「今、なぜ、若者の理科離れか -科学者と社会との対話に向けて」が出版されました。

「今、なぜ、若者の理科離れか -科学者と社会との対話に向けて」が出版されました。

この書名に引かれて本書をひもとくと、「すべての子どもは科学者である。」という日本学術会議黒川清会長の発刊の辞がある。多くのものに「なぜ?」を連発しながら成長する子どもにとって、「理科」は面白く、好きな学科なのに、どうしてそれが理科離れを起こすのか、それは大人の理科離れ、科学離れを反映していると同会長は続ける。

理科離れはすでに各方面で叫ばれ、文部科学省も取り上げてきた問題であるが、前期(第19期)の日本学術会議では直接これに取り組むため、「若者の理科離れ問題特別委員会」(後に「若者の科学力増進特別委員会」と改称)が設置された。本特別委員会は積極的に調査と検討を重ね、公開講演会やシンポジウムを開催し、外国の現況も調査した。

本書はその活動報告であり、4部から成る。第1部は講演会「若者の科学力を増進する」で発表された6つの講演を載録している。それぞれ含蓄があるが、白川英樹氏(筑波大名誉教授)の「社会と理科離れ」、高橋真理子氏(朝日新聞論説委員)の「科学者へ望むこと」など考えさせられる。

第2部は、パネル討論「科学への理解と共感を深めるために」での司会者と9名のパネリストの意見交換が丁寧に収録されていて面白い。川合知二氏(阪大教授)や黒田玲子氏(東大教授)が科学をわかり易く伝えることおよびインタープリターの養成の必要性を訴え、本間典子氏(東大助手)がその実践例として大学院生による小学校でのリレー授業を紹介している。

第3部は、本特別委員会の委員10名が「科学への夢を育み、科学する心を育てる」という課題でそれぞれ意見を述べており、内容も充実している。著者名を省略して題目のみ列記すると以下の通りである。「理科教育から見えてくる日本の初等・中等教育の問題点」、「ポテンシャルを探ること」、「若者の科学する心の喪失」、「国民一人一人に科学する心を育てることから全てが始まる」、「情報の時代と科学教育」、「理系・文系科学の協力基盤」、「高等学校・大学の化学実験の現状で科(化)学力は育つか」、「工学屋の見た"理科離れ"」、「若者の科学力―宮城県における小学校理科教育調査からみた課題」、「砂上に楼閣を築くのか」。この中の「国民一人一人に・・」で、本田孔士氏(大阪赤十字病院院長)はわが国の科学ジャーナリズムの貧困さを厳しく断じている。また「砂上に楼閣を築くのか」は、有名な教育学者天野郁夫氏(東大名誉教授)の取りまとめ的議論である。

最後に第4部は、海外における理解増進と科学教育の展開と題し、欧州3国との学術交流ならびにアジア諸国の初等・中等教育における理科・数学教育の現状について述べている。

書籍というよりも報告書であり、かつ理路整然とせずやや寄せ集め的な感じもしないでもないが、本学会でも理科離れに関心を持つ会員も多かろうと察し、ここに紹介することにした。

前日本学術会議会員、原子力安全システム研究所・木村逸郎
日本原子力学会誌 Vol.48(2006)No.5 53ページより転載

Book06今、なぜ、若者の理科離れか -科学者と社会との対話に向けて
黒川清、北原和夫 他著、 A5版 275p. (2005/09)
学術会議叢書10、日本学術協力財団
ISBN: 4-939091-19-8
価格: 1,890円 (税込み)

ご購入のお申込はこちらから
日本学術協力財団

「地球環境 危機からの脱出―科学技術が人類を救う」 (ウェッジ選書)

2004年の11月に帝国ホテル(東京)で行われたJR東海の「高速鉄道国際会議2004 ~東海道新幹線開業40周年記念~『地球の未来のために』-高速鉄道 は何ができるのか-」での会議内容が、ウェッジ選書より出版されました。私は第2部の「閾値を超える日が来る前に」にパネリストとして参加しています。環境問題を身近な問題として捉え、現時点での取り組みと問題点をわかりやすく討論しています。日本からの参加だけではなく、英国上院議員のデヴィッド ・ハウエル卿やアースポリシー研究所長のレスター・ブラウン氏も参加されました。

科学技術の急速な進歩によって引き起こされた現代社会の問題は、従来の政治・産業・経済・学問等、それぞれの世界だけで解決するにはあまりにも問題が大きいのです。今、環境問題は科学者や有識者だけでなく、皆さんも真剣に取 り組まなければならない問題です。「持続可能な社会をいかに作るか」、是非 この本を手にとっていただき、身近なところから環境問題を考えてみませんか。

「地球環境 危機からの脱出―科学技術が人類を救う」
レスター・ブラウン (著), 黒川 清 (著), 十市 勉 (著), デヴィッド ハウエル (著), 薬師寺 泰蔵 (著), Lester Brown (原著), David Arthur Russell Howell (原著)

生命科学と科学技術

株式会社三菱ケミカルホールデイングスと三菱化学株式会社より発行された「Life Sciences」に、生命科学と科学技術に関するインタビューが掲載されました。

三菱化学のサイトからファイル「第2章:生命科学と科学技術」を選択して、PDFをダウンロードしてください。

週刊東洋経済で「日本の洗濯-考えるエッセンス」が紹介されました。

「日本の洗濯-考えるエッセンス」(黒川清、板垣雄三、猪口孝、田辺功 共著)が、週刊東洋経済「Books in Review」で紹介されました。

 Books in Review 「日本の洗濯-考えるエッセンス」

出典: 週刊東洋経済(2005年9月17日号) Books in Review

日本経済新聞で紹介されました。

日本経済新聞(2004年10月18日、25日、11月1日)の「時間術」で紹介されました。

2004年10月18日(月)朝刊 「時間術」(上)

-資金の裏付けで配分に知恵-

四月から“パートタイマー”になりました。東海大学医学部は非常勤になり、東大先端科学技術研究センターも客員教授です。昨年七月に就いた日本学術会議会長が本業となりますが、これも任期があり、パーマネントの職業とは言えません。

思えば随分細切れの人生を歩んできました。医学者として日本と米国で研究・診療をしてきましたが、米国では帰国の時期を失し、はっと気がつくと十四年が過ぎていました。 米国では時間配分でハードな経験をしました。大学では研究・教育・診療の各面で責任をもちますが、どこに多くの時間を割くかは重要な問題でした。

というのも教育には十分な報酬がでますが、研究にはそれほど配慮してくれません。重点の置き方によっては、資金の手当てや、給料の大半を自分でまかなう必要があるからです。どう配分するか-別の意味で“時間との闘い”でした。

2004年10月25日(月)朝刊 「時間術」(中)

-学者も積極的な行動求められる-

「学者さんはいいですね。じっくり考える時間がたっぷりあって」と言われます。
「自分たちはこんなに忙しいのに」との思いも込められているのでしょう。

ちょっと待ってほしいというのが、正直な気持ちです。私自身、以前にも増して忙しくなっています。公職にあるせいか、優先しなければならない飛び込みの仕事が増え、スケジュール調整に四苦八苦しています。必要な時間をどうねん出するかが重要な仕事になっています。

学者が忙しくなったのには理由があります。これまでの日本は政・産・官のトライアングルが社会を動かしてきました。学者の存在はこれらの外にあるとの考えが主流でした。

これからは違います。何事にも透明性、自律性、そして社会の要請にこたえる時代では、そのためのデータや知恵が必要で、それらの情報を提供できる学者、専門家の重みが増します。学者は文字通り社会の一員になり、積極的に行動し、提言することが求められるのです。

その意味でも、私たちは“のんびり”していられませんし、忙しくなるのはよいことだと思っています。でも、忙しいだけではだめ。思案の時間も必要なのです。

2004年11月1日(月)朝刊 「時間術」(下)

-電子メール、即断の習慣を評価-

私は夜中に仕事をすることが多いのです。昼間は外向きの仕事にあて、物を書いたり、じっくり考えたりといったことは夜にします。電子メールを送ったり、返事を書いたりするのも夜中です。

電子メールは時と所をかまわず届くので迷惑だという人もいますが、世界中との“つながり”のスピードが速いといった点で評価します。

返事を出すとき、どんな内容にするかなどの判断を即座にしなければなりません。後回しにするとメール画面の上か下にいってしまい、忘れがちです。返信も含めて人任せではなく、自分でしなければならないことも電子メールがもたらした生活の変化です。

時間をもっと有効に使える仕組みを取り入れることも大切だと思っています。例えば、一週間に四十時間働くとすると、そのうちの三十時間を大学の、十時間を大学外の仕事に使うのです。大学からの報酬は三十時間分。

従来の「この道一筋……」もいいのですが、今までの社会制度で国際競争に勝てるかという不安があります。

(聞き手は編集委員 中村雅美)

この記事は、日本経済新聞社の許諾を得て、掲載しています。
著作権について http://www.nikkei.co.jp/hensei/shakoku_chosakuken.html

朝日新聞に掲載されました。

朝日新聞(7月30日(金)、26面)に掲載されました。

 私の視点 「私の視点:治験と株保有 強制力ある規制が必要」

注)この記事は朝日新聞社の許諾を得て転載しています。
無断で転載、送信するなど、朝日新聞社など著作権者の権利を侵害する一切の行為を禁止します。