今年のノーベル賞

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今年もお二人の日本人がノーベル賞を受賞しました。うれしいことです。

大村先生のご業績については、私も先生のことを良く知っており、とてもうれしく思いました。共同受賞のCampbellさん、さらに中国のマラリア特効薬の同定での受賞も、タイムリーで、いい選択です。この三人の受賞は、世界的な大問題への大きな貢献ということでしょう。

ノーベル賞発表の夜、私は京都にいたのですが、電話でインタビューを受けました。一つは朝日新聞で、山中伸弥さん、福岡伸一さんとの鼎談でした1)。

もう一つは、共同通信の取材で、京都新聞にも掲載されたので、両方とも翌日の朝刊で見ることができました。

ノーベル賞発表の夜、大村先生に何度かお電話を試みましたが、もちろん「お話中」。翌日、お昼ごろ電話が通じて、短い時間でしたが、お祝いと、ちょっと楽しい会話を持つことができました。

夜には、今度は梶田先生。ニュートリノです。すばらしいですね。これは梶田先生もおっしゃるように、恩師の小柴先生、さらに戸塚先生との研究ですが、本当に残念なことに戸塚先生は早くお亡くなりなりました。 戸塚先生は、本当にすばらしい方で、十数年も前のことですが、私も一度、ワシントンに一緒に講演に行ったことがあります。

とにかくうれしい受賞でした。 私のノーベル賞に対するコメントも、このサイトで「サーチ」してください。最近ではこちらの記事で紹介している「応用物理の巻頭言」などがあります。失礼な部分もあるかもしれませんが、気を悪くしないでくださいね。

私は、若者たちへのメッセージを送っているつもりですので。

うれしい便り – 3

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日本を代表する企業、東芝をめぐるスキャンダルは、世界を驚かせました。残念なことです。

その背景には「企業文化」という議論もあったわけですが、先日このサイトに掲載したように、わたしたちが国会事故調で指摘した「日本人多くの「マインドセット」、つまりは「日本の文化」論と根本的問題は同じだ、東芝問題は日本企業、組織の例外ではないのだろう、と指摘されているのです。

福島原発の事故の根底にある問題、”Root Cause”を指摘した国会事故調の指摘を、世界も認識しているのでしょう。

企業統治などのコンサルを手掛ける「Reputability」”Loyalty – Virtue and Risk” というコラムの中で指摘しています。ここでは日本組織で典型的に見られる ”Groupthink”12)についても意見を述べています。

福島ほどの大事故からさえ学ばない、何とかごまかしている、福島原発事故を表面的な問題の対応で片付けている、それなりに責任ある立場の人たちの意識というか、ご都合主義、再稼動をめぐっての諸課題にも、世界の識者は結構注目しています。

失敗から学ぶ、責任を果たす ”Accountability”、これは組織、企業、政府、国家など、グローバル世界での信頼の根本です。

AYDPO 2015 の記事

8月5日~23日にかけて、沖縄でAYDPO 2015(Asian Youth Development Program 2015:アジアユース人材育成プログラム)が開催されました。

2008年から(2009年2011年2012年2013年とブログにも掲載しました)、毎年、私も主に最終日に参加をしていますが、今年は8月22日のプログラムで「世界の行方:あなたたちの選択」というタイトルで講義を行いました。その講義の様子などが8月26日の琉球新報、そして沖縄タイムスにも記事が掲載されましたので、ご紹介します。

琉球新聞(2015年8月26日)

沖縄タイムス(2015年8月29日)

AYDPO Official Facebook

 

‘Be Movement’と私のインタビュー記事

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‘Be Movement’は、ウェブ時代の新しい形の「社会メディア」です。若い人たちが、グローバル時代の変化を受け取りながら、いろいろ試していることはうれしいことですね。
最近この「日本特集」が出ました。東北大震災+福島原発事故から3年を迎えたタイミングを意識した特集なのでしょう。

私も応援している“Table For Two”の小暮さんの記事が、私のインタビュー記事のすぐ後に
出ています。

このような時期ですから、国会事故調の問題も含めて、うまくまとめてくれています。

英語で数ページ、ちょっと長めかもしれませんが、時間のある時にちょっと目を通していただけると嬉しいです。

JAPAN’S SPIRIT -Strength through the Storm-
(be movement pp114-122)

Cassie Limさんとチームに感謝。

福島原発の現状、Washington Postの記事

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福島原発の事故から2年半を超える時間がたっていますが、この事故が収束状態などと考える人はいないでしょう。メディアは地下水の問題で騒ぐ、汚染水がもれては騒ぐ、大雨が降れば騒ぐ。福島原発事故は、現在も大きな日本の、そして世界の大きな問題なのです。

東電の能力、日本政府が何を考え、行動しているのか、これには国民も、世界もかなりの懸念を持っています。政府も国際廃炉研究開発機構という、いつものような政府の得意なやり方の組織を作っていますが、どれだけ開放的か、透明性と国際性が高いか、みなさんもよく見ていましょう。

東電も国際的な諮問委員をお招きしてはいますが、どれだけ真剣に学び、意見を取りいれ、実行しようとしているのか、このプロセス全体の透明性が大事です。これにもずいぶん問題があると聞いています。その一人、東電の福島原発の監視委員会副委員長Lady Judgeの東電の対応について不満が10月22日の日経新聞朝刊16ページにも出ていました。

10月21日のWashington Postの10月21日号では、1面トップから3ページという大きな扱いは、9日4日のNew York Timesの扱いと同じと思います。Washington Post(PDF)とOn-line版では体裁も違いますし、それぞれに見る人へのインパクトがちょっと違いますが、on-line版のイラストは、なかなかの出来ですね。このあたりが新聞紙面と違うところです。これらの米国主要紙の扱いは、福島原発の現状への懸念の大きさを意味しているのです。世界の見る目は厳しいです。

ところで海外の主要報道の日本語訳を毎日1本作成している小林順一さんのblog(Twitterは@idonochawan)があります。最近は福島関係が多いのは致し方ないですが、「世界の日本を見る目」を感じ取るのにもとても良いと思います。

大変な努力ですが、ありがたいことです。

「無鉄砲娘」の活躍つづく、そして私の意見も

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国会事故調に参加してから、ずいぶん違ったキャリアを選び始めた人たちがいます。先日のコラムで紹介した椎名くん、石橋さん、「無鉄砲娘」相川さんの3人はそんな人たちです。

相川さんの本「避難弱者」は、広く読まれているようですが、最近ウェブにも記事が出ています。彼女のメッセージが広がるのはうれしいです。「若い者たちは行動する」のです。大したものです。

ところで、この3人のことも含めて、国会事故調のその後の在り様を、外国記者クラブの発行する機関誌「Number 1」 (英語)で紹介しました

国会事故調は、日本では「憲政史上初」です。「初」ということは、政治家も、官僚たちも、メディアも、学者も、広く国民もですが、この「国会事故調」が何を意味しているのか、あまり理解していないのでしょう。日本国内の反応は、海外の反応12)に比べればはるかに小さいですしね。

民主制度を機能させるのは、時間のかかることなのです。

私も福島のことは本当に心配です。そして世界では日本のことを本気で心配している人たちも多いことをお忘れなく。

オランダの新聞記事

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最近の福島原発の汚染水の問題、まだまだ脆弱な状況などが世界にも広く知られ、その懸念から海外でも多くの報道がされています。

私も日本の憲政史上初という国会事故調を任され、その報告書は世界でも高く評価されているところです。ですから、今回の福島の状況については、いくつもの海外メディアの取材を受けています。日本のことでもありますし、私がお断りするのもおかしなことですしね。

オランダの主要新聞‘Trouw’にもインタビュー記事が出ました。この記事を見た E. Nishimotoさんから、このサイトにメールをいただき、日本語に訳していただきました。さすがにウェッブの時代ですね。Nishimotoさんが訳してくれた原稿に、私が少し手を入れ、私なりにちょっとわかりやすくしたのが、ここにリンクした邦訳です。

 

Trouw 紙 2013年9月16日(邦訳英訳

 

Nishimotoさんありがとうございます。

この記事にある私の意見は、このサイトでも繰り返して発言しているところです。最近では、GRIPSの卒様式での祝辞にもあらわれています。

New York Times からびっくりする「贈り物」

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最近の福島原発事故の周辺は、極めて不安定な状況です。世界にも広く知られています、今の時代、何事も隠せないのです。

最近の福島の状況は世界でも大きな事件として扱われています。New York Timesも例外ではありません。 9月4日の朝刊「Late edition」のトップ記事(PDF)として扱われ、私のコメントの一部も入っています(電子版でも読むことができます。日本語訳はこちら 前半後半)。このNew York Timesの記事は日本の一部のメディアでも伝えられました。

驚いたのは、私のコメントが“Quotation of the Day(今日の引用)”となっていることです。うれしいというか、驚きですね。それだけインパクトがあるということなのでしょう。

“Water keeps building up inside the plant, and debris keeps piling up outside of it. This is all just one big shell game aimed at pushing off the problem until the future.” というものです。

これは取材した東京支局長Martin Facklerさんの腕です。彼は福島原発事故で明らかになった「「本当のこと」を伝えない日本の新聞」(双葉新書)という本も書いています。

世界は注目しています。世界有数の経済大国、しかも、科学や技術、エンジニアリング、製造業で高い評価を受けていた日本で起こった、地震・津波で引き起こされたとはいえ、まさかの福島原発事故。そして、2年半たっても中長期の計画も立たない、東電や政府の反応などに。

世界の英知を集め、透明性に徹することです。心配です、何とかしたいですね。

Tallberg Forum 2013

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6月12日朝、成田を立ちCopenhagen経由でStockholmへ来ました。Tallberg Forum 2013のOpening sessionに出ないか、というのです。

13日午前は、StockholmにあるVattenfall1)というスウェーデン最大の国営電力会社本社で役員との会談、さらに職員向けへに福島事故調の話を聞きたいということです。もちろん喜んでお受けしました。そのあとスウェーデン最大の放送局 Sveriges Television AB (SVT)のインタビュー(※1)。インタビュアーのThomas von Heijne 氏は20年ほど前に3年ほど東京に在住、NHKで仕事をしていたそうです。

そこから友人のAnders WijkmanさんとSundaram Tagoreさん(※2)とTallbergへ、約3時間のドライブです。

夕方からパネル、その後は国王をお迎えしたレセプション、ディナーにお招きを受けました。国王とは日本で2、3度お会いしたことがありますが、こちらではだれもが国王を囲んでお話をしています。私は警護の武官ともいろいろお話をしました。ディナーは40人ほどですが、Forumの創始者Bo Eckmanさんたちと、国王Carl Gustaf 16世(今年の9月で国王になられて40年となります)のおられるテーブルの隣でしたので、国王のところに行ってしばらくお話をさせていただきました。ノーベル賞100年記念のこととか、リンネ生誕300年の時の天皇陛下のご訪問のことなどです。

1日目の開会のパネルでは、「気候変動」について話したRobert Corellさんが素晴らしかったです。2日目のランチには、Eckmanさんが私とあと2人を招いて、世界のアジェンダについて意見交換の場を設定してくれました。

「Globalization」の世界では、人間はどこへ行くのだろう、何をしたらよいのか、「見えない解」への多彩な意見の交換が出ますが、なんとなく不安があふれていて、真剣に考えれば考えるほど、「次への一歩」が見えないいら立ちがそこかしこにという感じでした。

素敵な場所、晴れたと思ったら、急に雨が降ったり、しかし、きれいなところです。厳しい自然と一緒に生活し、自然を大事にしている、そして要所に鉄道があったり、長い間の知恵が、そこかしこにこのような雰囲気を生んでいるのでしょう。

去年、Osloでの話を書きましたが、自然の環境がそれぞれの国民性にあるのですね、生きる知恵というようなものでしょう。

これが人間にとって自然なことなのでしょうね、なんとなくほっとする感情が湧いてくるのですね。

最終日の15日、Tallbergを昼に出発、ロンドンへ向かいました。

※1
ここでは私のコメントのうちで、日本で「Groupthink」を大事にすることは「致命的な弱さ」という認識、そして「Obligation to Dissent 異論を言う義務」という意識と行動、これらの欠如が、日本の「エリート」の「ひ弱さ」になっている、というコメントを取り上げてくれたのはうれしいことです。編集者の見識です。

SVTのインタビュー記事はこちら

インタビュー記事の日本語訳はこちら

※2
私の初めてのあいさつは「あのTagoreさんの?」でした。曾祖父ということでした。「やっぱりね」というところですが、私が知らなかっただけのことでしょう。素敵な方です、芸術家であり、映画でもよく知られています。「あのTagore」はアジア人として初めてのノーベル賞受賞者であり、岡倉天心は同世代でもあり、親交があったのです。岡倉は初めてインドへ行った時「アジアはひとつ」と気づきそのまま1年滞在し、その後も日本と米国を結ぶ大活躍など、この時代の日本人には、こういうスケールの大きい「エリート」が何人もいたのです。最近はちっとも見ないタイプですね、残念ながら。

国会事故調が自由報道協会「知る権利賞」を受賞

福島原発事故は世界に大きな問題を投げかけた大事故でした。世界の各メディアも特に事故から始めの数週間は大きく報道しました。そして、国内外の報道の在り方については、いわゆるソーシャルメディアなどを介して、いろいろ違いのあったことはかなり知られてきたように思います。その一部には、日本の大手メディアと記者クラブの存在が関与していることも従来から知られていました。福島原発事故をめぐってメディアの在り方もいろいろな検証もされ、いくつかの本(例えば、牧野洋著「官報複合体」上杉隆・烏賀陽弘道著「報道災害[原発編]」Martin Fackler著「「本当のこと」を伝えない日本の新聞」など)も出版されています。

この問題意識を新しいメディアなどを通じて活発に発信し、活動するジャーナリストも目立ちました。そのような活動を通して結成された自由報道協会という団体があります。主として「記者クラブ」制度に属しないジャーナリストたちによる団体です。

国会の中には、行政府である官邸や各省庁にあるような記者クラブはないらしいのですが、国会事故調は委員会を公開とし、ウェブでも多くの方に見ていただけるようにし、委員会後の記者会見も公開しました。しかも第1回の委員会を除き、英語の同時通訳付きです。

ちょっと古い話になりますが、この自由報道協会が、私たちの国会事故調に第2回自由報道協会賞 「知る権利賞」という賞に選んでくれました。受賞の日に私はダボスに行っていましたので失礼し、大島委員、宇田さん他の方に出席していただき、私の挨拶(PDF)代読(0:49:40~1:02:10のところ)していただきました。

いい意味で国会事故調チームの活動が認められるのはうれしいです。

民主制度を機能させるのには、その「カタチ」ばかりでなく、政府も、メディアも、国民一人ひとりにも恒常的な努力が必要なのです。