ダボスから、その2

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第1日目の最後に行われた基調講演は米国のRice国務長官でした。今のアメリカとこれからの世界とアメリカの責任について、明確なメッセージをゆっくりと、堂々と話されました。その後、Blair、Kissinger、J. Dimon(JPMorgan and Chase)、KV Kamath(ICICI Bank、India)、IK Nooyi(Pepsi、有名なインドのIIT出身の女性・・・日本の企業で想像できますか?)、DJ O’Reilly(Chevrons)、Wan Jianzhou(China Mobile Communications Corporation)等、世界中の政治、ビジネスのトップが壇上に上がり、いくつかの質疑応答があり、Riceさんの対応も立派なものでした。これが世界なのです。大勢の見ている前での応答です。

今年は特に参加者が多く、しかも国家元首が20人以上こられるそうです。第1、2日目だけでも、Karzai (Afhjanistan)、Musharraf(Pakistan)、Yushchenko(Ukraine)、Simon Perez(Isreal)等々、さらにAl GoreやBill Gatesです。

日本は2001年の森総理以来でしょうか、福田総理がこられます。TICAD、G8サミットのホストとして世界が期待しています。どのようなメッセージを発信されるでしょうか。役所の文章からはるかに離れた、世界第2の経済大国としての首脳に相応しい格調高いパンチの効いた演説であることを期待しましょう。「政治家は言葉」ですからね、国内はともかくとして。海外プレスへの戦略的対応も大事です。

緒方貞子さんは言うまでもなく日本を代表する国際人ですが、竹内弘高、石倉洋子の一ツ橋ビジネススクールの国際派、また竹中平蔵さん等々が、いろいろなパネル、司会などで大活躍です。WorkSpaceというbrainstormingセッションでも、竹内さんの司会は皆を楽しませながら話を進める、いつもながらの腕前です。これはちょっとまねができませんね。

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写真1 会場で鳩山さん、藤崎大使と

夜は東大・慶応大のホスト、帝人・双日の支援で、Japan Sushi Receptionがあり、多くの政治、学会、ビジネスに携わるお客様が大勢こられました。このような催しは財界が率先してすべきですね。ここはあくまでも世界経済フォーラムなのですから。

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写真2 Japan Receptionで
武田製薬の長谷川さん、インドの有名な政治学者で友人のChallaneyさん、経済同友会の桜井さんと

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写真3 NHK「Close-Up現代」の国谷さんと

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写真4 北京大学長と

政治家では中川秀直、尾身幸次、鳩山由紀夫(小沢一郎党首がこられなくなったそうで)、塩崎恭久、古川元久、猪口邦子さん等、ビジネス界からはトヨタの奥田さん、住友化学の米倉さん、経済同友会の桜井(リコー)代表幹事、帝人の長島さん、武田の長谷川さん等、会長や社長が多士済々。藤崎大使、G8サミットシェルパの外務省河野審議官、NHKの今井さん、国谷さん、そして北京大学長のXu Zhihongさん、Gates財団 Global Health InitiativeのDr. Tachi Yamadaも顔を出して、皆さんで日本の貢献などについて話しました。Googleの創始者S. Brimもちょっとだけ顔を出しました。そうそう、iPSで一躍世界に躍り出た京都大学の山中さんも来られてました。

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写真5 竹中さん、Dr. Yamada、Bonoのスタッフ2人と

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写真6 Dr. Yamada、石倉洋子さん、慶応大学の安西塾長と

今年は福田総理が来られるということで、どこまで世界政治のリーダーの一人として、どこまで高い理想と踏み込んだ政治家の発言ができるか?、皆さん期待とちょっとした不安がないまぜ、といった雰囲気といえましょうか。

過去のダボス会議の報告も見てください。お馴染の顔も出ています。

ダボスから

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例年のことですが、1月末にはダボス会議が開催されます。今回で8年連続の出席です。過去にも同じ時期にブログで報告をしているので見てください。

去年からですが、雪がとても少ないです。昨日は少し降りましたが本日は超快晴です。

今年は26日に総理が来られて演説をされるので、いつもより財界人の出席も多いようです。いいことですね。トヨタの奥田会長も24日にいらっしゃるそうです。往路のフライトでは緒方貞子さん、住友化学の米倉社長さん(ご両者ともご夫婦でした)、そしてNHKの今井さんたちとご一緒しました。

さて、23日初日の最初のセッション「Update 2008: Defining Innovation」に参加しました。IDEOTPG GrowthDoblinなど、米国のCEOとPartner、Index(NPO、Denmark)のCEO、それと私の5人で、司会はNussbaumさん(Business Week)で行なわれました。クリーンエネルギー投資、弱者救済、open innovation等の話がメインで、皆がグローバルな課題を中心に問題設定をしているのは頼もしく感じました。ちょっと「おや?」と意外に感じたほどです。TPGのMcGlashanさんの話から、私の友人でもあるSteven Chuの話が出て、そのことを話すと、「彼のことはよく知っている、大変素晴らしい方で、応援している、彼のprojectにも投資しているよ」と言っていました。

さて私は何をしゃべったかというと、“Googleの10年”、“10年前には瀕死だったAppleから、iPod、 iPhoneが”、“大ヒットしているNintendo ‘Wii’で、ビデオゲームに弱いお父さんが孫と遊んで汗をかく”、“Nergroponteの‘One laptop per child’のコンセプトはSoftwareからして画期的”等々、最近のフラットなグローバル社会のinnovationとして例示し、世界が抱える課題への貢献意識が世界中に広がっていることを指摘しました。加えて、2006年、2007年のノーベル平和賞がグローバルの課題に対する回答、つまりinnovationの目標として啓示的であることを話し、皆さん納得してくれたと思います。この辺の問題意識は、1月2日10日のブログなどでも繰り返し発信しているところですので、このブログを見てくださっている方たちには理解していただけるかと思います。

その後、隣に座った二人で相談しあって、新しい提案を出すというセッションがありました。結構面白いアイデアが出るものですね。感心しました。

後で何人かの方が、私の問題提起は明確で、刺激的で、とてもよかったと言ってくださり、嬉しかったです。フィードバックはありがたいです。いいときは褒めましょう、特に子供達をね!

今年のダボス会議ではClimate Changeのセッションが“28”も設けられていて、ビジネス界における問題意識の大きさを示しています。日本の産業だけが閉じこもり症候群に見えます。

その後のセッションでは、去年のノーベル平和賞IPCC座長のPachauriさんにお会いしました。来月、東京にお招きしていますので、楽しみにしていてください。

WHOコミッション、WHO神戸センター、グローバルヘルス

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16日から、WHO Kobe Centerで行なわれているWHO Commission for Social Determinents of Health(CSDH)の会議に来ています。Kobe CenterはCSDHの1つのハブとして機能していて、今回も16人のCommissionersが参加しています。2005年の3月にスタートしたCSDHについてはこのブログでも何度か報告しましたが(北京VanacouverGenevaNairobiなどから)、今回が10回目で最後の会議となり、最終報告を6月に提示する予定となっています。

今回WHO Kobe Centerで会議が開催できたのは、まだ2週間程しか経っていませんが、2007年12月まで所長を務めた元厚生労働省局長の岩尾さんのおかげです。新しく所長に就任されたクマレサン氏にとっても、就任直後の大きな初仕事となってよかったと思います。16日の夜に行なわれたレセプションには、岩尾前所長、クレマサン新所長、兵庫県知事、そして神戸市長なども出席されました。そして、今日17日は阪神淡路地震から13年目となる日。この大震災の被害を受けて、その翌年にこのWHO Kobe Centerができたのです。

CSDHの会議はこれが最後ですし、日本での開催は今回だけになります。今年は日本がTICAD、そしてG8サミットという世界から注目される会議を主催する年であり、また国連のMDG(Millennium Development Goals)の中間年でもあります。“Global Health”は大きな世界的アジェンダの一つです。昨年11月には高村外務大臣も講演でその意義を述べられていて、その講演の内容はLancetにも掲載されました

今年は日本にとって、世界からとてつもなく注目される年であるのと同時に、責任の重い年でもあります。なのに、年末も正月も株価は下がり、なんだか相変わらず内向きのままの沈滞ムードに感じませんか?そんなこともあって、今月末のダボス会議には福田総理も出席され、演説をされることになっています。明日(18日)の所信方針演説、そしてダボス会議の演説と、官邸のスタッフも大変です。

こうした意味を踏まえて、今回はCSDHのCommissionerの皆さんに、まず15日に東京に来ていただき、午前中に福田総理と高村外務大臣を表敬訪問。そして午後には舛添厚生労働大臣を迎えて、「Global Health as Global Agenda」という国際会議を開催しました。

内向きになりがちな日本の方たちへ、もっと世界の問題へ目を向けてほしいという一つの試みでしたが、200人ほどの熱心な方々が参加され、盛会となりました。基調講演もパネルも、みなさんとても素晴らしかったです。Commissionerの方々も大変喜んでおられました。

私もCommissionerの一人として大変嬉しく思いました。皆さんのおかげです。ありがとう。

イラクのサマワからの便り

1月10日のブログで、在米日本大使館の江端さんを写真(4)で紹介しました。去年、ワシントンでお会いしたのが最初ですが、その時に彼が以前イラクのサマワ(Samawah)に赴任していたことを知りました。彼がその時のことを書いたものを頂いていたので、江端さんの了解を得てここにご紹介します。

 「在サマーワ連絡事務所より」

  「サマーワの笑顔のために」
 (「外交フォーラム」 に掲載されたもので、英語版もあります。)

ぜひ、読んでください。日本の若者たちの、素晴らしい活躍を知ってほしいので、ご紹介します。

ニューヨークから

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ニューヨーク(New York City, NYC)に来ました。アメリカ最初の科学アカデミーであるNew York Academy of Scienceを訪問する為です。この何年かお付き合いしていて、去年移転した新しいオフィスに伺いました。会長のEllis Rubinstein(写真1)のオフィスは、9.11の起きた“グランドゼロ”の隣にあるビルの40階。“グランドゼロ”を直下に見下ろすことができる場所です。朝8時半から約45分間のインタビュー。10時からは、「Scientists Without Borders」(写真2)という新しい企画の評議会が行なわれました。聞いたことのあるような名前じゃないでしょうか?そうです、「国境なき医師団(Doctors Without Borders)」から取った名前です。同じようなミッションを考えているのです。私を入れた12人ほどがAdvisoryメンバーとなっています。

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写真1 Rubinstein会長と彼のオフィスで
(彼の奥様、Dr. Joanna Rubinsteinさんは、Jeffery Sachs氏が推進するプログラムのExecutive Directorをされていて、この日はDr. SachsとEthiopiaにいるようです)

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写真2 Advisoryに参加のメンバー、NYASスタッフと

AdvisoryメンバーにはKenyaのDr. Wakhunguも参加されています。ご存知かと思いますが、Kenyaは大統領選挙の直後で、不正の疑いがあるなどとして大騒ぎが起こっています。特にキベラスラムなど、大変なことになっていると報道されていたので状況を聞きましたが、本当に大変なようです。2006年6月のブログにも書いたOlympic学校2007年10月のブログでも触れています)も焼かれてしまったそうです。なんとか復興させたいですね。

また、昨日のWashington DCでもお会いして、ブログでも紹介したDuke UniversityのVictor Zhauさんも、このAdvisoryメンバーに参加していて、今日も一緒です。昨年10月にもご紹介したIntl AIDS Vaccine Initiative(IAVI)Dr. Seth Berkleyもメンバーの一人で、実体験に基づくアイデアをいろいろと出してくれます。3時間延々とBrain Stormingをし、このICTの時代、登録方法を含め、いろいろな可能性と運営方法、資金等、課題がたくさんありますが、いい勉強です。Columbia大学医学部M.D.-Ph.D.コースの学生(ご両親と一緒にインドから移ってきたそうです)も一人参加しています。若い人たちも参加させながら、このような新しい企画を作っていく。なかなかいいですね。時間がかかっても立ち上げたいです。

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写真3 NYASの受付に置かれたDarwinの胸像の前で、NY総領事館の三浦副領事と

午後は「Foreign Affairs」で有名なCouncil of Foreign Relationsへ。なんと昨日、以前にも紹介したGates財団のTachi Yamadaが、「Global Health」の講演をしていたのでした。私もWashington DCの世界銀行で同じテーマの講演をしていたのですから、偶然とはいえ面白いものですね。あとで早速メールしておきました。目的はこの「Foreign Affairs」2007年1・2月号に、「AIDS援助プログラムには実に無駄が多い」と指摘する素晴らしい論文を書いたSenior Fellow for Global HealthのLaurie Garrettさん(写真4)に会うためです。私はこの論文に注目して、今年の5月に横浜で開催されるTICADにあわせて第1回の受賞式が行われる、小泉元総理の提案で始まったNoguchi Hideyo Africa Prizeの選考委員になっていただいたこともあり、そのお礼も兼ねて意見交換に来たのです。

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写真4 Laurie Garrettさんと

ニューヨークも暖かいです。この街には独特で不思議な魅力がありますね。

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写真5 NYCの街角で

続いてRockefeller財団を訪問です。Managing DirectorのDr. Ariel Pablos-Mendez(写真6)に会いにいきました。彼が主催した会議の報告書、「Pocantico II:The Global Challenge of Health Systems」に注目し、意見交換に来たのです。Rockefeller財団の会長、Dr. Judith Rodinからは、「どうしても時間が合わなくて・・・」、というメッセージが残されていて、残念ながら今回は会えませんでしたが、2週間後に行なわれるダボス会議で会えることでしょう。

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写真6 Dr. Ariel Pablos-Mendezと

Dr. Rodinは、1994年にIvy Leagueの大学で初めて女性の学長になった方です。私のアメリカでのキャリアが始まったPennsylvania大学の学長としてです。今では、Ivy Leagueの8校のうち、4校(Princeton、 Pennsylvania、Brown、Harvard)で、女性が学長をされています。日本はどうでしょう、私はくどいぐらい繰り返し発言し、プッシュしているのですけどね。

彼女の前のポストはYale大学のProvostだったのですが、何度か紹介していますが、現在のCambridge大学のDr. Allison Richard、MITのDr. Susan Hockfield等も、その前職はYale大学のProvostだったのです。偶然ですかね?これはYaleの人を見る目が素晴らしいうということでしょうか。

この日はNew Hampshire州でアメリカ大統領の予備選挙が行われ、クリントン候補がIowa州での負けを取り返し、Obama氏と1勝1敗になりました。初の女性大統領となるのでしょうか。

この2日間の訪問と講演の主な目的は、今年1、2月に東京で開催されるGlobal Health関係の会議(WHO、世界銀行、Gates財団、NPO医療政策機構、日本政府などが関与しています)への準備と、それらを通して、TICAD、そしてG8サミットへの広報とその準備という面が大きいです。

夜は、午前中に一緒だったDr. RubinsteinとDr. Berkeley、そして今年の夏に東京でお会いした、今はColumbia大学大学院、School of International and Public Affairsで勉強している中曽根君を呼んでSohoでディナー。彼はとても素晴らしい若者です。世界を目指して大いにがんばってほしいですね。名前から感じたかもしれませんが、そうです、中曽根康弘前総理のお孫さんで、お父さんは中曽根弘文参議院議員です。

9日の朝、JFKAirportから帰国の途につきました。

世界遺産の町Bathから

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14日、LondonからBathへ車で約2時間の移動です。Bath郊外にあるLuckman Park(写真1)という広々とした荘園でしょうか、Hotel、会議の会場として使われています。昔は狐狩りなどもしていたのでしょう。このようなところには何度か行ったことがありますが、英国の豊かさを感じさせられます。ここが会議場なのですが、とにかく寒くて、天気は雨模様、とても外に出る気分ではありません。もっとも、到着してすぐに昼食を取り、ちょっと一休みした後は、ほとんど目的のCarnegie会議でしたけど。

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写真1 「母屋」玄関からエントランスを見る

ホスト国UKのKing顧問、USのMarburger顧問、ロシアのFursenko大臣、カナダのCarty顧問、MexicoのHicks氏(Director、National Council for Science and Technology)と私で会議を開始。各国の科学政策動向、気候変動への対策等についてプレゼンと議論を行い、話は大いに弾みました。EUのPotocnik大臣は飛行機が大幅に遅れて夜遅くに到着、フランスのPecresse大臣は15日早朝の到着となりました。ドイツSchavan大臣(King、Carty両氏とともに10月の京都STS Forumでお会いしました)は急遽入った公務で欠席です。

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写真2 前列向かって左からCanada、UK、France、後列左からRussia、USA、Mexico、EU、Japan

翌15日はドイツを除く全員が会議に参加。私は日本で2008年に開催されるG8、TICAD他の予定、また2008年はMillennium Development Goalsの中間年であること、そしてまだ出たばかりの環境審議会の報告書ドラフトなどを中心に議題を提供しました。午後にはBaliの「COP13」の速報が入り、夕方にはLondonからTVのライブ取材が来てKing卿が対応。この辺が、英国の報道と政府対応の上手さですね。感心します。

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写真3 左から、EU、Japan、UK、Mexico、USA

夜はBathの街をツアー。ガイドのおばさまがとても張り切って、丁寧に案内してくれました。街の中心を30分ほど歩きましたが、気温は零下、とても寒かったです。食事はLuckmanで。

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写真4 食前のChoir

翌16日午前は、シェルパを入れての会議。2008年のG8サミット、これからの大型科学政策、低炭素社会科学技術への意見、要望等々が話し合われました。

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写真5 玄関前で左から、西ヶ廣公使、私、板倉参事官

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写真6 玄関前で、松浦一等書記官と

会議終了後はLondonから前夜から来てくれていた西ヶ廣公使、松浦書記官たちと歓談。しばしの後、板倉参事官とHeathrow空港へ向かいました。17日月曜の午後に成田着。短い旅はいつものことですが、しかし、くたびれた100時間の旅でした。

Londonから

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いよいよ今年もあと残すところ3週間。12月13日からロンドンへ向かいました。14~17日、BathでG8科学顧問、担当大臣が集まるCarnegie会議なのです。

London到着後、一休みしてRoyal Societyへ。会長のLord Martin Reesさん(写真1 コラム:2006/2/82006/9/11)を訪問しました。2005年のGleneagles G8 Summit以来、Royal Societyと日本学術会議との間では親密な協力関係が構築されています。来年のG8では日本学術会議の活躍を期待しています。

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写真1 Royal SocietyでMartin Rees氏、大使館の松浦一等書記官と

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写真2 Royal Societyのバルコニーで、Barnie Jones氏、Rees氏と
(ちょっと見難いですが、私の右後方のオレンジ色の二つの「目玉」のようなものはBig Ben。左に見えるのは観覧車です。)

13日は野上大使公邸で夕食会(今年の1月にもお世話になりました)。今年の初めまで日本学術会議事務局長を勤めた西ヶ廣公使、高岡公使、松浦一等書記官、同行の板倉参事官、そして11月のAbu Dhabiにも参加してもらった、ロンドンベースの「クリーンエネルギー」分野に特化したベンチャーキャピタルの野村さんがご一緒です。野上大使は政治ばかりでなく、経済に実に詳しい。また、第2次大戦で日本の捕虜になった英国人(POW)との年次会などに参加され、誰かが亡くなると万難を排して葬儀に出られているそうです。地味ですが、このような目立たない活動は本物の外交の基本です。どこでも付き合いというのは人間同士なのです。

それにしても、英国はこの10年でGDPが約40%も成長していて、その中心はサービス産業ですが、金融力も恐るべし。このところCityの取扱額はNYSEを超え、さらに「サブプライム」を嫌って米国から、人も資金もCityに集まり、さらに活発化しています。後に知った情報ですが、今年のCityのボーナス全体も極めて巨額(1兆円を超える!)で、景気の良さを反映しています。その辺の事情、政策、Gordon Brown首相の人気の急激な低下等々、野上大使の分析は地に着いていて、たいしたものです。

話が弾みに弾み、結局、夕食会は夜中の12時まで続きました。野上大使、そしてお付き合いいただいた皆さん、ありがとうございました。

最近の国際ジャーナルで日本特集

最近、英語の雑誌ですが、The Economist(December 1st)とNewsweek(International版)で、日本の特集が組まれました。

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写真1 The Economistの特集のカバー

The Economistでは、表紙に「A 14-pages special report on business in Japan」とあり、特集のはじめに「Going Hybrid」(写真1)とあります。5つの報告のタイトルは 1)Message in a bottle of sauce; 2)Still work to be done; 3)Not invented here; 4)No country if an island; and 5)JapAnglo-Saxon capitalism (スペルの間違いではありません!でも、これ本当?)となっています。

タイトルは魅力的ですが、この特集全体としては、予測されるところですが、日本の企業もいい方向に動いているが、動きが遅く、スピードが課題だという指摘です。各報告のタイトルのサブタイトルを見ると、内容を読まないでもそのメッセージが読み取れるのではないでしょうか(英語でごめんなさい、これは訳しても仕方ないので我慢してください)。

1)Message in a bottle of sauce; Japan’s corporate governance is changing, but it’s risky to rush things;
2)Still work to be done; Japan’s labour market is becoming more flexible, but also more unequal;
3)Not invented here; Entrepreneurs have had a hard time, but things are slowly improving;
4)No country is an island; Japan is reluctantly embracing globalization; and
5)JapAnglo-Saxon capitalism; Have Japan business practices changed enough?

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写真2 Newsweek、12月10日号の表紙

Newsweekの12月10日号(写真2)では、もっと直裁的です。表紙のキャプションは「How Japan Lost Its Groove; The Asian powerhouse struggles to explain its stumbles in hot technology」です。本文のタイトルは「Why Apple Isn’t Japanese」

私の友人の石倉洋子さんもインタビューを受けたようで、その分はOn-Line版に出ていますし、また石倉さんご自身のblogにも、ちょっと申し訳なさそうな感じに書かれていました。

世界は日本のビジネスのことを気にしているのです。どうなりたいのか、何をしたいのか、良くも悪くもね。

Alexandria図書館で日本アラブ会議

11月19日、夕方に羽田から関空へ。そこからDubaiに飛び、さらにAlexandria、Egyptにきました。それにしても、4週間で3回目のDubai空港です。20日の11時30分に現地に到着、そのまま図書館へ向かいました。このAlexandria図書館2,300年前にできた世界で初めての学術アカデミーあり、素晴らしい建築物も5年前に再建されました。私の友人でもある図書館長Serageldin氏のリーダーシップの下で内容も急速に充実し、素晴らしいプログラムをたくさん提供しています。私も3年前からこの図書館の理事、Board of Trusteesを務めており、毎年春に行なわれる理事会にはご当地に来ています。

図書館に到着して時間ぎりぎりでしたが、まず1時からHelal高等教育科学技術大臣との面会。何度もお会いしていますが、もともとは学者で、素晴らしい方です。日本の支援は相当なものですが、最近ではオペラハウスも建設され、さらには日本の支援による科学技術工科大学設立の企画もあるようで、大変うれしいことです。Helal大臣との面会では、特に学術交流を中心にお話しました。

Egypt01写真1 図書館のテラスで

今回の目的である日本アラブ会議は、日本側が120人程度、アラブ側が150人程度の参加となりました。政治、経済、科学技術、環境、医療、文化、芸術等の広い分野の課題と交流について、全体会議、分科会などに分かれ、なかなか活発な議論が行われました。日本からは団長が中山太郎議員、ほかには尾身幸次議員、小池百合子議員がおられ、財界では根本二郎日本郵船名誉会長、梅田貞夫鹿島建設会長など、学術界では中東政治では大活躍の山内昌久教授、外務省環境担当の西村大使、また映画の山田洋二監督は「たそがれ清兵衛」が上映されることもあって来ておられました。私は、環境、水についてのパネルの司会、ほかのいくつかのパネルにも出ました。アラブ側代表にも何人かの知人も来ていてうれしかったです。

前からお会いすることになっていたのですが、なかなか時間が合わない有馬龍夫日本政府代表。ここ何年かは中東担当専門になっておられるようですが、久しぶりにお会いしてゆっくりお話しする機会のあったことが収穫でした。政府関係では、外務省からは駐Egyptの石川大使は言うまでもありませんが、元駐Egypt大使の片倉、須藤氏のお二人も参加され、このようなことは珍しいという話もありました。また、在モロッコの広瀬晴子大使(UNIDOでNo.2として活躍していた森山真弓議員のblogでも紹介されています)もこられました。さすがに長く国連関係のお仕事をされているので、ちょっとしたご意見でも国際的センスがすぐにわかります。

Egypt02写真2 Hernan Palestine Hotelで。右から、石川薫大使、須藤隆也国際問題研究所軍縮センター長(元エジプト大使)、山内昌之東大教授、道傳愛子NHK解説委員、わたし、沼田貞昭国際交流基金日米センター長(前カナダ大使)、杉山晋輔外務省中東アフリカ局審議官

中東地域は、日本としては宗教的な対立はないし、従来からよい関係を築いているわけで、これからも大いに相互交流を推進すべき地域です。日本の交流はもっぱら石油関係が中心、アラブも日本のことをあまり知らないのではないか、というのがお互いの基本の共通認識で、もっともっと各分野での交流を広げるべし、ということで意見が一致していました。さらに環境、クリーンエネルギーや水問題などでは日本の貢献は計り知れないという点でも一致していました。

21日の夜、カイロのテレビでは、小池百合子議員が一時間ちょっとですが、1対1のインタビューに出演しておられました。流暢なアラビア語で、時々「Global warming」や「CoolBiz」などの言葉が出ていましたが、たいしたものですね。現地では、10年前から砂漠に植樹が進められており、もう1万4000本にもなるそうです。今年はカイロ大学100周年ということです。カイロ大学卒業生の小池議員はこちらにも多くの友人、有力者とも個人的なつながりがあり、感心させられます。

帰路は22日の昼に出発。Dubaiでは5時間ほどの時間があったので、街に出てMs Lama Farsakh(写真3)さんと夕食。Palestineの方で、ご主人はEgyptの方、娘さんがお二人。特にIsrael-Palestine問題についていろいろと話を伺いました。

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写真3 Ms. Lama Farsakhさんと

パリから、日本の広報意識の低さについて一言

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SloveniaからParisに来ました。素晴らしい町です。5月の初めにも来ましたが、ここは来るだけでうきうきします。しかし、ちょっと熱いですね、気温30度です。

日本国際問題研究所(JIIA)に、私の書いた記事“Challenges for Japan’s Scientific Community in the 2008 G8 Summit”が掲載されています(PDFはこちらから)

日本の政府は、国内、国外を通じて広報が下手で、とても損をしているということを指摘しています。なんでもお上頼みという意識がそんなことにしてまうのでしょうか。いや、民間企業や大学でも同じことですね。基本的に誰が責任を持っているのか、という意識が低いのでしょう。

3/13のブログ「Jeffrey SachsとMillennium Village Project」や、5/29のNews「住友化学の米倉社長とJ Sachs教授との日経での対談」などは、ささやかではありますが、世界で行われている日本の活動と貢献を広く皆さんに知ってもらいたい、みんなに自信を持ってもらいたいという、私の責任意識の表れなのです。

単に「モノをいわない」、「派手に自慢をしない」、「いずれ分かってくれる」というのはいいのですが、国の事業は国民のお金で行われている事ですし、もっともっと上品に、しかも効果的に、日常的にさりげなく伝えることが必要で、広報活動を戦略的に、上手に展開することは国家戦略として必須だと思います。もっとも、国民のお金であるという感覚が、責任者たちに欠けているところに大きな問題があります。対外広報戦略という意味では、日本人は不得手なのです。

長い間、「よらしむべし、知らしむべからず」が、日本の政府(「お上」)の精神的な基本方針でしたからね。最近の社会保険庁などの問題はその典型ではないでしょうか。人を馬鹿にするのにもほどがあります。政府のホームページを見ても、皆さんに見てもらう、読んでもらおう、なんて意識があるとはとても思えません。担当者にはいつも言っているのですが、やはり担当者では無理なのでしょう。基本的に役所は新しいことについては、できない理由ばかり言う人たちの集まりですから。

アメリカで最も偉大な大統領と多くの人が考えるLincoln大統領が、1861年に行ったスピーチの言葉、“Government of the People, Government by the People, and Government for the People”というのがありますが、この民主主義の基本精神は、今でも日本には定着していないと感じます。

皆さんはどのように考えますか?何ができるのかを考えて、すこしのことでも、ささやかでも、自分の周りから行動に移していくことです。