医療政策サミット2016

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私の主宰する医療政策機構、英語ではHealth and Global Policy Institute(HGPI)恒例のサミットが、2月27日の昼から目黒の雅叙園で開催されました。会場は、この会合以外はほとんどが結婚式という、とても華やかで、しかも晴れやかな日和でした。

HGPIは、2015年度の世界シンクタンクランキングのグロ-バル・ヘルス部門で第6位 (p.92)、国内医療政策では第15位(p.90)と、独立系のとても小さな組織としては大いに健闘しています。スタッフみんなの頑張りのおかげです。

私は、前日、ロンドンから帰ったばかりでしたが、参加者の皆さんと、3つのパネルに登壇された方たち、そして素敵な司会による進行で、活気のあふれる午後のひと時となりました。

第1部は「医療の持続可能性」のテーマで、財務省主計官の宇波弘貴さん、厚生労働省政策統括官の武田俊彦さん、テレビでもおなじみのモルガン・スタンレーMUFGのロバート・フェルドマンさん、司会はHGPIの小山田万里子さんです。

厳しい財政、高齢社会に対して、日本の誇る公的医療制度は持続可能なのかについてのバトルでした。遠慮のない、オープンな議論が出来て、いい出だしです。

第2部は「グローバルヘルス、G7サミットとその後」がテーマ。東大の論客、国際派の渋谷健司さん、厚生労働省審議官、これも国際派の鈴木康裕さん、JICAの米山芳春さん、そして司会はHGPIのアン・スミスさん。

日本の今までのグロ-バル・ヘルスでの大きな貢献、今年5月に開催されるG7サミットのアジェンダ、これからのPPP(Public-Private-Partnership)では、例えばGHITファンドなど、日本を超えた連携の展開などの可能性と、広い分野での議論でした。

日本のG8、G7サミットでのグローバル・ヘルスに対する貢献は特に顕著であり、これをどう展開していくかが問われます。なにしろ、貧困と保健・疾病の問題は、今の不安的な世界の様相の底流に流れている大きな原因の一つですから。

第3部は「医療の未来」がテーマでした。最近、武田薬品に移った出雲正剛さん、PMDA安全管理官の俵木登美子さん、行動する武藤真祐さんという異色の組み合わせ。司会はHGPIの乗竹亮治くん。

出雲さんも、武藤さんも、日本の医師としてはかなり異色のキャリアですから、話もなかなか面白いし、グローバルな行動派ですので話も迫力があります。俵木さんは生え抜きの厚生労働省音キャリア技官で、はっきりしたメッセージです。

グローバルな活動の場から見えるコメントが多く、じわじわと「日本開国を」、といった大きな盛り上がりのような感じになりました。

応援していただいている多くの会員のメンバー、お客様などで、とても充実した時間を共有できたように感じられた一日でした。

いつもHGPIを支援してくださっているみなさんに心からの感謝です。

そしてHGPIのチームのみなさん、OB/OGの皆さん、インターン・学生さんたち、ご苦労様でした。

いずれ、HGPIのホームページにも、このサミットの報告が出ることでしょう。楽しみにしています。

ロンドン、WDCの新しい展開

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2013年、英国のG8サミットで始まったWorld Dementia Council(WDC)の活動については、ここでも何度か報告しました

2年が経過して、いつまでも英国政府だけの支援というわけにも行きませんが、とはいっても、これからの世界の大問題ということで、英国政府の強い支援はありますが、一応は独立した形に移行することになりました。

その会議がロンドンで開催され、私もその委員として参加することになり、アブダビからロンドンへ移動しました。何人かの新しい委員も加わり、共通の友人がいたりで、何となく嬉しくなります。

英国政府はEUに残るのか、離脱するのかの国民投票(Referendum)が6月に行われることになっています。キャメロン首相にとっても大事な時です。

一方、日本では5月にG7サミットがあり、日英の関係からも、認知症は大事なアジェンダの一つになるでしょう。

24日には、企業などが中心となってのCEOiという会合が行われました。多くの企業、財団なども集まり、充実した一日でした。特にBig Dataについては、いくつかの試みがあり、楽しみです。最近の日本でも、IBMの活動や、IBM Watosonとの提携の話題がニュースになったりで、活発な動きも感じられます。

バンクーバー

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昨年12月1日の「シアトルへ」と12月6日の「トロントで」の間に出すことになっていた「バンクーバー」のコラムを掲載するのを忘れていました。特に岡田総領事ほか、お世話になった方々にお詫びします。以下がその内容です。

11月11日の夜、シアトルからバンクーバーに到着。たぶん私が来たのは3度目ですが、前回も10年ほど前と、かなり昔のことです。

ここから、トロント、オタワと訪問しますが、これらは外務省とカナダアジア太平洋財団のお招きで2年がかりで実現した講演旅行なのです。テーマは「日本のグローバルヘルスへのチャレンジ」といった内容での講演です。

翌日は残念ながら、かなりの雨。シアトルとは大違いの天気となりました。

ご当地の名門校、University of British Columbiaのキャンパスへ向かいます。ここのIrving Barber Learning Centerで90分ほどの講演をしました。岡田総領事が司会の労をとってくださいました。

岡田総領事は、はきはきとお話しする方で、2008年に横浜で開催された、福田康夫総理主催によるTICAD41)の準備に中心的にかかわられていたそうです。その時、私が委員長を務めた第1回の野口英世アフリカ賞の授賞式が行われたのでした。

この10年ほど、こちらで教鞭を取られている松井教授、また、日本の医学部出身で勉強に来ている女医さんにもお会いしました。

夕方から総領事館でのディナー。ご当地でもっとも古い建築物の一つという領事館も素敵です。岡田総領事は2008年のTICADを担当するまで、アフリカ勤務の経験がなかったので、その後、志願してケニア大使館勤務をされたこと、アフリカについての話題などなど、いろいろな意見交換できました。

2日間ともかなりの雨でちょっと残念でしたが、充実した時間でした。

翌日11月13日(金)、トロントへ向かいました。

グローバルヘルス、GHIT基金、日本への期待

12月16日、来年の伊勢志摩で開催されるG7サミットへ向けての日本政府のアジェンダに関して、「グローバルヘルス」への期待を込めた会議、講演会が東京で開催されました。

世界銀行のジム・キム総裁、WHOのマーガレット・チャン事務総長、塩崎厚生労働省大臣、武見敬三議員他、この分野の世界のリーダーが、東京に集まりました。また、ゲイツ財団のビルゲイツ氏の参加1)は 大いに注目を集めたと思います。

この会議は2015年9月の国連総会でも、ポストMDGとしての”SDG”(Sustainable Development Goals)を受け、グローバル世界のとても「不安定な動向」の背景にもある「貧困・格差」の改善に向けた活動、さらには来年に日本がホストをするG7サミットは、とても大事な機会なのです。

さらに日本は来年、TICAD (東京アフリカ会議) をその20年余の歴史の中で初めてアフリカで開催することになっており、これにも大事なメッセージを世界に発信できる絶好の機会なのです。

私は、「世界で初」 と認識されている、とてもユニークな”Public Private Partnership”であるGHIT基金の発足にあたって、理事長就任の要請を受けて活動しています(1234)。ゲイツ財団はこのGHITのパートナーの一つで、設立してわずか2年あまり ですがその進みかたの早いことについて、ゲイツ氏がとても高く評価しており(彼と個人的にゆっくりと話をするのは二度目のことです…)、これも、世界的に日本の強いメッセージの一つになりうる活動なのです。

会議は安倍総理の挨拶ではじまり、また、途中から秋篠宮妃殿下のご臨席もありました。

この一日の会議のプログラム、演者また会議の様子はWebで見ることができます(日本語英語)。基調講演、その他の講演・議論もさることながら、最終的には世界へ向けたG7サミットという「場」に向けての、日本政府の政治的意思と決断の問題となります。

これらのプログラム、主要な参加者の講演録についてはすでに掲載されていますのでご覧ください(日本語英語)。

この会議で、GHIF基金はランチセッションを引き受けました。私の締めくくりの挨拶もここで読むことができます。ここでは、医学分野の世界の三つの賞 (Gairdner, Lasker, そしてNobel賞) とグローバルヘルスの扱いとその意味、また二週間前のストックホルムでの大村先生のノーベル賞受賞の意義についても触れました。何人かの参加者から とても良いスピーチだったとお褒めの言葉をいただきました。

日本からも、GHITのような世界に誇る新しい組み合わせによる新しい価値の創造こそが、大きく変わりつつある世界の中の「イノベーション」なのです。

この日を含めての3日間は、日本政府他とのグローバルヘルス関係のいろいろな会合があり、私もビルゲイツ氏と小人数のディナーを含め、三回も食事を一緒にする機会を持つことができました。

何事も、議論は大事ですが、どのように実行していくのか、政策立案と実行、そして普段からの、相互の信頼関係に立脚する「人脈の形成」、これが大事です。

ノーベル賞授賞式、ストックホルムへ −2

ストックホルムでの2日目、9日は、昼からグランドホテルで開催される日本大使館主催のレセプションでした。

駐スウェーデンの山崎大使は、2008年の洞爺湖サミット1)の時には、私が福田総理の特別顧問だったこともあり、グローバルヘルスや気候変動のテーマ、また、洞爺湖サミットの直前に開催されたTICADに際して開催されたHideyo Noguchi Africa Prize1)の委員長として、いろいろと活動をご一緒して以来のご縁です。

午前中には、物理化学の受賞者の講演が、Stockholm Universityの講堂12)で催されました。

日本大使館主催のレセプションでは、東大総長の五神さんと、一年ぶり以上ですね、お会いしました。忙しいだろうと思って、一度も電話さえもしていなかったのですが、ぜひ東京で、ということになりました。

多くの関係者が参加されとても良いレセプションでした。

夜はノーベル賞コンサートへ。不思議なことに、ここでも五神さんと隣り合わせの席でした。

Daniil Tifonovさんの熱いピアノのあと、Ein Heldenloben op 40 、「英痛の生涯」でした。

長い一日でした、受賞のみなさん、特に梶田さんは朝早くから、お疲れ様でした。

ノーベル賞授賞式、ストックホルムへ −1

例年のことですが、10月初めにノーベル賞の発表があります。今年の発表の時、私は京都にいたのですが、大村先生の受賞について、その夜に2社のインタビューを受けました。その記事についてはこのサイトで紹介しました。

思いもかけないことに、大村先生から受賞式へのご招待をいただき、12月6日、ストックホルムへ向かうことになりました。

先生のご業績などについてはよく知っていましたし、先生の2014年のGairdner賞受賞のお手伝いをさせていただいたご縁でしょうか、この賞の委員長を務める私の長年の友人でもあるJohn Dirksさんもお招きいただきました。

フランクフルト経由でストックホルム着、グランドホテルへのチェックインは6日の深夜過ぎの7日になったところでした。1901年以来、ノーベル賞受賞者とゲストはこのホテルに宿泊されるそうです。

翌日は、Karolinska研究所でノーベル生理・医学賞受賞者の講演と、レセプションがありました。

3人の受賞者の皆さんが30分ずつ、それぞれが晴れがましく、でも印象的な講演をされました。大村先生1)のスピーチは素晴らしいものでした。キャンベルさん1)の講演もいい話でした。トウさん1)は、ご体調のせいでしょう、座ったまま中国語で話され、そのパワポでは、図と英語の説明が並べられる配慮がされていました。

その後のレセプションでは、みなさん受賞者の周りで、お祝いの華やかさにあふれていました。

大村先生、お疲れ様でした。お招きありがとうございました。

More Photos→ http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/

塩崎大臣との朝食会、アジアイノベーションフォーラム

2週間にわたる北米、カナダの講演の旅を終えて帰国、東京でも活動が待っています。

まずは塩崎厚生労働大臣をお迎えして、医療政策機構の朝食会です。塩崎大臣とは、当機構の小野崎理事がアドバイザーとしてお手伝いしていますし、G8の世界認知症委員会(World Demencia Council、WDC)などでもご協力をいただいているところです。新しいプロセスで出来てきた「日本の医療2035」の話など、いろいろの話題があり、会員の方たちからの活発な意見が出ました。私は最後のあいさつをするのですが、何しろ風邪で声が出ないので、一言だけにしました。

アジアイノベーションフォーラムは、元ソニーの出井伸之さんが2007年に福岡から始めた活動ですが、そのころからお手伝いしています。今年は虎ノ門ヒルズで開催。私は遅れて参加しましたが、ヤフーの安宅和人さんのビッグデータのプレゼンには間に合いました。彼の話の内容は最近の日本版「ハーバードビジネスレビュー」に出ています、一読をお勧めします。

私は最後のパネル(パート4)に参加しましたが、出井さん、富山和彦さんが、いつもながらの激しい意見を次々と出していました。私も激しい意見を言いましたが、後で、友人の英国人から以下のようなメールをもらました。うれしかったです。

‘Dear Kurokawa-san, This is just a quick note to say that I much enjoyed attending yesterday’s forum; it was interesting (and – if I may say so – encouraging) to have such a consistent message from you and others in support of ‘getting out there to see the world’, but also making the most of a huge available talent pool at hand already.’

世界はどんどん、しかも急速に変わっているのです。

トロントで

11月13日(金)の夕方、トロントに到着、ホテルに向かいました。到着早々、テレビでは一斉にパリのテロのニュースです。

今回のカナダでの講演も、このような世界の不安定化の背景などにも触れたうえで、グローバルヘルスの話をするのです。

14日(土)は、2週間前に終わったばかりのGairdner賞の委員長をしているJohn Dirksご夫妻、現地の三菱電機の代表をしておられる二宮さんご夫妻、トロントで世界一ともいわれる肺移植の指揮を執っている安福先生、アジア太平洋財団のお世話をしているChris Nakamuraさんたちと昼食、いろいろな話題が出ました。夜は二宮さんのご友人と一緒にプロのIce Hokeyのゲーム観戦。ご当地のToronto Maple LeafsがVancouver Canucksを「4-2」で接戦を制し、みなさん大喜びでした。

今年は、メジャーベースボールで地元のBlue Jaysが惜しいところでWorld Seriesへ行けず、川崎選手のいるチームですから、日本の皆さんもたいへんがっかりされたことでしょう。

16日(日)はSanta Clausパレードで、私の泊まっているホテルの前を通り、私の部屋からもよく見えて、なかなか楽しいものでした。夜は総領事館で中山総領事主催の夕食会があり、明日講演をするトロント大学のMunk School of Global Affairsの方もお見えになりました。Munk Schoolは、最近かなり名が知られるようになってきているように思いますが、現在、私が在籍している政策研究大学院大学と MOU2)を結んでいます。

翌日はMunk Schoolで久しぶりの講演1)。テーマがグローバルヘルスですのでGrand Challenge Canadaを率いているPeter Singerさんも参加してくれました。私もこのプログラムの一員を当初から務めています。

講演終了後、しばしの歓談後、オタワに向かいました。

シアトルへ

久しぶりにシアトルに来ました。ゲイツ財団GHITファンドの理事会を開催するのです。今回の理事会に対応するのは、2013年はニューヨーク2014年はロンドンで、やはり11月に行われました。宿泊は エコのブルーを売り物にしているHyatt at Olive 8

シアトルは、今や「グローバルヘルス」の世界の中心のような様子もあります。ゲイツ財団ばかりでなく、PATH、またワシントン大学のグローバルヘルスプログラムなどによるものです。

理事会では、活動の広がりと進捗も順調、さらに理事ほかの方々の適切な指摘などもあり、無事に済ませることができました。

夕方から大村総領事主催のレセプション。60名ほどのお客様もお招きし、簡単なGHITの紹介もありました。長いお付き合いのある、前ゲイツ財団グローバルヘルス代表、さらに武田薬品のタチ山田ご夫妻とも久しぶりにお会いできました。シアトル在であることをすっかり忘れていました。その後は総領事ほかとの会食。いろいろと総領事館の方たちにお世話になりました。

翌日は、ワシントン大学のキャンパスへ出かけてみました。世界の大学ランキングでも上位にランクされている米国の公立大学の一つです。広大なキャンパスの中心に見事な桜が植えてあり、春には見事な眺めでしょう。図書館も多くありますが、その中心でもある Suzzallo and Allen Libraries に行ってみました。さすがに立派なものです。

シアトルは水と緑に囲まれた美しい街です。Starbucks 発信の地でもあり、やたらと、このマークが目につきますが、それだけでなくてもカフェが多いように感じました。いまAmazon本社など建設中とかで、とても活気があるようです。

夕方、バンクーバーへ向かいました。

お知らせ

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日本経済新聞社が運営している健康・医療に関する総合サイト「日経Gooday」に、認知症の特集が組まれています。
その関係で、先日、第一三共株式会社の中山社長と対談をした記事が掲載されました。

「認知症の克服は待ったなしの総力戦
      -世界へ向けて、医療と製薬が今できること、やるべきことー」