グローバルヘルスと日本を考える、「日本内科学会講演」

今年は、東京アフリカ開発会議があり、G8サミットがあり、日本はグローバル世界から注目された1年でした。しかし、これらの大事な会議が終わってまもなく、福田総理が安倍総理と同じように、就任1年で突然退任されました。

今年の春、私は内科学会総会のパネルにお招きを受けました。過去にも何度かこのような機会をいただきましたが、特に今回はグローバル時代を踏まえて、今盛んに論議が湧き起こっている国内の医療問題や政策関連には触れず、外の世界へとを思いをはせていただけるように世界の中の日本という話をしました。他のパネルの方たちが国内の問題に限定した話が中心になることを考えた上のことのです。

聞いていた方たちから、多くのコメント、励ましをいただきました。

この講演の内容が日本内科学会誌に掲載されましたので紹介します。

 「グローバル世界と日本の課題」(PDFをダウンロード)

アレキサンドリア図書館、グローバルヘルス、そしてPatient University

→English

世界最古といわれ(紀元前3、4世紀)、世界に(当時の)開かれたアカデミー、知人・賢人が集まり、いろいろと交流をさせた(ここに本当の価値のあることを認識した見識)というBibliotheca Alexandria。6年前に再建され、いまやdigital libraryとして素晴らしい活動を始め、急速に成長しています。Ismail Serageldin館長の素晴らしいリーダーシップで、若い人たちが思う存分に活躍しています。

この図書館の日本語ウェブサイト開設1周年を記念して、Egyptの高等教育、科学担当大臣Helal博士、Serageldin館長、Abdelnasser大使などご主席のもと、10月4日に青山の国連大学で講演とパネルが開催されました。私も理事をしていますので、挨拶をしました。初代理事のお一人の高橋先生もパネルに参加していました。

午後は、洞爺湖G8サミットで日本が提案を行なったGlobal HealthのHealth Systemsのフォローアップの会議。武見敬三さんをヘッドとする素晴らしいメンバーが集まり、基盤を固め、来年のG8のホストであるItalyに引き継ぎたいと思います。

途中、私たちのNPO「医療政策機構」の“Patient University”という、GE HealthCareと、患者さんの支援を行なうNGOを中心とした講習会がありました。私も挨拶し、「なぜNGOが増えてきたのか」という話をしました。こうしたプロセスを共有して「市民活動」を支援していこうというものです。皆さんご苦労様でした。

長い、土曜日でした。

“サバイバル”-BBCのグローバルヘルスに関する新番組

→English

イギリス大使館がグローバルヘルスに焦点をあてたパネルとBBCの番組“サバイバル”を紹介するレセプションを主催しました。これは全8回放送予定の1時間番組でマラリア、妊産婦の健康、乳幼児の生存、HIV/結核、アフリカ睡眠病など8つの重要なグローバルヘルスの課題に関するドキュメンタリーです。10月から11月にかけて放送されます。そして、これら8回のシリーズを50分に編集し、誰でもアクセスできるようにするそうです。(アクセスの方法はこちら。)目的はグローバルヘルスの認知度を上げることで、インペリアルカレッジ、ロックホッパー、とBBCの共同プロジェクトでゲイツ財団が後援しています。

Warren大使のご挨拶から始まり、8つのうち4つのシリーズのビデオ上映(各15分)がありました。私はパネルに参加したのですが、司会進行はあのNHKの道傳さん、パネリストは女性3名でそれぞれの分野を代表して企業からは伊藤忠の千野さん、NGOからはSHAREの青木さん、大学からは長崎大学の大西教授で男性は“年長の”2人だけ(JCIE山本さんと私)でした。日本にしては珍しいことに男女比が4:2でした。ビデオ上映もパネルも大変楽しませてもらいました。(写真はこちら。)

レセプションでは素晴らしい若い男女がそれぞれアフリカに関する話をされました。(自転車の威力!

男性の方は20代後半の山田耕平さん。JICAの海外青年協力隊としてアフリカのマラウイに派遣され、AIDSで亡くなった友人にあてたメッセージとして“Love you”という歌を現地の言葉で制作し、たちまち現地のヒットチャート1位に。レセプションではアフリカのパーカッショニストを携え、現地の言葉で歌ってくれました。アフリカでのHIV/AIDS問題に引き続き取り組んでいくとのことです。ぜひ彼のサイトを見てください。

女性の方は20代中頃の山崎美緒さん。スライドを使ってアフリカのサハラ以南を自転車で回った時の話をされました。大学時代には自転車で国内6,000Km、アフリカでは更に5,000Kmを漕いで回ったそうです。なんて女性なんでしょう!アフリカでの自転車ツアーを記した本を出版し、‘自転車を漕いで社会を変えよう’というコンセプトの‘Cog-Way’というNGOも立ち上げました。

若い力!まさにそれこそ今の日本‘CHANGE’に必要なのです。

熱気とグローバルヘルスを何とかしようという気持ちや活力で溢れている夕べでした。参加してくれたみなさん、ありがとう。そしてこのイベントを主催してくれたWarrenイギリス大使と大使館にも感謝します。

「大学病院革命」応援団

ようやく、医療制度や医師養成制度などが国民的話題になってきました。結構なことです。このように国民的な問題にならないと政治は動かないのです。密室的に役所と協議などしていると間違えますよ。これがグローバル情報の時代の怖さなのです。

しかし、これらの議論の背景を見ていると、いかにも最近導入された卒後研修制度が悪かったという論調が結構多いのですね。これはまったく見当違いで、医師不足とか、教育や臨床研修制度の欠陥などの根底の問題を浮き彫りにするのに少々役立っただけです。この研修制度の導入で誰が利権を失い、損したかを考えれば、批判の出所はすぐに理解できますし、どうもそのとおりらしいですね。旧社会のエスタブリッシュメントでしょう。

医師定員増についての厚生労働省の中間まとめを見ると、医師育成に関わっていた人たちからの反省の意識もなく、こんな基本スタンスでは本当に困ったものです。

私が書いた「大学病院革命」という本ですが、そこに書いてあるメッセージの本質を見て応援してくれる人がいることはうれしいことです。

参考: 「私の1冊-何を情報源にするのか?」 大学病院革命書評 (看護教育 2008年9月号)

どの制度にも過去から来る理由があり、今の社会の変化に不適応を起こしているものがいくらでもあるのです。それを小手先でやりくりするようでは、いつまでたっても対応できないのです。

これが今の日本の現状の根幹にあるのです。また考えてください。このブログでも、その本質を手を変え品を変え発信しているのですけどね。

再びNew Delhiから

→English

今年2回目のNew Delhiです(参考 12 )。今回は去年に続いてJeffrey Sachsを団長とする厚生大臣諮問会議です。2日間に渡っての開催でしたが、2日目には厚生大臣のRamadossさん、そして諮問委員と、“サシ”で3時間ほど議論しました。大臣は一つ一つのコメント、質問に実に的確に回答があり、明確な問題の認識と計画をお持ちだと感じました。ご当地での報道の内容はこちらのサイトで見ることができます。

ここ3年のインドの地域(農村部、貧困部ですが)医療行政の成果は確実に現れはじめており、経済成長とともにさらに予算も増えることが期待されます。インドの医療費はGDPの1%と極端に低くく、例外的な国なのです。多くの問題を抱えながら更なる向上が期待できるでしょう、道ははるかに遠いですが。インドの地方部の医療政策は貧困国での参考になることが多いと思います。

去年同様、医療政策機構の原君も同行、友人であるローマクラブ会長のAshok Khoslaさん、Sunil Chackoさん以前にも紹介しています)たちを夕食にご招待(写真1)。楽しいひと時を過ごしました。また、Indira Gandhi Naitonal Open UniversityのPro-Vice ChancellorのMishraさんとChackoさんのご紹介で、労働大臣のOscar Fernandesさんにも面会に行く機会がありました(写真2)。夜の10時でしたが、多くの人が面会に待っていて、まだまだ仕事だということでした。彼はそういう方だそうです。

Img_0002写真1 Khoslaさん(中央)、Chackoさん、原君たちと

Img_0008写真2 右からMishraさん、Chackoさん、Fernandos大臣と

フィラデルフィアから、医薬品業界のMBAの学生達

→English

フィラデルフィアはアメリカにおける私の故郷です。まさにこの地、ペンシルバニア大学でアメリカにおける私のキャリアはスタートしました。

The University of Science in Philadelphiaはユニークな大学で、医薬に関するサイエンス、ビジネスに焦点をあてた様々なプログラムを提供していて、この分野でのMBAプログラムも提供しています。このMBAプログラムは日本での夏季研修を提供しており、今年は私が教授を勤める政策研究大学院大学(GRIPS)への訪問が組まれていました。そこで、ヘルスケアやグローバルヘルス分野の将来のプロフェッショナルを相手に、彼らに関わりがあると思われるテーマに沿って幅広く議論する、対話形式のセミナーを主催しました。

写真 集合写真とGRIPSでのセミナーの様子

Philadelphia01_3 Philadelphia02

この4月にハーバード大学公衆衛生学の学生達を迎え入れた時と同じように、今回も2006年のハーバード大学卒業式でビル・ゲイツが行ったスピーチや2005年のスタンフォード大学卒業式でのスティーブ・ジョブズのスピーチについて知っているか、まず聞くことから始めました。参加した10名ほどの学生達のバックグラウンドは多岐に渡っていて、セミナーはとても面白く、内容が濃いものになりました。このような交流はとても楽しいものですね。

健康と医療フォーラム2008

日本経済新聞の主催で4回にわたって「健康と医療フォーラム2008」が開催され、その第1回目(3月12日)に基調講演として「日本の医療: 20年後への展望」というタイトルでお話をさせていただきました。その記事は日本経済新聞にも大きく掲載されましたが、NIKKEI NETでも読むことができるようになりました

過激な発言もありますが、いかがでしょう?

シアトルから

→English

4年前から毎年6月に開催されているPacific Health Summitに参加しています。4年前の最初の会議には出席したのですが、第2・3回は他の所用と調整がつかず欠席しました。

今年のテーマは「Nutrition」ですが、食料価格の高騰もあって「食料価格高騰、MDG(Millennium Development Goals)」というパネルが行われ、私はそれに参加しました。旧友トロント大学のPeter Singerの司会でした。栄養と食料の問題は世界的な課題です。2週間前にローマで行われたFAO会議が不調でしたので難しいところですが、7月の洞爺湖サミットでもアジェンダのひとつになるでしょう。

Dsc00778

写真1 HPI の近藤さん、Sunil Chackoさん

Dsc00813

写真2 私が参加したパネル、私の向かって右がDr. Peter Singer、左がGAINの事務局長 Marc Van Ameringenさん、2月の会議でご一緒しました

このところTICADをはじめ、G8サミット、温暖化、エネルギー、貧困、開発、アフリカ問題などを中心に、どっぷりと浸かっています。頻繁に会う人もいれば(参考12)、新しい人たちとの出会いもあって、いいことだと思います。世界が“フラット”になり、問題も世界的なものとなり、日本にとっても、私たち一人ひとりにとっても、これからの課題は大きなことを実感します。去年以来ですが、WHOの事務局長Margeret Chanさんとも会えました。彼女もなかなかのリーダーシップを発揮しています。

シアトルは水と森のきれいな街で、滞在期間中は天気も良く、すばらしい時間を過ごせました。少し時間が取れたのでMarinersの試合も見に行きました。今年は調子が悪くてダメですね。球場も4分程度の入りでした。イチローも2三振。チームに“勝とう”という気持ちが見れず、つまらない試合でした。でも、イチローはご当地では拍手が一番多いですし、今年もAll Star Gameに出る でしょうね。去年はMVPでしたし。城島は出場せず、残念。やはり、翌日監督交代が発表されました。

Dsc00884

写真3 Marinersのゲーム

Dsc00866

写真4 イチローの打席

TICAD4横浜と朝日新聞Bono編集長

→English

横浜で行われたTICAD4では、日本から多くの成果が発信が出きたと思います。アフリカ40ヵ国の首脳を迎え、福田総理は毎日のように首脳と面談、さらにBono、国連事務総長顧問のJeffrey Sachsとも個別に面談され、日本政府もがんばりました。総理もNGOの活動が大事との強い認識を深めたようです。

Wefcapetownjune2008001写真1 TICAD会場で、左から私のスタッフの原君、杉山さん、Dr. Pablos-Mendes

私もHideyo Noguchi Africa Prizeの贈呈式や翌日行われた国連大学での受賞者講演会への出席、尾身幸次議員主催のパネルに、Rwanda大統領、Harvar d大学のJuma教授等と参加したりと、いろいろとありました。ちょうどRwandaに行っている東京大学の伊東 乾さんから、講義をしているところの写真が送られてきたばかりでしたので、そのことをきっかけにパネルは話しました。ここでも多くの日本の若者ががんばっています。

Rwanda02写真2 Rwandaで教える伊東さん

先日ご報告したBonoさん朝日新聞 5月31日号の1日編集長というすばらしい企画で、アフリカやTICADといったことを取り上げていて、いつもの紙上とは違って光っていましたね。今回発表された、日本のアフリカ支援プログラム予算のことも書かれていました。

野口英世アフリカ賞

→English

28日、TICAD 4の1日目の夜、天皇皇后両陛下のご臨席のもと、第1回 Hideyo Noguchi Africa Prize賞の授賞式が行われました。受賞されたGreenwood、 Were両博士とも実にすばらしく、しかも野口英世の精神をそのまま具現化するような方たちです。とても謙虚で、気さく。夫婦共に支えあい、助け合い、40年も前から30年以上にわたって、アフリカという地でここまでの仕事をされたことは本当に畏敬の念を禁じられません。私はこの選考委員長として、世界に誇れるすばらしい選考結果となったことを、心の底からうれしく思います。

Noguchi01_2写真1

アフリカから40ヵ国を超える元首と政府の長が参加され、本当にお二人のお人柄を表すような清清しく、気持ちのいいレセプションでした。

May2008kobehideyonoguchi1

写真2

May2008kobehideyonoguchi0

写真3

Noguchigreenwood

写真4

Noguchiwere

写真5

Noguchi02

写真6

小泉元総理はこの賞の創設者としての挨拶をされ、「今日、ここの会場の皆さんの上に野口博士の魂が降りてきているようだ。」といわれましたが、後で聞いたところでは、原稿にもなかった即興だったのようです。うまい表現ですね。会場全体に、本当にそんな雰囲気がありました。

翌日の午前は青山の国連大学で、ご両人の講演会がありました。NHKの道傳さんの司会で、私とお二人のパネルもあって、これもよかったです。その後、皆さんで猪苗代の野口英世の生家訪問へと向かわれました。猪苗代での歓迎も盛り上がったようです。会津若松市長の菅家さんのブログ5月29日30日)にその辺のことが書かれています。野口英世の生い立ちなど現地で改めて知ったこともあったでしょう。受賞者やそのご家族の皆さんも喜ばれたようですね。

また、アフリカがちょっと近く感じられたひと時でした。