部博之・総合科学技術会議議員は「教育は啓発すること、若い頃受けた影響は大きい」と指摘、白川英樹・筑波大名誉教授は「科学と技術がどう違うのかを理解してもらうことが大切」とし、子どもに触れ合うことが多い母親の関心を高めていくことの重要性を強調した。

産業界からは経団連副会長の吉野浩行・本田技研工業相談役が、早くからものづくりに関心を持ってもらうために、自分たちが行っている子どもを中心とした活動の事例を紹介、そうした活動を展開するうえでの課題として、①国をあげての支援②学校と産業界のギャップ③受験を含めた学校制度改革などをあげ、やはり親の意識改革が必要であるとした。

朝日新聞の高橋真理子・論説委員は、科学者の社会への貢献は当然とし、①説明責任を忘れない②科学的な思考法を広めることも重要③社会の要望に敏感であること④科学者集団のあり方についてオープンな議論をしてほしい-など、科学者へ望むことを列挙した。また、文科省科学技術・学術政策局の倉持隆雄・基盤政策課長は科学者と社会との連携を進めるうえで、研究者に望むこととして①科学技術を支える後進を育てる活動に協力すること②変化している初等・中等教育の動向に関心を持つことなどをあげ、「本物の科学者の姿に触れることが変化のきっかけとなるが、その際、お互いにわかる言葉で対話することが大切である」と述べた。

続いて行われたパネル・ディスカッションでは、子どもたちは本来理科好きであることが確認され、科学に携わり科学を理解している人がわかりやすく話すことの必要性、保護者や学校の先生方の理解増進、双方向性を持った科学のインタープリターの重要性などが指摘された。

※声明『社会との対話に向けて』全文

我々日本学術会議は、科学者と社会が互いに共感と信頼をもって協同することなくして、いかなる科学研究も生命感のみなぎる世界を持続させることができないことを認識する。さらに、我々は、科学研究は、社会が享受すべき成果をもたらす反面、社会に対する弊害を引き起こす恐れがあるという正負両面があることを、科学者も社会も明確に理解すべきであると認識する。

このような認識に立ち、我々は、科学者が社会と対話すること、特に人類の将来を担う子どもたちとの対話を通して子どもたちの科学への夢を育てることが重要であると考える。

我々日本学術会議は、これから科学者と社会がしっかりと手をつないでいくことを推進する。まず、日本学術会議は、子どもたちをはじめとするあらゆる人々と科学について語り合うように、全ての科学者に呼び掛ける。また、日本学術会議自ら、科学に対する社会の共感と信頼を醸成するために、あらゆる可能な行動を行う。

出典: 科学新聞(2004年6月4日)

ロンドンにて(2)

今はロンドンに来ています。

ロンドンは今が1年で一番良い気候の時です。アスコット、ウィンブルドン、そしてジ・オープンと続くのです。秋から冬はとても暗いですから、このような太陽がさんさんと降り注ぐ時が来ると、皆うきうきするのは、日本ではなかなか理解できない感情かもしれません。しかしこのような自然環境の人間に与える影響が、多くの文化や芸術の背景にあるのでしょう。いまのような「国際化」の時代には想像もつかないかも知れませんが、それぞれの文化の違いの理由を理解できるような気がします。歴史や哲学の由来を理解しようとする心持も大切でしょう。お互いの違いへの理解を深めますからね。歴史や哲学の本をいくつも読んでください。

ロンドンに来る前は、国際学術会議の仕事でパリに滞在しました。American Hospital of Paris(AHP)をたずね、岡田正人先生とも会ってきました。大阪市立大学医学部の6年生の学生さんも勉強に来ていました。岡田先生はパリに来て6年目ですが、アメリカで内科専門医の資格を取り、そしてイェール大学でリウマチの専門医となった後、パリに来ました。とてもすばらしい先生で、ここの病院やパリの日本人社会でとても信頼されています。このように多くの若い人たちが国際的な場所で活躍していることをもっと多くの人たちに知ってもらい、あとに続く人たちが出てくることを期待したいですね。

パリでは岡田先生、大阪市立大学医学部の学生さんとオペラ座で「L’Histoire de Manon(マノンの生涯)」というオペラを観ましたし、ロンドンでは南へ車で50分のところにあるGlyndebourneで、オペラ「La Boheme」を観てきました。こういう時間も大切ですね。

この夏の予定はなんですか?楽しく充実したひと時をもってください。