日本の農業の情けなさ vs 活躍する若者たち 

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農業改革はTTPとは関係なく日本の大きな課題です。なにしろ、日本農業の価値、可能性はとても高いのですから。

にもかかわらず、農業産物の輸出で稼ぐ力は、アメリカ、オランダ、ドイツ、ブラジル、フランスの順で、日本はなんと世界で「45位」あたりですから、何かおかしいと思いませんか?良いものに価値をつけて、世界に売ることができない日本の弱さの代表例です。

小泉進次郎さんの頑張りで進み始めてはいますが、最近でも農協(JA)の抵抗や、自民党の大きな票田ということで、一時的にせよ腰砕けになるとか、いろいろです。

内閣府の担当からこの問題について意見を聞かせてほしいというので、2日間にわたってヒアリングに参加しました。

農業の現場の方たちは皆さんがんばっているのですが、農家の時給は450~500円程度なのが結構多いようです。これはちょっとひどい状況ですね。

ヒアリングの2日目は、Oisixの高島さんと、Seak「ゆる野菜」の栗田くんといった農業出身ではない方たちの農業事業のヒアリング。「ゆる野菜」モデルは、創業まだ2年半ほどですが、参加の農家の時給は、すでに2,000円近くになっていて、3年目には2,500円ほどを目標にしているそうです。

日本の農業という素晴らしいアセットを生かそうと頑張っている方たちです。

陪席した役所の方たちにも、この2人のプレゼンはインパクトがあったようでした。高島さんは以前から知っており、上場まで果たしている起業家です。栗田くんは私が連れて行きました。

栗田くんはWHILLの経営にかかわっていた頃に知りあったのですが、最近この農業の新しいモデル事業を始めたのです。素敵なビジネスモデルです。

このような若者たちが、停滞する日本を変える力です。みんなで応援しましょう。

 

企業研究所での講演

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パナソニックヘルスケアは、四国松山を拠点としている会社で、10数年前に講演で一度行ったところです。

その後、パナソニックから独立。三洋電機と合併し、KKRという外資が80%の株主で、外から小谷さんという新しい社長を迎えて活動している企業です。最近、三井物産がKKRの株の一部(20%)を購入しました。

このパナソニックヘルスケアの群馬拠点で講演の機会をいただき、出かけてきました。500人ほどの技術者の方たちを対象に行った講演ですが、他の2カ所の研究開発拠点の方々も参加し、活気のあるセッションを持つことができました。

質疑応答も活発で、若い人たちにも元気が感じられました。ただ、ほとんどが男性で、しかも外国の方は中国のをはじめ、ほんのちょっとでした。これは困ったこと、というか弱みですね。

ここでお話ししたことは、”よその会社との合併、外資が大株主となり、外部から社長が来るという、日本で起こり始めた企業としての歴史、統治のあり方の変化が、みんなの気持ちの変化に出てきているのではないか。そしてこれらのあまりなじみのない会社の変化こそが、みんなの意識を全体としてはよい方向に変えてきるのではないか”、ということから始めて、「イノベーション」の意味、これからの課題などについて話をしました。

企業で行う講演は久しぶりでしたので、ちょっとわくわくしました。いい時間を過ごせたと思います。

皆さん、がんばってくださいね、期待していますよ。

トロントからドーハへ

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トロントからモントリオール経由でドーハへ。恒例のカタール財団の Annual Research Forum に参加しました。この第一回のフォーラムには、選考委員として参加したこともあるのです。

そこでは、慶応の湘南キャンパスSFC卒業生の関山さんが始めた、蜘蛛の糸を遺伝子工学的に作るというベンチャー「Spiber」の一行にお会いしました。彼は、慶応の生んだ俊英の一人、冨田勝さんのお弟子さんの一人です。Spiber は私が慶応の湘南キャンパスSFCで教えていた、2010年の研究発表会で注目していた会社です。このチームとは夕食の機会を持って、いろいろと意見交換ができました。

意欲ある若い人たちの行動には、いつも嬉しくてわくわくしますし、何かできることは何でもするよ、といった風になりますね。がんばれ Spiber 。

国際交流には、国家間のお付き合いは大事ですが、普段からの「人」と「人」とのお付き合いからの信頼関係が、とても大事な役割をしていることは、重要な視点です。

再びトロントへ

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コーネル大学からトロント経由で帰国しましたが、3日後には再びトロントへ来ました。

カナダと日本のイノベーションと、この二国間の協力課題をテーマにした議論です。お互いにあまり注目されていないという意見がいくつも出てきました。なぜでしょうね。基調講演は、BlackBerryの共同創業者Jim Balsillieさん。主賓のテーブルで隣どうしでしたので、いろいろと話が弾みました。

2007年、京都でのことですが、私はもう一人の共同創業者Mike Lazaridisさんの基調講演の司会をしたことがあるという話から始まり、2008年にようやく日本でもBlackBerryが個人顧客にも使えるようになって、私もすぐに使い始めたことなどを話しました。今回の彼の講演では「Freedom to Operate」というキーワードを強調していることなど、いろいろな話題がありました。門司大使もレセンションに参加されました。

ところで、この会議の主宰はCIGIという比較的新しいシンクタンクで、Balsillie School of International Affairsとともに、彼が創立した組織です。

私はカナダとはいろいろ交流もありますし、落ち着いていて、なかなか素晴らしい国と認識しています。大英帝国との歴史的背景を持ったオーストラリアとは、資源大国という点では似ていますが、かなりの違いがあります。これは寒い環境という背景もあるのかもしれません。

私は、日本とカナダの人口は「約4対1」、そして隣にはそれぞれの人口の約10倍もある巨大国がある、そして、隣国との歴史的な背景はあっても、それぞれの「良さと、弱さ」の組み合わせは、これからの世界で新しい可能性があると思っている、という点をコメントしながら、これからの世界を俯瞰した視点からの意見を話題にしました。

最後に、通商大臣 Minister of Trade のChristia Freelandさんが講演されました。ジャーナリストとしてのキャリアもすごいもので、さすがに質疑応答は素晴らしかったです。

ここで紹介するBalsillieさんや、Freelandさんのような方は、日本ではまずめったに出てこない。このような点は、カナダの強みだと思います。

グローバルヘルス、GHIT基金、日本への期待

12月16日、来年の伊勢志摩で開催されるG7サミットへ向けての日本政府のアジェンダに関して、「グローバルヘルス」への期待を込めた会議、講演会が東京で開催されました。

世界銀行のジム・キム総裁、WHOのマーガレット・チャン事務総長、塩崎厚生労働省大臣、武見敬三議員他、この分野の世界のリーダーが、東京に集まりました。また、ゲイツ財団のビルゲイツ氏の参加1)は 大いに注目を集めたと思います。

この会議は2015年9月の国連総会でも、ポストMDGとしての”SDG”(Sustainable Development Goals)を受け、グローバル世界のとても「不安定な動向」の背景にもある「貧困・格差」の改善に向けた活動、さらには来年に日本がホストをするG7サミットは、とても大事な機会なのです。

さらに日本は来年、TICAD (東京アフリカ会議) をその20年余の歴史の中で初めてアフリカで開催することになっており、これにも大事なメッセージを世界に発信できる絶好の機会なのです。

私は、「世界で初」 と認識されている、とてもユニークな”Public Private Partnership”であるGHIT基金の発足にあたって、理事長就任の要請を受けて活動しています(1234)。ゲイツ財団はこのGHITのパートナーの一つで、設立してわずか2年あまり ですがその進みかたの早いことについて、ゲイツ氏がとても高く評価しており(彼と個人的にゆっくりと話をするのは二度目のことです…)、これも、世界的に日本の強いメッセージの一つになりうる活動なのです。

会議は安倍総理の挨拶ではじまり、また、途中から秋篠宮妃殿下のご臨席もありました。

この一日の会議のプログラム、演者また会議の様子はWebで見ることができます(日本語英語)。基調講演、その他の講演・議論もさることながら、最終的には世界へ向けたG7サミットという「場」に向けての、日本政府の政治的意思と決断の問題となります。

これらのプログラム、主要な参加者の講演録についてはすでに掲載されていますのでご覧ください(日本語英語)。

この会議で、GHIF基金はランチセッションを引き受けました。私の締めくくりの挨拶もここで読むことができます。ここでは、医学分野の世界の三つの賞 (Gairdner, Lasker, そしてNobel賞) とグローバルヘルスの扱いとその意味、また二週間前のストックホルムでの大村先生のノーベル賞受賞の意義についても触れました。何人かの参加者から とても良いスピーチだったとお褒めの言葉をいただきました。

日本からも、GHITのような世界に誇る新しい組み合わせによる新しい価値の創造こそが、大きく変わりつつある世界の中の「イノベーション」なのです。

この日を含めての3日間は、日本政府他とのグローバルヘルス関係のいろいろな会合があり、私もビルゲイツ氏と小人数のディナーを含め、三回も食事を一緒にする機会を持つことができました。

何事も、議論は大事ですが、どのように実行していくのか、政策立案と実行、そして普段からの、相互の信頼関係に立脚する「人脈の形成」、これが大事です。

塩崎大臣との朝食会、アジアイノベーションフォーラム

2週間にわたる北米、カナダの講演の旅を終えて帰国、東京でも活動が待っています。

まずは塩崎厚生労働大臣をお迎えして、医療政策機構の朝食会です。塩崎大臣とは、当機構の小野崎理事がアドバイザーとしてお手伝いしていますし、G8の世界認知症委員会(World Demencia Council、WDC)などでもご協力をいただいているところです。新しいプロセスで出来てきた「日本の医療2035」の話など、いろいろの話題があり、会員の方たちからの活発な意見が出ました。私は最後のあいさつをするのですが、何しろ風邪で声が出ないので、一言だけにしました。

アジアイノベーションフォーラムは、元ソニーの出井伸之さんが2007年に福岡から始めた活動ですが、そのころからお手伝いしています。今年は虎ノ門ヒルズで開催。私は遅れて参加しましたが、ヤフーの安宅和人さんのビッグデータのプレゼンには間に合いました。彼の話の内容は最近の日本版「ハーバードビジネスレビュー」に出ています、一読をお勧めします。

私は最後のパネル(パート4)に参加しましたが、出井さん、富山和彦さんが、いつもながらの激しい意見を次々と出していました。私も激しい意見を言いましたが、後で、友人の英国人から以下のようなメールをもらました。うれしかったです。

‘Dear Kurokawa-san, This is just a quick note to say that I much enjoyed attending yesterday’s forum; it was interesting (and – if I may say so – encouraging) to have such a consistent message from you and others in support of ‘getting out there to see the world’, but also making the most of a huge available talent pool at hand already.’

世界はどんどん、しかも急速に変わっているのです。

SafeCastの4周年、東京と郡山で「スーパープレゼンテーション」

SafeCastについてご存知ですか?福島原発事故直後から、ガイガー測定器は手に入らないし、政府や報道では何が何だかはっきりしない。それで、何人かがネット上で集まって、つなぎ、ひろげ、出来上がった、本当の意味での「グローバル市民ネットワーク」で作り上げてきた、時代の先端をいく放射能測定システム。いまや世界60ヵ国に広がり、IAEAも認めている「SafeCast」です。

SafeCastグループと、NHK Eテレの「TED、スーパープレゼンテーション」でよく知られるMIT Media LabのJoi伊藤さん1)が中心になって、3月22日と25日に、それぞれ東京と福島県郡山市で「トーク・イべント」がありました。

東京でのイベントのテーマは「Citizen Science, Open Science, Big Government」、郡山のイベントは「スーパープレゼンテーション in 郡山」。後者は郡山市の品川市長さんの企画によるご招待です。

両方とも、Joiのイントロから、福島100年構想委員会の渡辺利一さん、SafeCastのPieter Frenkenさん、そして私も、話をもちまわり、なるべく楽しく刺激的な雰囲気を盛り上げたいと奮闘しました。東京は英語中心、郡山は、日本語が基本でした。

私の最近の講演では、映画「Matrix」の中心的なテーマの部分を短く見せたり、「わかりやすい国会事故調」のビデオを紹介したり、また、最後の「シメの言葉」を工夫したり、プレゼンに気を使っています。

講演のシメの言葉では、今年になって、3・4回ほど、有名なJFKの大統領就任の時の「Ask Not 、、、」の修飾版を使っています。今回の、東京での講演でもこれを使いました。

これらのイベントの様子は、こちらから観ることができます。

https://vimeo.com/safecast/videos

https://vimeo.com/123727406

東北復興に躍動する若者たち、仙台での出会い

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3月14日は、午後から仙台へ。「震災復興での起業家の役割 Role of Entrepreneurs in Disaster Recovery」をテーマにしたイベントの「トリ」としてプレゼンです。これは、国際防災世界会議パブリックフォーラムとして、仙台市がホストするものです。

東北大学の福嶋 路教授による基調講演の後、5人の素晴らしい  「進取の気性あふれる」若者たちのプレゼン1)です。

皆さん一人ひとりが、四年前の東北大震災をきっかけに、自分の仕事を捨てて、自分の故郷へ戻ってきた人、家族を失った人、故郷に呆然と立ち尽くしていた人、あるいは海外での仕事を辞めて東北へきて活動してきた人など、多様な若者たちです。

磐城高箸の高橋正行さん、島津麹店の佐藤光弘さん、気仙沼ニッティングの御手洗瑞子さん、Watalisの引地 恵さん、農業生産法人GRAの岩佐 大輝さん等です。

みんな、本当に、本当に、とても素晴らしい若者たち。皆さん、一人ひとりが地元の伝統、文化、環境などのユニークな特徴を生かして、まわりの人たちを巻き込んで「新しい社会価値を創造」する(これが私の「イノベーションの定義」ですが…)、自分の「思い」、「志」を貫いて、問題を乗り越えていく、そのプロセスで応援する人たちが現れ、参加し始める、そこに新しい共同体ができはじめ、周りの人たちとの「生きがい」を生みながら共有していく。早くも世界を視野に入れて活動の枠を広げている御手洗さんとはこの一年で三回目の出会いです。

最後は、私がIMPACT Japan、Qatarという国、そしてQatarによるIntilaqの仙台卸町の「東北イノベ―タハブ」の計画、つまり東北復興へ向けて、このような新しい活動をしている若者たち、そのような若者たちを育てよう、という計画を紹介しました。

素晴らしい若者たちと感動を共有した、とてもうれしい時間でした。

2日前にあったばかりのDartmouth大学Tuckビジネススクールの院生の内の5人にも、ここでお会いしました。

日本ベンチャー大賞;新事業創造カンファレンス & Connect !

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1月22日のことですが、「日本ベンチャー大賞;新事業創造カンファレンス & Connect !」が開催されました。経済産業省の企画です。

午前は、あのIDEOを作ったTom KelleyさんとChristian Basonさんの講演とお二人のパネル。司会は西口さん。

午後に始まる第2部、2時間20分。構成は二つのパネル、これをAstoria Consultingの森本晴久さんと私で企画しました。フォーカスは企業内ベンチャーファンド(Corporate Venture Capital – CVC)です。これはこの2、3年に大きく様変わりしているので取り上げたのです。

「パート1」は「投資リターンの追求か、戦略的利益の追求か:CVCの道」、そして「CVCのベストプラクティス」と銘打ってErik Vermeulenさん、斎藤浩樹さん、出川章理さん、東林知隆さん、司会が松本守祥さん。

「パート2」は「CVC市場のエコシステム」としてJessica Archibaldさん、Alastair Brewardさん、Chris Ericksonさん、George Arnoldさん、司会がKari Andersonさんでした。多くの、実践的でとても参考になる、良い意見がいくつも出ていました。ぜひ、このパネリストたちにもご相談されると良いと思いました。「信頼、我慢、世界へ引っ張り出す、日本の優れた技術を生かす」などなどです。

私は、急な用務ができて、後半の「パ-ト2」から会場に到着。これはなかなかのパネルでしたが、終わりに私がそのまま壇上に登り、挨拶をしました。パネルの途中で、日本企業の特徴の一つが「Groupthink」だという発言があり、これについてもちょっと触れました。この森本さんとの企画は、みなさんの反応はなかなか良かったです。

この後、中東から急遽帰国された安倍総理などによる「第一回日本ベンチャー大賞」の授賞式があり、Euglenaの出雲さん、Cyberdyneの山海さんと大和ハウスの樋口会長、Coineyの佐俣さん、Spiberの関山さん、Crowdworksの吉田さんなど、若い受賞者たちが目立ちました。いいですね。

元気の出るイベントでした。