慶応SFCクラス、乗竹亮治さんを迎える

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私の慶応SFCのクラス。10月27日は、私たちが主催している医療政策機構で大活躍している好青年、乗竹亮治さんをゲストにお迎えしました。

乗竹さんは、このSFCの2007年の卒業生。卒業とともに私たちの「Think Tank医療政策機構」に参加しました。以来、ガン対策、ガン患者さんの支援活動、そのほかにも脳卒中患者支援や、患者リーダー養成講座などで活躍し、いくつも成果を挙げながら幅広い活動をリードし、本当に大きくリーダーへと成長しています。この機構に欠かせない中心人物の一人です。

彼は、学生さんたちにとっても、SFCの先輩であり、お兄さんであり、その話は身近に感じられ、さらにいくつもの感動的な「自分のものがたり」があり、とても素晴らしい時間を皆さんと共有できたと思います。

特に2001年9月11日のWorld Trade Centerのテロ攻撃の時は、Oklahoma大学で学生生活をしていて、そのときの周囲の反応、彼自身の思いがけない「言葉のちから」への新鮮な感動などなど、本当にいい話でした。

このコースでの私の狙いは、出来るだけ学生さんにとって「グローバル時代」を目指すことの大事さと、その「ロールモデル」になれる人たちの、現実感のある「ものがたり」を聞かせたいという狙いがあります。その「ものがたり」が、本人の実体験からくる話だからこそ、若者たちへの説得力がある、若者たちがその様な人、キャリアを目指そうという気持ちになるのです。

皆さんもご存知かと思いますが、白洲次郎という快男子がいます。私のこのカラムで何度か紹介しています (資料1)。終戦後の日本で大いに活躍した、Cambridge大学で学んだ「英国紳士」です。彼についてはいつかの本がありますが、いつも「Principle」(ことの本質とでもいうのでしょう、、)を大事していたことで知られていて、痛快なエピソードにはこと欠きません。このような快男子、紳士は、このところトンと見かけませんね。

この次郎さんの書いたエッセイを集めた「Principleのない日本」をいう本があります。彼の住んでいた、「武相荘(ブアイソウ)」で購入しました。そこにこんなことが書いてあります。「教育とは、先生が自分の教えていることを、先生自身が実践しているかどうかなのだ、、」といった趣旨のことが書かれています。これは、特に高等教育では大事なPrincipleではないかと私も思っていることで、読んでいたときになんとなく頷いたことを覚えています。

乗竹さんの話は、私がいつも訴えているように、若いときに「外」の世界を体験することの大事さを明確に示しています。

乗竹さん、大事な話をありがとう。多くの後輩たちが「何か」を感じ取ったと思います。 

慶応義塾湘南藤沢キャンパス(SFC)で「Global Science and Innovation」講義はじまる

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慶応義塾の湘南藤沢キャンパス(SFC)の今年の入学式で、私は新入生を迎えて特別講演の機会をいただきました。このキャンパスは、設立152年の伝統ある慶応義塾の中でも、今年で設立20年を迎えたばかりの、新しいコンセプトによる、とても注目されてきたキャンパスです。

多くの卒業生が、広い世界を含めたいろいろ場で活躍しています。その中でも多くの方が従来の日本の常識(世界ではよくあるキャリアなのですが、、、)では考えられないようなキャリアを積んでいます。私もSFCのOB、OGの何人もの方を知っていますし、今でも一緒に仕事関係が出来ている人もいます。

そのご縁もあってでしょう、今年の秋学期、「Global Science and Innovation」  というコースを担当します。

9月29日は初日。これは「顔見世」だそうで、コースに興味のある学生さんたちが出席。次回までに登録するかを決めるのだそうです。大学院生TAと学部生SAがサポートしてくれます。さすが慶応SFC、もうこの授業をウェブで見ることが出来ます

このようなウェブという「道具」を使って、このコースでは学生さんたちも参加しながら、楽しい、全員参加型の、そしてオープンなクラスを、試行錯誤しながら作っていきたいと考えています。最近話題の1冊「ウェブに学ぶ」も学生さんたちに紹介しましたが、時代は確実に、しかも急速に変化しているのです。

参加するのは1-4年の学部生ですから、半数以上がBerlinの壁が崩壊し、北京で天安門事件が起こり、日経株価が3.9万円の最高値をつけたバブル経済崩壊前年の1989年以後に生まれた人たちです。幼稚園の頃から日本の経済成長は止まったままなのです。ご両親の年齢からは、この学生さんたちの物心ついていらいの育ってきた時代がどんな社会情勢に囲まれていたのかも、考える必要があります。皆さん、あの「9/11」のときはまだ小学生だったのです。

かなりの学生さんが海外生活の経験があるようで、これは楽しみです。何人の学生さんが参加してくれるでしょうか?ちょっと不安です。「授業仕分け」です。これが「Open Education」、「ウェブ時代の教育」の、先生たちにとっては怖いところなのです。

いろいろなゲストも迎えながら、学生さんたちと一緒にこのコースを作って行きます。

 

「イノベーション思考法」を整理する

先日、「ウェブで学ぶ:オープンエデュケーションと知の革命」 を紹介しましたが、この本の評判はかなり広がっていると思います。

その時、この本に紹介されているいろいろな「サイト」を整理してリンクしてくれているBlogを紹介しました。ありがたいことですね。

その方が、今度は私が2008年に出版した「イノベーション思考法」について分析、整理し、解説してくれています。なかなか面白く、うれしいことです。

「イノベーション」は、「アントレプレナーシップ」(資料1)とともに、どの国でも政策の中心に位置付けている「キーワード」です。日本語では、それぞれ「新しい社会価値の創造」、「進取の気性」です。変わる世界、社会で、どうするのか。ここはPeter Druckerの言葉(twitterで @DruckerBOT)をいつも噛みしめてみることです。

2008年秋のリーマンショックから世界はすっかり変わり始め、当初は「土地バブルがはじけて20年の経過から、日本は大丈夫」などといっていましたが、とんでもないですね。

世界がすっかり様変わりしているなかで、日本経済も低迷が続いています。内向きの独りよがりはもういい加減にして、もっともっと世界の動向を感じて考え、行動していなければいけないのでしょう。

 

「ウェブで学ぶ:オープンエデュケーションと知の革命」、必読の一冊

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去年ご紹介した飯吉さん blog 、資料1)が、「ウェブ時代をゆく」などシリコンヴァレー発のメッセージ(将棋についてもすごいですが、、)を書いている梅田さん blog)、と書いた「ウェブで学ぶ」 を出版しました。とても豊かな内容で、「目からうろこ」にも満ちた、多くの教育関係者、自分自身や子供たちの教育に関心のある方たちにぜひ読んでほしい一冊です。

MITの画期的なOpenCourseWare (最近のTimesでTop50 websites)に始まるといえる教育の「オープン化」、「ウェブ時代」の流れの進み方の速さ、激しさを感じ取ることが出来るでしょう。

私が公的な「場」でも繰り返し指摘 (資料1) していることですが、Internetは15世紀のGutenbergの印刷術と同じようなインパクトがある、「個人をempower」するツールなのです。より広い範囲の人たちに「情報」へのアクセスも発信も可能とし、広げるツールなのです。しかも国境も時間も越えるグローバルな広がりなのです。ここからより多くの人たちの新たな「問いかけ」が始まる、従来からの「権威への疑問」が生まれるのです。だから、この流れは進みこそすれ、戻ることはないのです。国家も、企業も、組織も、この流れに適応できず、抵抗すればするほど、結局はダメージを受けるのは必須です。私はこれが「グローバル化」の流れの本質と考えています。

最近の例では iTune、iPod、iPhone、iPadなどがいい例です。それぞれが市場にでてきた時に、どの業界が抵抗勢力で、どう国内社会が、そしてグローバル世界が変化してきているのか、その抵抗勢力がどうなったのかを考えてみればよく理解できると思います。

つまり、この本「ウェブで学ぶ」は、教育者には世界の新しい教育の動向だけではなく、自分たちに課せられた責任を知らせ、さらにこの責任を問うているのだ、ともいえます。

しかし一方で、「個人のempower」の立場から言えば、教育を受ける人、学びの心のあるすべての人たちには、どんな教育を受けたいのか、世界にはどんな教育や学びの機会、新しいツールがあるのか、自分を育てていく発見の可能性などを積極的に問いかけている本であるといえます。

そればかりでなく、この本からは世界の動向になぜか隔離されているような日本への懸念が感じ取ることが出来ます。それは、この著者の2人が長い間、日本を離れて、日本から独立したキャリアを積み、グローバル化の進む世界の中で、なぜか変われない、内向き日本への切歯扼腕の思いがいっそう強くなっているからこその懸念であり、日本へのあふれる愛国心からの思いからなのだと思います。

教育担当のすべての大人たち必読の書であり、またすべての人たちに読んでもらいたい1冊です。

ところで、著者の趣旨や内容の概略については、上に紹介した梅田さん 飯吉さんのblogで見ることが出来ます。またこの本の中で紹介されている、多くのリソースサイトについては、このblog でも整理されています。この本「ウェブで学ぶ」が手元になくてもいろいろ貴重なサイトを訪ねることが出来ます。

それにしても「世界」の人たちを育てることに熱い人たちが、実にたくさんいます。

 

日韓の交流、楽しい会合

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8月15日のLee大統領の演説は約20分、特に北との関係については「平和」「経済」「民族」共同体という3つの戦略的ステップの考えを表明しました。また「Green Growth」についても述べたということでした。講演全文の英語、日本語訳などがあるとうれしいのですが。

今回のソウル滞在中にはいろいろな方達とお会いすることができました。ソウル大学での講演では、以前からの腎臓学の仲間、新しい方達は当然ですが、2008年のL’Oreal賞受賞のNarry Kimさん (資料1) も来てくれました。

到着の13日の夜は、以前にもご紹介した朱先生 (資料1)を囲んで韓国の医学史を研究している石田純郎さん(いろいろオランダ、韓国の医学教育史などについて書いています)、Lee, Heung-Ki教授(ソウル大学で病院の歴史を研究)(写真は前回カラムのトップに)とも皆さんとの再会を祝して夕食。朱先生は89歳ですが、頭脳明晰で、本当にすばらしい方です。

15日夜は、夏休みでソウルに帰省している早稲田大学2年生の女子留学生を夕食にお招きしました。ご両親の仕事で5歳まで日本で生活したそうで、日本語もたいしたものです。お兄さんはCanadaの大学に行っているとか。しっかりした目標を持っていて、それで早稲田を選んだそうです。この7月に早稲田大学の女性同窓会 から奨学金を受けたそうです。すばらしいことですね。このような若者の双方向の交流がもっともっと増えるとうれしいです。

ソウル最後の16日。朝はホテルのExecutive Loungeで、時々電話で話をしている中田 力さん資料1)とばったり。一昨日ソウルに到着、今日帰京するとか、こんなこともあるのですね。これも旅の楽しさの一部です。久しぶりなので、しばらく話が弾みました。

昼食は韓国Han Seung-Sooさんと。韓国政府の歴代の大臣を務め、国際舞台でも良く知られ、国連総会議長(その就任式典の朝にNYCで9/11 が起こった、、)も勤められた大人物、元は経済学者、ソウル大学教授などでもありました。

国連総会議長としての1年の記録を著書「Beyond the Shadow of 9/11」 にしておられます。すばらしい記録で、外交、国連などに関係したい方には特にお勧めです。

日韓はお隣どうし、1,500年以上も前から歴史的にも経済、政治、文化などなど深いつながりがあります。世界がグローバルしていく中で、一番大事なパートナーです。「大きな枠組みで、大きく変化している世界の中のこの2つのお隣同士の国」という認識で、考えていくことが大事です。

これは、前回報告した私のソウル大学での講演の骨子でもありました。

休学のすすめ: web2.0時代の人材育成

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7月31日、日本医学教育学会の特別講演をしました。そのタイトルは「休学のすすめ: web2.0時代の人材育成」です。

私の前の特別講演が、UCSFの学生担当のAssociate Dean、Dr Maxine Papadakis さん。彼女とはこの10数年Lawrence Tierney教授による、最も売れているという臨床医学書「Current Medical Diagnosis and Treatment」(毎年改定版が出ます)の「Fluids and Electrolytes Disorder」の章を一緒に担当していました。 彼女はEditorsの1人です。合間にちょっとお話を。

私の出番になりましたが、司会の労をとっていただいた、岩崎 栄先生も「このタイトルは何の意味でしょうね、楽しみです」と紹介してくれました。

このサイトに来て頂いている方達にはなんとなく感じ取っていただけると思います。
講演の抄録はこれです。ご理解いただけるでしょうか。私の見解をしっかり受け止めてくれている方もおられます。

「Invictus」:リーダーの意思、決断と戦略、そして行動

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1国トップの責任は、1企業トップ、1大学トップより大きいのは当然です。

この40-50年の激動の世界で、いろいろ国のトップであった人たちで、長く歴史に名を残すような人は、それほどいるわけではありません。でも確実に入る人に南アフリカのNelson Mandela氏がいます。あの、人種差別Apartheidのなかで、弁護士として、また1950年ごろから政治活動を始め、27年にわたって監獄に収監されるなど、想像を絶する人生を送られた人です。1990年に国際情勢の変化などを受けて釈放され、1994年のApartheid廃止後の全国民参加の選挙で最初の大統領に就任。こんな難しい時代の1国のトップの苦悩は想像を絶すると思います。政治家としてGandhiを尊敬していたということです。

ここでは、そのようなことではなくて、この直後の1995年に南アフリカで開催されたラグビーWorld Cup のことです。すべてのゲームが南アフリカで開催され、まさかのことですが、南アフリカが、最強といわれたNew Zealand代表を破って優勝したという、まさに「真実は小説より奇なり」です。

これをテーマにした映画 (資料1)が最近上映されました。「Invictus」 (William E Henleyの詩からきたものです) です。映画はMandelaが大統領になった当時、南アフリカ駐在だったジャーナリストJohn Carlinの本、「Playing the Enemy: Nelson Mandela and the Game that Made a Nation」 を元にしたものです。

とても感動的な物語です。想像しただけでも極めて難しい状況で国をまとめる責任を負ったトップの意思、決断と戦略、そして行動。さすがにClint Eastwood監督ですね、いつものことですが、題材の着眼がすばらしいです。ぜひご覧になってください。

時代が変わっても、国のリーダーの責任はますます大きくなってきています。これからグローバル世界の行く末が、見えにくい時代になってきていますし。大きな歴史観、哲学と実践的知恵、人の心を動かす力です。

友人のジャーナリストLaurie Gallettさんの部屋には、Mandela大統領の等身大写真が置いてあります。本当に世界の人々から尊敬を受ける偉大なリーダーです。

大変化の時代、日本のトップはどんなものでしょうね、なにか迷走状態です。

出でよ、日本のリーダー(何も政治ばかりではないですが、、)。

「JUSTICE」; Michael Sandel教授の連続講義

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ハーバード大学のMichael Sandel教授による連続講義「JUSTICE」がNHKの教育テレビで毎週日曜夜6-7時に放送され、深夜にBSで再放送されていることをご存知の方も多いでしょう。このブログでも先日ご紹介したばかりです。

この連続講義はハーバード大学で大評判で、時には1,000人もの学生が出席するとかで、あまりの人気の高さにHarvard大学では初めて「On-line」で公開しました。NHKのテレビを見た人はまるで自分が講堂に学生として座っているかのような気分になります。

私もこの講義のファンで、どうしたらこういう講演ができるのか、番組から学ぶことは多いと思っています。

ところで、この講義シリーズに関してはいくつか驚くような事実があります。1つ目は、Sandel教授はこのテーマに関して数冊の本を書かれていますが、私は教授の著作の 「JUSTICE」をKindle で電子的に手に入れたことです。これはAmazonで買うよりもずっと早いわけで、思いついたときにすぐ反応したのです。これは読書の世界における飛躍的な進歩と言えるでしょう。本に目を通すことで、講義の内容や議論の詳細をよりよく理解することができました。

2つ目は講義のスタイルです;学生との対話から始め、課題についてお互いの対話の上に質問を積み重ねて議論を進めていきます。

3番目は、講義で取り上げるテーマや内容が日常生活の身近な問題を取り扱っているにも拘わらず、毎回30分間でセッションが終わってしまうことです。講義を進めていく教授の技量は大変なものでどうしたらあれほど効率よく、しかも内容の豊かさやワクワク感を持続し続けることができるのか驚きます。私もこのような講演ができるよう、と思います。

4番目は教授の知識の深さとそれらを現代の課題や論争に関連付けていく能力です。
 
そして、最後に5番目として挙げられるのは彼の記憶力で、質問に答えた学生の名前をすぐに憶えていることです。なかなかできることではないと思いますが、、。

このようなスタイルの講義は出席した学生に強い印象を与え、さらには質問を促す効果があるでしょう。

幸い、これらの講義シリーズはウェブでも公開されているので誰でも視聴して楽しみ、考え、インスピレーションを得ることができます。NHKの番組では英語でも日本語でも見られますが、「On-line」版はもちろん英語のみです。私としては1人でも多くの学生がOn-lineで本来の英語の講義を視聴することを勧めます。

もっと言えば、日本の学生さんに、これらの講義を通してハーバード大学の講義に直に触れて欲しいです。世界の一流大学の講義、教授がどういうものかを見聞きすることで外国の学生が置かれている授業環境、受講している講義の内容やスタイル、教授の資質やクラスの雰囲気などを知ることができるからです。

教授や先生方にはとっては講義やクラスの参考になることが多いばかりか 、学生達も違いを知ることができます。このような授業公開を今後増やしていくことで、デジタル時代は大学教育の質向上や、数10年単位での未来の教育の変革資料1)手段となる可能性が十分にあると思います。

本当に素晴らしい講義です!

休学のすすめ -3: 「留学しない東大生」

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4月になって、このサイトで2回続けて「休学のすすめ」(資料1)の大事さ、これからの時代の人材育成を担う大学への要請の変化について書きました。

世界にビジネスを展開しようにも、特に新興国などの新しい経済成長圏では、個人的コンタクトがないとなかなかアプローチも難しいものがあります。

この個人的コンタクトができるのが高校生、大学生時代です。英米ではいわゆる「ボ-デイングスクール」、大学学部時代などもあります。大学院留学は基本的に同じ業種の人たちですから、横への広がりは弱いのですが、日本からの大学院留学も減っているようです。

これからのグローバルの時代にはこの「横の広がり」は業種や国境を越えた、世界のネットワークになります。この認識があるからこそ、多くの大学では世界の若者、将来のリーダーの育成に学部学生の留学・海外経験や交流を増やす工夫をしています。

これからさらに広がるグローバル世界では、一人一人の若者たちにとって将来の仲間となるべき世界の次世代との「職業、組織を超えた」「個人としての信用」を基本にしたネットワークはきわめて大事な財産になるでしょう。

グローバルな世界での成長は、自分の強さと弱さを認識した、国境を越えた「顧客志向」の企業の活動にあります。特に「単線路線」「終身雇用」「年功序列」のタテ社会の男ばかりの「身内組織」では、違う意見も出にくくなり、変化、異変の時にはうまくいかないことも多いのです。日本の大企業、組織に共通する弱さでもあるのです。ましてや日本人ばかりでしょうから、ますます弱いのです。口先では多様性、異質性などといっていてもこの有様です。

最近も、これらの要因が背景にあると思われる事件 「トヨタ問題はトヨタ固有のものか?」について指摘しました。

ところで、日本では東京大学が大学のトップとして変化への牽引車であることを期待されているのでしょうが、東京大学が新入生を迎えて1週間後の4月19日の朝日新聞に、いつも核心を突いたコメントを出している辻 篤子 論説委員から、私のこの趣旨を共有するカラムが出ていました。

以下のようです。

「●留学しない東大生   ―「窓」  論説委員室からー <辻 篤子>

●日本の若者は海外に出たがらない。そういわれて久しい。とりわけ外に出たがらないのが東京大学の学生らしい。

●東大が発表したデータによれば、学部学生のうち留学経験者の割合は理系4.6%、文系4.1%、これに対して他大学の平均はそれぞれ8.1%、14%で、とくに文系の差が大きい。

●「授業が忙しいこともある」と浜田純一総長はいうが、自ら「外国語でコミュニケートする能力」が身についていないと認める学生が7割を超える。「国際化」を最優先課題の一つに挙げる東大にとってはかなり悩ましい現実だ。

●米ハーバード大学を卒業後、東大に1年半留学したベンジャミン・トバクマンさんも「東大生はもっと留学すべきだ」とするが、それには別の理由もある。

●経験をもとに両大学の教育を比較した著書「カルチャーショック ハーバードVS東大」(大学教育出版)によれば、ハーバードの教授は、学生に質問させ、考えさせることで教えるのに対し、東大では、答えを与えることで教える。これでは、自立的に考える学生が育たない。

●東大にも学生の質問を歓迎する教授はいるが、その多くは外国で学んだ経験があり、教授と学生が対等に議論することの価値を知っている。学生がもっと留学し、東大に戻って教えられるようになれば、学生はもっと考えさせられ、勉強の意欲も高まるはず、というのだ。

● 問題はどうやら、学生だけ、東大だけにとどまりそうにない。」

浜田総長は学部学生の国際交流推進への意識が高いと聞いています。期待していましょう。

このトバクマンさんの本が出版された直後に彼にもお会いしました。中国に行くといっていましたが、まだ中国なのでしょうか?

「休学のすすめ」-1: 慶應義塾大学SFC新入生へのメッセージ

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4月6日は、慶応義塾大学SFC の新入生1,000名を迎えて、いろいろな行事があるのですが、今年の特別講演にお招きを受けました。光栄なことです。村井 純 (資料1)(環境情報学部)、国領二郎 (資料1)(総合政策学部)の両学部長としばらくお話しをした後、θ館講堂で(入れなかった人たちは別室でもテレビ中継があったそうです) 80分ほどの時間をいただきました。

SFCは今年が開校20周年。4月4日にはその記念行事が盛りだくさんあったようです。私も何人かの卒業生とは仕事の関係でよく知っています。皆さん、「日本の常識」を外れた、グローバルキャリアの方ばかりですが、、、。それが、あまり変でないところがSFCのひとつの特徴でしょう。これからの計画などについてもお話をうかがうことができました。

ホームページを見れば、SFCの歴史、内容、キャンパス、その素敵さが想像できると思います。

約18%の新入生が留学生、かなり(40-50%程度か?)が海外生活の経験があるということです。在学中に海外留学も推進、来年からは英語の授業だけで卒業できるようにする計画とか。

私の講演もこのサイトにもリンクしますが、講演の後半の背景に、講演の内容に関係のあるいろいろな光景を流しました。

ところで、私はこの2年ほど、2,3度以外は講演にpowerpointスライドを使わないことにしているのです。なぜか?講演のテーマにもよりますが、大体、政治家はそんなもの使わないですよね。オバマ大統領にしても、小泉元総理にしても、スライドを使った講演を見たことがありますか?あまりないですね。これが理由です。いかにコアのメッセージを伝えるか、研究成果の報告ではないですし、私にとってはこれが大事だと思います。

私の話は、多くの新入生が生まれた1992年前後の日本、世界の変化などについて話しながら、これからのグローバル化世界の動き、日本の課題などについて話を進めました。私のサイトにいろいろなタイトルで、いろいろな形で、繰り返し出てくるテーマです。

特に多くの男性は「単線路線」のキャリアが常識と考え、それに縛られていたのです。女性は単線路線では、最後のほうは限界がある制度なので、どんどん自分で複数路線になってきていた、だから、この新入生の生まれた頃からの、この20年になると海外でも「個人力」が出る人が多いのです。男性は「タテ社会」の「単線路線」キャリアがおかしいと感じても(あまり感じていないのかもしれませんが、、)、思考も、行動も、内向きになる、横に広がりにくいのでしょう。

明治維新以後の近代日本では、慶応義塾設立者の福沢諭吉の「学問のすすめ」(1876年)ですが、グローバル化が進むこれからの時代、学部生が4年で卒業する必要はない、5年のうち1年程度は社会活動もよし、留学もよし、いろいろな海外での活動もよし、いろいろなところでの生活も、旅行もよし。「外」へ出る、「外」で感じることで自分を見つめ、多様な世界を知り、違いを感じ、だからこそ「外」から日本を見る、感じ取ることができる。ここから多層な、国境を越えた仲間ができる。この「異質性、多様性」への感性が獲得できる。このような感性、能力、人の繋がりこそが、グローバル世界に向けて自分の本当にしたいこと、価値を見つける。だからこその「休学のすすめ」なのです。

大体、「学部3年時に内定」などという企業は、あまり将来があるとは思えません。そんな大学、企業が主力だ、というような日本の社会は世界でも例外的と思います。日本「社会の上」のほうにいる皆さん、いい加減に目を覚ましてほしいです。

最後に、Appleの創設者、iTune, iPod, iPhone, iPadなどなど作り出して世界を変えてきたSteve JobsのStanford大学卒業式の「私のお気に入りの14分の講演」をちょっと見せて、私がまとめました。

講演が終わってから、大勢の学生さんに囲まれてとてもうれしいひと時をすごしました。

家を出かけるときからキャンパスに着くまで3つのtwitterを発信しました。いくつかのパワフルなメッセージが出ていました。これもうれしいことです。